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ドキュメント内 宇宙植物科学の最前線 (ページ 119-125)

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図l SpacePlantBox (SPB)試作機Ⅰ型

左:正面パネルと右側面,中:背面,右:装置内部 栽培チャンバーは縦 23cmX横23cmX高さ30cm

図2 Space plant Box (SPB)試作機lI型

栽培チャンバーは縦30cmx横30cmX高さ30cm

却器を用い,冷却箱(以後冷却部と呼ぶ)の中に冷却フィンを配置した。こ の方法では,凝結水の獲得に加えて栽培チャンバー内の気温を制御でき

る2・3)。電子冷却器のフィン面を親水性のレーヨン繊維で被い,凝結水を繊 維面にトラップした。フィン面で凝結した水を培地底面まで毛管輸送する

微小重力場植物実験装置の開発と地上での性能評価111 ために,親水性のガラス繊維を用い,冷却部内でレーヨン繊維とガラス繊 維をつなぎ合わせた. ・レーヨン繊維は常温でカビが繁殖しやすいため,水 輸送用にはガラス繊維を選択した。

1.2.ガラス繊維

ガラス繊維としては,試作機Ⅰ型には布状のもの,試作機ⅠⅠ型にはヒモ 状のものを用いた。航空機を用いた微小重力実験でこれらの透水係数を測

定したところ,ガラスヒモで2‑3cm/S,ガラス布で0.2‑0.5cm/Sと,高 い水輸送能力を確認している22)0

1.3.給水システム

ガラス繊維の水分量をモニターするため,赤外線式水分センサと白金製 の抵抗水分センサを繊維上に固定した。これらのセンサ出力が設定下限値 以下になると,ポンプを作動し水タンクから水を供給する(図3)。水タン クからの吸水には,図4に示すように親水性繊維を配置した吸水システム を採用した。これまで行った航空機実験で,繊維の一端をタンクの吸水口 に固定することで,微小重力下およびGジッタの存在下でも,水を吸引で きることを確認している4・5)。この装置の特徴は,吸水口が容器の中で最も 毛管力が強く働く形状になっていることと,その吸水口へ水を導くために, 水の輸送媒体として親水性繊維を利用していることである。水タンクの水

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図3 水循環利用型植物栽培装置の模式図

図4 親水性繊維を用いた吸水システム

左= lG,石:〟G 〟Gの時,繊維を移動した泉が吸水口に溜まっている。

量が極端に低い場合でも微小重力下で吸水可能である。

1.4.表面張力フィルター

繊維中の水分量が過度に高まると,植物の栽培培地中の水分量も高まり, 生育に悪影響をおよぽす場合がある。そこで,余分な水を除去し水タンク に蓄える安全装置として,気液分離用に表面張力フィルターを用いる。表 面張力フィルターの性能については,航空機実験にて異なる重力下で吸引 圧力と気液分離性能の関係を調べ,培地水を除去する能力が高いことを確 認している(未発表)。本研究ではチャンバー内で循環する水が過剰になっ た場合に,この水を除去し,水タンクへ輸送する安全装置として,表面張 力フィルターを用いた培地水除去システムを装置化し, SPBに装着する予 定である。

1.5. LED光源

宇宙実験で制限要因となる空間および電力の問題を解決し,かつ高等植 物の生育に十分な光環境を与えるために,高効率の植物育成用LED照明 システムを開発しSPBの試作機ⅠⅠ型に採用した。このシステムは,赤と青 のLEDチップの光量を独立して制御でき,オオムギ等作物の生長,発育に 十分な光合成有効光量子束密度(PPFD)を得ることができる6)。またLED は熱赤外線を含まないため,チャンバー内の空調負荷を低減する効果があ る。これまでにオオムギを用いた栽培実験から,栄養生長に好適な赤と青 のエネルギー比を決定した。また, LEDだけの光照射で生殖成長が可能な

ことを確認している6・7)0

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1.6.セラミクス培地

植物栽培培地に求められる種子支持の安定性,良好な発芽環境,栽培種 に適した養水分供給源などの機能を満足するため,ヌードル状にセラミク スを成形した培地を開発した。本培地の特徴は良好な気相確保,培地内部 への根群伸張の容易さ,さらに根と培地の接触面横の大きさなどが上げら れる8・9)。さらに,孔隙分布特性に由来する水分輸送能の大きさも特筆すべ

きものがある。これまでに行った航空機実験にて,この水分輸送能は主に 毛管力に起因するものであり,重力ポテンシャルによる影響が相対的に小 さいことを確認した(未発表)0 /JG区と1G区に求められる培地内水分条 件の同一性を実現するために適性の高い材料特性である。

1.7.緩効性肥料

簡便な養分供給法として,自己溶解型の緩効性肥料を用いる。これまで の実験で,植物に要求される多量・微量元素の溶出特性と温度依存性を調 べた結果,植物種,生育段階で異なる植物の肥料要求量に対応して緩効性 肥料を選択し,添加量を決定可能であることがわかっている。培地底部に 緩効性肥料を添加したのみで,栽培期間中に追肥の必要性,塩類集積など の問題は起こらず,オオムギの良好な生育を確認した9)。

