70MPa系
32.7 MJ(HHV)
上記数値から算出されるステーションエネルギー効率: 88.0 %(LHV) / 89.6 %(HHV) 投入エネルギー原単位
投入エネルギー の種類
投入エネルギー
原単位 LHV HHV
CO2 排出量 高圧水素
(19.6MPa) (1.0 kg) 127 MJ 149 MJ -※1
電力 4.9 kWh 17.8 MJ 1.98 kg
※充填水素ガスが保有するエネルギー(発熱量+圧力): 127MJ/kg(LHV) 149MJ/kg(HHV)
(高圧水素ガスの条件:温度25℃ 圧力35MPa)
※1 オフサイト型水素ステーションの場合、原燃料たる高圧水素は他所で製造されたものをFCV に供給しているため、原燃料分についてはCO2排出量は含めないものとする。
図1.1.6.2-15 日光水素ステーション(高圧水素貯蔵方式)のフローと投入エネルギー
表1.1.6.2-18 日光水素ステーション(35MPa供給時)における 水素1kgあたりの供給に必要なエネルギー
1.1.6.3 70MPa 対応ステーションの効率
JHFC2では、JHFC1で設置された4箇所の35MPa対応水素ステーションで70MPa対応化 が実施された。その対象ステーションにおける35MPa充填時(霞ヶ関ステーションを除く)
と70MPa充填時の効率の比較を表1.1.6.3-1に示す。
35MPa 70MPa
水素製造方式 効率
HHV(LHV)
効率 HHV(LHV)
千住ステーション オンサイト
都市ガス 64.0(60.0) % 62.1(58.0) % 横浜・大黒ステーション オンサイト
脱硫ガソリン 63.1(56.5) % 61.4(56.2) %
横浜・旭ステーション オンサイト
ナフサ 66.0(58.9) % 63.1(56.2) %
霞ヶ関ステーション オフサイト
高圧水素貯蔵 - 96.2(95.3)%
35MPa供給時と70MPa供給時のステーション効率を比較すると、70MPa供給時には概ね2~
3ポイント程度の効率の低下が認められる。
この効率の低下の理由としては、
・高圧圧縮機(40⇒80MPaG)分の消費電力の増加
・プレクール設備分の消費電力の増加(横浜・大黒及び霞ヶ関は除く)
の2点が挙げられる。
高圧圧縮機について、千住水素ステーションでの例を挙げると
・低圧圧縮機(0.6⇒40MPaG)の消費電力:3.75kWh
・高圧圧縮機(40⇒80MPaG)の消費電力:1.07kWh
となり、高圧圧縮機の消費電力は低圧圧縮機のそれの30%弱となっている。
これは、圧縮機の消費電力は概ね圧縮比により大きく左右されることによるものである。例 えば低圧圧縮機(0.6 ⇒40MPaG)の圧縮比は約60であるのに対し、高圧圧縮機(40 ⇒80MPaG) の圧縮比は約2となる。このため、後者の消費電力は前者と比較して小さくなる。
プレクールの消費電力については、次項1.1.6.4で詳細を記す。
表1.1.6.3-1 70MPa 対応ステーションの効率(35MPa 充填時/70MPa 充填時)
1.1.6.4 プレクール設備の消費電力
70MPa対応水素ステーションでは、圧縮機直接充填方式の横浜・大黒水素ステーションを
除き、FCV水素タンクへ供給する水素ガスの冷却を目的としたプレクール設備が設置されて いる。これは、70MPa対応FCVへは短時間で大量の水素をタンクに充填することが求められ ることから、FCVのタンク内に充填される水素は急激な断熱圧縮状態となりタンク内部のガ ス温度は上昇する。FCVの水素タンクの許容温度上限は85℃とされており、何の対策も施さ ずに水素を充填すると内部温度が許容値を超えてしまうこととなる。このため、FCVのタン クに供給される前に水素ガスをプレクール設備で冷却することにより、タンク内の温度上昇 のマージンを大きく取ることができ、結果として水素タンクの許容温度を超えることなく充 填することが可能となる。
