第1節 緒言
Sr, Ca などの低原子価イオンを AサイトのLa に置換し(La1_xAx)M03_ð
( A= Sr, Ca 、 M=Mn, Co, Cr, Feなど)は、 組成によって電子伝導性と酸化 物イオン伝導性を合わせ持つことが知られており1),2)、 先に述べたように固体 電解質型燃料電池の空気電極3)やインターコネクタ4)また自動車排ガス浄化触 媒5)をはじめとする各種触媒6)としての応用が注目されている。 とくに固体電 解質型燃料電池は、 一般に800 oC,._, 1 000 oCの高温域で作動されることから、
空気電極や接続子には、 高い導電率、 固体電解質との熱膨張的な整合性や化学 的な安定性7)および微構造組織の安定性などの特性が要求される。 一般に、 B サイトにMnを用いた(La1_xAx)Mn03_けま、 Co系のベロプスカイト型酸化物に
比べ、 電解質材料として有望な YSZと線膨張係数が近くまた化学的な安定性 も優れている1)ことから空気電極に適正な材料と考えられる。 しかしながら導 電率がCo系酸化物に比べ著しく低いため、 とくに円筒型の固体電解質型燃料 電池においては、 高い過電圧の原因になることが報告されている8)。
Takeda ら9)は、 出発原料に酸化物、 炭化物を用いて合成されたLa1_yMn03 にたいし、 Y=0.05 の酸化物で導電率が極大値 を有し、 またYが増大するにつ れペロブスカイト型結晶構造の格子定数は減少すると報告した。
しかしながら、 合成された酸化物の密度は理論値の800/0� 900/0であり、 さ らに焼結性を高めた酸化物での実験の必要性を示唆した。
一方、 Abra ntes ら10)は、 同じく酸化物、 炭化物を出発原料に用いて合成さ れたLa1_yMn03にたいし、 Y が増大するにつれ導電率、 格子定数は増大し Y=O.lの酸化物で良好な空気極特性を示すことを報告した。
Mackorら11)は金属酢酸塩を出発物質に用い、 BサイトにMnとCoを複合 して合成された定比組成の(La1_XSrx) ( Mn1・yCoy ) OiX豆0.16, Y豆0.2)対し導電 率を評価したが、 作製された試料にはその密度が理論値の約600/0のものも合 まれ、 その導電率は Sr やCoを添加しない酸化物のそれに比べて低い値が報 告された。 一方、 線膨張係数についても幾つかの報告がなされている。 例えば Aサイトが1%欠損した(Lao.99-XSr x)MnO 3に ついて、 Srilomsak ら12)により X=0.2の酸化物の線膨張係数は、 定比組成の酸化物に関する報告値13)に比べ約 100/0、 Aサイト 5%欠損の酸化物に関する報告値l
X=O の酸化物の線膨張係数は定比組成の酸化物の報告値 9)にに比ベ約1ω0%高く 報告されているo
このように(La,Sr)Mn03の導電率や線膨張係数について多くの報告例がある がその値にはばらつきが多く、 この原因のーっとして酸化物合成のための出発
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物質の違いに起因する試料性状の差が考えられる。 またこのような性状の差 に より電解質材料(YSZ)と の化学的な安定 性が異なることが推測される。
一方、 最近ペロプスカイト型酸化物の空気電極性能を向上するために B サ イトへの他元素による置換 効果に関する研究が報告されている。 Inoueら15)は、
(La,Sr )Co03にNiを微量添加した酸化物を空気電極に用いること で酸素セン サーの作動温度を低温化できる こ と を報告し た 。 ま た著者ら l
(Lμa,Srの)Mn03にA刈lを添加することでで、YSZ 電解質に対する電極過電圧を低減で きることを見いだした。
そこで本研究 では、 Aサイトに Srを、 またBサイトにAlを添加した (Lal_XSrX)I_Z(Col_wMnw)I_Yl AIY1 03の化学式で与えられる酸化物について、 金属 硝酸塩の熱分解法によって調製された粉末を用いて比較的綴密な試料を作製し、
Aサイト置換量(X)、 Co と Mn の配合 比(w)およびAサイト元素の欠損量(Z) などが焼結性 や導電率およびまた線膨張係数におよぼす効果について検討した。
