性もまた、子どもたちの展望を広げることに役立 つ。文化的背景や病状、年齢など、みんなが「違う」
場においては、違いのあることが普通であり、逆 に「みんなが同じ」であることが普通とは言えな いことに気づく。こうしたことによって、子ども たちは自分が孤独な存在ではないということに気 づくのである。
セラピューティック・レクリエーションは、そ れが娯楽的なものであるからこそ効果的なのであ る。子どもたちは活動を楽しみ、新しい活動に参 加することを切望する。挑戦し、困難に立ち向か
い、冒険をして、新しいことをやってみる。一人 ひとりのこうした姿勢が、プログラムのセラピー としての効果を高める。子どもたちは楽しみなが ら、よい自己イメージを築き、自尊心を高め、自 信や寛容さ、理解し協力し合う力を身につける。
4.キャンプを支える要素
4.1 キャンパー〜私たちのキャンプの中心に あるもの
すべての Hole in the Wall Camps は、それぞれ に異なるキャンパー募集規定と手順を持ってい る。共通したルールとしてあるのは、そのキャン プで医療的に対応できる病気、病状の子どもを受 け入れるということだけである。
キャンパーは、パートナー病院のネットワーク を通じて募集される。各病院には参加可能な人数 が提示され、病院はそれに応じて参加申し込みを する。病院にはそのキャンプの参加基準もあわせ て示されるので、その基準に基づいて候補者が選 ばれる。
各キャンプは申込書を受け取ると、参加基準に 照らし合わせて参加可能かどうかを確認すると ともに、そのほかにキャンプの参加に影響する ことがらがないかを確認する。こうした二段階の チェックを経て参加が決定し、最終意思確認を行 う手紙がそれぞれに送られる。その後、インテー クカードのやりとりや電話での相談を行うが、こ ういったやりとりは必要に応じて、子どもがキャ ンプに到着するまで続けられる。
写真3 自分ではできないと思っているようなこ とにも挑戦する。その場合も、やるかど うかの判断はキャンパーにゆだねられる。
写真4 通常であれば参加することは考えられない子どもたちにも、
キャンプを楽しむ機会が提供される。
JJCS 15 2012
4.2 医療体制
多くある病児を対象としたキャンプの中でも、
Hole in the Wall Camps の特徴と言えるのは、キャ ンプ場に完全な医療体制を設けていることであ る。すべてのキャンプには、さまざまな医療的な 状況に対応できる医療チームが設けられており、
20 年以上を経て、今では 50 以上の異なる状況 に対応できるようになっている。
すべてのキャンプには小児医療に対応した医療 センターがあり、手術室、診察室、薬局、ナー スステーションが備えられている。この医療セン ターでは、すり傷や虫さされ、腹痛、風邪といっ たものから化学療法まで、キャンプ中に必要なあ らゆる医療的ケアを提供する。
ちょっとした病院には負けないくらいの体制が 整えられているが、すべての医療サポートはあま り目立たないように配慮されている。医療スタッ フはジーンズにポロシャツといった姿だし、医 療センターで見かけるのと同じくらい頻繁に、カ ヌーに乗っている姿やロープスコースにいる姿を 見かける。このように、子どもたちが医療を意識 しないですむように配慮されているのだが、高品 質の医療センターがあって、プロの医療ケアがそ の場で受けることができるという条件がそろわな ければ、多くの子どもたちはキャンプに参加する ことができないのである。
4.3 スタッフ・トレーニング
Hole in the Wall Camps のトレーニング・プロ
グラムのゴールは、スタッフがキャンパーの人生 によい影響を与える存在になる能力を身につけ、
組織の使命を実行し、目標の実現に貢献できるよ うになることである。個々のキャンプにとっての ゴールは、現在の「最高の実践」を継続し、さら によりよい「最高」を目指す個別のトレーニング を実施することである。「最高」というのは常に 移動する目標であり、その言葉が示すものは常に 変わる。しかし、きちんとした評価を行うことで、
次の「最高」がどんなものであるかという共通認 識を持つことができる。
その実現のために、Hole in the Wall Camps 協 会は、それぞれのキャンプに、夏のキャンプス タッフに向けた以下の内容を含む一定時間以上の トレーニングの実施と、厳密なアセスメントを要 求している。
・多様性と文化的認識
・キャンパーが直面する社会心理的問題
・特定のニーズのある子どもに対する適切なケア
・包括性(inclusiveness)と適合(adaptation)
・キャンプ後のキャンパーとのコミュニケーショ ンと関係
・現場における尊厳
・ボランティアとの協働 など
4.4 ボランティア〜代えがたいリソース
