面談者:林総経理(創業者)
1.企業概要
創業年度:2003年
資本金(授権):1,000万台湾元 従業員:4人
業務内容:新繊維の開発、繊維関係情報の収集
2.創業経緯
創業者R 総経理は、大学で高分子化学を学び、卒業後、台湾プラスチックに2年、同じ く合成繊維製造業に6年勤務した。2003年にスピン・オフし、当社を創業した。創業資金 6万台湾元は自己資金で賄った。
3.当社の業務について
当社は、台湾の繊維関連企業から繊維に関する問い合わせを基に、日本、アメリカ、ヨ ーロッパの繊維企業の最新情報を収集し、台湾企業に情報を紹介する。さらに、それに関 する繊維製品も取り扱う。日本で言われている繊維ブローカー又は、繊維情報をマッチン グする商社であろう。
日本企業の情報収集先は、KBセーレン(旧カネボウを吸収したセーレン)、東レ、帝人、
東洋紡から情報を集めている。さらに台湾で Dupon(アメリカ)の代理店と述べていた。
扱う繊維情報は機能性を有する、例えば、抗静電、高導電、耐熱、防臭、抗菌などの繊維 を複数アレンジし、ユーザーの要求に応えている。
製品は、アパレル関係50%、工業用50%の割合である。年商は300万US$、従業員が4 人であることを考えると、なかなかのパフォーマンスである。支払いは納品後、30~60 日 現金払いである。創業後5年と若い経営者の企業であり、今後の展開が楽しみである。
E 股分有限公司
面談者:黄総経理、揚工場長
1.企業概要
創業年度:1997年 資本金:3,750万台湾元
従業員:31人、うち外国人9人(タイ、ベトナム、インドネシア)
業務内容:合成繊維織布業
2.創業経緯
創業者のF総経理は、台湾中部の彰化縣出身。中学卒業後、繊維製造業(織布)に勤務、
その後、軍隊に招集され、除隊後、北部の紡績業に勤務した。1981年に友人3人とスピン・
オフし、190万台湾元を元手に織布業を始めたが失敗する。1984年新たに夫婦二人で自己 資金70万台湾元を集め、天麟紡織を創業する。
3.製造と販売
工場見学は断られたが、ウオータージェット織機(日本製で津田駒、日産)を 118 台設 置している。機械1台(機械幅90インチ)当たりに150万台湾元を投資した。主にナイロ ン(6、66)、PET等の合成繊維織布を生産している。用途は、カーテン、アパレルなどが 90%、工業用 10%の割合である。原糸は台湾製であり、主に台湾プラスチックが多い。当
社の販売先は白生地を染色し最終的に輸出するため、白生地を国内の染色業者に売るケー スが多い。
4.問題点
今年に入り、原糸価格の高騰(ナイロン、PET価格20~30%アップ)、景気減速による同 業者間の競争激化により受注の減少が響き、稼働率が 50%までに低下している。受注の減 少について安価な大陸製品との競争も一因であろう。さらに、当社の製品は比較的価格が 高いため、原糸価格の高騰を製品価格に転嫁できないジレンマを抱えている。そのため織 布業界は、今年に入り、倒産、廃業が続出している状況である。黄総経理、揚工場長とも に、R&D 能力のない企業は淘汰されるとの認識を有している。当社も今年、1984 年に創 業し、親戚と共同経営している天麟紡織を整理した。
KNH 企業股分有限公司( KNH Enterprise )
面談者:載董事長、姜特別助理
1.企業概要
2月に台北本社を訪問した際、8月台南工場の見学を約す。当社の概要とS董事長へのイ
ンタビューについては、3月の台湾繊維製造業実態調査報告書にて報告済みであり、仔細は 上記報告書を参照のこと。
S董事長は、長らく台湾不織布工業会長、アジア不織布工業会長の要職を務められ、台湾
不織布工業の発展に尽力された。今回は多忙にもかかわらず、我々の工場訪問に自ら案内 役を努めて頂いた。
2.台南工場
当社の本社機能は台北に集中しているが、生産部門は載董事長の出身地である台南に集 中しており、台南に合計4つの工場をもつ。
第1工場:オムツ、生理用ナプキン加工工場。
第2工場:不織布機械、設備製造工場
第 3 工場:メルトブロー、スパンレース、エアースルー、エンドレス・ニードルパンチ 工場
第4工場:ウオータージェット工場
このうち、今回、見学したのは第1、3、4工場である。
第1工場は、40年前に設置。主に自社の他工場で生産したスパンレース不織布、メルト ブロー不織布、ウオータージェット不織布を使用し、自動加工機を駆使して加工・裁断、
パッケージングまで行っている。その製品は紙オムツ、生理用品である。
第3工場は、13年前に設置、面積は36,000m2。メルトブロー、スパンレース、エアー
スルー、エンドレス・ニードルパンチ機を設置し、自社製品とOEM受託生産も行っている。
我々が見学したのは、エアースルー機2セット、メルトブロー機 1セット、エンドレス・
ニードルパンチ機1台であるが、OEM専用工場では別にこれら設備が稼働している。
当工場には、R&D部門があり32 人が開発に勤しんでいた。特に、不織布を利用した排 水処理用不織布の開発に力を入れている。研究開発には重点を置いている。
第 4工場は、昨年、稼働し、面積は 75,000m2有り、最新鋭のウオータージェット機を 設置している。将来の主力工場にすべく 3 階建てで、クリーンルームを設置して医療関係 製品の製造を目指している。そのため工場内も空スペースが目立っていた。
3.課題