また、 LaCr03は先に述べたように比較的高い導電率を有し、 高温において も酸化および還元雰囲気で安定なため接続子として有望な材料である九綴密 な LaCr 03焼成体を得るためにcuや Zn など の遷移金属17)やフッ化物 18)など の添加 効果 に関する研究が報告されている。 また、 Sakai ら 19)ユ0)により Caを 添加した(Lal_yCay)(Crl_pCap)03について、 おもに Crを一部欠損した酸化物 (P>O)について導電率や線膨張係数などが報告されており、 Cr が欠損しない 酸化物(P=O)ではその密度は低く、 例えばY=0.2の酸化物の密度は理論値の約 62%19)および約670/020)と 報告されている。
そこで本研究 では、 A サイト に Caを添加した定比組成の(La1・yCay)Cr03に ついて比較的綴密な 焼成体を作製し、 その導電率や線膨張係数におよぼす Ca 添加量(Y)の効果について検討した。
第2節 実験方法
2-1 ペロ ブスカイト型酸化物の調製
本研究で、は(Lal-XSrX)l_Z(Col_wMnw)l_YlAl Y1 03で表される酸化物組成として、
Xは0.1 --0.4の範囲とし、 また Z については0--0.1 の範囲で各組成のペロプ スカイト型酸化物粉末を硝酸塩の熱分解法により合成した。 構成金属である La, Sr , Ca, Mn, CO, Al および Cr の硝酸塩を出発原料とし、 所定量秤量後、
水溶液中にて約24 h撹持混合したのち、 蒸発乾固した。 つぎに500 ocで分解 させ、 一度粉砕したのち850 ocで10 h熱処理(冷却は炉冷)すること でベロ プスカイト型酸化物粉末を合成した。 得られた粉末について、 X 線回折法
(XRD法、 マックサイエンス、 MXP18型)によりいずれもペロプスカイト型 結 品構造を有するほぼ単一な相であることを確認 し たのち、 そのBET表面積 (島津製作所、 2300型)を測定 し た。
次にこれらの粉末をプレス成形(6.5 kgf/mm2) し 、 1400 ocで10 h焼成(冷 却は炉冷) し たのち収縮率を測定した。 研削加工により、 4X4X40 mm3およ び3X3X15 mm3 の 2種類の試料を作製 し 、 その密度がいずれの試料も理論 値の93%以上であることを確認 し たのち、 前者を導電率(σ)の測定に、 後者を 線膨張係数(α)の測定(Rigaku、 TMA8140)に供 し た。 また、 これらの焼成体に ついてもXRD法により結晶構造の同定を行った。
2-2 評価方法 (l)X線回折(XRD)
XRD法(マックサイエンス、 MXP18型) にはCuK αを用い、 複合酸化物 調製後の構造の同定、 格子定数の算出およびペロブスカイト型酸化物と電解質 材料(YSZ)との反応性について検討した。 得られたX線ピークはJCPDSカー ドと比較 し て結晶構造の確認を行った。 また、 回折角と面指数から格子定数を 算出した。
(2)密度測定
試料の密度はアルキメデス法により測定 し た。 試料は、 エタノ-ル中で洗浄 した後、 乾燥器中で十分に乾燥 し た。 乾燥後、 試料の乾燥重量を電子天秤にて 測定した。 次に、 試料を蒸留水の入ったビーカーに入れて真空排気 し 、 試料中 の開孔部を水で十分に置換 し やすいように し た。 真空排気の時間は、 3 h以上 とした。 真空排気後、 試料の水中での重量を測定 し た。 この時、 試料内に置換 した水の密度を知るために水温も測定した。 開孔部の存在を考慮 し た密度は、
次の2-(1)式で示される。
d=w。そoWl×ρH 20
<
To c)
2-(1 )Wo ;乾燥重量
W) ;蒸留水中の重量
ρH20<T,c> ; T uCにおける蒸留水の密度
試料の乾燥重量と試料の形状からみかけの密度を求め、 次式より試料の気孔 率 を測定 した。 気孔率P/%は、 次式を用いて算出した。
30
p= ( 1 - d 0/ d 1) X 1 00 2-(2) d1 ;アルキメデス法により求まる密度
do;みかけの密度 (3)導電率の測定
導電率は通常の直流4端子法(東方技研、 2000 型 ) で測定した。 図2-1に 示すように試料の断面積(S)に流れる電流(1)、 電圧端子間距離(L)に加わる電圧 (V)を用い、 2-(3)式から導電率(σ)を求めた。 自然電位を考慮し、 印加する電 流を数点変えて1-Vプロットを求め、 ほぼ直線であることを確認し、 その傾き より 1N比を求めた。
V一+
Fig. 2-1 4端子法による導電率の測定模式図
L J
