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NEDO

0.2 mrad 120 m

135°(+90°/ -45°)

図 2.1.3-33 本研究で用いた地上レーザーセンサー(Leica Scan Station P20、右図)と現場作業の様子(左図)

図 2.1.3-34 地上レーザーによって取得される 3 次元データ

(左上:植林地の状況、右上:3 次元点群データ、下:360 度の展開図)

成した。DSM から DTM を引くことで、樹冠の高さだけを表す表面である Digital Canopy Model (DCM)を作成した。地形図は半径 25m の範囲で作成できたため、半径 25m 以内のすべての樹木を対 象に樹木計測ができるようになった。

樹木だけの 3 次元データから水平面に 360 度に展開したパノラマ図を作成し、その 360 度の図 を使用して単木単位での樹木抽出を行った。パノラマ図から胸高直径の場所で樹木を自動で判別 し、その場所を自動でラベル付けを行い、樹木位置図を作成した。その結果を地形図の上で点と して表示できるようにした(図 2.1.3-35)。その正確性を複数のプロットで検証したところ、95%

以上の正確性で樹木を自動で判別できていることがわかった。

樹木の位置図だけではなく、樹冠部を含む 3 次元データを自動で抽出できなければならないた め、作成された DCM に Watershed 法という手法を適用することで、樹木樹冠部の凹凸部を自動で 色分けして単木範囲での樹冠部を自動で判別できるようにした(図 2.1.3-36)。その結果、樹木 の位置図ばかりでなく、樹冠部分も含めた樹木個体の 3 次元データを容易に抽出できるように なった。

図 2.1.3-35 360 度パノラマ展開図(上)、地形図(左下、灰色背景)と 自動で把握できた樹木位置図(左下、点データ)

図 2.1.3-36 地上レーザーによって作成された DCM(左図)に 50m

3)実証試験

レーザーによる計測の正確性を実証するために、2 種類のクローンを対象に、地上レーザーによ る 3 次元データからの推定結果と伐倒によって人が幹部を計測した結果を比較した。対象木は各 齢級(4 段階の齢級)で 3 個体ずつとした。伐倒での測定では、地面から頂部まで 1m 毎に幹直径 を計測した。1m 毎の幹部形状を円錐台とし、上方断面積と下方断面積からその囲まれた体積を計 算した。3 次元データでの計測では、樹冠内部の細かい幹は計測せず、計測ができなくなった高さ から樹高までは円錐を当てはめてデータを補完した。樹高に対して 8 割の高さの位置まで幹形状 が 3 次元データから幹として判別できた。地上レーザーの精度検証のために、伐倒試験で得た材 積を真値として、従来の材積調査手法である樹高と胸高直径から推定した推定値と、今回レー ザーによってコンピュータ上で計測した結果から得られた値と比較し、誤差の平均である Root Mean Square Error(RMSE)で結果を検証した(表 2.1.3-20, 表 2.1.3-21)。

実験の結果、従来の材積測定では、伐倒したデータと比較したところ 7.3%、7.4%の誤差が生じ ていたが、レーザーによる 3 次元データからの解析では、0.2%、2.8%まで誤差を下げることがで きた。この結果、レーザーを用いることで誤差 3.5%以内で材積を推定できることが示された。

高精度の一因として、本研究に用いた独自のアルゴリズムがある。これまでの幹断面計測は、

円による推定、もしくはメッシュで内挿する方法が用いられてきた。しかし、不定形の幹形状に 対して、円といった定型の幾何学的形状を当てはめる手法には限界があった。また、メッシュで 内挿する方法は、不定形の形状を計測できるが、データが欠損した幹形状はできない。一方で本 研究に用いた独自のアルゴリズムはニューラルネットワークで用いられる Radial Basis

Functions という式を採用しており、不定形な幹断面形状を表すデータに対して特異な多項式を作 成する。その多項式を用いることで、どんな幹形状でも推定することができる。この方法により、

