• 検索結果がありません。

Kostant–Lusztig form と大域基底

ドキュメント内 Khovanov Lauda Rouquier Categorification, (ページ 76-80)

まず量子群のnegative partをZ[q, q1]上で定義しよう. これは量子群 のKostant–Lusztig formと呼ばれる.

定義 6.5.1. Uq(g)Z⊂Uq(g)をfi(n) (i∈I, n >0)で生成されるZ[q, q1] 部分代数とする.

これのウェイト空間を(

Uq(g)Z)

λ := Uq(g)Z Uq(g)λ で定義すると, Uq(g)Zも同様にウェイト空間分解

Uq(g)Z = ⊕

βQ+

(Uq(g)Z)

β

を持つ.( Uq(g)Z)

β が有限生成Z[q, q1]加群であることは自明である. 実は, 次の定理が成り立つ.

定理 6.5.2. (

Uq(g)Z)

β はZ[q, q1]上の自由加群であり, Q(q)線形空間 Uq(g)βのZ[q, q1]格子をなす.

この証明は略するが, あとに述べる大域基底の存在と密接に関連して いる.

そこでKostant–Lusztig formについても双対空間を以下で定義する.

定義 6.5.3.β Q+に対しウェイト空間ごとに双対を取り, その直和

を取ったものを

Uq(g)Z := ⊕

βQ+

(Uq(g))Z)

β, (Uq(g)Z)

β := HomZ[q,q−1]

((Uq(g)Z)β,Z[q, q1])

と書く. Q(q)⊗Uq(g)Z ≃Uq(g)なので, Uq(g)Z⊂Uq(g)と思える. こ れもZ[q, q1]格子をなす.

補題 6.5.4. Uq(g)Zei, fi(n)の作用で閉じている. またUq(g)Zei(n), fiの作用で閉じている.

Proof. Uq(g)Zfi(n)で閉じているのは定義から明らか. またeiの作用に ついても補題 6.2.2の交換関係から従う. Uq(g)Zについての主張はその 双対である.

次の補題は 定義から明らかである.

補題 6.5.5. β Q+u (

Uq(g))

β にたいして次の二条件は同値で ある.

(a) u∈(

Uq(g)Z)

−β, (b) ∑

k=1,rmkαik =βとなる任意のr Z0, mk Z>0, ik ∈I (1 k r) に対して

ei1(m1)· · ·eir(mr)u∈(

Uq(g)Z)

0. 従って次の命題が成り立つ.

命題 6.5.6. K ⊂Uq(g)ei(n), fiの作用で不変なZ[q, q1]加群で,次の 条件(a)–(c)を満たすとする.

(a) 重み分解K =βQKβ (Kβ:=K∩(

Uq(g))

β)をもつ.

(b) K0 =(

Uq(g)Z)

0.

(c) β Q+\ {0}, u (Uq(g))βとする. ei(n)u Kが任意のn Z>0

i∈Iに対して満足されれば, u∈Kである.

そのときK =Uq(g)Zである.

Uq(g)Zには大域基底と呼ばれる良い基底が定まることが知られている9. 定義 6.5.7. Q代数としてのinvolution : Uq(g) Uq(g)をq := q1, fi := fi によって定義する. またこれを用いて, : Uq(g) Uq(g)φ(u) = φ(u)で定義する. これらを量子群のbar involutionと呼ぶ.

注意 6.5.8. このbar involutionは内積による同型Uq(g) Uq(g) (命 題 6.4.6) では保たれない.

定理 6.5.9 (柏原 [Kas91, Kas93]). 次の条件(a)–(g)を満たすUq(g)Zの Z[q, q1] 加群としての基底B が唯一つ存在する. 以下bB の任意の 元10とし, εi(b) := max{k 0|eik= 0}とおく.

(a) Bはウェイト分解を持つ. すなわちBλ := B∩Uq(g)λとおくと, B =

βQ+Bβ.

9詳しくは柏原自身による解説[Kas95]を参照.

10通常の記法では大域基底の元はGup(b)Glow(b)などと書かれる.