1.8.気流制御

栽培チャンバー内の気流制御として,鉛直方向(植物の茎方向)の下降 気流を吹かせるようにフアンと整流板を配置した(図3)。これまでに行っ た航空機を用いた微小重力実験で,強制空気流動が無い場合,わずか20秒 間の微小重力下でも,熱対流の抑制により植物葉と周辺空気との熱および ガスの交換が抑制され, 1‑20Cの葉温上昇, 20%の光合成抑制が引き起こ されることを明らかにし,/宇宙での植物栽培における気流制御の重要性を 定量的に示した10‑ll)。また,植物葉の熱およびガス交換を促進して,成長を 促進するためには,葉近傍の気流速度を少なくとも0.3ms‑lに制御しなけ ればならないことを明らかにした。さらに,高密度で植物を育成する場合 には,鉛直方向(植物の茎方向)の下降気流が,成長促進に有効であるこ

とを見出した12)0

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1.9.クロロフィル蛍光計測システム

明期条件下で植物葉の光合成機能の測定を行うために,変調光と飽和パ ルス光法を組みあわせた小型クロロフィル蛍光計測装置をSPBに組み込 む予定である。本方法は,光または水分環境ストレスの発現時の光合成反 応の解析に有効である13)0

1.10.オオムギ栽培

本装置は,オオムギを全生活環にわたって栽培することを目的に開発し ている。生殖成長過程を遺伝子発現のレベルでモニターする系を構築する とともに,高温などのストレスで生殖成長が不全になるときに誘導される 分子マーカーを作製し,これらを用いて,宇宙環境が植物の生殖不全と遺 伝的変異に及ぼすメカニズムを明らかにすることを目的としている14‑18'。

2.温湿度の計測制御

2.1.湿度センサ

チャンバー内の湿度環境を精度良く計測するために,小型のセンサで微 小重力下でも正常に計測可能なものを選別する必要があった。そこで,小 型の湿度センサ数種類を選別した後,微小重力下でこれらの特性を調べた。

熱電導度タイプのセンサは,重力の影響を強く受け,無重力下での使用に 問題があることがわかった19・20)。他のセンサ(高分子抵抗変化型,高分子静 電容量型,電解質抵抗変化型)は,無重力下でも正確に湿度を計測できる

ことを確認し, SPBでは高分子静電容量型のセンサを使用した。

2.2.冷却部の熱交換

図5に,著者らが以前用いた水循環利用型植物栽培装置2)の冷却フィン 面での顕熱と潜熱の交換量の計算値とフィン面温度との関係を示す。この 装置および今回製作した試作2機は,チャンバー内の気温の制御を,ベル チェクーラーの冷却に依存しており,設定気温の上限値を超えた場合,下 限値に低下するまで栽培チャンバー内の空気を冷却部へ送気する。気温が 下限値以下になると,上限値を超えるまで冷却部への送気を停止し,かわ りにチャンバー内だけで空気を循環する。チャンバー内の気温を一定に維 持するためには,フィン面温度にかかわらず冷却部での単位時間当たりの

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5    1    7     8     0    10   11

フィン市AJltf(℃)

12   13   14   15

図5 フィン面温度とフィン面での顕熱交換量,潜熱交換量の関係

(フアン作動時:冷却部への送気時,全期間:チャンバー内のみで空気循 環している時も含む)

顕熱交換量を一定に維持する必要がある。フィン面温度が高い場合,フィ ン面での熱交換量が小さいため,冷却部とチャンバーの空気交換の時間が 長くなる。フィン面温度を低くすると,逆にフィン面での熱交換量が多く なり,同じ設定気温でも冷却部とチャンバーの空気交換の時間が短くなる。

ここで,注目すべき現象は,フィン面温度が高くなると,顕熱交換量に対 する潜熱交換量の比が小さくなることである(図5)。このことは冷却部で 凝結する水の量が少ないことを示しており,フィン面温度の調節によって, 単位時間当たりに回収できる水量を制御可能と推測できる。このことは,同 時にフィン面温度の調節によって栽培チャンバー内相対湿度の制御可能性

も示唆する21)。

2.3.チャンバー内気温七湿度の変化

図6にSPB一試作機ⅠⅠ型内でフィン面温度を4oCから15oCまで変化さ せた場合の,チャンバー内気温と湿度の実測値の変化を示す。フィン面温 度が高くなるにつれてチャンバー内気温を一定に維持したまま,湿度を高 められることを確認し, 3.2.の計算結果と同様の効果を認めた。この実験 時,オオムギは第3葉期から第4葉期にあり蒸散速度が低い状況であった が,さらに成長した場合,湿度の制御幅は高湿度側へシフトすると考えら

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