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mg/g-基質 mg/g-基質

図 2.3.3.2(3)-2 F1364 導入株、JNK26 株の酵素生産性評価

F1364 高発現株の構築を行った。親株には酵素生産性を考慮し JN13 株を用い、人工プロモー ターに F1364 の ORF を接続した遺伝子を形質転換した。形質転換体は複数株取得し、JNK26-9,16, 19, 20 の 4 株を選抜した。

選抜した株に関してはジャーファーメンターを用いて酵素生産性評価を行った。その結果を 図 2.3.3.2(3)-2 に示した。JNK26-9 は培養に遅れが、JNK26-16 は低生産性が確認された。こ れに対し、JNK26-19 では JN13 株と同等の生産性が、JNK26-20 では高生産性が確認された。

JNK26-19、20 の 2 株に関して、酵素組成解析を行った。その結果、JNK26-19 では F1364 が約 15%、JNK26-20 では約 30%含有されていることが確認された。 JNK26-19 に関しては F1364 の 含有量が適当な範囲に収まっており高糖化性が期待される株として選抜した。以下、JNK26-19 株を用いて更なる検討へと進めることとした。

(3)-2 革新的糖化酵素工業生産菌候補株 JN30 の構築(長岡技大、JBA)

a)目的

各研究課題において酵素の生産性向上因子、糖化性能向上因子を評価し、JN13またはJNK26を ベースに各因子の評価を行ってきた。これら因子の中で向上因子と認められた因子については 高機能糖化酵素生産菌構築に利用し、工業用に適した菌株の造成を目指す。

b)方法と結果

研究開発2.3.3.2 (1)-6にて生産性の向上が認められたJN13Δ

cre1

株を用いて、研究開発 2.3.3.2 (1)-8で生産性向上が認められた

sre1

の破壊および糖化能力を向上させるキシラナーゼ F1364を人工プロモーターを用いて導入した。得られた株は1%Avicel + 0.2%Xylan培地を用いフ ラスコ培養後、タンパク質生産性および活性を指標にスクリーニングを行い、

JN13Δcre1Δsre1 +F1364 (JN30) 株を得た。

0 5 10 15 20

0 24 48 72 96 120 144

PC-3-7 JN13 JNK26-9 JNK26-16 JNK26-19 JNK26-20

培養時間(h)

タンパク質量(g/L)

図 2.3.3.2(3)-3 JN13 株および JN30 株の評価 1% Avicel フラスコ培養上清のタンパク質定量(A)、

キシラナーゼ活性(B)、糖化率(C)

糖化評価は酵素 2mg/g バイオマス、アルカリバガス(ロッ ト No. B67)、5%スラリーを用い、50℃で行い、1 時間(1H)、

3 時間(3H)、24 時間(24H)、72 時間(72H)反応サンプルについ て還元糖量を測定

JN30株をフラスコ培養にて評価した結果、親株であるJN13株と比較して生産性が10 % 増加し

(図2.3.3.2(3)-3A) 、キシラナーゼ活性が1.6 倍に向上した(図2.3.3.2(3)-3B)。また、

アルカリバガスを用いた糖化評価においては糖化24時間反応にてJN13と比較し糖化率を約20 % 向上させることに成功した(2.3.3.2(3)-3C)。

JN13株を出発菌株にこれまで造成したJN13Δcre1 株、JN13Δcre1Δsre1 株、JN30株につい てJBAにて10% Avicelジャー培養評価を行った結果、JN13Δ

cre1

株の生産性はJN13 株に比較し て約20 % の向上が認められた。さらに、

sre1

を破壊したJN13Δ

cre1

Δ

sre1

株およびF1364 を 導入したJN30 株へと改変に伴いその生産性を向上させることに成功した。

(3)-3 革新的糖化酵素工業生産菌候補株 FV21 の構築と生産性評価(花王)

a)目的

酵素高生産化のため変異育種により、PC-3-7 株から PCD-10 株、さらに高生産・高グルコース 耐性の 93G3 株が取得された。JNK25 株、JNK26 株のように新規キシラナーゼ F1364 を組換える ことで顕著に糖化性が向上することが明らかとなり、AaBGL 及び F1364 の導入が糖化性能向上に おいて重要であることが示されてきた。しかし JNK25 株、JNK26 株の生産する酵素は高い糖化性 能を持つ一方、宿主としての酵素生産性が低いという課題があった。

