第3章 調査結果
lWikipediaと業者 1 1のHPを中心に閲 雪
猛覧した.批判的な 1 ロ ロ 1ページも閲覧した l lが,最後はWikieP l ldiaのみで回答した.1
図6 課題HにおけるS5の検索の様子
S5も他の協力者と同様のキーワードを用いて検索を行った.
S5はWikipediaとマイナスイオンを発生させるという機器を販 売する企業のHPを何度も閲覧しながら回答した.しかし,検索 の過程では,マイナスイオンの健康効果について批判的な記事を
発信している個人のHPを2度閲覧したが,回答の際には
Wikipediaと業者H:Pを根拠として挙げた.そして,検索前の判 断,3:どちらともいえない,から,4:あまり信じられない,
という検索後に判断の変化を下した.このことから,S5は検索 前には判断を保留したマイナスイオンの健康効果について,閲覧 した情報から懐疑的になったといえる.この判断には,検索の最 51
初と最後に閲覧したWikipediaの情報が影響していると考えら れる.検索の過程で批判的な記事も閲覧したが,その後は Wikiρediaと業者のHPだけを交互に閲覧したことで, S5にと
っては有用な情報ではなかったと判断し,根拠としての情報には 採択されなかったと考えられる,S5ほか否定的な判断の変化を
した協力者が根拠として選択したWikipediaについては本節の
まとめで述べる.
次に課題Hにおいて特徴的な行動を示した協力者について考
察する.
4.2.2.課題llにおけるS2の検索の様子
図7に課題HにおけるS2の様子を示す. S2は検索の前後で,
1:信じる,という肯定的な判断を変えなかった.S2は一度選 択したページから検索結果レベルに戻り,もう一度同じページを 閲覧するという行動が見られた.
検索レベル 検索結果レベル
1
ページレベル
マイナスイオン Aa
需騨一騨一腓幕,需騨糟閣 需一願.一一鴨騨一一一騨 ケ騨騨需需願需聯騨喩鼎騨璽騨一甲薗一騨一一一騨,♂一甲騨,願幣,願帰甲璽一璽一一曝■一璽一■甲一一一璽一冒一一■一一薗一璽,一瞥凹一聾糟騨騨一一一騨一 璽聯一
マイナスイオン 効果
1
8マイナスイオン リラックス 1
検索結果3ページ目
26
Cマイナスイオン リフレッシュ
幾覇鯵なページ
いウたん簾づて 霧震鶴毯鴎繍夢を繍難
6
図7 課題llのS2の様子 52
再度閲覧を行ったページは,医療関係の某協会が掲載しているマ イナスイオンの健康効果について批判的な記事であった.S2は 一旦このページを閲覧し,検索結果レベルに戻った後,検索結果 全体を見渡し,再度閲覧する様子が観察された.このことから,
S2にとってこのページがある程度重要性が高いものであると判 断したと考えられる.しかし,S2は批判的な情報を2度閲覧し たにも関わらず,回答の根拠にはマイナスイオン発生効果を謳う 機器を販売する業者のHPを挙げ,強い肯定的な判断を変化させ なかった.また,回答の際にも,業者HPの記述をそのまま書き 写し,批判的なページで閲覧した情報についての記述はなかった また,S2が検索に用いたキーワードからは,マイナスイオンの 健康効果を肯定するための情報を検索しようとしていたと推測 できる.これらのことから,S2の検索行動は一貫してマイナス イオンの健康効果を肯定するためのものであったといえる. 教 科書で挙げられている手続きから考えると,S2の行動は,自身 の判断を肯定するための情報だけを選択し,常に異なった見地か らの情報があることを意識しつつ検索を行ったとは言い難く,こ れは適切な検索の手続きではなかったといえる.
4.2.3.課題IIにおけるNs10の検索の様子
Ns10は課題Hにおいて,最も閲覧ページが少なかった協力者 である. 図8にNs10の検索の様子を示す.
53
検索レベル i検索結果レベルi ページレベル
マイナスイオン 健康効果
1
[〔トー一一[=強r醸こ普通に閲覧蟻 i END
l _____幽.」
げ コ ロココココロココ コ 業者HP まず検索結果から、ペー I lジのキャッシュを閲覧した1
L 一■ _ _ _ 一 _ _ _ _ _ 一■ ■■
「一騨暉一一一一一一一嗣「
1ページ内の記事を読んだ。I IL___________
図8 課題HにおけるNs10の検索の様子
Ns10は最初の検索キーワードを入力し,表示された検索結果 トップにあった業者HPを閲覧した.この際,通常のようにリン クをクリックするのではなく,ページのキャッシュを閲覧した.
