第 4 章 結果と考察 27
4.1.3 電流電圧特性
β = 0,1/2の各場合について 、α= 0,0.618,1/2で測定をおこなった。
図4.8はβ = 0( 左)のときとβ = 1/2( 右)のときの電流電圧特性である。ただし 、ど ちらも上 から順にα= 0,1/2,0.618での結果である。どのグラフも、第2章で述べたVG型転移近傍での振舞 いによく似ている。
α= 0
β= 0
10-8 10-7 10-6 10-5
V (V)
10-7 10-6 10-5 I (A) 1.32 K < T < 1.47 K
β = 0.5
10-8 10-7 10-6 10-5
V (V)
10-7 10-6 10-5 I (A) 1.42 K < T < 1.53 K
α= 0.5
10-8 10-7 10-6 10-5
V (V)
10-7 10-6 10-5 I (A) 1.32 K < T < 1.47 K
10-8 10-7 10-6 10-5
V (V)
10-7 10-6 10-5 I (A) 1.42 K < T < 1.53 K
α= 0.618
10-8 10-7 10-6 10-5
V (V)
10-7 10-6 10-5 I (A) 1.32 K < T < 1.47 K
10-8 10-7 10-6 10-5
V (V)
10-7 10-6 10-5 I (A) 1.42 K < T < 1.53 K
図4.8: チェッカーボード 変調磁場中の#1の電流電圧特性
この相転移について調べるために、スケーリング解析をおこなった。図4.9は図4.8のデータを、
Iscl=I|T −Tg|−ν, Rscl = V
I |T −Tg|−νz (4.1)
とおきなおして作成したスケーリングプロットである。ただし 、グラフの配置は図4.8と同様である。
臨界指数については、第2章で説明した方法で求めたものを用いた。
α= 0
β = 0
104 106 108 1010 1012 1014
Rscl
10-6 10-4 10-2 100 Iscl
1.32 K < T < 1.47 K Tg = 1.418 K z = 2.8 n = 2
β = 0.5
102 104 106 108 1010 1012
Rscl
10-6 10-4 10-2 100 Iscl
1.42 K < T < 1.53 K Tg = 1.46 K z = 2.7 n = 1.7
α= 0.5
104 106 108 1010 1012 1014
Rscl
10-6 10-4 10-2 100 Iscl
1.32 K < T < 1.47 K Tg = 1.418 K z = 2.8 n = 2
102 104 106 108 1010 1012
Rscl
10-6 10-4 10-2 100 Iscl
1.42 K < T < 1.53 K Tg = 1.46 K z = 2.7 n = 1.7
α= 0.618
104 106 108 1010 1012 1014
Rscl
10-6 10-4 10-2 100 Iscl
1.32 K < T < 1.47 K Tg = 1.422 K z = 3 n = 2
102 104 106 108 1010 1012
Rscl
10-6 10-4 10-2 100 Iscl
1.42 K < T < 1.53 K Tg = 1.46 K z = 2.7 n = 1.8
図4.9: 図4.8のデータのスケーリングプロット
このグラフを見ると、まずβ= 1/2については、よくスケーリングされているといえる。β = 0に ついては高温相において少しずれが見られるが 、これはオーダーパラメータの振幅が完全に成長して いないために純粋に磁束系の相転移だけを調べることができていないため、という可能性がある。そ のことを考慮に入れれば 、よくスケーリングされていると考えて問題ないであろう。
スケーリング指数についてもそれほど 大きくは変わらないので 、ど のα, βについても同じような 連続的2次相転移を観測したといってよいだろう。
しかしこれは従来の研究とは矛盾したものである。従来の研究によれば 、少なくとも磁場をまった くかけないα=β= 0という状況下ではKT転移が起こる、というのが理論・実験ともに一致した結 論である。これに限らず理論的にはフラストレーションの違いにより転移の様子も変化するといわれ ているが 、今回の実験においてはそのようなフラストレーションによる個性というものはまったく見 られなかった。この原因としては、LP振動のときと同様に系の不均一性の影響が最も大きいと考えら れる。系の不均一性の影響は 、電流電圧特性のような動的な性質を調べる際により強くあらわれる。
そのためすべてのフラストレーションにおいて同じような相転移が観測されたのだと考えられる。
スケーリング指数は先行研究においてVG型転移が観測された場合の値に近いものとなった。系の 乱れが強いという事実とあわせると、今回観測されたのもVG型転移であると考えられる。
今回の試料について言えば 、系の乱れの原因としては強磁性体ド ットの位置のずれが最も大きなも のだと思われる。改善方法としてはネットワークの格子を大きくするという方法もあるが 、そうする とα= 1に対応する磁場が小さくなり、αの細かい制御が困難になってしまう。それよりは強磁性体 ド ットを大きくするほうが有効だと考えられる。強磁性体からの漏れ磁場は、理想的にはド ットの端 から出ているはずで、その端が超伝導細線から外れていれば強磁性体ド ットの位置のずれはそれほど 影響しないはずである。今回の試料は強磁性体ド ットの横幅が小さかったため、横方向のずれが大き く影響してし まったのではないかと考えられる。
また、ワイヤネットワークは各ノード でのオーダーパラメータの振幅の発達と系全体の位相コヒー レンスの発達が比較的近い温度で起こるので、純粋に磁束系の性質を調べるのに適しているとはい いがたい。磁束系の性質だけを調べるためには、ネットワークの各ノード でのオーダーパラメータの 発達する温度が系全体の位相コヒーレンスの発達する温度から離れているほうが望ましい。通常、こ のような目的にはJJAを用いるのが一般的である。しかし 、JJAは接合部分がすべて均質となるよ うに作製するのが難しく、系の均一性という点で不安が残る。そこで、各ノード で独立にオーダーパ ラメータが発達し 、しかもある程度系の均一性を実現できるような系として、#2のウィークリンク ネットワークを作製した。