HP FG FP
E lect rod e
G1 gate gate gate
G2 emitter gate emitter
E1 emitter emitter emitter
E2 floating emitter floating
E3 emitter emitter floating
- 38 - 3-4-3. 静特性
図 3.6 に、各構造のオン状態での IV 波形を示す。FP-IGBT がもっとも低い Vce(sat)(=Von)を示す。
HP-IGBT は、FP-IGBT と同等の Vce(sat)を示し、Ic=20A で、FP-IGBT の Vce(sat)=1.5V に対し、
HP-IGBT の Vce(sat)=1.6V と、わずか 0.1V の違いである。
図 3.8 にデバイス深さ方向に沿ったホール濃度の一次元分布を示す。グラフの左側がエミッタ、右側がコレク タ側である。FG-IGBT は、コレクタ側からエミッタ側(図右→左)に向かってホール濃度が低下しているが、HP-IGBT と FP-は、コレクタ側からエミッタ側(図右→左)に向かってホール濃度が低下しているが、HP-IGBT は、エミッタ側でホール濃度がむしろ高くなっている。これは前述の通り、フローティング P 層が ホールの障壁となってホール濃度が蓄積されるためであり、これによって Vce(sat)が下がっている。
なお、図 3.4(2)と、デバイスピッチなどのシミュレーション条件が異なるため、シミュレーション結果も異なってい る。また、この計算結果のホールパス幅はデバイスピッチの 3%であり、これは製造プロセスの制約によるものであ る。
図 3.6 オン状態の IV 波形
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図 3.7 デバイス深さ方向の一次元ホール濃度分布 (IC = 20A, VGE = 15V)
- 40 - 3-4-4. ターンオンシミュレーション
図 3.8 に、外付けのゲート抵抗(Rg)を変えた時のターンオンシミュレーションの結果を示す。(3)FP-IGBT で は Rg を変えても Vce、特に Ic はほとんど変わっていないことがわかる。これは、前述の通り、ゲートの自己充電 現象によるものである。一方で、(1)HP-IGBT と(2)FG-IGBT は、Rg によって 、Vce と Ic の傾き (dV/dt,dIc/dt)が大きく変わっており、十分なゲート制御性がある。つまり、dIc/dt の制御性も高いということ になる。
(1) HP-IGBT
(2) FG-IGBT
- 41 - (3) FP-IGBT
図 3.8 外付け Rg を変えた時のターンオンシミュレーション結果 VCC = 600V, IC = 20A, Tj = RT
図 3.9 に、HP-IGBT と FP-IGBT のターンオンシミュレーションでの Ic と Vge の波形を示す。FP-IGBT で は、time=B~C の間に、急激に Vge が上がり、これにつれて Ic も急激に上がっている。dIc/dt も大きいため、
このシミュレーション結果では、定格 20A に対して、58V のサージ電流が発生している。一方で、HP-IGBT の Vge は急激な変化もなく、ほぼ一定な dv/dt でゲート電圧が上がっていることがわかる。また、ゲート電圧の dv/dt が小さいため、Ic の上がり方もゆるく、サージ電流も 40V 以下と小さい。
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図 3.9 ターンオンシミュレーション結果
VCC = 600V, IC = 20A, Tj = RT, VGE = 0V/15V
図 3.9 time=A,B,C,D,E でのゲート付近の 2 次元ポテンシャル分布を図 3.10 に示す。FP-IGBT で は、time=B でフローティング P 領域が 10V 以上となり、time=c で 15V 以上となっていることがわかる。
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図 3.10 ターンオンシミュレーションでのゲート付近の 2 次元ポテンシャル分布
time E
FP HP
time A
time B
time C
time D
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FP-IGBT では、このフローティング領域の高い電位により、変位電流が流れることでゲート電位も上がってしま うが、HP-IGBT 構造では、ホールパスの動作により、FP-IGBT の Vge が急激に上がる time=B~C の間で、
フローティング P 領域の電位は上がらず 8V 程度で保持されている。これは、ホールパスから過剰なホールが引き 抜かれていることを示す。
このホールパスの動作により、ゲート電位が急激に上がることがなく、外部からのゲート電圧がゲート電位を制 御することができている。
3-4-5. ターンオフシミュレーション
