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年次報告

マシュー・D・マクマレン

Matthew D. McMullen

はじめに

こ こ で は2019年 度 に お け るJapanese Journal of Religious Studiesの出版活動報告を 行う。内容としては、刊行物の目次一覧や オンライン論文についての近況報告、今後 の活動計画に関する覚書を含む。

Japanese Journal of Religious Studies(以下 JJRS)は、国際的な英語雑誌として、日本 と宗教に関する研究論文を公刊することを 目的としている。JJRSの前身は、1960年 に国際宗教研究所 (International Institute for the Study of Religions)によって創刊された Contemporary Religion in Japanで、この雑誌 は国内外を問わず多くの人々が日本宗教に ついて理解を深めることに貢献した。1974 年、デイヴィッド・リードがわずかな休止 期間を経て雑誌を復刊させるときに、日本 の宗教に関する学識の拡大を受け、誌名を 改めることとなった。JJRSはその後、1981 年に現在の発行元となる南山宗教文化研究 所に移ったのである。

今年、ポール・L・スワンソンは編集主 幹としては史上最長の就任期間を経て、30 年以上にも及ぶ雑誌の統括責任者の地位か ら退いた。JJRSと日本研究に携わる者と して、本誌と宗教研究への彼の比類なき貢 献に私は心から感謝の言葉を捧げたいと思

である。2019年4月から2020年4月までの 間に、JSTOR上では58,223回JJRSの論文が 閲覧されており、そこから25,927本がダウ ンロードされている。

JJRSを定期的に読む場合に、読者の多く はNIRCのウェブサイトに直接アクセスし て論文をダウンロードするのだが、ここで

の数値はDOIやJSTORの結果を反映してい

るわけではない。また、当然ながら紙媒体 で雑誌を読む場合についても、オンライン での参照度をその合計に含めることはでき ない。したがって、我々が断言できるのは、

JJRSの論文が2019年度に、オンライン上で

最低でも102,840回閲覧されダウンロードさ

れたということのみである。

ところで、2019年のJJRSは、二冊とも粒 ぞろいの論文集となった。どちらも特集号 ではないが、ハワイの神社について、16世 紀のイエズス会病院について、江戸時代に おける制度としての修験道についてなど、

さまざまな研究テーマが集まり特色が出て いる。またそれぞれが、日本宗教の研究に 関する最新の書評を含んでいるので、詳細 は以下の目次一覧を参照されたい。JJRSは 過去現在を問わず全ての論文が閲覧可能で あり、南山宗教文化研究所のウェブサイト から誰でも自由にダウンロードすることが できる。

JJRS の今後について

JJRSは投稿論文を先着順に審査しており、

他誌がしているように提出期限を設けてい

ないが、直近では2021年春まで誌面が埋ま っている。したがって、これから提出され たものを査読できるのは2021年秋以降にな るが、これもすぐさま投稿枠が無くなる模 様だ。

そして、現在我々は特集号を準備してい るのだが、JJRSでは概して年に一冊は特集 号を組むことにしていて、ゲストで招いた 編集者に日本の宗教に関する具体的な特集 テーマを決めてもらってきた。今年のテー マは中世日本における秘教の伝統を掲げて おり、僭越ながら筆者が編集責任者を務め ている。そこでは秘教の継承と概念に関す る諸論文に特化することで、日本における 正統的な「密教」伝統を定義する試みに焦 点を当てることになった。2021年の特集号 については、現在申し込みを受け付け中で あるため、どなたかご提案があれば、ぜひ ともご教示願いたい。

ちなみに、最新号からは南山宗教文化研 究所のウェブサイトでJJRSのどの特集号も 単一のPDFファイルでまとめてダウンロー ドすることが可能となるので、読者は冊子 で読むときと同じようなやり方で誌面を通 読できるはずである。さらに、新規に刊行 するものについてはeBook形式での運用も 検討中であり、今後みなさまにはご自分の デバイスやアプリケーションに適した新し い読み方を提供できるのではないかと考え ている。

マシュー・D・マクマレン 南山宗教文化研究所第一種研究所員

vol. 46 (2019) の目次

no. 1 articles

1 Religion and Secularism in Overseas Shinto Shrines A Case Study on Hilo Daijingū, 1898–1941

Karli Shimizu 31 Traversing the Nenbutsu

The Power of Ritual in Contemporary Japanese Buddhism Gwendolyn Gillson

53 Relying on Words and Letters

Scripture Recitation in the Japanese Rinzai Tradition Erez Joskovich

79 The Jesuit Hospital in the Religious Context of Sixteenth-Century Japan James Fujitani

103 The Robe of Leaves

A Nineteenth-Century Text of Shugendo Apologetics George Klonos

Research note

129 Violence and How to Recognize Perceptual Bias Reflections on Twenty Years of Research Inoue Nobutaka

reviews

137 Frédéric Girard, Les dialogues de Dōgen en Chine Didier Davin 140 Mitsutoshi Horii, The Category of ‘Religion’ in

Contemporary Japan: Shūkyō and Temple Buddhism Masato Kato 145 Jason Ā. Josephson-Storm, The Myth of Disenchantment:

Magic, Modernity, and the Birth of Human Sciences Esben Petersen 149 Contributors

no. 2 articles

151 Finding a Place for Jizō

A Study of Jizō Statuary in the Buddhist Temples of Sendai Alīse Eishō Donnere

173 Chōgen’s Vision of Tōdaiji’s Great Buddha as Both Mahāvairocana and Amitābha

Evan S. Ingram 193 From Marxism to Religion

Thought Crimes and Forced Conversions in Imperial Japan Adam Lyons

219 The Fall Peak, Professional Culture,

and Document Production in Early Modern Haguro Shugendo Frank Clements

247 Buddhist Networks: The Japanese Preparation for the World’s Parliament of Religions, 1892–1893 Aihua Zheng

277 Ōnamochi

The Great God who Created All Under Heaven Richard Torrance

reviews

319 Duncan Ryūken Williams, American Sutra: A Story of Faith and Freedom in the Second

World War George Tanabe

323 Erica Baffelli and Ian Reader, Dynamism and the Ageing of a Japanese ‘New’ Religion:

Trans-formations and the Founder Inken Prohl

326 Richard K. Payne, Language in the Buddhist Tantra of Japan: Indic Roots of Mantra Ralph H. Craig III

329 Melissa Anne-Marie Curley, Pure Land, Real World: Modern Buddhism, Japanese Leftists,

and the Utopian Imagination Michael Conway

332 Levi McLaughlin, Soka Gakkai’s Human Revolution: The Rise of a Mimetic Nation in Modern

Japan James Harry Morris

336 Edward R. Drott, Buddhism and the Transformation of Old Age in Medieval Japan

Ethan Bushelle

notes on recent edited volumes on japanese religions

340 Karen M. Gerhart, ed., Women, Rites, and Ritual Objects in Premodern Japan 341 Fabio Rambelli, ed., The Sea and the Sacred in Japan: Aspects of Maritime Religion 341 Fabio Rambelli, ed., Spirits and Animism in Contemporary Japan: The Invisible Empire 343 Orion Klautau, ed., Sengo rekishigaku to Nihon Bukkyō 「戦後歴史学と日本仏教」(Postwar

Historiography and Japanese Buddhism)

343 Ōtani Eiichi 大谷栄一, Kikuchi Akira 菊池 暁, and Nagaoka Takashi 長岡 崇, eds., Nihon shūkyōshi no kīwādo: Kindaishugi o koete「日本宗教史のキーワード―近代主義を超えて」 (Key-words in the History of Japanese Religions: Beyond Modernism)

Paul L. Swanson 345 Contributors

大谷栄一(佛教大学)

昨年(2019年)4月、編著『ともに生き る仏教──お寺の社会活動最前線』(ちくま 新書)を出版いたしました。貧困問題、子 育て支援、アイドル育成、演劇活動、NPO との協働、終活、グリーフケア、ビハーラ などの「お寺の社会活動」を、活動の当事 者(僧侶)と研究者が協力して作り上げた 本です。

また、昨年8月に単著『日蓮主義とはな んだったのか──近代日本の思想水脈』(講 談社)と、今年(2020年)3月に単著『近 代仏教というメディア──出版と社会活動』

(ぺりかん社)を刊行することができました。

前者は、「日蓮主義」という近代仏教思想が 近代史の中で果たした役割を明らかにした 作品で、四半世紀以上にわたり調査・研究 に取り組んできた成果をまとめたものです。

後者は、近代仏教とメディア、アジア、平 和運動、社会活動の関係に関する論考を集 めた論文集です。

教育面では、例年同様、昨年度も学部の 3回生ゼミで京都の祭り(とイベント)の フィールドワークを行いました。京都府南 丹市美山町鶴ケ岡地区の上げ松、京都市伏 見区御香宮神社の例大祭、京都市上京区 大将軍商店街の一条百鬼夜行を調査し、そ の成果は『佛教大学社会学部現代社会学科 2019年度大谷ゼミ調査報告書 京都の祭り をフィールドワークする⑥』(全32頁、非 売品)にまとめました。