(b) 1 ∈B. ここで{1} ⊂Uq(g)0{1} ⊂Uq(g)0の双対基底である.

(c) eib ̸= 0のとき, ˜eib ∈Beib= [εi(b)]ie˜ib+ ∑

b∈B, εi(b)<εi(b)1

Ebb(i)b (

Ebb(i) ∈qqi1εi(b)Z[q])

を満たすものが唯一つ存在する.

(d) ˜fib∈B

fib =qiεi(b)f˜ib+ ∑

bB, εi(b)<εi(b)+1

Fbb(i)b (

Fbb(i) ∈qqi εi(b)Z[q])

を満たすものが唯一つ存在する.

(e) ˜eif˜ib=b.

(f) eib ̸= 0ならばf˜i˜eib=b.

(g) b=b.

このBUq(g)Z の(上側)大域基底という. またこれの双対基底を Uq(g)Zの(下側)大域基底という. gのCartan行列が対称であるとき,下 側大域基底はLusztig [Lus90a,Lus90b]が幾何学的に構成した標準基底と 一致することが知られている(9.2節参照).

6.5.10.

A1型(g=sl2,I ={1})のとき,下側大域基底は{

f1(n) |n≥0} であ る. また上側大域基底は{qn(n1)/2f1n·1 |n≥0}と書ける.

A2型(g=sl3, I ={1,2})のとき, 下側大域基底は {f1(a)f2(b)f1(c), f2(c)f1(b)f2(a) |b≥a+c}

で与えられる. ただしb =a+cのときはf1(a)f2(b)f1(c) =f2(c)f1(b)f2(a) が成り立つ.

なお, このように単項式で下側大域基底が書けるのはA2型までである.

7NilHecke 代数の表現論

半単純Lie代数や量子群の表現論において,もっとも基本的なのはsl2Uq(sl2)の表現論である. したがって量子群のcategorificationを考えるに あたっても, まず考えるべきはsl2-caseである. この場合, 対応するKLR

代数はnilHecke代数と呼ばれる代数になっている. その性質と表現論を

調べよう.

7.1 定義と基本的性質

この章全体を通じてI = {i}はただ一つの元iからなるとし, A1型の ルート系を考える. I ={i}だからIn={(i, . . . , i)}も1元集合であり,し たがってRn =R(nαi)が成り立つ. A1型ルート系に付随するKLR代数 Rnは生成元x1, . . . , xn,τ1, . . . , τn1と関係式

xkxk =xkxk,

τkxl =xsk(l)τk if =k, k+ 1, τkxk+1−xkτk =xk+1τk−τkxk = 1,

τkτk =τkτk if |k−k|>1, τk+1τkτk+1 =τkτk+1τk,

τk2 = 0

で定義される代数であり, degxk =degτk = (αi, αi)により次数が定ま る. この代数をnilHecke代数という.

NilHecke代数では組紐関係式が厳密に成り立つため,τw:=τk1τk2· · ·τklwの最短表示w=sk1sk2· · ·skl Snの取り方によらずwell-definedで ある. 今の場合τk2 = 0なので

τwτw =

{τww if ℓ(ww) = ℓ(w) +ℓ(w), 0 if ℓ(ww)< ℓ(w) +w(w)

が補題2.3.3と同様にして成り立つ. またKLR代数の基底定理2.3.1は今

の場合

Rn= ⊕

wSn

k[x1, . . . , xnw となる.

Rnの多項式表現(定理 2.4.2)はnilHecke代数の場合Pn =k[x1, . . . , xn] となる. この作用はτkに差分商作用素kを対応させることに他ならない.

注意 4.2.4で注意したとおり, Pnは次数付きRn加群である. Rn加群と して

Pn ≃Rn/ (∑n1

k=1

Rnτk ) (7.1.1)

という同型がある.

またPnは忠実であるから,補題 2.4.3より次の交換関係が従う.

補題 7.1.1. 任意のf(x1, . . . , xn)∈Pnと1≤k ≤nに対し, Rnの中で τkf =sk(f)τk+k(f)

が成り立つ.

ドキュメント内 Khovanov Lauda Rouquier Categorification, (ページ 76-80)