(1) プレクール設備の概要
プレクール設備は、概ね冷凍機、ブライン(冷媒)循環配管、熱交換器で構成される(霞 ヶ関水素ステーションのように冷凍機+ブラインの代わりに液体窒素を用いる場合もあ る)。冷凍機で冷却されたブライン(冷媒)は、循環配管を通じて熱交換器(シェルアン ドチューブ方式)に送られ、熱交換器内部の配管を通る水素ガスとブラインが熱交換する こ と に よ り 水 素 が 冷 却 さ れ る 。 プ レ ク ー ル 設 備 の 冷 却 能 力 は 、 米 国 SAE(Society of Automotive Engineers)による規格TIR J2601においてディスペンサーノズル出口の水素ガス 温度により 0℃、-20℃、-40℃の区分がなされており、千住ステーションは-20℃の冷 却能力がある。なお、千住ステーションの場合、水素を-20℃まで冷却するためにブライ ンの温度は冷凍機により-35℃前後まで下げることが必要である。将来の商用水素ステー ションでは常時 3~5 分以内の短時間でFCV への充填が求められることから最大-40℃の 冷却能力が必要(1.2.1項参照)とされており、この場合のブライン温度は-50~-60℃前 後が必要であると想定される。
(2) プレクール設備の消費電力測定結果
プレクール設備で消費される電力は大きく以下の3点に分類される。
(A) プレクール設備の起動
(B) プレクール設備のブライン(冷媒)の温度維持(待機時)
(C) FCVタンクへの充填される水素ガスの冷却
(C)については、1.1.6.2項以下で示した各水素ステーションのエネルギー効率の中で示して
いることから、本項では(A)及び(B)について示す。
図 1.1.6.4-1に千住水素ステーションで測定されたプレクール設備の起動時の消費電力(夏
季・冬季)を、図1.1.6.4-2 に同じく千住水素ステーションで測定されたプレクール設備の ブラインの温度維持に要する消費電力(夏季・冬季)を示す。
0 20 40 60 80 100
-50 -40 -30 -20 -10 0 10 20 30 40
プレクール起動消費電力[kWh]
ブライン温度 [℃]
冬 夏
冬
夏
0 5 10 15 20 25
-50 -40 -30 -20 -10 0
プレクール温度維持消費電力[kWh/h]
ブライン温度(水素冷却無し)[℃]
冬 夏 夏
冬
図1.1.6.4-2 プレクール設備のブライン温度維持に要する消費電力
図1.1.6.4-1 プレクール設備の起動に要する消費電力実測値
図1.1.6.4-1及び図1.1.6.4-2から季節間の消費電力の差が非常に大きいことが読み取れる。
この差異の理由については後述する。
初期普及段階における商業水素ステーションの運用時間は 13 時間/日程度が想定され ている。つまり、プレクール設備は運用開始前の起動、及び運用時間中の13時間程度の温 度維持に毎日エネルギーを消費することとなる。上記の図1.1.6.4-1及び図1.1.6.4-2で示し た消費エネルギーは、プレクール温度-20℃の設備での消費電力であるが、上述の通り商 業水素ステーションではプレクール温度、すなわち冷却後の水素ガス温度を-40℃に下げ るために、プレクール設備のブライン温度は約-50℃~-60℃程度が必要となると考えら れる(但し、熱交換器の熱交換性能によって左右される)。しかしながら、 実用的には-
50℃~-60℃の温度領域に適用可能なブラインは汎用品ではほぼ存在しない。-45℃以上 の温度領域で使用される安価なエチレングリコール系の汎用ブラインは、-50℃以下の温 度領域では凍結する可能性がある他、製品によっては高濃度であれば凍結点が-50℃を下 回るものもあるが粘度が大きくなり循環流量低下や冷却能力の低下を引き起こす可能性が 考えられる。一部には-60℃以下の凍結点を持つ特殊なブラインも存在するが、コストが 汎用ブラインの10倍以上にも上ると言われているため、幅広い普及を目指す水素ステーシ ョン用の設備に適用することは現状では難しいと考えられる。