ボ ラ ン テ ィ ア は、 世 界 中 の Hole in the Wall Camps にとって不可欠なものであり、最も重要 なリソースのひとつである。実際、ボランティア はスタッフの 50% 以上を占めており、彼らの力 なしでは運営することはできない。世界中のボ ランティアたちは、豊かな知識と経験を私たちの キャンプに提供している。彼らのかかわりと熱心 さ、エネルギーは Hole in the Wall の成功物語に は欠かせない要素である。
Hole in the Wall Camps では、すべての世代、
あらゆる分野のボランティアを世界中から受け入 れている。毎年、11,000 人を超える 18 歳以上 のボランティアが、彼らの経験、専門知識、そし て巨大な創造的エネルギーをキャンパーの人生を 変えるために注いでくれている。ボランティアと しての仕事にはさまざまなものがある。それは、
キャンプカウンセラーやプログラム指導者、協会 写真5 米ノースカロライナ州の Victory Junction
にある医療センター。カーレースの整備 場を模した外観だが、内部には十分な医 療設備が整えられている。
運営のサポートやコンサートやマラソンといっ た資金集めのイベントでのお手伝いまで幅広いも のである。そしてボランティアの多くは、キャン プでのボランティア活動を終えた後も、長期にわ たって、本当にさまざまな方法で、全力でキャン パーのためにかかわってくれている。
ボランティアは注意深く選抜され、十分なト レーニングを受ける。それは、キャンプを子ども たちにとって人生を変える経験にするために、そ して、キャンプに貴重な時間を提供しようと申し 出てくれたボランティア自身にとっても人生を変 える経験にするために必要なことなのである。
2011 年は、欧州連合が定めたヨーロッパ・ボ ランティア年だった。ヨーロッパにある Hole in the Wall Camps も私たちのボランティアを評価 し、より多くのボランティアの機会を促進する とともに、そのアイデアを世界中の Hole in the Wall Camps と共有することを目的にお祝いをし た。
5.究極のスタンダードを作る
Hole in the Wall Camps は、命にかかわる重い 病気の子どもたちのための医療環境の整ったキャ ンプの分野での世界のリーダーであり、よりよい キャンプを作ることが私たちの責任であると考え ている。それゆえ私たちは、キャンプにおける医 療水準を向上させ続けているし、目的に沿ったプ ログラム設計とセラピューティック・レクリエー ションモデルの実践を通じて、居心地がよく、安 全安心で、そしてなにより楽しい環境を作り上げ
ている。さらに、各キャンプが Hole in the Wall Camps の名前を掲げるにふさわしい実績を上げ ているかもチェックしている。このチェックに用 いられる基準は、アメリカキャンプ協会のキャン プ認定基準、あるいはそれに準ずる認定基準に 協会独自の項目を加えたものである。この基準は Hole in the Wall Camps の初期段階から、さまざ まなキャンプに関連する認定基準や既存の団体の トレーニング資料などを参考に、キャンプスタッ フの絶え間ない努力によって作られた。
Hole in the Wall Camps の活動は成長を続けて いるので、キャンプが重い病気の子どもとその家 族にとって、力を与え、元気づける、安全で安心 な環境だと明らかにすることが今まで以上に重要 になっている。そのため、私たちのような国際的 な組織において、常に最高を求め続けることでリ スクを減らすという文化を育てることは、どうし ても必要なのである。
同時に、「最高を求める」という考え方は、さ まざまな意味でインパクトを持ち得る。協会に とっては、「究極のスタンダード」の世界的ネッ トワークを作る鍵となるビジョンを提示すること ができる。一方、個々のキャンプにとっては、そ のことが学びの環境を整えることになるし、より 創造性を発揮し、さらにそこで作り上げたものを 他のキャンプと共有しようという意思を強めるこ とになる。
このような背景をもって協会としての基準は作 られており、アメリカキャンプ協会の認定基準に 示されたような一般的なキャンプが備えるべき項 目を備えた上で、協会として独自に、Hole in the Wall Camps が重い病気の子どもやその家族に人 生が変わるようなすばらしい経験を提供するため に必要な要素についても確認するようにデザイン している。それは、協会の基本理念に基づいてプ ログラムや医療体制、設備等の質を評価するもの で、Hole in the Wall Camps の品質を保証するも のである。
各キャンプは、3 年ごとにキャンプと医療の専 門家チームのチェックを受けるし、それ以外の年 には自己評価を行う。すべてのキャンプは、Hole in the Wall Camps のメンバーとしてこの基準に 合格しなければない。そして基準はキャンプから 写真6 多数のボランティアの働きなしにキャン
プを行うことはできない。