-P P 非形成
A.3 HC 法の補足
となる。これにFourier変換を施すことにより、パワースペクトルI(ω)は、
I(ω) = 1 2πA2
∫ ∞
−∞
dτe−iωτcos(Ωτ) exp [−(∆ω1+ ∆ω2)|τ|]
= A2 2π
∫ ∞
−∞
dτe−i(ω−Ω)τexp [−(∆ω1+ ∆ω2)|τ|]
= A2 π
(∆ω1+ ∆ω2)
(ω−Ω)2+ (∆ω1+ ∆ω2)2 (A.43)
と計算できる。これは2つのレーザーの角周波数の中心値の差Ωを中心としたFWHM∆ω1+ ∆ω2の
Lorentzianに比例したスペクトルである。このようにして、ビートによって2つのレーザーの線幅の合
計を観測することが出来ることが分かった。
コヒーレント時間
コヒーレント時間に関して簡単に補足する。
(A.36)式 より、電場の大きさがE、角周波数ω、線幅が∆ωであるレーザーの規格化された自己相関
関数は、
⟨E(t)E(t+τ)⟩
|E|2 = cosωτexp(−∆ω|τ|) (A.44) と表される。 (A.44)式 のうちexp(−∆ω|τ|部分は、同一レーザーによる電場が線幅の大きさ∆ω に依 存して、時間差τ にしたがって相関を失っていくことを意味する。すなわち、
τc≡ 1
∆ω (A.45)
として、τcが線幅∆ωのレーザーのコヒーレント時間を表す。
このとき、Ep(r)は第 A.1節の (A.2)式 より、
Ep(r)= [
r− e−iφgt2 1−e−iφgr
]
Epi (A.48)
と表せる。ただし、ϕは光が共振器を1周した際の位相を表す。r, tはそれぞれoutput couplerにおける 電場の反射率と透過率を表し、1−gは共振器を1周する際の電場の損失率を表す(第 A.1節参照)。
また、s偏光に関しては共振の効果を無視するため、
Es(r)=rEs(i) (A.49)
と表せる。
ここで、HC法のセットアップの概念図を 図A.4に掲載する。
ビームスプリッター
λ/ 波長板:
共振時に ける 偏光の 向き ら °傾ける W P i
E , E 出力
I I
ig :
I – I に比例
E , E
図A.4 HC法のセットアップ概要。 共振器の出力光からビームスプリッターで分けた光をHC法の
シグナルに利用している。E1はp偏光成分、E2はs偏光成分に対応する。
ビームスプリッターで反射された光について、p偏光の成分をE1とし、s偏光の成分をE2とする。こ のとき、0≤α1≤1、0≤α2≤1として、
E1=α1Ep(r) (A.50)
E2=α2Es(r) (A.51)
と表すことができる。
errorシグナルを取得するために用いるビームスプリッターは、無偏光ビームスプリッター(NPBS)お よび、偏光ビームスプリッター(PBS)を想定している。
NPBSを用いる場合、理想的には偏光によらず一定の割合で光を反射するためα1≃α2となる。
PBSの場合は、理想的にはα1= 0、α2 = 1となるが、現実にはp偏光成分もわずかに反射してしま い、α1>0となる。
λ/4波長板で偏光の変換を受けた後のp偏光成分をEa、s偏光成分をEbと表す。このとき、ジョーン ズベクトルを用いて、
Ea = (1 0
0 0
) ( cosπ4 sinπ4
−sinπ4 cosπ4
) (e−π4i 0 0 eπ4i
) (cosπ4 −sinπ4 sinπ4 cosπ4
) (E1
E2 )
= 1
√2(E1+iE2) (A.52)
Eb= (0 0
0 1
) ( cosπ4 sinπ4
−sinπ4 cosπ4
) (e−π4i 0 0 eπ4i
) (cosπ4 −sinπ4 sinπ4 cosπ4
) (E1
E2
)
= 1
√2i(E1−iE2) (A.53)
のように計算できる。
ここで、それぞれに対応する光強度Ia,bは、
Ia,b= 1
2cϵ0|Ea,b|2 (A.54)
となる。バランス検出器の2つの受光面でIa, Ib に対応する光強度を取得するため、観測されるerror signalはIa−Ibに比例する。
一般的なHC法のセットアップにおいてはNPBSのようにα1≃α2となる素子を用いてerror信号を 取得する。このとき、得られるerror信号の挙動は以下の式:
Ia−Ib∝cosθsinθ T Rsinϕ (1−G)24Gsin2(
φ 2
) (A.55)
のように表される。
θ= π4、R= 0.99、T = 0.01、G= 0.99を仮定し、α1=α2= 0.1としたときのerror信号強度の計算 値をプロットしたものを 図A.5に示す。
共振器を光が1周するときの位相に関して、周期2πで分散型のerror信号の波形が現れる。特に、共 振点であるϕ= 2mπ(mは整数)の付近で鋭い傾きを持つ。
一方で、本実験ではerror信号の取得にPBSを利用した。全くp偏光を反射しない、理想的なPBSで
はerror信号を取得することは出来ないが、現実的なPBSでは1%程度のp偏光の反射が存在する。そ
こで、α1= 0.01, α2= 1を仮定した場合のerror信号の挙動を数値計算し、 図 A.6にプロットした。
error信号の波形および大きさに関して、ほとんどPBSを用いた場合と変わらない結果となった。PBS
を用いたerror信号の取得は必ずしも一般的な方法ではないが、問題なくHC法で使用することが出来る。
-5 0 5 -0.02
-0.01 0.00 0.01 0.02
位相φ[r ] rror信号強度[Ar .]
図A.5 NPBSを用いて取得したerror信号強度の計算値。 縦軸は任意であり、横軸は共振器を光が 1周するときの位相である。2π毎の周期で分散型のerror信号が現れる。
-5 0 5
-0.02 -0.01 0.00 0.01 0.02
位相φ[r ] rror信号強度[Ar .]
図A.6 PBSを用いて取得したerror信号強度の計算値。 縦軸は任意であり、横軸は共振器を光が1 周するときの位相である。2π毎の周期で分散型のerror信号が現れる。