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第 2 部 IoT 活用、IoT を支える基盤の最新動向と展望

7. IoT が創り出す新たな時代の到来

従来、デジタル空間の中で進展してきた情報通信技術は、IoT と人工知能の融合によ り、モノと人を含めた実世界へと拡張される。その結果、人々の行動や生活の利便性が 高まり、産業活動の効率化が進むのみならず、その活動の質も向上し、情報通信技術が これまでにない新たな付加価値を生み出すことが予想される。

本レポートでは、IoT や人工知能に関する最新動向や事例を示すとともに、その将来 展望や課題を整理した。最終節では、IoT や人工知能の進展によってもたらされる新た な時代の姿を、IoTの活用や産業の変化等をまとめることにする。

次頁の図 7-1に示したように、IoTや人工知能の活用によりにおいては、移動・生活・

くらし等のあらゆる場面で、個人の利便性が高まるとともに、多様な価値観に応じたモ ノやサービス提供が実現され、生活の質が向上すると期待される。例えば、自動車は、

運転者の負担が軽減されるだけでなく、新たなエンターテイメント空間となる。さらに、

生活・くらしにおいては、家事や育児といった日々の活動や睡眠や食生活といった1次 活動向けの多様な製品やサービスが提供され、我々の日常生活や行動も大きく変化する であろう。

企業や産業レベルでは、ものづくりの効率性や生産性の飛躍的な向上が進むとともに、

ものづくりのサービス化へのシフトやものづくりパラダイムの変化を引き起こすと考え られる。ものづくりのバリューチェーンにおいては、モノのデジタルデータの流通によ り、ものづくりを従来の設計、生産中心の捉え方から製品の企画や販売や利用・アフタ ーフォロー全体で捉える動きが進むであろう。また、欧米に比較して生産性が低いとさ れてきた我が国サービス産業や1次産業に関しても、その生産性向上や高度化が進展す ると期待される。そして、こうした変化は、現在の産業構造に変革を引き起こすことを 予想させる。

勿論、こうした動きを牽引するIoTや人工知能の進展に向けては、本レポートで取り 上げた課題を含め、様々な課題もあり、今後、実用化の進展に合わせ、新たな課題が生 じるかもしれない。

しかしながら、ここで示された未来の姿は遠い未来の話といえるだろうか。IoT や人 工知能の一部が既に実用化されていることを踏まえると、新たな時代の幕は既に上がり 始めていると考えるべきだろう。実際にIoTや人工知能の最前線で活躍する人材は、新 たな時代をやがて来るべき現実としてリアリティを持って捉え、現在からその実現に向 けて果敢な挑戦を続けている。

「新たな活躍の舞台とはどのようなものになるか」、「新たな舞台において我々の生活 や暮らしはどのように変わるのか」、「新たな舞台におけるビジネスの主役は誰か」、そし て、「新たな舞台の主役となるために取り組むべき課題は何か」―――。新たな舞台での

活躍が期待される個人や企業が行うであろうこうした議論の際に、本レポートが少しで も参考となれば幸いである。

図 7-1 IoT、人工知能が創りだす新たな時代の到来

(出所)各種資料をもとにみずほ情報総研作成139

みずほ情報総研 経営・ITコンサルティング部 河野 浩二 koji.kohno@mizuho-ir.co.jp

139 IoTのイメージに関する図の出所はEuropean Commission, Digital Agenda for Europe The Internet of Things

http://ec.europa.eu/digital-agenda/en/internet-things

Internet of Things, Human and Intelligence

成長・発展のエコシステム 高付加価値化 新製品・サービス

Internet of Things

デジタルデータ

IoT情報処理基盤 コンピュータ資源 ネットワーク クラウドコンピューティング 知能

移動・生活・くらし

サイバー&リアル セキュリティ

【自動車の価値の多様化】

走行性能・燃費・デザイン性に加え、快適性、安全性(自動走行)、エンター テインメント性が自動車の新たな価値に。

インフォテインメントの充実度やリビングルームのような快適性等

【配送・配達の革新的な効率化・速達化】

ドローン(少量・近距離)、自動走行(多量・遠距離)

【日常生活行動の変化】

生活環境のモニタリングによる衣食住の質的向上(例:良い眠りの実現、最 適な食事(料理)等、生理的に必要な活動の質の向上)