σ - 一一- x
s v
第3節 実験結果および考察 3 -1 結品構造と焼結特性
2-(3)
焼成体の結品構造は、 X線回折により菱面体品型の構造であることがわかっ た。 表2-1にBサイトにMn、 Coを有する複合酸化物の格子定数を示す。 Mn 系(W=I),Co系(W=O)の酸化物では Sr添加量(X )が増加するにつれ格子定数 が減少する傾向が得られた。 これらの傾向は、 Xが増加につれて、 電荷補償の ためにイオン半径が小さいCo4+" Mn4+の存在する比率が高まったためと考え られる。 一方、 Aサイト欠損量(Z)の効果については、 調べた範囲では格子定 数との聞に明確な相関は観察されなかった。
そこでX線電子分光法2 1)を用い、 Mn の酸化状態の同定を試みた。 結果を 表2-2に示す。 XやZに依らずかなりの比率でMn4+が存在する可能性が示唆 され、 これらの結果は既報22)とも符合した。
Takedaら9)によると、 La1・zMn03+Ô酸化物においてMn4+の比率はZに依ら ず、 酸化物の調製温度に依存し、 とくに低温でアニールすることで菱面体品型 の構造が安定すると報告されている。 またLaB03 (B ; Bサイトイオン型酸化
物において、 Bサイトイオン半径が減少するにつれて、 斜方晶系の構造から菱 面体品の構造が安定化されることが考えられる。
Table 2-1 (La1_XSr X)l-Z( COl-wMnw)o.94Alo.0603の格子定数
X Z w
a(r) c(h)
。 0.1 5.5052 13.3212
0.1 0.1 5.5047 13.3152
0.2 0.1 5.5076 13.3272
0.3 0.1 5.4647 13.2960
0.4 0.1 5.4543 13.3086
。 0.1 。 5.4999 13.1844
0.1 0.1 。 5.4259 13.0992
0.2 0.1 。 5.4154 13.1232
0.3 0.1 。 5.4215 13.1844
0.4 0.1 。 5.4076 13.1208
0.25 。 5.4920 13.3152
0.25 0.02 5.5152 13.3656
0.25 0.04 5.5218 13.3716
0.25 0.07 5.4978 13.3272
0.25 0.1 5.4856 13.3152
0.4 0.1 。 5.4076 13.1208
0.4 0.1 0.25 5.4304 13.2216
0.4 0.1 0.5 5.4360 13.1904
0.4 0.1 0.75 5.4576 13.2462
0.4 0.1 5.4543 13.3086
Table 2-2 (A) (La1・xSrx)o.9MIlo.94A1o.o603の1642* 1 /1641本2 (B) (Laa.7sSro.2s)1-zMno.94Alo.o603のI642*l/I641*2
(J\) (13)
X312・34
ハUハUハUハunu
I64�1
Z0.72 0
0.73 0.03
0.71 0.07
Q72 Q1
0.74
*1
4+2: Intensity at
642e V in Mn2p
XPS.勺�1: Intensity at 641 eV in Mn2p XPS.
I64�1
0.81 0.74 0.73 0.7232
本実験では酸化物を焼成後に炉冷していることから、 組成に依らずMn4+あ るいはCo4+がかなりの比率で存在し、 そのため菱面体型の構造が得られ、 X が増大するにつれて電荷補償のためにMn4+あるいはCo4+の比率が増大し格子 定数が低下したものと推測される。 またZの効果については、 電荷補償がお もに酸化物中の酸素の不定比性によって行われたため、 Mn価数への影響はそ れほど大きくなく、 したがって格子定数とZの聞に明確な相関性が生じなか ったものと推測される。
BET表面積および収縮率におよぼすSr添加量(X)の効果を図2-2および 図2-3に示す。
25
20
や4C5 心
、、、、
〈ca』eふ 15
25
S
Q) 10」司コ αコ
出ト 5
20
15 �
、、、、
� C心
10 � 己
ぷ=』国
∞
o BET 5
• Shrinkage
。
。 ハU -EEA 0.2 0.3
0 0.4
X
Fig. 2-2 (Lal_xSrx)l_zCoo.94Alo.o603の原料粉末表面積と焼成収縮率
Fig. 2-3
25
わ』己Eぬ 20
、、“
〈。E』司A •
15