第 3 章 Fourier 変換 87
3.2 Fourier 変換の性質
関数f(x)のFourier変換f(λ)b をfに対する演算Fをと見なして f(λ) =b 1
√2π
∫∞
−∞
f(x)e−iλxdx
=F[f](λ) (3.2′)
と表す。また、Fourier逆変換を演算的に捉えて、記号F−1を使って F−1[g](x) = 1
√2π
∫∞
−∞
g(λ)eiλxdλ (3.8)
と表す。このとき、定理3.8のFourier反転公式はF−1が確かにFの逆演算 F−1[
F[f]]
=f (3.7′)
であることは次のようにしてわかる。
F−1[ F[f]]
=F−1[f](x)b Fの定義から
= 1
√2π
∫ ∞
−∞
f(λ)eb iλxdλ F−1の定義から
=f(x) 定理3.8のFourier反転公式から.
次の定理はFourier変換に関係した計算を実行する上でしばしば有用である。
定理3.18 [Fourier変換の基本的性質]
fおよびgがRデ定義された微分可能関数で、大きな|x|でf(x) = 0であるとす る。このとき、次の性質が成立する。
(1) Fourier変換およびFourier逆変換は線形演算子である。定数cに対して、
F[f+g] =F[f] +F[g], および F[cf] =cF[f]
F−1[f+g] =F−1[f] +F−1[g], および F−1[cf] =cF−1[f].
(2) fとxnの積のFourier変換は次で与えられる。
F[xnf(x)](λ) =in dn
dλnF[f](λ) (3.9)
(3) fとλnの積のFourier逆変換は次で与えられる。
F−1[λnf(λ)](x) = (−i)n dn
dxnF−1[f](x) (3.10)
(4) fのn階導関数のFourier変換は次で与えられる。
F[f(n)(x)](λ) = (iλ)nF[f](λ). (3.11)
(5) fのn階導関数のFourier逆変換は次で与えられる。
F−1[f(n)(λ)](x) = (−iλ)nF−1[f](x). (3.12) (6) 関数fの平行移動x−aのFourier変換は次で与えられる。
F[f(x−a)](λ) = e−iλaF[f](λ). (3.13) (7) 関数fのスケール変換bxのFourier変換は次で与えられる。
F[f(bx)](λ) =1 bF[f]
Åλ b ã
(3.14) (8) x <0についてf(x) = 0ならば
F[f](λ) = 1
√2πL[f](iλ), (3.15)
ここで、L[f]はfのLaplace変換 L[f](s) =
∫ ∞
0
f(x)e−xsdx である。
証明
1. Fourier変換の線形性は直ちに次の積分の線形性から示すことができる。
F[f+g](λ) = 1
√2π
∫ ∞
−∞
[f(x) +g(x)]e−iλxdx
= 1
√2π
∫ ∞
−∞
f(x)e−iλxdx+ 1
√2π
∫∞
−∞
g(x)e−iλxdx
=F[f](λ) +F[g](λ)
F[cf]cF[f]やFourier逆変換についても同様。
2.と3. fとxnの積のFourier変換 F[xnf(x)](λ) = 1
√2π
∫ ∞
−∞
xnf(x)e−iλxdx において、
xnf(x)e−iλx= (i)n dn
dλnf(x)e−iλx を使って
F[xnf(x)](λ) = (i)n dn dλn
ß 1
√2π
∫ ∞
−∞
f(x)e−iλxdx
™
=(i)n dn
dλnF[f](λ).
Fourier逆変換についても同様。
4.と5. fのn階導関数のFourier変換 F[f(n)(x)](λ) = 1
√2π
∫∞
−∞
f(n)(x)e−iλxdx
で、部分積分を実行し、さらにfが無限遠で零になることを使うと境界項が落ちて
√1 2π
∫∞
−∞
f(n)(x)e−iλxdx=− 1
√2π
∫∞
−∞
f(n−1)(x) d
dxe−iλxdx
= (iλ) 1
√2π
∫ ∞
−∞
f(n−1)(x)e−iλxdx を得る。このプロセスをさらにn−1回繰り返して
√1 2π
∫∞
−∞
f(n)(x)e−iλxdx= (iλ)n 1
√2π
∫∞
−∞
f(x)e−iλxdx
= (iλ)nF[f](λ).
6.と7. 平行移動とスケーリングを組み合わせて、次を示そう。
F[f(bx−a)](λ) =1
be−iλa/bF[f](λ/b). (3.16)
Fourier変換の定義と変数変換s=bx−aおよびdx=ds/bを使って F[f(bx−a)](λ) = 1
√2π
∫∞
−∞
f(bx−a)e−iλxdx
= 1
√2π
∫∞
−∞
f(s)e−iλ(s+ab )f racdsb.
