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LP 振動

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第 4 章 結果と考察 27

4.2 超伝導ウィークリンクネットワークの測定

4.2.2 LP 振動

T = 5.5 Kに固定してとったLP振動の変調磁場による変化の様子を図4.13に示す。#2では磁 化の角度による磁場変調の制御ができなかったので、磁化の向きは細線と垂直に固定し 、磁化の大き さを変えることで磁場変調を調節した。ヒステリシスの影響を極力小さくするため、測定の前にまず

B = 1 Tまで上げて完全に磁性体を飽和させてから、磁場を下げながら測定した。ただし 、グラフ

に示した磁場の範囲は0.2 T< B <0.1 Tで 、下から上へ行くほど 磁場が小さくなる。各トレー

スは10 mT間隔で測定したもので、見やすいようにオフセットをつけてある。

LP振動の周期が8.0 mTなので、ネットワークの周期はa= 510 nmと見積もられる。これはほぼ 設計ど おりの値である。

8

7

6

5

4

R ()

-10x10-3 -5 0 5 10

B (T)

0.1 T 0 T -0.1 T -0.2 T Offset : 150 m

図4.13: T = 5.5 KでのLP振動の変調磁場による変化。各トレースは10 mT間隔。100 mTごとに 太くしてある。

#1のときと同様に 、変調磁場によってLP振動が変化していく様子がわかる。しかし 、#1と比 べるとノイズがかなり大きい。これは 、#2については温度の測定誤差(0.5 mK)がLP振動の振

幅(∼1 mK)に比べて無視できない大きさになっているからだと思われる。この程度の精度では転移

温度とHofstadter Butterflyとの定量的比較はできないので、#2については転移温度の測定は行わ

なかった。

電流電圧特性の測定のため、Bβの対応について考える。まず、ここに示した範囲の外側では LP振動の様子に変化は見られなかったので、βの変化するのは0.2 T< B <0.1 Tの範囲内であ る。そして、βが整数である場合に見られる、α= 01,· · ·のディップに比べてα=±1/23/2· · · のデ ィップが小さくなる、という特徴が見られるのはB = 0.04 T付近と−0.17 T付近だけである。

もし 仮にど ちらかがβ = 0だとすると、Bの向きによって得られる最大の磁場変調が変わることに なってし まい、不自然である。むしろ、この2つはそれぞれβ =±1に対応していて 、β = 01/2 はその間にあるもののの何らかの理由によって見えなくなっている、と考えるのが妥当であろう。

β =±1だけしか判別できなくなっている理由としては 、強磁性体が小さいために磁区構造ができ ていないということが考えられる。強磁性体にかける磁場を少しずつ変化させたときに図4.14のよう に磁化を連続的に反転させることができるのは、内部に磁区構造が形成されるためである。しかし 、 たとえば強磁性体が磁区の大きさよりも完全に小さいときはそういった磁区構造を形成できないため に磁化は図4.15のようにある磁場で突然反転する。#2において強磁性体ド ットが完全に単磁区構 造をとっているかはわからないが 、少なくともそれに近い状況になっていると考えられる。磁化が反 転するのに必要な磁場は強磁性体ド ットそれぞれで違うので、磁化の反転が起こる付近の磁場では強 磁性体の磁化の向きはランダムになっていると思われる。そのためにβ = 01/2といった状況が実 現できていないのだと考えられる。

一方、磁区構造ができている場合にはその境界からの漏れ磁場の影響も考えられる。単磁区構造を とっている場合には漏れ磁場は強磁性体の端からしか生じないが、磁区が形成されるとその境界から も漏れ磁場が生じ る。この漏れ磁場が影響しているということも十分に考えられる。

図4.14: 磁区を形成しているとき 図 4.15: 単磁区構造のとき

同様の測定を繰り返し 行ったが 、結果としては図4.13と同じようなものしか得られなかった。そ こで#2についてはある程度正確にβを定めることができたβ = 1、具体的にはB =−0.165 Tで の電流電圧特性をα= 0,0.5,0.618について調べた。

