46 参考文献
A. Liland
2. IRSN と CEPN による分析
2.1. はじめに
IRSN
およびCEPN
は、ICRP
ダイアログの支援を行い、ベラルーシに於ける経験 の証言をすると同時に、2013
年には、万が一フランスでも同じような事故が起こっ た場合に備え、フランスの専門家にも有意義となる教訓を把握するために福島の分析 を行った。この分析作業は、
ICRP
ダイアログに参加している日本のステークホルダーと専門 家との協力のもとで行った。分析結果からの教訓は、以下の
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つの点に集約できる。• 事故後の状況の中での人間的側面
• ステークホルダーの関わり:行政、一般市民及び専門家
• 共有知のプロセス
• 実践的な放射線防護文化の構築
2.2. 事故後の状況の中での人間的側面
広域な放射能汚染の健康、特に子供の健康への潜在的な影響は、住民にとって最大 の懸念事項であった。しかし、健康への影響だけが住民が直面している問題ではない。
日常生活を営んでいるなかで突然放射能が侵入してきたことは、今まで経験したこと のない途絶状況をもたらしたのである。その状況とは、人が自分に対して、他人に対 して、そして環境に対しての関係を、非常に混乱させ、人々を動揺させたのである。
汚染された環境に暮らすということは、非常に複雑な状況の中で暮らすことを意味 する。行政と専門家を信じられなくなっている被災住民にとっては、日常生活のあた り前のこと(外出、帰宅、家の中の空気の入れ替え、飲料、食事、子供の通学、何が 安全で何が有害など)がすべて疑問の対象となる。
その結果、自分で完全に日常生活をコントロールすることができなくなり、無力感 となおざり感、更に差別感と疎外感を味わうことになる。
更に、放射能汚染の技術的な改善策(除染、移動制限を含む様々な弊害、食物の管 理等など)は、日常の生活環境から間接的に被災住民を隔離する結果となる。
原発事故は、ライフスタイルや隣人や家族との関係に大きな影響を与えるほど、精 神的にも社会的にも弊害をもたらす。最後には、それぞれの個々人は、永久的に以下 のようなジレンマに直面するのである。
• 汚染区域に留まるのかまたは去るのか
• 避難住民は帰還するのかしないのか
• 全ての人は汚染地域で働き、暮らし続ける可能性を判断する必要があり、それぞれ の生活の再構築を模索していかなければならない
2.3. ステークホルダーの関わり:住民、地域行政、支援する専門家
事故後数ヶ 月間、様 々 なステーク ホルダー が 現状を直視 し、その 複 雑な状況に立 ち向かった。地方自治体は、事故後の状況の指揮をとり、地域行政に(例えば、伊達 市と飯舘村)に 頼った 。中には地域コ ミュニ ティが自ら立ち 上がり 行動を起こした
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(例えば末続や筆甫)。この両地域では、住民が実際に直面している懸念に目を向け たが、同時に解決策を見出すためには専門家の支援も必要とした。
被災者の支 援をして い る専門家も それぞれ に 背景は異な り、それ ぞ れが個人的に 関わった。最大 の課題 は、彼らの関与 には組 織的な枠組への つなが りが何一つなか ったことである 。それ は長い間、国は このよ うな地元の取組 みに関 与しなかったか らである。この1年やっと日本政府は関心を示し始めたのである。
住民の近くで活動した経験から、日本の専門家達は次のことを学んだ。
• 被災地の住 民は、早 急 に信頼出来 る情報に ア クセスする 必要があ る が、放射線被 ばくに関して、 その影 響とリスクにつ いて語 ることが最大の 難題で ある。住民は、
自分達の不 安と限ら れ た知識の中 で、専門 家 には謙虚な 態度でわ か りやすい言葉 で話して欲 しいと望 ん だ。住民は 、科学的 判 断とは区別 し、そし て 何よりも住民 の価値観と選択肢を尊重して欲しいのである。
• したがって 専門家は 、 安易に状況 は安全で あ ると結論付 け、説明 不 十分の中で対 話に走るこ とは避け な ければなら ない。日 本 の専門家は 、状況管 理 をする地元の 教育、健康、行政等の専門家との協力体制が重要であると指摘している。
• 科学者も放 射線防護 の 必要性を認 めながら も 、放射線防 護では住 民 の生活に対処 できないと いうこと を 理解しなけ ればなら な い。科学者 は、住民 一 人ひとりと地 域コミュニティのために仕えなければならない。