図 3.11 は、Vce(sat)と規格化した Eoff トレードオフの各構造比較を示す。HP-IGBT と FP-IGBT は前 述のとおり IE 効果により Von が下がっているため、FG-IGBT と比較して Vce(sat)-Eoff のトレードオフは良 好である。また、HP-IGBT と FP-IGBT の Vce(sat)-Eoff のトレードオフはほぼ同等である。図 3.6 から、
Vce(sat)は、FP-IGBT の方がよいことがわかるが、図 3.12 にターンオフ IV 波形を示すように、HP-IGBT は スイッチング時間が短いために Eoff が下がっているためである。
図 3.11 Vce(sat) – Eoff トレードオフ
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図 3.12 ターンオフシミュレーション結果
3-4-6. 容量シミュレーション
図 3.13 にシミュレーション構造の寄生容量を示す。
図 3.13 寄生容量
そのうち、ミラー容量(Cres)は、各構造で以下のように表すことができる。
Cres = CGC
- 46 - HP : Co1 (1) FG : Co1+Co2 (2) FP : Co1 (3)
式(1)~(3)より、HP-IGBT と FP-IGBT はほぼ同等のミラー容量に対し、FG-IGBT は大きいことがわかる。
図 3.14 にシミュレーションによる規格化した Cres を示す。式(1)~(3)に示す結果と同様に、HP-IGBT と FP-IGBT はほぼ同等のミラー容量を示し、FG-IGBT は大きい。
図 3.14 容量シミュレーション
3-5. 実験結果
ホールパス構造の IGBT を製作し、Micro-P IGBT との特性比較を行った。
3-5-1. ターンオン特性
図 3.15 に外付け Rg を変えた時の HP-IGBT のターンオンスイッチング波形の実測値を示す。外付け Rg によって、Ic の傾き(dIc/dt)が変わっており、dIc/dt の制御性が十分にあることがわかる。
また、図 3.16 は、Eon と対向の FWD の逆回復 dv/dt のトレードオフを示す。HP-IGBT と Micro-P IGBT で同等のトレードオフを示していることから、ホールパス構造でも、ターンオン時のホールの引き抜きが十分 に行われていることがわかる。
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図 3.15 ターンオン波形(実測値)
図 3.16 Eon-対向 FWD 逆回復 dv/dt トレードオフ
3-5-2. ターンオフ特性
図 3.17 にターンオフスイッチング波形の実測値を示す。HP-IGBT は Micro-P IGBT と比較して、スイッチ ング時間が短いことがわかる。これは、ホールパス構造によってミラー容量が低減できているからである。
また、図 3.18 に Eoff-Von のトレードオフを示す。HP-IGBT は Micro-P IGBT に対して、同じ
- 48 - Eoff(10mJ/pulse)で、Von を 0.4V 低減できた。
図 3.17 ターンオフ波形(実測値)
図 3.18 Eoff – Von トレードオフ(実測値)
3-6. ホールパス構造まとめ
フローティング P 構造をもとに、その課題である dIc/dt 制御性を改善できるホールパス構造を検討した。実デ バイスを試作して測定した結果、フローティング P 構造の改善した Micro-P IGBT と比較して、ターンオン特性 はほぼ同等で、ターンオフ特性は、同じ Eoff で Von を 0.4V 低減することができた。
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第 4 章 結論
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地球温暖化の本質的解決のために、2015 年 12 月に開催された第 21 回気候変動枠組条約締結国会議 (COP21)でパリ協定が採択された[16]。これは、史上初めてすべての国が参加する枠組みであり、世界各国の地球温 暖化に対する関心が高いことが示された。(ただし、2017 年 6 月アメリカ合衆国は離脱を表明している。)
パリ協定では、途上国を含むすべての参加国に、2020 年以降の「温室効果ガス削減・抑制目標」を定めるよう求め ている。日本では、中期目標として、2030 年度の温室効果ガス排出量を 2013 年度比 26%削減としている。また、
2018 年 7 月には第 5 次エネルギー基本計画が閣議決定されている。[17] これらを実現に、日本政府は、203 0年のエネルギーミックスにおいて、徹底した省エネルギーと再生可能エネルギー比率を 22~24%にするなどの電源構 成の見通しが示されている。さらには、分散型エネルギーシステムの開発も加速している。
これらの今後の発電技術、蓄電技術、省電力技術などのエネルギー技術をけん引していくのはパワーエレクトロニクス であり、そのキーデバイスは、パワー半導体に依るところが大きい。特に、次世代パワー半導体として期待される SiC は従 来の Si パワー半導体と置き換えることで、性能が大きく向上する。