そこで現状の菌株・酵素技術を統合し、F/S を実施する際のプロトタイプ菌株として高生産・

高糖化活性の酵素生産宿主開発を行った。

b)結果と考察

SDS-PAGE により AaBGL 及び F1364 の発現が確認された株に関し、250 mL 容ジャーファーメン ターを用いた生産性評価を実施した。93G3 系列では 2 日目時点での生産性は高い傾向があり、

特に FV21 では生産量が高かった。FV21 株のように酵素生産の初速が速いこと、すなわち培養

フェーズが速いことは優位点となる。1%植菌時は 10%植菌時と比較して酵素生産開始の遅れが課 題であるが、93G3-FV21 株ではその影響を減少させることができ、全体の培養期間の短縮に繋が る可能性が考えられた。

図 2.3.3.2(3)-4 プロトタイプ菌株の糖化性評価

続いて JN24 株及び JNK26 株と、今回構築した生産性の上位 3 株の糖化性評価を実施した。

F1364 未導入の JN24 株と比較し F1364 導入株(JNK26 株、93G3-FV6, 18, 21 株)は高い糖化性 を示した。93G3 系列の株は JNK26 株と比較し同程度の高い数値を示した(図 2.3.3.2(3)-4)。

FV21 株と、JN 株をベースとした菌株の生産性比較を工業化用モデル培地で行うことで実生産 への適応性を評価した。

図 2.3.3.2(3)-5 工業化用モデル培地を用いた生産性評価(2L 容ジャーファーメンター)

モデル基質における培養評価では FV21 株と JN24 株に大きな生産性の差はなかったが、安価 工業化培地においては顕著な生産性の差が確認され、FV21 株が他の株を大きく上回ることが分 かった。

以上のことから FV21 株の生産性に優位性が確認された。そこで、FV21 株を用いてスケール アップ検討を行うこととした。

(3)-4 パイロット候補株の糖化性能評価(JBA)

a)目的

パイロット候補として高生産培養された JN30、JNK26 No.19、FV21 の培養上清の糖化率を算 出し、高生産培養に適した株を選出した。また、成分酵素を添加し糖化反応を行うことによっ て、其々の株が発現する酵素の不足を明らかにした。また、それらの糖化反応液を陰イオン交 換クロマトグラフィーによって分析し、残存するオリゴ糖から不足成分酵素を解明した。

b)方法と結果

アルカリ処理バガス(ロット No. B67)5wt%を用いて、パイロット候補の工業用生産酵素

(JN30、JNK26 No.19、FV21)2.0 mg/g-BM を用いて糖化評価を行った。其々の工業用生産酵素 には、AaBGL1 または BXL が 0、2.5、5、7.5、10%(0.05、0.1、0.15、0.2mg/g-BM)が追加で 添加され、生成する単糖やオリゴ糖は酵素電極または陰イオン交換クロマトグラフィー

(Dionex ICS-3000)によって分析された。

図 2.3.3.2(3)-6 パイロット候補株 糖化率の比較と AaBGL1 の添加効果 JN30(左)、JNK26 No.19(中央)、FV21(右)

図 2.3.3.2(3)-7 パイロット候補株 残存糖の種類と量

3 つのパイロット候補株のうち、JNK26 No.19 が最も高い糖化率を示した(図 2.3.3.2(3)-6)。また、AaBGL1を添加した結果、JN30、JNK26 No.19、FV21 のいずれにおいても 5%でグル コース糖化率が飽和状態となった。一方、BXL の添加に対しては、JN30 では 5%、JNK26 No.19 では 10%でキシロース糖化率が飽和状態に達したが、FV21 では 10%添加時まで、添加 BXL 濃度に 準じてキシロース糖化率が上昇し続けた(図 2.3.3.2(3)-7)。これらの結果より、其々のパ