このような行動をとった理由としてNs10は「入力した検索キー ワードが強調されて見やすくなるし,自分が必要と思うキーワー ド以外は不要だから」と答えた.これは,ページを効率よく閲覧 するためには,無駄な情報を省いて閲覧出来るため有効な手法の 一つであると考えられる.しかし,Ns10の発言からは,自身が 必要とする情報以外には目を向けない,という意識があった可能 性も伺える.これは,ページのクロスチェックを行わなかったり,
一度も検索キーワードを変更したりすることなく検索を行い,検 索後の判断において,1:信じる,という事前の判断を変化させ なかったことからも,Ns10はマイナスイオンの健康効果を信じ ており,疑いのないものなのであり,前述のS2と同様にそもそ も検証する必要がないほどの事実であるという認識を持ってい る可能性が示された.検索後に根拠とした情報についてどのよう に考え,それを選択したのか尋ねたところ「詳しく載っている優 しいサイトがあり,十分に情報を集めることができたから」と答 54
えた.これは,既有知識として持っていたマイナスイオンの健康 効果についての考えと一致する情報を発見し,他者から肯定的な 同意を得られたと考え,情報の発信者が誰なのかを検証しないま ま,異なった見地からの情報を検索せずに満足してしまい,掲載 された情報を鵜呑みにしたと考えられる.なお,同様の行動は S6についても見られた.
4.2.4.課題11の考察まとめ
この課題について協力者に共通して見られた行動としては,
・Ns5を除く協力者は,発信者についての情報を検証しようと しなかった.
・自身の判断を肯定するような情報ばかりを検索する様子が見
られた.
・掲載情報の不確かさを知りながら,根拠としてWikipediaを
挙げた.
という点が挙げられる.
この課題においてはWikipediaが回答の根拠として最も多く 示されたが,Wikipediaのように,ユーザが自由に内容の編纂を 行うことが出来るサイト(Wiki)は,ある事柄についての肯定的・
批判的な情報が網雍的に掲載されているため,未知の事柄につい ての概要を掴むには有用なものである.しかし,自由に編集が可 能であるため,項目の内容が時間の経過と共に,常に変化し続け るという問題が有る.また,悪意のあるユーザによって意図的に 55
嘘の情報に改ざんされてしまうという「荒らし」行為も頻繁に起 こり,編集を行ったユーザが誰なのかという情報も掲載されてい ないため,これのみを根拠とした判断は避けるべきである4.ま た,掲載された内容については,ユーザ問で議論が行われている 最中といった項目もあるが,その議論の過程についても閲覧する ことが可能であるため,項目のどの箇所について議論がなされて いるのかを把握することで,不確かな情報については判断を保留 して情報の収集を行うことが可能である.また,記事中には出典 や引用が示されていることが通常である.これはWikipediaの記 事がユーザによって編纂可能であることから,その信愚性を高め るために,著者には引用や出典を示すことが求められ,ソースの 不確かな記事や記述については,他のユーザによって指摘され,
削除される可能性があるためである.そのため,Wikipediaを閲 覧する際には,そういった引用や出典までも閲覧し,掲載された 情報が確固たる根拠に基づいて記述されているのかを確認しな ければならない.S5を含むWikipediaを回答の根拠として選択 した協力者には,そういった出典について閲覧しようとする行動 が見られなかったが,協力者に検索終了後に行ったインタビュー からはWikipediaに掲載された情報の不確かさについての知識
を有している旨の発言が確認された.つまり,協力者は
Wikipediaに掲載された情報の不確かさを知りながら,自身の判 断の根拠として使用したことになる.
4アメリカのミドルペリー大学では,学生がレポートを作成する 際にWikipediaからの引用を禁止しており(Middlebury College 零oo7), Wikiの情報ソースとしての信愚性の低さを表している.
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4.3.課題lllについて
本課題においては,ほとんどの協力者で判断の変化が同じであ ったが,その検索行動についての共通点は,検索に用いたキーワ ードの他には見出せなかった.これは,本課題について協力者が 回答の根拠として挙げた情報が,非常に多岐に渡ったため,典型 的なパターンを見出すことが出来なかったためである.本課題で 回答の根拠として挙げられた情報と課題1・Hで挙げられたもの を比較のため表9に示す.
挙げられた情報の種類は,課題1:4種類,課題H:3種類,
課題皿:8種類,と課題皿で挙げられた情報の種類が多岐に渡っ ていることが示されている.このように根拠とした情報が協力者 間で異なった原因としては,本課題(解決に専門的な知識を要す る課題)では特に,「何が問題なのか」,「解決のためにどのよう な情報が必要か」といった点について検索前のプランニングが非 常に重要であり,解決すべき問題が課題文の中で示されている課 題1・1と比較して,協力者によって検索を開始する際に目的と
した情報が異なったためであると考えられる.
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