• 住民の価値観と 選択肢 が何であろうと 、各々 の住民は尊重さ れなけ ればならない。
2.4. 共有知プロセス
結論として、住民が直面する日常生活の中の問題に効率的に対処するには「共有知」
プロセスが必要である。このプロセスはいくつかの状況に依存する:
• 被災住民の疑問、懸念、課題及び彼らの期待に専門家が耳を傾け対話するための場 所を確保すること。
• 的確にそし て効率的 に 地元住民と 専門家が 共 同で住民と 地域社会 の 状況を評価す ること。
• 個人および地域コミュニティに於いて特定された問題に対処するためには、地元の 専門職のプロ、放射線関連の専門家と行政の支援を得て、最重要課題としてプロジ ェクトを立ち上げ実施していくこと。
• 「共有知」プロセスの結果は評価し、発信・伝播しなければならない。
福島県においてもいくつかの地域コミュニティの中にはベラルーシと類似した実 用的なプロジェクトが実施し始められている。しかし大きな違いは、放射線状況の特 徴づけのための測定方法及びソーシャルメディアの情報共有のための役割である。
日本の専門家は自分達の経験からいくつかの点を指摘している:
• 自信回復のためには測定と対話が重要である。しかし、科学的な説明だけでは専門 家に対する信頼は生まれない。重要なのはしばしば住民の間に戻り、彼らと経験と 気持ちを共有することが必要である。
• 住民に近づき、共通の言葉を話し、長期的に行動を起こすことが住民と活動する鍵 となる。
• 更にコミュニティ間の競争を促すために学んだ教訓は共有すること。そして、この ような行動を全般的に広め持続的に行うことを担保するために、行政からの財政的 支援も必要である。
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2.5. 実践的な放射線防護文化の構築
一歩一歩、 共有知プ ロ セスは、被 災地域に お いて、実用 的な放射 線 防護文化を促 進している。
この放射線 防護文化 を 通して、徐 々に、住 民 自身が測定 結果を解 釈 するようにな る。空間線量レ ベル、 内外被ばく、生 産品の 汚染度等を測定 し、自 分の日常生活の 中の放射線に対するベンチマークを設定することができるようになる。
このアプロ ーチのな か で大変重要 なのは、 適 切な測定機 器で測定 し 、結果につい て専門家の支援 を得な がら議論をし、 独自、 または家族、地 域コミ ュニティレベル での意思決定を して、 自分達を守るこ とであ る。このような 実用的 な放射線防護文 化が生活環境の改善を可能にするのである。
この実用的 な放射線 防 護文化を充 てるプロ セ スは、末続 のような コ ミュニティで はベラルーシと 非常に 似ているが、ベ ラルー シより迅速に充 てられ 、今では行政の 仕事を補完をしている 。このようなコミュニ ティはすでに自分達の 生活を取り戻し 、 この美しい国での将来に目を向け始めている。
しかしなが ら、住民 の 自己強化へ の道とな る と、まだ重 大な疑問 が 残る。住民が 自分達を守るということに行政は責任がないであろうか。
3. 公の役割
この重要な 問題に答 え るには、公 共団体、 専 門家と行政 の役割と 責 任を明確にし なければならない。公共団体が活動するための倫理的な原則は何であろうか。
3.1. 原子力発電所事故後の行政の責任
行政の最も 重要な責 任 の一つは、 早急かつ 恒 久的に居住 不可能な レ ベルを設定す ること、そして、状況に応じて、基準を設定し(例えば、食品汚染のレベルなど)、
行動を誘導することである。
さらに、行 政と専門 家 は、徐々に 放射線モ ニ タリング及 び住民の 健 康管理を保障 しなければならない。
これまで挙 げた全体 的 な責任に加 え、行政 と 専門家は、 すべての 被 災住民がまと もな精神的、道 徳的、 そして物質的な 生活を 取り戻すための プロジ ェクトに共に参 加し支援する義務を負っている。
• 対話の場の 確保は不 可 欠であり、 公の機関 に よってサポ ートされ な ければならな い。
• 専門家は放射線状況の共同評価に貢献しなければならない。
• 放射線防護文化の構築のためには、行政と専門家の支援は不可欠である。
総合的に、 行政の重 要 な責任は、 自由と公 正 を尊重する 状況を作 り 出すことであ る。
3.2. 倫理的原則
住民の自立 がリスク を 生み出す可 能性もあ り 、専門家と 行政は、 住 民との交わり のなかで注意深くそのことを考慮すべきである。