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多項式表現と森田同値

ドキュメント内 Khovanov Lauda Rouquier Categorification, (ページ 80-87)

Rnの多項式表現(定理 2.4.2)はnilHecke代数の場合Pn =k[x1, . . . , xn] となる. この作用はτkに差分商作用素kを対応させることに他ならない.

注意 4.2.4で注意したとおり, Pnは次数付きRn加群である. Rn加群と して

Pn ≃Rn/ (∑n1

k=1

Rnτk ) (7.1.1)

という同型がある.

またPnは忠実であるから,補題 2.4.3より次の交換関係が従う.

補題 7.1.1. 任意のf(x1, . . . , xn)∈Pnと1≤k ≤nに対し, Rnの中で τkf =sk(f)τk+k(f)

が成り立つ.

(vi) bnはつぎの漸化式を満たす.

bn=τ1· · ·τn1·xnn1(

bn1e(i))

=τn1· · ·τ1·x2· · ·xn(

e(i)bn1) . (vii) Rnで次の等式が成り立つ.

bnτ1· · ·τn1(

bn1e(i))

=τ1· · ·τn1(

bn1e(i)) bnτn1· · ·τ1(

e(i)bn1)

=τn1· · ·τ1(

e(i)bn1) .

Proof. (i) は, 任意の1 k n−1に対しτkτwn = 0となることから 従う.

(vi) wn=s1· · ·sn−1wn−1より,

bn=τ1· · ·τn1τwn1x2x23· · ·xnn1

=τ1· · ·τn1xnn1τwn1x2x23· · ·xnn21

=τ1· · ·τn1·xn−1n (

bn1e(i)) を得る. 同様に, τwn =τn1· · ·τ1

(e(i)⊗τwn1

) より,

bn=τn1· · ·τ1

(e(i)⊗τwn1

)(x2· · ·xn)(x3x24· · ·xnn2)

=τn1· · ·τ1(x2· · ·xn)(

e(i)τwn1)

(x3x24· · ·xnn2)

=τn1· · ·τ1(x2· · ·xn)(

e(i)bn1) を得る.

(iv) nに関する帰納法で証明しよう. (vi)を用いれば, ∑n1

k=1Rnτkを法 として,

bn =τ1· · ·τn1·xnn1(

bn1e(i))

≡τ1· · ·τn1·xnn1

≡∂1· · ·∂n1(xnn1)

= 1

が成り立つ. 最後の等式はk(

xlk+1 +∑

j<lk[xk+2,· · · , xn]xjk+1)

xlk1 +∑

j<l1k[xk+1,· · · , xn]xjkから従う.

(iii) は, (iv)とτkτwn = 0から直ちに従う.

(ii) は(iii)から直ちに従う.

(vii) τwn =τ1τ2· · ·τn1wn1e(i))bnτwn =τwnより bnτ1τ2· · ·τn1(

bn1e(i))

=bnτwnx2x23· · ·xnn−12

=τwnx2x23· · ·xnn21

=τ1τ2· · ·τn1(

bn1e(i)) が成り立つ. 同様に

bnτn1· · ·τ1(

e(i)bn1)

=bnτwnx3· · ·xnn2

=τwnx3· · ·xnn2

=τn1· · ·τ1(

e(i)bn1) となる.

注意 7.2.3. ここでは証明を略するが, bk = τkxk+1とおくと, {bk}1k<n

は組紐関係式とb2k = bkを満たす. 従って, 任意のw Snに対して bw:=bk1· · ·bklwの最短表示w=sk1· · ·sklの取り方によらない. 実は, bn =bwnとなっている. 従って, bnbk =bkbn=bnが成り立つ. 補題 7.2.2 (ii), (v)はこれより直ちに従う.

補題7.2.2 (ii)より Rnbnは射影的Rn加群である.

補題 7.2.4. また射影的Rn加群Rnbnは次数付けも込めてPnと同型で ある.

Proof.

bn=xn11xn22· · ·xn−1τwn+ (τwについて低次の項)

と書けるので, 基底定理 定理 2.3.1 よりk線型空間としての同型Rnbn= Pnbn Pnが成り立つ. (7.1.1)とτkbn = 0によって, Rnbnは多項式表現 Pnと同型である. degbn = 0であるから, この同型は次数も保つ.

