部分的邦訳され、18項目で構成された尺度であ る。独立的な行動に関する質問の回答について、
「非常にそうである」「そうである」「まあそう
である」を0点、「そうではない」に1点を与え た。一方、依存的な行動に関する質問の回答につ いて「非常にそうである」「そうである」に1点 を与えて、得点が高いほど対人依存傾向が強いこ とを示す。④青少年ストレス源尺度15)
( Cronbach
のα係数 =0.7871)
宗像により作成された青少年ストレス源尺度
(
16項目)で、青少年を取り巻いている生活ス トレス源を測定するための尺度である。質問項目 について、「大いにそうである」の回答の場合を 2点、「まあそうである」の回答を1点、「そう ではない」を0点とした。得点が高いほど認知さ れたストレス源の数が多いことを示す。⑤情緒的支援ネットワーク尺度16)
( Cronbach
の α係数=0.8202〔家族〕、
0.8084〔友人〕)
宗像により標準化されている「家族の情緒的 支援ネットワーク」と「友人の情緒的支援ネッ トワーク」尺度を使用した。両尺度は同様の内容
(
10項目)で構成されている。両尺度での項目 に該当する人物がいると回答した場合を1点とし て、その尺度項目の合計点5点以下を低い家族か らの情緒的支援ネットワークまた低い友人からの 情緒的支援ネットワーク認知とした。3.中国語版測定尺度の信頼性と妥当性
本研究で使用した尺度は、筆者が中国語に翻訳 し、さらに日本語、中国語に堪能な研究者らにより 日本語にバックトランスレーション後検討されたも のである。本研究で開発した中国語版尺度の内的一 貫性を検討した結果、各尺度の
Cronbach
の信頼性 係数αはすべて0.7を超えていた(調査項目の各項 に示している)。この結果から、内的一貫性として の信頼性は満たされているものと推察される。先行 研究により、SDS
とSTAI
との間には強い相関が示 されている17,18)。本研究において基準関連妥当性を
確認するために、中国語版のSDS
尺度、STAI
尺度 およびGHQ尺度との相関係数を算出した結果、有 意な強い相関が認められ、それぞれ外的基準とした すべての測定尺度においても、0.1%水準で有意な 相関係数を示したことから、基準関連妥当性は確保 できるものと推察される(表2)。
因子的妥当性について、因子分析(主成分分析、
バリマックス回転)により検討した。その結果、各 項目の該当因子への因子負荷量は概ね0.4以上、固 有値1以上、共通性0.4以上の因子は日本語版尺度 と概ね同様の因子構造が認められ、因子的妥当性は 確認できたものと推察される19)
。
4.分析方法
課題(1)に基づき、精神健康度とその心理社 会的要因、神経症傾向および抑うつ傾向の出現率 について、都市部と農村部における一人っ子群と非 一人っ子群との比較を行った。統計学的検定は、平 均値の比較には一元配置分散分析により検討した後
Tukey HSD
法による多重比較を行った。出現率の比較にはχ2検定を用いた。なお、母子又は父子家 庭の一人っ子は、一人っ子群における各要因におい て両親のいる家庭の一人っ子と差が認められなかっ
たため、データの解析では母子又は父子家庭のデー タを除外しなかった。
課題(2)を検証するために、共分散構造分析 の理論に基づいて、直接測定不可能な「情緒的支 援ネットワークの認知」、「不安傾向特性」、「ス トレス源の認知」、神経症傾向や抑うつ傾向から なる「マイナス精神健康度」を「構成概念」とす る。この「構成概念」である潜在変数間の因果関 係を論じるために、仮説概念に基づいて因果モデ ルを構築し、共分散構造分析によりその因果構造モ デルの検証を行った。なお、モデルにおける「情緒 的支援ネットワークの認知」という潜在変数は、観 測変数の「家族からの情緒的支援ネットワーク」、
「友人からの情緒的支援ネットワーク」尺度からな
る。「不安傾向特性」という潜在変数は、観測変数 の「自己価値感」、「特性不安(STAI )」、「対
人依存型行動特性」という三つの尺度からなる。「ストレス源の認知」という潜在変数は、観測変数
の「青少年ストレス源」尺度からなる。「マイナス 精神的健康度」潜在変数は、観測変数の「GHQ 」
「 SDS 」尺度から測定された神経症傾向や抑うつ
傾向からなる。統計学的分析には、統計処理SPSS
9.0J ソフトAmos 4.0を使用した。3 結 果
1.都市部と農村部一人っ子群と非一人っ子群にお ける精神健康度の比較(表3)
GHQ (神経症傾向)得点の平均値と標準偏差
は、都市部一人っ子群が11.7±4.9、非一人っ子群
が8.7±4.3、農村部一人っ子群が
10.2±4.7 、非一
人っ子群が10.9±4.2
であった。また、SDS (抑
うつ傾向)得点
の平均値と標準偏差は、都市部 一人っ子群が43.1±6.3 、非一人っ子群が
37.8
±表2 中国語版測定尺度間の妥当性係数(Pearson 積率相関係数)
6
.9 、農村部一人っ子群が
41.7±8.2、非一人っ子
群が40.2
±7.0であった。一元配置分散分析の結 果、GHQ 〔 F(
3,619)=6.551,p<0.001 〕、 SDS 〔F (3,619)=9.222,p<0.001 〕において有意差が認められ
た。多重比較の結果、GHQ
では、都市部両群に有 意差が認められたが、農村部両群に有意な差は認め られなかった。また、都市部一人っ子群は、農村部 一人っ子群に比べ、GHQ
得点が有意に高かった。SDS
では、同様に都市部両群に有意差が認められ たが、農村部両群に有意な差は認められなかった。また、都市部一人っ子群は、農村部両群に比べ、
SDS
得点が有意に高いことが示された。神 経 症 傾 向の出 現 率は都 市 部 一 人っ子 群が
73%、非一人っ子群が39%、農村部一人っ子群が 65%、非一人っ子群が72%であった。抑うつ傾向 の出現率は、都市部一人っ子群が63%、非一人っ 子群が25%、農村部一人っ子群が48%、非一人っ 子群が38%であった
(
図1) 。神経症傾向と抑うつ
傾向の出現率の比較について検討した結果、都市 部両群では、一人っ子群の方が神経症傾向の出現 率が有意に高く(
χ2(
1)=11.891,
p<0.001) 、抑うつ
傾向の出現率も有意に高かった(
χ2(
1)=20.188,
p<0.