【社会生活に伴う活動の軽減・効率化】

家事・育児・介護等の一部活動の自動化による社会生活を営む上で義務 的な性格の強い活動の一部の量(時間)的削減、効率化

モノづくり・産業

【モノづくりのスマート化】

バリューチェーン間情報連携が進み、効率性、生産性が大きく改善。ネット ワーク化された工場によるモノづくりが実現

【モノづくりのサービス化へのシフト】

製造事業者がIoTを活用して、顧客状況・ニーズを迅速に把握し、製品を提 供。製造に加え、“モノ”を通じてサービスを提供することが当たり前に

【モノづくりパラダイムの変化】

大手製造企業だけではなく、顧客の個別ニーズに応える新しいモノづくりの あり方を形成しつつある中小・ベンチャ企業の存在感が増加

【サービス産業の生産性向上】

人の生産性に依存するサービス産業の機械化(ロボットやAIを含む)、デジ タル化により生産性が向上される。

【1次産業のデジタル化】

農業・林業・水産業等、ICT活用しずらいかった1次産業への応用により生 産性、高品質化が進展する。

主役となるプレイヤ、ビジネスモデルの変化 新産業の勃興 産業再編 ライフスタイル 雇用の変化 人・モノ・AIとのネットワーク、コミュニケーション

社会的受容性 シンギュラリティ懸念

産業応用競争

セキュリティの実世 界への影響

利便性 価値の多様化 生活の質の向上 効率・生産性 サービス化 パラダイム変化

制度(法・ルール)的課題 プライバシ 相互接続性

システムアーキテクチャ ビッグデータ処理

リアルタイム性 セキュリティ

人材(創造力、デザイン力、技術の可能性とリスクの理解、社会と人間に対する洞察力)

全産業、生活全般に浸透

実世界への拡大 ICT活用の深化

モノのインターネット

Internet of Things: IoT 人工知能

Artificial Intelligence: AI

【執筆担当一覧】

本レポートの執筆担当は下記のとおり。

はじめに

みずほ情報総研 経営・ITコンサルティング部 河野 浩二140

(koji.kohno@mizuho-ir.co.jp)

みずほ銀行 産業調査部 電機・IT・通信チーム 大堀 孝裕

(takahiro.oohori@mizuho-bk.co.jp)

第1部 IoTの全体動向

みずほ銀行 産業調査部 電機・IT・通信チーム 大堀 孝裕

(takahiro.oohori@mizuho-bk.co.jp)

第2部 IoT活用、IoTを支える基盤の最新動向と展望 みずほ情報総研 経営・ITコンサルティング部

第1節 西村 和真(kazuma.nishimura@mizuho-ir.co.jp)

第2節 豊田 健志(kenji.toyoda@mizuho-ir.co.jp)

第3節 武井 康浩(yasuhiro.takei@mizuho-ir.co.jp)

第4節 河野 浩二(koji.kohno@mizuho-ir.co.jp)

第5節 築島 豊長(toyonagata.tsukishima@mizuho-ir.co.jp)

第6節 桂本 真由(mayu.katsuramoto@mizuho-ir.co.jp)

第7節 河野 浩二(koji.kohno@mizuho-ir.co.jp)

140情報通信政策・産業担当

【主要参考文献】

<第一部 IoTの全体動向>

Acatech, Recommendations for implementing the strategic initiative INDUSTRIE 4.0

(http://www.acatech.de/fileadmin/user_upload/Baumstruktur_nach_Website/Acatech/root/de/M aterial_fuer_Sonderseiten/Industrie_4.0/Final_report__Industrie_4.0_accessible.pdf)

DKE, THE GERMAN STANDARDIZATION ROADMAP INDUSTRIE 4.0

(https://www.dke.de/de/std/documents/rz_roadmap%20industrie%204-0_engl_web.pdf)

澤田朋子「ドイツ政府の第四次産業革命Industrie4.0」(2014)

(科学技術振興機構研究開発戦略センター)

(http://www.jst.go.jp/crds/pdf/2014/FU/DE20140917.pdf)

BITKOM,Fraunhofer IAO/Industrie 4.0 ‒Volkswirtschaftliches Potenzialfür Deutschland

(https://www.bitkom.org/files/documents/Studie_Industrie_4.0.pdf)