一方で、素子の長期信頼性、破壊耐量、使いやすさなどで、従来からの Si パワー半導体も当面は市場の大半を占 め続けることになる。特に、再生可能エネルギーや電動自動車(モーター駆動用インバータ)では、その電圧、電流から IGBT が一般的に使われる。これまで IGBT は低動作周波数で使われることが多かったが、最近は、インバータやモータ ーの高効率化やパワーエレクトロニクス機器の小型化など高周波で使われる用途も多くなり、IGBT デバイス自体の高速 化要求も高まっている。そこで、IGBT の高速化に適した新構造についてシミュレーションののち、デバイスを試作し実測結 果を示した。
従来構造である Micro-P 構造改良したトレンチシールドゲート IGBT は、ミラー容量をゲート-エミッタ容量に置き換え ることでその特性を改善できる。Micro-P IGBT と比較すると、Von は 0.15V 低減でき、また dv/dt が大きくなるため Eoff を 11%できるため結果として、Von-Eoff トレードオフを 25%改善できた。
一方、フローティング P 構造を改良したホールパス IGBT は、ターンオフ時過剰なホールを引き抜く領域を形成すること で、フローティング P 構造の欠点である dIc/dt 制御性の悪化を解決した。Micro-P IGBT と比較して、Von を 0.4V 低減できた。
トレンチシールドゲート IGBT は 600V クラス、ホールパス IGBT は 1200V クラスで設計、試作を行ったため、デバイ ス特性における両者の定量的な比較はできないが、製造プロセスの安定性や設計の自由度の観点からホールパス IGBT の方が優れていると考えられる。今後は、両者の定量的な比較を進めていきたい。
SiC や GaN が主流になるまでには、まだ課題があり、いくつかのブレークスルーが必要である。それまでの間、さらに Si-IGBT を少しでも特性改善して、地球環境の保全に役立ちたい。
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参考資料
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[12] Y. Onozawa et al. : “Development of the next generation 1200V trench-gate FS-IGBT featuring lower EMI noise and lower switching loss”, Proc. 19st International Symposium on Power Semiconductor Devices and ICs (ISPSD), pp.13-16, (2007)
[13] 総務省 電波利用ホームページ http://www.tele.soumu.go.jp/index.htm [14] 一般財団法人 VCCI 協会 http://www.vcci.jp/index.html
[15] 富士電機 “IGBT モジュールの EMC 設計” https://www.fujielectric.co.jp/products/
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semiconductor/model/igbt/application/box/doc/pdf/RH984b/RH984b_10.pdf [16] パリ協定 https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000197312.pdf
[17] 第 5 次エネルギー基本計画 http://www.enecho.meti.go.jp/category/others/basic_plan/pdf/
180703.pdf
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発表論文
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M. Sawada et al. : “Trench Shielded Gate Concept for Improved Switching Performance with the Low Miller Capacitance” Proc. 28th International Symposium on Power Semiconductor Devices and ICs (ISPSD), pp.65-68, (2016)
M. Sawada et al. : “Hole Path Concept for Low Switching Loss and Low EMI Noise with High IE-effect”, Proc. 29th International Symposium on Power Semiconductor Devices and ICs (ISPSD), pp.65-68, (2017)
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謝辞