001) 。農村部両群
では、神経症傾向において 両群の出現率に有意な差は認められなかった〔
χ2(
1)=1.969,
p=0.161 〕。抑うつ傾向においては一
人っ子群の方が抑うつ傾向の出現率が高い傾向が認表3 都市部と農村部の一人っ子群と非一人っ子群における各要因 一元配置分散分析の結果
図1 都市部と農村部の一人っ子群と非一人っ子群における神経症傾向と抑うつ傾向の出現率
められた〔χ2
(
1)=2.877,
p=0.090 〕。また、都市部
一人っ子群は、農村部一人っ子群に比べ、都市部一 人っ子群は神経症傾向の出現率が有意に高く〔χ2(
1)=9.388,
p<0.01 〕、抑うつ傾向の出現率も有意差
が認められた〔χ2(
1)=3.958,
p<0.05 〕。
都市部と農村部の一人っ子群と非一人っ子群に おける精神健康度に及ぼす心理社会的要因につい て、一元配置分散分析の結果を表3に示す。自己価 値感〔F
(3,622)=18.418,p<0.001 〕、特性不安 (STAI)
〔F (3,619)=10.594,p<0.001 〕、対人依存型行動特性
〔F (3,620)=3.811,p<0.01 〕、青少年ストレス源〔F (3,622)=17.286,p<0.001 〕、家族からの情緒的支援
ネットワーク〔F(3,626)=3.596,p<0.01 〕においてそ
れぞれ有意差が認められた。多重比較の結果、各 要因において都市部両群に有意差が認められたが、農村部両群には認められなかった。自己価値感で は、都市部一人っ子群は都市部非一人っ子群に比べ 有意に低かったが、農村部両群の間に有意な差は認 められなかった。また、農村部両群とも、都市部両 群よりも自己価値感が低い傾向が示された。特性不 安においては、都市部一人っ子群と農村部一人っ子 群および農村部非一人っ子群は、都市部非一人っ子 群よりも有意に高かったが、都市部一人っ子群と、
農村部一人っ子群および農村部非一人っ子群のそれ ぞれの間に有意な差は見られなかった。対人依存型
行動特性では、都市部一人っ子群はいずれの群より も有意に高かった。都市部非一人っ子群と、農村部 一人っ子群および農村部非一人っ子群のそれぞれの 間に有意な差は観察されなかった。青少年ストレス 源においては、都市部一人っ子群は都市部非一人っ 子群に比べ有意に高かったが、農村部両群の間に 有意な差は認められなかった。農村部両群とも、都 市部両群よりもストレス源の認知が高い傾向が示さ れた。家族からの情緒的支援ネットワークでは、都 市部一人っ子群は、都市部非一人っ子群および農村 部非一人っ子群より得点が有意に低く、同様に農村 部一人っ子群は、都市部非一人っ子群および農村部 非一人っ子群より得点が有意に低かった。都市部一 人っ子群は農村部一人っ子群に比べ有意な差は認め なかった。
2.中国高校生の精神健康度に及ぼす心理社会的要 因の影響に関する因果モデル(図2)
共分散構造分析による精神健康度に及ぼす心 理社会的要因の影響に関する因果モデルを検討 した。その結果、モデルがどの程度受容できるか の判定基準としての適合度は、GFI(Goodness of Fit Index)=0.992,AGFI(Adjusted Goodness of Fit Index)=0.977,RMSEA=0.031であった。モデル全体 の評価基準としての適合度指標からみれば、本研究
図2 中国高校生の精神健康度に及ぼす心理社会的要因の影響に関する 因果モデルの共分散構造分析の結果(標準化解)
の精神健康度に及ぼす因果モデルのデータへの適合 度は、比較的高いと考えられる。
次に、モデルの潜在変数間の部分的評価に関し て各要因間の因果係数を検定した結果、モデルの中 に示されたパス係数は5%水準ですべて有意であっ た。「情緒的支援ネットワークの認知」から「不安 傾向特性」への直接効果は
-0.58
であった。「情緒 的支援ネットワークの認知」から「ストレス源の 認知」への直接効果は-0.16
であった。「不安傾向 特性」から「ストレス源の認知」への直接効果は 0.93、「ストレス源の認知」から「マイナス精神健
康度」に0.96の強い直接効果を与えている。共分散 構造分析により、精神健康度に及ぼす心理社会的要 因の影響に関する因果関係が推定された。4 考察