20 25 30 35

0 2.5 5 7.5 10

濃度[mg/mL]

AaBGL添加割合(%)

JN30

5 6 7 8

0 2.5 5 7.5 10

20 25 30 35

0 2.5 5 7.5 10

濃度[mg/mL]

AaBGL添加割合(%)

JNK26 #19

5 6 7 8

0 2.5 5 7.5 10

20 25 30 35

0 2.5 5 7.5 10

濃度[mg/mL]

AaBGL添加割合(%)

FV21

5 6 7 8

0 2.5 5 7.5 10

イロット候補株によって生産される酵素は、AaBL1、BXL のいずれも増量により性能向上する事 が示唆された。糖化率向上の為には、更なる AaBGL1、BXL の発現強化が求められた。

(3)-5 変異 AaBGL 導入株の構築と評価(花王) a)目的

前項までに高機能酵素の高生産株として FV21 株を構築したが、更なる糖化性能の向上を目指 して JBA において増強すべき成分酵素の解析を実施したところ、BGL 及び BXL が不足しているこ とが示唆された((3)-4)。FV21 株の AaBGL は、ジャーファーメンターで酵素生産を行った際に 培養後半で一部分解してしまうことが明らかとなってきた。また、このような AaBGL の分解が、

フラスコ培養で作製した酵素と比較してジャーファーメンターで作製した酵素の糖化活性が低 下する一因であると推察され、分解されにくい AaBGL の発現強化が有効であると考えられた。

そこで、(2)-3、(2)-4、(2)-5 で改良した高機能型 AaBGL を組み込んだ菌株の構築を実施し糖化 性能の向上を目指した。

b)方法と結果

野生型の AaBGL を持つ FV21 株に対し相同組換えを行うことにより、変異を導入した AaBGL へ と置換した株を作製した。本 AaBGL はジャーファーメンターを用いた培養でも大きな分解が見 られなかったことから、ジャー培養作製酵素における糖化性の低下を抑えられる可能性が予想 された。

(3)-6 パイロット候補株 BGL、BXL 強化株の評価(JBA)

a)目的

パイロット候補株の糖化性能評価において、そのいずれの酵素において AaBGL1 や BXL の増量 が性能向上を示した。そこで、本検討では、FV21 を元に AaBGL1 または BXL の発現強化株や、

AaBGL1 の変異体の導入によって得られた、変異 AaBGL1 の発現(強化)株によって得られた酵素 を用いた糖化評価を行った(表 2.3.3.2(3)-1)。

b)方法と結果

アルカリ処理バガス(B67)5wt%にて糖化評価を行った。

表 2.3.3.2(3)-1 AaBGL1・BXL 強化株リスト

宿主株 改変 フラスコ培養 ジャー培養

FV21 No.1 No.5

FV21改良株1 (変異体BGL強化) No.2 No.6 FV21改良株2 (変異体BGL強化) No.3 No.7 FV21改良株3 (変異体BGL強化) No.4 No.8 FV21改良株4 (BGL強化) No.9 No.15 FV21改良株5 (BGL強化) No.10 No.16 FV21改良株6 (変異体BGL強化) No.11 No.17 FV21改良株7 (変異体BGL強化) No.12 No.18 FV21改良株8 (BXL強化) No.13 No.19 FV21改良株9 (BXL強化) No.14 No.20

図 2.3.3.2(3)-8 FV21 の AaBGL1、BXL 強化株酵素(Flask 培養)による糖化反応の評価

図 2.3.3.2(3)-9 FV21 の AaBGL1、BXL 強化株酵素(Jar 培養)による糖化反応の評価

FV21AaBGL 強化株においては、フラスコ培養の株 6 株、BXL 強化株では 1 株でホロセルロース 糖化率が 80%を超えた。一方で、ジャー培養での酵素による糖化では、2 株で WT の FV21 を超え たが、いずれも 80%には至らなかった。これは、培養条件の違いによって糖化効率が大きく変動 する為であるが、株の潜在能力としての能力は非常に高い為、株開発としては大きな成果を上 げることができた。

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