第19回連載 私たちが投資において合理的な行動をなかなか取れない原因は人間固有のバイアスにあるため、それを回避する策として、前回は自分の意思を極力排除してあえて資産形成を「仕組み化」することを提案しました。具体的な方法としては分散投資、長期投資、積立投資などがありますが、まず分散投資に関して、なるべく多くのものに投資をすることによって投資効率が高まるという効果について説明しました。今回は二つ目の長期投資を取り上げます。
お金がお金を産む効果:複利効果
長期投資には二つの効果があります。一つはお金がお金を産む「複利効果」で、もう一つは長期で見るとプラスとマイナスがならされる「時間分散効果」です。 まず、複利効果についてお話しします。100万円を投資する場合、毎年3%のリターンが得られると想定すると、運用で得られたリターンをその都度確保して再投資しないケースでは元本は一定で、資産は毎年100万円の3%、つまり3万円ずつ増えます。元本とリターンの合計は1年目が103万円、2年目が106万円、3年目が109万円となり、こうして計算されるリターンを「単利リターン」と呼びます。 一方、運用で得られたリターンを再投資する場合は、リターン の分だけ元本が毎年増えていきます。1年目は100万円の3%なので元本は3万円増えて103万円になり、2年目は103万円に対して3%のリターンが得られるので元本は3万900円増えて106万900円になります。単利の場合、2年目は106万円ちょうどでしたので、こちらのほうが900円多くなります。このようにリターンを再投資した場合のリターンのことを「複利リターン」と呼び、複利リターンと単利リターンの差が「複利効果」となります。 2年間で900円という差は子供の小遣い程度ですが、実は複利効果が本領を発揮するのは長期投資においてなのです。複利効果は時間の経過とともに加速度的に大きくなり、元利合計は雪だるま式に膨らんでいきます。先ほどと同様、元本100万円で毎年3%のリターンを得られるケースで
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歳から65
歳までる」長期投資の大きなメリットの一つである複利効果なのです。 ならない106万円にもなります。これが「時間を味方につけ 運用では326万円と、その差は2年間の900円とは比べ物に 資を続けた場合、元利合計は単利運用の220万円に対し、複利
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年間投 プラスとマイナスが相殺される効果:時間分散効果 次に、時間分散効果についてお話しします。投資を始めるタイ※本記事中の発言は筆者の個人的な見解であり︑筆者が所属するアライアンス・バーンスタイン株式会社の見解ではありません︒ 今回の川柳
オヤジでも 時間を味方に 資産運用
ミングを迷う人も多いと思いますが、実は長期投資であれば、いつ始めてもリターンにあまり大きな差はないのです。なぜなら、その間のリターン変動のマイナスとプラスが互いに打ち消されるためであり、これを「時間分散効果」と呼びます。 では、実際に世界株式 ※1の過去 によって明暗が大きく分かれ、一番リターンが良かった人が と最低の年率リターンを見ると、1年間では投資を開始した時期 の動きを使って、それを確かめてみましょう。投資期間別の最高40
年(1972年から2011年)もの利益を獲得したのに対し、一番リターンの悪かった人は
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% びると、年率リターンは最高が るタイミングが非常に重要になってきます。投資期間が5年に延 もの損失を被っています。したがって、短期投資ではスタートす52
%くして 間に比べると差がかなり縮まってきました。さらに投資期間を長
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%、最低がマイナス8%と1年 軽にできます。 ングを気にする必要がない長期投資であれば、個人投資家でも手 それを当てるのはプロでも難しいのです。しかし、始めるタイミ がるタイミングを当てることができれば見返りは大きいですが、 わらず、結果的には相応のリターンが得られるのです。市場が上 的にはマイナスとプラスが相殺されるため、スタート時期にかか どんなに大きく変動しても投資を続ける覚悟が必要ですが、長期 は意外と簡単であるということです。もちろん、それには市場が つまり、長期投資をするという決意さえ固めてしまえば、投資 なり、差はもっと小さくなります。30
年にすると、年率リターンは最高が9%、最低が5%とオヤジも時間を味方にできる!