GHQ
およびSDS
の得点では、都市部非一人っ子 群を除く他の3群の平均値は基準値よりすべて高値 が示され、対象者の殆どは精神健康度の状態が好ま しくない結果であった。都市部では、一人っ子群の 方が神経症傾向と抑うつ傾向およびその出現率が高 いことが示唆された。また、都市部一人っ子群は、農村部一人っ子群よりも神経症傾向と抑うつ傾向お よびその出現率が高く、農村部非一人っ子群よりも 神経症傾向と抑うつ傾向および抑うつ傾向の出現率 が高いことが明らかにされた。農村部では、両群の 間に神経症傾向とその出現率に明らかな差は見られ なかったが、一人っ子群の方が抑うつ傾向の出現率 が高くなる傾向が示された。これらの結果は、都市 部での一人っ子群の精神健康度の低下を顕著に表し ていると考えられる。
心理社会的要因についてみると、都市部では、一 人っ子群は非一人っ子群に比べ、家族からの情緒的 支援の認知が少なく、肯定的な自己評価が低く、特 性不安を喚起しやすく、対人依存度が強く、認知さ れるストレス源が多くなる傾向が見られた。また、
対人依存度が、いずれの群よりも強くなる傾向が観 察された。これらのことより、都市部での一人っ子 の親に、子どもに対する養育行動の問題が存在して いると考えられる。農村部では、一人っ子群の方は 家族からの情緒的支援の認知が少なかったが、他の 心理社会的要因において明らかな差が見られなかっ た。また、農村部両群では、都市部両群より肯定的 な自己評価が低くなる傾向が見受けられた。この結 果から、地域文化や経済状況などの環境要因が自己 価値感やストレス源の認知に影響すると考えられる
が、直接的な影響要因として、農村部対象者に対し てのアンケート調査時期が影響していることも考え られる。それは期末テストの時期であった。テスト 期間においてはストレスを強く感じて肯定的な自己 評価に影響を及ぼしやすくなる可能性もある。都市 部・農村部に関わらず、一人っ子群の方が家族から の情緒的支援の認知が少ないことから、兄弟姉妹が いないため何らかの情緒的支援や感情的交流が満た されていないことを示唆するものと考えられた。
本研究で精神健康度の評価に用いた
GHQ
は、神 経症症状、不安、社会的機能不全を反映するもので あり、不安、緊張や抑うつを伴う神経症圏の判別に 優れている5,6)と指摘されている。この神経症症状と は、心因(本人の有しているパーソナリティ要因と 本人を取り巻く環境要因に関するもの)によって引 き起こされる精神身体反応(不安感、焦燥感や抑う つなどの精神症状とともに、動悸、めまい、頭痛や 発汗などの身体症状を伴う反応)と定義される20)。
すなわち神経症症状は、器質的要因や身体疾患が殆 ど関与せず、心理的要因や社会的要因などから葛藤 状況を招き、心身に不適応反応を引き起こすもので ある。神経症を生み出す行動と心理社会的環境につ いて、日常苛立事やストレス性の高い出来事の認知 などが、神経症群に陥りやすい要因であると宗像21) は指摘している。従って、精神健康度には心理社会的ストレス源 が強い影響をもたらす要因となり得る。ストレス は、
H ・ Selye
22)によって学術的に用いられるよう になった概念であるが、ラザルスとフォルクマン23) は、ストレスについて、主体の認知的評価や人間と 環境との関係を重視し、心理的ストレスとは「人間 と環境との間の特定な関係であり、その関係とは、その人の原動力に負担をかけたり、資源を超えた り、幸福を脅かしたりすると評価されるもの」と定 義している。ストレス源と本人の対処能力や利用資 源との関係が、自分の対処能力を超えるものと認知 すると不安や抑うつなどの情動が生じ、心理的・生 理的なストレス反応が出現する。ストレス反応とし てさまざまな心理的防衛機制が生じ、他の要因とも 相まって神経症や抑うつ症につながることもある。
以上のような考えに基づき、神経症症状や抑う つ症状を個人の対処能力を超えた心理的ストレス 反応と解釈するならば、対象者、特に一人っ子は 家族の情緒的支援ネットワークの脆弱化により、現 実のストレス状況に効果的に対処できていない状態 にあると考えられる。宗像24)は、家族からの情緒的 支援の認知は、ストレス軽減への効果的な対処行動