したがって、
F[f(bx−a)](λ) = e−iλab 1
√2π
∫∞
−∞
f(s)e−iλb sds b
= e−iλab 1 bF[f]
Åλ b ã
8.Laplace変換の定義から直ちに得られる。 ■
例3.19 関数f(x) =χ[−π,π](x) sin 3xのFourier変換は、演習3.12で計算したよ うに
f(λ) =b −3√ 2isinλπ
√π(9−λ2)
である。区間[−π, π]上でのf′= 3 cos 3xは、例3.11で取り上げた関数の3倍に等 しい。上の定理3.18(1)から、例3.11のFourier変換の結果より
“f′(λ) =3λ√ 2isinλπ
√π(9−λ2) (3.17)
である。しかしながら、“f′(λ)は 、定理3.18(4)を使ってf(λ)b から直接得られ
“f′(λ) =iλf(λ) =b −iλ3√ 2isinλπ
√π(9−λ2) である。これは式(3.17)に等しい。
(a)
(b)
図3.4 (a)f2(x) =χ[−π/2,π/2](x) sin 6xのグラフ。f(x) =χ[−π,π](x) sin 3x
(演習3.12)としたときf2(x) =f(2x)である。図3.1(a)と比べると、x軸に1/2 圧縮した形になっている。(b) Fourier変換F[f2(x)](λ) =F[f(2x)](λ)のグラ フ。図3.1(b)と比べると、|λ|= 3付近で見られたf(λ)b のピークは|λ|= 6付近 にあり、高さも1/2である。F[f(2x)](λ)はfb(λ)をλ軸に2倍引き延ばし値を 1/2倍にした関数(1/2)fb(λ/2)に等しい。
例3.20 Fourier変換のスケーリング公式 F[f(bx)](λ) =1
bF[f]
Åλ b ã
(3.14′) の意味を考えてみよう。この表式は、fの周波数が大きくなるとそのFourier変換が 引き延ばされることを示していることが次のようにしてわかる。
b > 1のとき、f(bx)の関数のグラフはf(x)のグラフをx軸方向に1/bに圧 縮したものである。演習3.12で取り上げた関数f(x) = χ[−π,π](x) sin 3xの場合、
f(2x) =χ[−π/2,π/2](x) sin 6xで、確かにx軸に1/2圧縮した関数になっている(図 3.4(a))。興味深いのは、この関数のFourier変換F[f(2x)](λ)である。図3.4(b)に 示したように、F“(λ)の|λ|= 3付近にあるピークは|λ|= 6付近となり、しかもそ の値は半分になっている:F[f(2x)](λ) = 1/2fb(λ/2)である。つまり、fのグラフを x軸に沿って圧縮して周波数を増加させると、そのFourier変換は引き延ばされる。
逆に、x軸に沿ってfを拡大して周波数を減少させると、そのFourier変換は圧縮さ れる。
節1.6.2で定義1.74した内積空間V からWへの有界線形作用素T :V →W の 随伴または共役演算子T†:W→V は
⟨T†w|v⟩V =⟨w|T v⟩W
で定まる線形作用素である。Fourier変換の性質に関する定理3.18から明らかなよう
に、Fourier変換作用素Fも線形演算子であり、その随伴性を考えることができる。
次の定理は、Fourier変換Fの随伴はFourier逆変換Fourier変換F−1であること を教えている。
定理3.21 (Fourier変換の随伴) 関数fおよびgがL2、つまり2乗可積分とする。
このとき
⟨F[f]|g⟩L2=⟨f| F−1[g]⟩L2. (3.18)
証明
⟨F[f]|g⟩L2=
∫ ∞
−∞
fb∗(λ)g(λ)dλ
= 1
√2π
∫ ∞
−∞
∫ ∞
−∞
f∗(t)eiλtdt g(λ)dλ fbの定義から
=
∫ ∞
−∞
f∗(t) Å 1
√2π
∫∞
−∞
g(λ)eiλtdλ ã
dt 積分順序を交換
=
∫ ∞
−∞
f∗(t)F−1[g](t)dt F−1の定義
=⟨f| F−1[g]⟩L2.
■
次のPlancherelの公式はFourier変換および逆変換はL2内積を保存することを示 している。
定理3.22 (Plancherelの定理) 関数fおよびgがL2とする。このとき、
⟨F[f]| F[g]⟩L2=⟨f|g⟩L2
⟨F−1[f]| F−1[g]⟩L2=⟨f|g⟩L2
特に
∥F[f]∥L2=∥f∥L2.
証明
⟨F[f]| F[g]⟩L2=⟨f| F−1F[g]⟩L2 定理3.21
=⟨f|g⟩L2 定理3.8の反転公式
これらの等式は、区間[−π, π]上の関数のFourier級数におけるParsevalの等式
(定理2.45) 1 π
∫π
−π
|f(x)|2dx=|a0|2+
∑∞ k=1
|ak|2+|bk|2 (2.49′) 1
2π∥f(x)∥2= 1 2π
∫ π
−π
|f(x)|2dx=
∑∞ k=−∞
|αk|2 (2.50′)
に似ているために、これらもParsevalの等式ということがある。 ■