この表現Pn≃Rnbnを経由することにより, Rn加群をより簡単な代数 上の加群に翻訳して考えることができる. 必要となるのは以下の3つの補 題である.

補題 7.2.5. RnbnRn=Rnが成り立つ.

Proof. 補題 7.2.2 (iii)により1 RnτwnRnを示せばよい. 以下これをn に関する帰納法で示す. n = 0,1のときは自明なのでn > 1とする. まず 1≤a ≤n−1のとき

xnτwn1τn−1· · ·τa=τwn1xnτn−1· · ·τa

=τwn1n1xn1+ 1)τn2· · ·τa

=τwn−1τn1xn1τn2· · ·τa

=τwn−1τn1n2xn2+ 1)τn3· · ·τa

· · ·

=τwn1τn1· · ·τa+1axa+ 1)

が従う. これより τwn−1τn1· · ·τa+1 Rnτwn−1τn1· · ·τaRn が言えた.

この主張をa = 1,2, . . . , n 1と順番に使うことで, 最終的に τwn1 RnτwnRn を得る. τwn = τwn1τn1· · ·τ1に注意せよ. 帰納法の仮定より, 1∈Rnτwn−1Rn⊂RnτwnRnとなる.

Snを対称多項式環Sn:=k[x1, . . . , xn]Snとおく. 補題 2.6.4に見たよう に, SnRnの中心と一致する.

補題 7.2.6. 次数付きk代数の同型EndRn(Pn)Snが成り立つ.

Proof. φ∈EndRn(Pn)とする. φRn加群の準同型だから, 特に任意の 多項式f(x1, . . . , xn) Pnに対しφ(f) = f φ(1)が成り立つ. よってφの 値はφ(1)のみで決まっている. さらに任意のk= 1, . . . , n1に対し,

0 =φ(0) =φ(τk·1) = τk·φ(1)

が成り立つ. τkPnに差分商作用素として作用するので,これはφ(1)が 対称多項式であるという事に他ならない. よってφ(1)∈Snが成り立つ.

逆に, 対称多項式f(x1, . . . , xn)Snが与えられれば,φ(g) :=gfと定め ることでφ EndRn(Pn)が定まる. 故に求める同型EndRn(Pn) Snを 得る.

PnはSn加群として有限生成かつ自由であることは良く知られた事実 であるが, ここでは具体的にSchubert多項式と呼ばれるものが基底とな ることを示すことによって証明しよう.

定義 7.2.7. w Snに対しv :=w1wnとおき, Schubert多項式Sw k[x1, . . . , xn]を

Sw:= (1)ℓ(v)τv(xn11xn22· · ·xn−1) で定義する.

その性質をいくつか述べる.

補題 7.2.8. Schubert多項式Swは次の性質をもつ.

(i) w∈Snに対し, Swℓ(w)次の斉次多項式である.

(ii) u, v Snに対し, w=uvとおくと (1)ℓ(v)τv·Sw =

{Su if ℓ(w) = ℓ(u) +ℓ(v), 0 otherwise.

(iii) m ≤nに対し, wmをSmの最長元とするとき, Swm =xm−11 xm−22 · · ·xm1. 特にSwは埋め込みSm ,→Snの下で不変である.

(iv) ℓ(v) ℓ(w)を満たす任意のv, w∈Snに対し, (1)ℓ(v)τv·Sw =δvw が成り立つ.

Proof. (i), (ii)は定義から明らか. (iii)はτwn =τwn1τn1· · ·τ2τ1より ((−∂n1)· · ·(−∂2)(−∂1))

·(xn11xn22· · ·xn1)

=xn12xn23· · ·xn2 (7.2.1)

から従う. これらを用い (iv)を示す. もしℓ(v) > ℓ(w)ならば, vSw は次数が負になるので, 0になる. 一方ℓ(v) = ℓ(w)とすると, ℓ(w) = ℓ(v) +ℓ(wv1)を満たすのはv =wのときに限るため,

(1)ℓ(v)vSw =

{S1 = 1 if v =w,

0 otherwise

となる.