上記の理由から、現時点で将来の-40℃プレクール設備の仕様から消費電力を予測する ことは難しいため、現在の千住水素ステーションのプレクール設備の性能・効率データの 延長線上として推測を行った。なお、将来的に冷凍機方式での-40℃プレクールが機器・
コストの観点から実現困難である場合は、液体窒素を用いた-40℃プレクールが検討され ることになると考えられる。
0 20 40 60 80 100 120
-60 -50 -40 -30 -20 -10 0 10 20 30 40
プレクール起動消費電力[kWh]
ブライン温度 [℃]
冬 夏
冬 夏 ブライン-55℃
(プレクール温度-40℃)
予想消費電力
冷凍機・ブライン等が、現状の千住水素ステーショ ンの設備と性能・効率が同等と仮定しての消費電 力予想値。
実際に-40℃プレクール設備を設置する際は、
ブライン出口-50℃~-60℃以下の温度領域に適 用可能な超低温仕様の冷凍機及びブラインの超低 温仕様の検討が必要である。
図1.1.6.4-3 【将来予測】プレクール設備の起動に要する消費電力
0 5 10 15 20 25 30 35 40
-60 -50 -40 -30 -20 -10 0
プレクール温度維持消費電力[kWh/h]
ブライン温度(水素冷却無し)[℃]
冬 夏
冬 夏
ブライン-55℃
(プレクール温度-40℃)
予想消費電力
冷凍機・ブライン等が、現状の千住水素ステーショ ンの設備と性能・効率が同等と仮定しての消費電 力予想値。
実際に-40℃プレクール設備を設置する際は、
ブライン出口-50℃~-60℃以下の温度領域に適 用可能な超低温仕様の冷凍機及びブラインの超低 温仕様の検討が必要である。
ここで、図1.1.6.4-1及び図1.1.6.4-2で示した千住水素ステーションのデータを基に、ブ ラインの種類と冷凍機の性能・効率は現状設備と変わらないと仮定(つまり、ブラインに ついては凍結点を考慮しない)した上でブライン温度-55℃における消費電力を予測した 結果を図1.1.6.4-3及び図1.1.6.4-4に示した。ブライン温度が-35℃付近の温度領域である 現状の千住水素ステーションと比較して、起動時の消費電力が約 1.5 倍、ブライン温度維 持の消費電力が約 2 倍に増加することがわかる。但し、現在の千住水素ステーションのプ レクール設備は、冷凍機と熱交換器が約20m離れており、ブライン循環配管は断熱施工さ れているとは言えその放冷によるエネルギーロスは無視することができない。また熱交換 器本体での放冷の問題もあるため、循環配管の引きまわし距離の短縮と、配管・熱交換器 の断熱の強化が普及段階では必須になると考えられる。
以下に、現在 JHFC 水素ステーションのプレクール設備の配管で使用されている配管用 断熱材と、現在入手可能な高性能断熱材の例を挙げる。
◆現在使用中の配管用断熱材の例
・硬質ウレタン断熱材(日商エアロ AEROFLEX):熱伝導率 0.034 W/(m・K)
◆現在入手可能な高性能断熱材の例
・真空断熱材(クラボウ ペーパーVIP):熱伝導率0.0025~0.006 W/(m・K)
また、図1.1.6.4-1及び図1.1.6.4-2から明らかなように、プレクール設備は外気温、すな
わち季節による影響を大きく受ける。この影響は、プレクール設備・冷媒配管の断熱施工 の状態にも大きく左右されるが、ステーションのエネルギー消費量に大きく作用すること になる。
図1.1.6.4-4 【将来予測】プレクール設備のブライン温度維持に要する消費電力