幹部のデータが一部欠損したデータに対しても、外周を容易に推定することができ、さらには、

不定形の幹形状に対しては、その形状にフィットする形状を推定することができるため、従来は 不可能であった正確な幹形状の計測が行えるようになった(図 2.1.3-37)。

実測材積 推定材積 誤差 レーザー 誤差 原因

0.053 0.049 -7.5 0.043 -18.3 風による影響 0.054 0.049 -9.3 0.056 4.9

0.056 0.05 -10.7 0.056 -0.2 0.102 0.095 -6.9 0.107 5.2 0.087 0.087 0.0 0.087 0.8 0.102 0.095 -6.9 0.102 -0.1 0.125 0.123 -1.6 0.124 -2.2 0.154 0.162 5.2 0.147 -1.8 0.15 0.147 -2.0 0.143 -4.3 0.186 0.175 -5.9 0.185 -0.3

0.188 0.174 -7.4 0.150 -20.6 風による影響 0.174 0.183 5.2 0.176 0.9

平均 7.5 平均 2.8

↑誤差が大きいのは平均誤差を計算する際に除外 5.3

事業用クローンA

2.5

3.4

4.7

誤差3.5%以内

表 2.1.3-20 地上レーザーによる材積精度検証

実測材積 推定材積 誤差 レーザー 誤差 原因 0.067 0.065 -3.0 0.067 0.1

0.066 0.063 -4.5 0.068 3.3 0.064 0.059 -7.8 0.063 -0.9 0.108 0.103 -4.6 0.107 -0.9 0.109 0.100 -8.3 0.111 1.5 0.104 0.104 0.0 0.106 1.8 0.162 0.164 1.2 0.163 0.7 0.162 0.171 5.6 0.163 0.8

0.183 0.175 -4.4 0.165 -9.8 風による影響 0.274 0.286 4.4 0.276 0.7

0.209 0.221 5.7 0.207 -0.9 0.226 0.269 19.0 0.235 4.0

平均 7.3 平均 0.2

↑誤差が大きいのは平均誤差を計算する際に除外 3.4

4.7

5.3

事業用クローンB

2.5

3 次元データを用いた解析の唯一の欠点は、風の影響である。風によって木が揺れると、その影 響で 3 次元データを正確に取得できなくなる。風が吹いた時に取得した 3 次元データによる解析 結果の誤差は大きく、最大で 20%もの誤差が生じてしまう(表 2.1.3-20,21)。本研究の成果とし て、風の影響がないプロットでレーザーの性能を評価する必要があったため、風の影響があった 対象木は誤差評価の対象木から除いた。大きな誤差値の原因がデータ取得時の環境条件であるた め、解析手法自体が問題であった訳ではなく、材積を 3 次元データによる解析から正確に計測で きる手法が確立できたと言える。

また作業効率も試算した。従来調査は、10ha に 1 カ所の割合で現地調査を行っている。1 カ所 の面積は 400m2(半径 11.3m)で、それを 2 人で 1 時間かけて調査している。一方、地上レーザー では 3 カ所設置して調査できる範囲を半径 25m まで広げることができた。また、1 カ所に必要な時 間は 2 人で約 30 分であった。これらの結果より、地上レーザーを導入することで従来法と比較し、

4.9 倍(面積ベース)×2 倍(人工ベース)9.8 倍以上の現場作業効率が実現できた。一方で、地 上レーザーでは取得された 3 次元データをオフィスにて解析する必要があるが、本プロジェクト で開発したソフトを用いれば、樹木計測がほぼ自動で行えるため、その解析時間はこの作業効率

図 2.1.3-37 本研究の手法(赤線)による正確な幹断面形状の推定(左図:データが欠損している 状態での幹断面形状の推定結果、中央図:円に近い幹断面形状での正確な推定、右図:少し変形し ている幹断面形状の正確な指定結果