時間を味方につける長期投資は、このように資産形成では非常に大事です。えっ、今
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歳で定年までに5年しかないのに、どう いかもしれません。 れるため、必ずしも資産形成のゴールを定年に設定する必要はな ほうでお話ししたように、今や老後の人生が非常に長いと考えら の時間はあまり残されてないかもしれませんが、当連載の最初の やって時間を味方につけるのか、ですって?確かに定年“まで”65
歳の男性であれば2人に1人が84
歳まで、4人に1人がと予想される状況では、老後の人生が まで生き、しかも医療の発展に伴い平均余命がますます長くなる
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歳65
歳からを続ける必要があるでしょう。したがって、現在 「長生きリスク」に対処するには、定年後もできるだけ長く投資 金を用意したつもりでも、想定以上に長生きして蓄えが底をつく も決して珍しくありません。公的年金以外に自分で十分な老後資 ※2
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年以上続くこと 効果を享受できると考えられます。 さんもまだまだ長期の投資期間が確保でき、複利効果や時間分散 定年“まで”ではなく定年“後”まで考えれば、オヤジ世代の皆 ても少なく見積もってもあと数十年は投資期間があると言えます。55
歳の方であっこれまでは老後にリスクを取った運用をしてはいけないというのが通説でした。しかし、超高齢化社会が到来しつつある日本では、長生きリスクを回避するためにも、定年“後”の期間も活用し、賢く運用することが必要だと思います。
※1 MSCIワールド・インデックスのデータ(出所:MSCI)※2 厚生労働省 平成
23年簡易生命表より
35 オヤジの幸福論
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第 回1942年生まれ︒滋賀大学学長︒専攻は計量経済学︑環境経済学︒著書に﹃市場主義の終焉﹄等︒
正 体 不 明 の ア ベ ノ ミ ク ス
六月二七日、私にとっては三年半ぶりの書き下ろし『日本経済の憂鬱~デフレ不況の政治経済学』を上梓した。
執筆が峠を越すかに思えた咋年一二月、衆議院議員選挙で自由民主党が圧勝し、三年三カ月ぶりに政権が交代した。安倍晋三首相は、脱デフレの経済対策を最優先課題に位置づけ、アベノミクスという用語がマスコミをにぎわした。当初、私にとって正体不明だったアベノミクスの本性を政治経済学的に解き明かすことが、本書の目指したところである。
そのために、保守主義、リベラリズム、リバタリアニズ ム、社会民主主義、社会主義市場経済など、政治・経済体制を下支えする理念・思想を対比させ整理したうえで、一九九三年の細川内閣発足による「
アベノミクスを位置づけたのである。 れる価値を脅かす憲法改正への「必要な経過点」として、 主義、民主主義という(少なくとも私には)普遍的と思わ その本性を「国家資本主義」と見定めた。個人主義、自由 した安倍政権のアベノミクスの正体を私なりに解き明かし、 を総括した。そして、「失われた二〇年」を経たのちに登場 それ以降の長期低迷といった日本経済の躍進と挫折の歴史 で、高度成長期、オイルショック克服、バブル経済の宴、 日に至るまでの、日本政治の二〇年史を振り返った。次い
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年体制」の崩壊から今138
国家資本主義 の 復活を ね ら う ア ベ ノ ミ ク ス の あ や う さ
私事にわたるが、二〇一〇年四月に滋賀大学長に就任して以来の三年間余り、私は一冊も著書を刊行できなかった。それまでは、訳書や編著を含めれば、少なくとも毎年二冊の書物を刊行し続けてきたのだが、国立大学法人の学長職は思いのほか忙しく、ほとんど筆を断ったまま二年を経た。昨年二月、「失われた二〇年」をテーマとする書物の執筆をダイヤモンド社の編集者から依頼され、一念発起して筆を起こしたのだが、多忙にかまけて遅々として筆は進まず、年を越す羽目になった。
折しも昨年末の衆院選で、自民党が圧勝、民主党は惨敗を喫した。そして一二月二六日、安倍内閣が「三本の矢」による脱デフレを金看板にかかげて登壇したのである。
インパクトがもっとも大きかったのは第一の矢「大胆な金融政策」だった。二%のインフレ目標が達成されるまで無制限の量的金融緩和(銀行からの国債買い上げ)、すなわち「異次元」金融緩和を推し進めるとの黒田東彦日銀総裁の声明を、株式・外国為替市場とも好感をもって受け止め、五月二二日までは株高と円安が一本調子で進んだ。続く第二の矢「機動的な財政政策」では、二〇一二年度補正予算と一三年度本予算で、「国土強靭化」の名のもと公共事業費が大盤振る舞いされた。肝心の第三の矢「民間投資を喚起する成長戦略」は、第一弾、第二弾、第三弾と三段ロケットさながら放たれたのだが、その効果についての評価は割れている。 アベノミクスが歓迎された背景には、無理からぬ日本の事情がある。 一九九一年三月にバブル崩壊不況に陥って以来、実質経済成長率は平均年率〇・九%、名目成長率はマイナス〇・二%といった有り様である。雇用者に占める非正規雇用者の比率は、一九九五年に二〇・八%だったのが、二〇一三年には三六・二%にまで膨れ上がった。この間、雇用者数そのものは、ほぼ一定数を保っている(労働力調査)。非正規雇用者のうち、五人に一人は正社員の仕事にありつけず仕方なく──好き好んでではなく──非正規の仕事に就いている潜在的失業者とのことだ。一九九九年度以降、二〇〇七年度をのぞき、賃金は下がり続けている。大学生の多くは就職難にあえぎ、低賃金労働に甘んじざるをえない中高年者も多い。老若を問わず、生活苦、失業、事業不振、就職失敗など「経済・生活問題」に根ざす自殺者数も増加している。 ゼロ成長と正規雇用の絞り込みがもたらす、人びとの「苦しみ」と「痛み」は極限にまで達していた。にもかかわらず、日本人はなぜか寡黙だ。逆に、政治家も経済学者も「声なき声」を聴くに足るだけの感性を欠いていた。
経 済 無 策 だ っ た 民 主 党 政 権
民主党が圧勝した二〇〇九年衆院選マニフェストはリベラル色が横 おういつ溢した立派な出来だった。だが、過度に分配面