第 3 章 FHFDC(Fast Hand-overs for FMC in premises with Dual Con-
3.4 FHFDC の構内 FMC 制御
3.3.2 FHF の考察
L3ハンドオーバのFHFでは,IPv4,IPv6のそれぞれに対応しており,トンネリングに よるオーバーヘッドが発生しないため,スループットの向上が見込まれる.デュアルコネク ション方式と組み合わせることでIPアドレスの取得と移動検出をVoIP通信と平行して行 えるため,L3ハンドオーバ時間を短縮できる.また,MNとCNの同時ハンドオーバに対 応している.以上の理由からFHFは既存技術よりも有用である.
3.4 FHFDC の構内 FMC 制御
デュアルコネクション方式とFHFの併用方式であるFHFDC(FHF with Dual
Connec-tion)では,構内FMCにおいて固定電話からの着信呼を構内のMNに転送することで,MN
を固定電話の子機として利用する.また,構内を移動しても通話が途切れないシームレスな
Wi-Fiハンドオーバが可能となる.以下に提案するFHFDCの構成要素について述べる.
3.4.1 シグナリングプロトコル
VoIP 通信におけるシグナリングプロトコルには,H.323,MGCP(Media Gateway Control Protocol),SIP(Session Initiation Protocol)がある.シグナリングプロトコルの 比較を表3.1に示す.
H.323は,PSTNとの接続性を維持しつつ,IPベースのネットワーク上で,音声,ビデ
オ,データ,ファクシミリのコミュニケーションを伝達する手段として,ITU-Tによって 開発された [20]最も早期に標準化されたシグナリングプロトコルであるため,対応してい る機器は多いが,複雑なプロトコル仕様であり,拡張性に乏しい.MGCPはMG(Media
Gateway) を制御できるプロトコルであるが,VoIPキャリア用に開発されたプロトコルで
ある.SIPはマルチメディアセッションの確立や維持,終了を行うために使われるアプリ ケーションレイヤレベルのシグナリング制御プロトコル[21]であり,テキストベースである ため,親和性や拡張性が高い.また,IETF(Internet Engineering Task Force)で標準化
3.4 FHFDCの構内FMC制御
が進められており,今後さらに多くの機器に実装されることが期待される.
表3.1 シグナリングプロトコルの比較
H.323 MGCP SIP
標準化団体 ITU-T IETF IETF
標準化時期 1996年 1999年 1999年 目的 マルチメディア通信 キャリアのVoIPサービス 通信セッション確立
データ形式 バイナリ テキスト テキスト
通信方式 Peer to Peer Master-Slave Peer to Peer
メリット 実装製品が多い 相互接続性が高い 実装が容易 デメリット 呼制御手順が複雑 拡張性が低い 標準化の遅れ
FHFDCでは,シームレスなWi-Fi BS ハンドオーバを実現するために拡張性や他方式
との親和性が重要であることから,シグナリングプロトコルに SIPを用いることとする.
また,固定網と接続するため SIPに対応したゲートウェイを設置する.音声符号化方式に は,VoIPキャリアとの相互接続性を保つたためにG.711を採用する.G.711は,64kbps のPCM(Pulse Code Modulation)音声符号化テクニック[21]であり,VoIPキャリアに 採用されている方式である.
3.4.2 FHFDC のシステム構成
FHFDC のシステム構成を図 3.4 に示す.ハンドオーバ前のネットワークを Home
Network として,IP サブネットが Home Network と異なるネットワークを Neighbor Network とした.固定網の CN から Home Network の固定電話(Fixed Phone)への着 信呼は,VoIPゲートウェイによって IP パケット化され,IP-PBX(IP-Private Branch
eXchange)により構内の登録された固定電話及び,MNに着信呼が転送される.これによ
3.4 FHFDCの構内FMC制御
Server とDHCP Server,PMS,HIPS によって構成される. IP アドレスが変化しない Home Network内でのハンドオーバは,PMSから構内のWi-Fi BS情報であるBSLを取得 し,ハンドオーバを行う.IPアドレスが変化するNeighbor Networkへのハンドオーバは,
HIPSのHOTによってCNとの通信を継続するためにMNがHOTU要求を送信する.
図3.4 FHFDCのシステム構成
3.4.3 FHFDC の考察
FHFDCは,Wi-Fi BSにハードウェアの改変が必要なく,MNのソフトウェアの改変で
実現可能である.また,ハンドオーバシステム群を構内に導入することでシームレスなハン ドオーバを行う構内FMCを構築でき,導入規模やコストが既存技術に比べて小さい.以上 の理由から,提案するFHFDCは既存技術よりも有用である.