表 2.1.3-21 地上レーザーによる材積精度検証

4)若齢木の測定

植栽後 2 年生未満の若齢木について、地上レーザーを用いて材積が評価できるか検討した。従 来の材積調査で扱う材積式は、樹齢が 2 年生以上を対象にしか作成されていない。そのため、過 去の 2 年生未満の若齢木の成長量測定データから新たに材積式を作成した。その式で求めた材積 値を真値とし(表 2.1.3-22)、若齢木の成長量評価のための 3 次元データ解析手法を確立した。

地上レーザーによる 3 次元データ解析は、幹の形状を取得して直接その材積(幹の体積)を推定 してきたが、樹齢が 1 年に満たない個体は、葉が覆っているため地上レーザーによる計測でも幹 と葉を区別することが難しい(図 2.1.3-38)。細い幹が把握できるほど細かく 3 次元データを取 得することが難しいため、本プロジェクトで開発した手法をそのまま適用することはできない。

そこで、新たな解析手法として「ボクセル法」を用いた。ボクセル法とは、3 次元空間にボクセル

(立方体)をグリッド状に派生させ、各立方体の中にレーザーの点が 1 点でもあれば、その立方 体を残すという 3 次元箱状データへ変換する手法である。本研究では 10cm のサイズのボクセルを 用いて解析を行った。樹木個体全体をボクセル化した後、そのボクセル数を把握し、2 次式を当て はめることで、材積との関係を把握した。その結果、ボクセル数から若齢木の材積推定をする高 い相関関係(R² = 0.97)の推定式を作成することができた(図 2.1.3-39)。

その式を用いて、DNA マーカー形質予測式を用いて選抜したクローン(若齢木)の成長量評価を 検証した。選抜個体(精英樹 78)と現事業用クローン(Control)について地上レーザーによる測 定を行い、初期成長の違いを評価した。結果、選抜個体が現事業用クローンに対して 2.3 倍の成 長量があることがわかった(図 2.1.3-40)。以上より、従来法では材積計測の難しい若齢木の成 長量評価を 3 次元データから測定する手法を確立できた。

樹高 5~6 m 図 2.1.3-38 幼齢木の 3 次元データ計測

(左図中心木:従来のクローンを用いた対象実験木、右図中心木:選抜クローンを用いた実験木)

樹齢 材積(m 3/ha) ボクセル数

0.9 8.87 1200

3.3 51.79 2567

5 99.63 3058

6 205.70 3954

6.1 141.29 3170

表 2.1.3-22 幼齢木の材積値とボクセル数

b-2)無人航空機による大面積評価システムの開発 1)機器選定

UAV には固定翼、回転翼など様々なタイプがあり、値段も異なる。本プロジェクトでは、DJI 社 の回転翼機である Phantom2 を使用した。回転翼機を選定した理由は、固定翼機と異なり、無操作 時はその場に滞空(ホバリング)可能なため操作が容易であること、垂直な離着陸が可能なため 比較的狭い場所から飛ばせることが挙げられる。更に回転翼機の中でも、必要十分な性能を有し ながら、本体価格が 10 万円以下と安価であることから、Phantom2 を選定した。UAV に搭載するデ ジタルカメラは Nikon 社製 CoolPix A を選定した(写真 2.1.3-10)。CoolPix A を用いた理由は、

様々なデジタルカメラを比較検討した結果、一眼並みの 1,616 万画素の画質で撮影ができ、単焦 点で重さが 299g と軽量であり、Phantom2 に搭載できる許容量に適していたためである。

0 50 100 150 200 250

0 1000 2000 3000 4000 5000

材積(m3)

ボクセル数

図 2.1.3-39 ボクセルを用いた幼齢木に対する材積推定結果

Control 78

ボクセル数 1200 1428

推定材積(m3) 1.725 3.995

2.3倍

図 2.1.3-40 精英樹クローン 78 が Control(どちらも 0.9 年生)に対して 成長量が 1.4 倍以上あるかどうかを検証した結果

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