宗文研のみなさまには、今後ともよろし

くお願い申し上げます。

川上恒雄(PHP研究所首席研究員)

皆さま同様、3月から基本的に在宅勤務 の体制に入り、リモートワークの日々です。

管理職をやっていることもあり、オンライ ン会議やチャット、メールの対応に一日中 追われ、自分の仕事をほとんど進めること ができないという悪循環に陥っています。

さらに、講師を務めるセミナーやイベント はすべて延期となって収入が激減する半面、

労力は多いけれどもあまり収入にならない 定期刊行物への寄稿は延期になってくれず、

なかなかストレスフルな日々を送っていま す。本誌が出るころには、外で仕事ができ る状態に戻っていることを願っています。

ここ数年は実務の傍ら、経営や商売の宗 教的側面を研究しており、その成果を、学 術研究者(主として経営学者)を招いた社 内研究会や刊行物などで発表しています。

具体的には明治後半から昭和初めまでの日 本の商業精神に関する小論を、(コロナで遅 れて)来年に出版できる見込みです。一方で、

老舗企業に関するシンポジウムの開催を進 めており、昨年秋には埼玉県の浦和で行い、

本年は秋に大阪と東京で開催する予定です。

もっとも、これも延期になるかもしれず、

経験不足のオンラインセミナーをいかにう まくできるようになるかが、私にとっての 目下の課題であります。

旧師旧友

内藤理恵子

(南山宗教文化研究所非常勤研究員)

最近の研究テーマは (1)昨年度に引き続 き終活関連事業調査、(2)死に関する哲学全 般です。(2)に関しては、2019年8月に単著

『誰も教えてくれなかった「死」の哲学入門』

を出版いたしました。ご一読いただければ 幸いです。今後ともよろしくお願いします。

<論文>

「さまざまな墓地のかたち」、智山ジャー ナル第91号、36~43頁、2020年2月。

「葬儀と供養の心を守るためには」、智山 ジャーナル第90号、34~41頁、2019年11月。

「葬送儀礼はどこに向かうのか」、智山ジ ャーナル 第89号、32~39頁、2019年6月。

<その他>

「合祀などで粉骨される遺骨の尊厳を守る ためには」、日本石材工業新聞、2019年10月。

「東日本大震災復興記念庭園における石材 の意味とは」、日本石材工業新聞、2019年 10月。

「第5回エンディング産業展レポート」、

日本石材工業新聞、2019年9月。

他多数。

<単行本>

(単著)『誰も教えてくれなかった「死」

の哲学入門』、日本実業出版社、2019年8月。

以上。

寺尾寿芳(上智大学大学院実践宗教学研究 科死生学専攻教授)

気候温暖にして物価も安く、なにごとに つけても住み心地の良かった松山を離れ、

万事が慌ただしく、かつお金がかかる東京 に移って、早くも一年が経ちました。この 間、ろくに研究は進まず、総じて教育に軸 足を置いてきました。それは日々授業に追

われるという現実の厳しさゆえのこの惨状 を示すものでありますが、他方で「アラ還」

の身としては、そろそろ自らの「店じまい」

も念頭に置きつつ、若い人たちや切実な問 題意識を抱く人たちに対して、わずかとは いえ神学や宗教学の重要性を伝えていくこ とに己の役割を見出すようになったからで もあります。

この方向転換により、若いころのように ひたすら最前線を追いかけるのではなく、

むしろ自身の学びにおいても、また身の置 き所となっている学問領域においても、基 本に立ち返るという穏便な発想に至りまし た。たとえば死生学として「死者と生者の 交わり」という課題を探求してきましたが、

ここにきて一見して古臭い「人格」(persona)

へ再び目を向けるようになりつつあります。

私自身が(制度上は)神学専攻の出身者で ありながらも、従来この手の神学っぽい概 念にアレルギーがあったのですが、消えゆ くのみの老兵からの置き土産として、神学 から宗教学へ向かう「橋渡し」の一例くら いは残しておきたいと念じております。

ともあれ、新型コロナウイルス騒動をはじ めあれやこれやで仕事の現場は混乱を極め ており、今年度もどうなるものやら皆目見 当がつきませんが、なんとか生き延びてま いりたいと思います。旧師旧友の皆様から あらためてご指導ご鞭撻をいただきたく存 じます。よろしくお願い申し上げます。

南無インマヌエル

髙橋勝幸

(元南山宗教文化研究所非常勤研究員)

「キリシタン史」が軽んじられていない か」。昨年であるが、そんな素朴な疑問が出 てきた。日本で何故キリスト教がマイノリ ティーなのか、それは欧米中心の思考では

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