近年、仕事量は増加の一途を辿っているが、原材料の高騰が続いている。例えば1年前、
主力原料のパルプ550-/kg台湾元が、現在850/kgまで高騰した。OEM契約では為替、原 材料の価格変動に対し、価格を調整する契約になっている。だが、国内では競争も激しく、
値上げが難しい状況である。そこで、通常 2 年サイクルで上市する新製品を急遽発売した り、パッケージ、デザイン、材料を変更したりして対応している。
なお、四川省成都に建設予定の工場は、四川地震の影響をあまり受けなかった。成都工 場建設資金は、上海工場の利益、及び上海で調達したとのこと。
J 商標工業股分有限公司( Junmay Label )
面談者:林董事長
1.企業概要
創業年度:1982年 資本金:2800万台湾元
従業員:国内100人弱、海外800~1000人
業務内容:ジャガード、ドビーなどの紋織物、細幅織物加工、製造
海外のグループ企業:ベトナム4法人、大陸2法人、アメリカ事務所
2.創業経緯
創業者 R 董事長は、軍隊除隊後、姻戚が経営する高雄のラベル織物工場に勤務し、台南 地区担当のセールスを行っていた。当時、台南は制服、靴、毛布などの製造業が多く立地 していた。営業を5~6年経験し、1982年スピン・オフして当社を創業する。創業時の資本 金 350 万台湾元は兄弟、親、自己資金で賄った。その資本金をもとに土地及び性能がやや 劣る織物機械を購入し、織物の芯地製造を始めた。1989年に、現在も使用しているスイス 製の最新鋭機を購入するため銀行から500万台湾元を借りた。当時、自動化(機械、設備)
を推進するための低金利の自動化基金が誕生し、自己資金は20%余りで、残り80%は政府 保証のローンで支払った。
今後も家族経営を基本とするため、ニューヨーク大学(バッファロー校)でMBAを取得 した長女と地元大学で勉強している息子を後継者にしたいと考えている。
3.生産と販売
主要生産設備は、スイス製細幅織機、ジャガード織機、インクジェットプリンター、リ ボンテープ裁断機、高周波加工機である。それら生産設備から織物ラベル、プリントラベ ル、ラベル用細幅織物テープ、ジャガード織を製造している。特に、スイス製ジャガード 織機(Full Color Woven Fabric:多色織り)で高品質を維持している。最終製品までの工 程は、反鵬(染色)→仁美(織機)→宏達(整理)である。使用原料はPETが中心で、南 亜プラスチックから原着PET、白PETを購入し、白PETは細幅織物に使用している。な お、外国人労働者は、ベトナム人(女性)10人、タイ人(男性)7人を使っている。
販売先は、アデイダス、ナイキなどブランドメーカーのラベルが多い。デザインは各ブ
ランドメーカーの本部と打ち合わせし、メーカーが作成する場合と、当社がデザインして
ブランドメーカーに選択してもらう二通りがある。まず得意先からサンプル依頼が来ると、
7~10日間で作成して送付する。受注段階での生産リードタイムは、平均すると10~14日で ある。
4.独特な経営方針
当社は海外法人設立に際し、従業員の中から董事長が選んで海外法人の経営者に抜擢す る。抜擢された従業員は、現地法人の株式取得が義務づけられる。台湾本社が60~70%を保
有し、残り30~40%を現地法人の経営者が保有する。すなわち、海外法人の共同経営者とな
る。創業に当たり、初めに台湾本社は資本、技術、機械、原料を提供する。特に設備につ いて、台湾本社はスイス製織機の融資を 5 年で返済し海外法人へ移転し、台湾本社は銀行 借入れで新しい機械を購入する。
海外法人は独立採算性を基本とし、当初は親会社からの注文に対応するが、直ぐに自社 で営業から労務管理まで全て行わなくてはならない。海外法人と台湾本社が営業でバッテ ングした場合、得意先の判断に委ねている。決算は個々に報告し、利益の10%は台湾幹部、
5%は現地従業員、残りは株主配当に廻される。
なお、この経営方針は、台湾のオーダーが減少し、かといってリストラもできないため に始めた窮余の策である。もちろん、従業員のインセンティブを高める効果を狙っている。
ただし、海外赴任は、単身赴任を建前としている。その点について、経営者曰く「子供の 教育のためである」と。
最後に董事長は、「当社は自己資本率が80~90%である」と、明言していた。
おわりに
今回の調査を通して、次のような知見を得た。
第 1 に、台湾繊維製造業でも石油価格高騰に伴い、原材料費の高騰となって跳ね返って きている。とはいえ、原材料費の上昇を繊維製品の価格に転嫁できず、多くの台湾企業は その対応に苦慮している。
第 2 に、縫製業、織布製造業では量産工程を海外に移転している企業が多い一方、ニッ ト製造業は台湾生産に拘る企業が見受けられる。台湾生産に拘っている企業は従業員30~40 人規模が多く、フレキシブルな対応で台湾生産を続けている。
第 3 に、台湾企業の特徴といえる、家族経営にも変化が起きている。すなわち、台湾社 会の特徴である「老板」を中心とする家族経営企業においても、二代目、三代目の後継者 については、必ずしも「老板」の子息(娘も含む)が引き継ぐという形態を踏襲するとは 限らなくなっており、台湾でも若者の価値観が多様化している。
第4に、今回調査した多くの企業で、現場の労働力として外国人労働者を雇用していた。
従業員に占める割合は15%~20%前後である。近年、繊維製造業でも、まず厳しい競争に生