補題 7.2.9. PnはSn加群として有限生成かつ自由である. またその基底 としてSchubert多項式{Sw |w∈Sn}が取れる.

Proof. まずSwたちの一次独立性を示す. f =∑

wSnfwSw (fw Sn)と おき, f = 0となったとする. w∈ Snとするとき, もしℓ(v) > ℓ(w)に対 しfv = 0であれば

0 = wf = ∑

vSn

ℓ(v)ℓ(w)

fv(∂wSv) = (1)ℓ(w)fw

となる. よって帰納的に任意のw∈Snに対しfw = 0となる.

続いてPnSwたちで生成されることを示す. f ∈Pnを勝手な多項式 とする. N =ℓ(wn) + 1とおき,多項式の列fN, fN1, . . . , f0 ∈Pn

fN :=f, fk:=fk+1

wSn

ℓ(w)=k

(1)ℓ(w)(∂wfk+1)Sw

で定める. 特にf0 =f1−f1 = 0である. したがってここに現れる各係数

wfℓ(w)+1がSnの元であれば, fSwたちのSn一次結合で書けたことに

なる. そこで, 任意のw Snに対しℓ(w) =k−1であればwfk Snと なることを,kについて上から帰納法で示そう. これはℓ(w) =kであれば

wfk = 0を満たすことと同値である. まずk =Nでは自明である. 次に k+ 1でこれが正しいとすると, 補題7.2.8 (iv)よりℓ(w) = kのとき

wfk =wfk+1

ℓ(v)=k

(1)ℓ(v)(∂vfk+1)(∂wSv) = wfk+1−∂wfk+1 = 0

となる. これで命題が確かめられた.

以上をまとめて, 次の定理を得る.

定理 7.2.10. RnとSnは森田同値である. すなわち, 圏同値Rn-gMod Sn-gModが

Rn-gMod−−→Sn-gMod, Sn-gMod −−→Rn-gMod M 7−→bnM, N 7−→PnSnN

で与えられる. さらに, この圏同値はRn-gmod Sn-gmodとRn-gproj Sn-gprojを誘導する.

これは次の一般的な定理から直ちに得られる.

定理 7.2.11. Aを次数付環, e∈A0をその冪等元(すなわちe2 =e)とす る. さらに

A=AeA を仮定する. そのとき

A-gMod−−→(eAe)-gMod, (eAe)-gMod−−→A-gMod

M 7−→eM, N 7−→Ae⊗eAe N

は互いに準逆(quasi-inverse)11である.

Proof. 任意のM ∈A-gModに対して

eM ≃eA⊗AM (7.2.2)

となることは明らかである. 従って

eA⊗AAe−→∼ eAe, (7.2.3)

Ae⊗eAeeA−→∼ A (7.2.4)

をいうとよい. (7.2.3)は, (7.2.2)から従う.

掛け算がひきおこすA両側加群の準同型φ: Ae⊗eAe eA −−→ A が同 型をいおう. 仮定より, あるn 1, ak, bk A (1 k n) があって 1 =∑n

k=1akebkを満たす. ψ: A→Ae⊗eAeeAψ(x) =n

k=1xake⊗ebk で定義する. φψが互いに逆であることを示せば良い.

x, y ∈Aに対して, φψ(x) = φ(

n k=1

xake⊗ebk) =

n k=1

xakebk =x であり,

ψφ(xe⊗ey) =ψ(xeey) =

n k=1

xeeyake⊗ebk

=

n k=1

xe⊗(eyake)ebk=xe⊗ey である.

11C,Cを圏とする. 関手F:C C, G:CC が互いに準逆とはF GidC, GFidC となることである.

7.2.12. Rn加群としての直和分解 Rn = ⊕

wSn

PnτwnSw が成り立つ. また右辺の直和成分はPn⟨(

ℓ(wn)−ℓ(w))

i, αi)⟩

と同型で ある.

Proof. 森田同値によりSn-gprojに移して考える. bnRn = τwnPn に補 題 7.2.9を適用すればよい.

ドキュメント内 Khovanov Lauda Rouquier Categorification, (ページ 80-87)