McKinsey Global Institute(2013), Disruptive technologies:Advances that will transform life, business, and the global economy

(http://www.mckinsey.com/~/media/McKinsey/dotcom/Insights%20and%20pubs/MGI/Researc h/Technology%20and%20Innovation/Disruptive%20technologies/MGI_Disruptive_technologies _Full_report_May2013)

McKinsey Global Institute(2015), THE INTERNET OF THINGS:MAPPING THE VALUE BEYOND THE HYPE

(http://www.mckinsey.com/~/media/McKinsey/dotcom/Insights/Business%20Technology/Unlo cking%20the%20potential%20of%20the%20Internet%20of%20Things/Unlocking_the_potential _of_the_Internet_of_Things_Full_report)

General Electric(2013), Industrial Internet:Pushing the Boundaries of Minds and Machines

(http://www.ge.com/jp/docs/1377481198526_Industrial_Internet_Japan_WhitePaper_0517_2s.

pdf)

General Electric(2013), The Industrial Internet@Work

(http://www.ge.com/jp/docs/1389000498785_Japan_IndustrialInternetatWork_0106s.pdf)

General Electric(2014), The Future of Work

(http://www.ge.com/jp/docs/1400636818144_The_Furute_of_Work_J_0510.pdf)

General Electric(2014), DIGITAL RESOURCE PRODUCTIVITY

(https://www.ge.com/sites/default/files/ge_digital_resource_productivity_whitepaper.pdf)

Accenture Technology (2014), Driving Unconventional Growth through the Industrial Internet of Things

( https://www.accenture.com/mz-en/_acnmedia/Accenture/next-gen/reassembling-industry/pdf/

Accenture-Driving-Unconventional-Growth-through-IIoT.pdf)

Deloitte(2014), The Internet of Things Ecosystem:Unlocking the Business Value of Connected

Devices

( http://www2.deloitte.com/content/dam/Deloitte/global/Documents/Technology-Media-Teleco mmunications/gx-tmt-Iotecosystem.pdf)

The Government Office for Science(2014), The Internet of Things: making the most of the Second Digital Revolution

( https://www.gov.uk/government/uploads/system/uploads/attachment_data/file/409774/14-123 0-internet-of-things-review.pdf)

PwC(2013), Internet of Things:Evolving transactions into relationships

(http://www.pwc.com/us/en/technology-forecast/2013/issue1/index.jhtml)

Harvard Business Review「IoTの衝撃」(2015年4月号)

(http://www.mizuhobank.co.jp/corporate/bizinfo/industry/sangyou/pdf/1050_all.pdf)

清尾克彦「M2M(Machine to Machine)技術の動向と応用事例」(2013)

(http://www.cyber-u.ac.jp/about/pdf/bulletin/0005/0005_02.pdf)

和田恭「米国におけるM2M の動向」『ニューヨークだより』(2012)

(http://www.ipa.go.jp/files/000006081.pdf)

みずほ銀行「みずほ産業調査 Vol.51 特集:欧州の競争力の源泉を探る -今、課題と向 き合う欧州から学ぶべきことは何か-」(2015)

Cisco Systems(http://www.cisco.com)

Ericsson(http://ericssonwww.ericsson.com)

General Electric(http://www.ge.com)

McKinsey & Company(http://www.mckinsey.co.jp)

PTC(http://www.ptc.com)

SAP(http://go.sap.com)

Siemens(http://www.siemens.com)

Vodafone(http://www.vodafone.com)

ファーストリテイリング(http://www.fastretailing.com)

経済産業省(http://www.meti.go.jp) 首相官邸(http://www.kantei.go.jp)

総務省(http://www.soumu.go.jp)

<第二部 IoT活用、IoTを支える基盤の最新動向と展望>

内閣府、SIP(戦略的イノベーション創造プログラム). 自動走行システム. 研究開発計 画(2015年5月)(http://www8.cao.go.jp/cstp/gaiyo/sip/keikaku/6_jidousoukou.pdf)

中山幸二 他,「自動車オートパイロット開発最前線 ~要素技術開発から社会インフラ整 備まで」(2014年5月)(株式会社エヌ・ティー・エス)

R. Harper, "Inside the Smart Home: Ideas, Possibilities and Methods," in Inside the Smart Home,