4.2.3 電流電圧特性

α= 0

電流電圧特性

10-9 10-8 10-7 10-6 10-5 10-4

V (V)

10-7 10-6 10-5 10-4 I (A)

5 K < T < 5.5 K

スケーリングプロット

100 102 104 106 108 1010

Rscl

10-6 10-4 10-2 100 Iscl

5 K < T < 5.5 K Tg = 5.25 K z = 2.8 n = 2

α= 0.5

10-9 10-8 10-7 10-6 10-5 10-4

V (V)

10-7 10-6 10-5 10-4 I (A)

5 K < T < 5.5 K

100 102 104 106 108 1010

Rscl

10-6 10-4 10-2 100 Iscl

5 K < T < 5.5 K Tg = 5.2 K z = 2.8 n = 2.1

α= 0.618

10-9 10-8 10-7 10-6 10-5 10-4

V (V)

10-7 10-6 10-5 10-4 I (A)

4.9 K < T < 5.4 K

100 102 104 106 108 1010

Rscl

10-6 10-4 10-2 100 Iscl

4.9 K < T < 5.4 K Tg = 5.1 K z = 2.8 n = 2.1

図4.16: #2の電流電圧特性とスケーリングプロット

図4.16が得られた電流電圧特性( 左)と、そこから作成したスケーリングプロット( 右)である。

αについては#1と同様に上から0,0.5,0.628である。どれもよくスケーリングされている。スケーリ ング指数についてもすべてほぼ同じ値であり、#1の場合と比べても大きな違いはない。おそらくは すべてのフラストレーションにおいて#1と同じVG型の相転移が起こっているものと考えられる。

前述のように、ウィークリンクネットワークはワイヤネットワークに比べて作製時に系が不均一に なる可能性が高い。もともとは磁束系の相転移をよりはっきり観測するためにウィークリンクネット ワークを作製したわけだが 、そのことが逆に系の不均一性を増大させてフラストレーションによる違 いを覆い隠してし まった。

5 章 結論

5.1 結果のまとめ

 チェッカーボード 型変調磁場の下でのLP振動については、変調成分の大きさの変化に伴うLP振 動の変化を観測し 、Hofstadter Butterflyの変調磁場による変化との定量的な比較をおこなった。そ の結果、全体的な特徴については良く一致することを確認できた。ただ、細かな構造については観測 できなかった。これは、フラストレーションの変化に伴う磁束配置の安定性の変化が系の不均一性に より打ち消されてしまったためだと考えられる。

また、電流電圧特性については、フラストレーションによらず同じような相転移を観測した。これ も、系の乱れによってフラストレーションによる個性が消失してしまったためと考えられる。

また、磁束系の相転移をよりはっきり観測するために、ウィークリンクネットワークを作製した。

当初の狙い通り各アイランドにおいてオーダーパラメータが発達する相転移とネットワーク全体の位 相がそろう相転移の2段階の超伝導転移が観測された。しかし 、電流電圧特性はやはりフラストレー ションによらず同じような連続相転移を示唆するものであった。

相転移のスケーリング指数については、#1、#2ともにz= 2.73, ν= 1.72.1という結果 を得た。この値はYuらの実験結果( 表2.1)においてVG型転移を観測していると考えられる場合 の値ともよく一致している。つまり今回観測された相転移は 、彼らの観測したものと同じ 、VG型の 相転移であると言ってよいだろう。逆に、YunらがJJAを用いて得た結果とはzが一致していない。

もし 、VG型転移における臨界指数zの違いが薄膜・ワイヤネットワーク・JJAといった系の違い に起因しているとすると、今回の結果からウィークリンクネットワークは少なくともVG型転移につ いてはJJAよりもワイヤネットワークに近いということがわかる。ウィークリンクネットワークと JJAとの間の最大の違いは各アイランド をつないでいるのが超伝導体か常伝導体かという点である。

