4.9 ポテンシャル障壁とトンネル効果
4.9.1 Gamov の透過因子
長方形のポテンシャル障壁のとき、エネルギーがE < V0のときの透過率Tは、式(4.516)で した。この式で、
l0a=
√2m(V0−E)
~ a1 (4.522)
の場合を考えてみましょう。(ちゃんと無次元量になってますか?)つまり、~が小さいと思え るようなマクロな場合ですね。このとき、
sinh2(2l0a)' e4l0a
4 (4.523)
ですので、
T ' 16E(V0−E) V02 e−4l0a
= exp [
−4l0a+ log16E(V0−E) V02
]
' e−4l0a (4.524)
となります。
前節では、壁の厚さd= 2aですから、
T 'e−2l0d (4.525)
ですね。
一般に長方形じゃない場合でも、ポテンシャルを長方形を並べたものだと近似すると、
T ' exp [
−2∑
i
l0i∆x ]
' exp [
−2
~
∫ b
a
√2m(V(x)−E)dx ]
(4.526) という近似式を得ることができます。これをGamovの透過因子と呼びます。
Chapter 5
量子力学の理論体系
これまで、いろいろな問題を解いてみて、量子力学の仕組みが少しずつわかってきましたよね。
ここでは、その一般論を学びましょう。すこし 、議論が抽象的ですが、そのうち慣れます。
5.1 ヒルベルト 空間
量子力学を構成するのは、「波動関数」と「演算子」の2つです。波動関数はスカラー倍や足し 算が定義されているので、ベクト ルだと思うことができます。また、演算子について、xˆやpˆ、 またこれらの足し算や掛け算でつくったQ(x, p)も線形演算子であるってことは見ましたね。こ れら、演算子は波動関数にかかります。つまり、
量子力学の世界 =線形代数 (5.1) です。
関数がベクト ルっていうイメージわいてますか?ベクト ルはベクト ル空間に住んでますけ ど、関数もそうです。関数を元とする空間ってのがあります。その空間なんですが、物理をやっ てるので関数全部でつくった空間ってわけにはいかないんですね。そうです。波動関数となる ためには、規格化できなければなりません。
∫
|Ψ|2dx= 1 (5.2)
ですね。ってなわけで、関数のうち、「2乗可積分」っていう条件を満たすやつらだけでできた 空間ってのを考えます。
∫ b
a
|f(x)|2dx <∞ (5.3)
を満たすf(x)の集合です。これを「ヒルベルト 空間」といいます。積分範囲をaからbまでに しましたが、物理の問題のほとんどの場合で−∞から∞ですよね。
これからは、関数もベクト ルっぽく書きましょう。つまり、
|fi (5.4)
こんな風に。これを縦ベクト ルの気分で使いましょう。ベクト ル空間っていっても、関数の場 合はその次元(基底の数)は無限です。(フーリエ級数展開を思い出そう!)それでも、線形代 数で習った定理は結構成り立ちます。
ベクト ル空間ができたら、つぎは内積を定義してみたくなりますよね。自然な定義は hf|gi ≡
∫ b
a
f(x)∗g(x)dx (5.5)
です。hf|っていうのは、横ベクト ル(みたいなもん )です。この定義から
hg|fi=hf|gi∗ (5.6)
っていうのがわかります。
つぎに、ベクト ルの正規直交系ってのはその名のごとく、
hfm|fni=δmn (5.7)
なるベクト ル(つまり関数)の組{fn}です。これらが、完全系をなしているときは、例のごと く、すべての関数はこれらの線形結合で書き表すことができます。
f(x) =
∑∞ n=1
cnfn(x) (5.8)
ですね。ベクト ルの表式では
|fi=
∑∞ n=1
cn|fni (5.9)
です。このとき、
hfn|fi = hfn| ( ∞
∑
m=1
cm|fmi )
=
∑∞ m=1
cmδnm
= cn (5.10)
ですね。式(5.9)と式(5.10)を組み合わせると、
|fi=∑
n
|fnihfn|fi (5.11)
となります。フーリエの積分公式っていうのはこんな感じですよね。