そして、この違いによってzが違っているのだと考えられる。

この違いが具体的にどのように臨界指数の違いに効いているのかなど 、詳細についてはよくわから ない。いずれにしても理論・実験両面からの今後の更なる研究が期待される。

5.2 今後の課題

今回は系の不均一性を強く反映した結果が得られた。そこで今後の課題としては、何よりも系の均 一性を向上させることが挙げられる。

LP振動については定量的な比較をおこなうことができたので、平均場的超伝導転移についてはそ の空間変調磁場による影響を調べるという目的はある程度は達成できた。ただ、今後さらに詳細な比 較をおこなう場合には系の均一性をより高める必要がある。

一方で、磁束系の相転移については今回の実験では変調磁場による変化を調べるには至らなかった。

しかし 、今回のような電流電圧特性を用いた相転移の断定には常にある程度の主観的判断が伴うとい うことを認識しなければならない。たとえばある条件の下での測定からKT転移であると断定するた めには、KT転移の特徴を備えていることと同時に他の転移として解析してもうまく合わないことを 示さなければならない。しかし スケーリング解析はどの程度のずれまでが許容されるのかの定量的指 標がない。特に多数のパラメータを含むスケーリング解析では、ノイズの処理の問題もあり、いくつ かの異なるモデルが同程度に成立するように見えるというケースも起こりうる。つまり、あるモデル が成立しているかど うかをスケーリングを通して決定する作業にはある程度主観的な判断が伴ってし まい、絶対にKT転移であると断定できることは現実的にはほとんどない。

そう考えると 、それぞれのフラストレーションにおける結果について個別に議論するよりもフラ ストレーションの違いによる相転移の変化を調べることのほうが重要だと思われる。たとえばMooij

らの実験[11], [13]においてKT転移を観測したとする結論が説得力あるものになっているのは 、ユ

ニバーサルジャンプを観測しただけでなくそこからフラストレーションを少し変えた場合にそのユニ バーサルジャンプが消失することを示していることによっている。その意味でフラストレーションパ ラメータの違いによる相転移の様相の違いを観測することが肝要である。

本研究の目標もそこにあったわけだが 、残念ながらその明確な差異を観測するには至らなかった。

その最大の原因は、上述のように試料の均一性がよくなったということである。ただ、従来の一様磁 場に関する先行研究においても、フラストレーションによる違いを明確に観測した実験例はあまり多 くないことを考えると、電流電圧特性における系の均一性に対する要求はLP振動の場合に比べて相 当に高いことが予想される。強磁性体を用いることは確実に系の不均一性を増大させるので、今回の ような実験で十分な均一性を確保するのは非常に難しいと考えられる。

また、今回観測されたVG型転移については、従来の研究ではあまり注目されてこなかった。しか し 、今回の結果によって少なくともワイヤネットワークとウィークリンクネットワークに共通して見 られる相転移であることはわかった。そこで今後の課題はこのVG型転移と他の類似した相転移と の関係や、もしそれらが同一の相転移であるならそのzの違いはどこから来ているのか、などを調べ ることである。そのためには、いろいろな系(ワイヤネットワーク・ウィークリンクネットワーク・

JJA)における相転移を統一的に調べることが重要である。

以上を踏まえるとまずおこなうべき実験は 、いろいろなネットワークにおける磁束系の相転移の、

まずは一様なフラストレーションによる変化を調べる実験である。変調磁場の平均場的相転移に対す る効果については今回の実験によってある程度調べることができたので、今後は磁束系の相転移に焦 点を絞るべきである。そのためにはまず系の均一性を高められる一様磁場下での実験をおこない、そ の上でそこに変調磁場を加えた場合にどのような変化が生じるかを調べた方が 、より理解が深まると 考えられる。

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