の考察から、両端にそれぞれE8の超対称ゲージ理論があり、全体としてE8×E8 になっている事がわかる。
結局10次元の理論としてみると、要するにE8×E8 heterotic stringと同じ構造 になっている。丁度M theory/S1とtype IIA stringの対応に相当することが、M theory/(S1/Z2)とE8×E8 heterotic stringの間に成り立つのであると考えられる。
お互いが同等にお互いのeffective theoryになっている(duality)。つまりこうして みると、heterotic M theoryはheterotic stringの別の提示の仕方というだけなの である。
Heterotic M theoryの時空S1/Z2×R10に顕在的な10次元のboundaryはbrane world的なpictureを示唆する。対して、heterotic stringにおいては単に元から10 次元の理論という定式化である。そのeffectiveな記述として11次元的なpicture を用いるという立場になる。ここでやはり、effective theoryというのは正に、等 価な理論を別の変数で書き表すという意味である。Brane worldがeffective theory として出てくるということは、braneを手で用意したというわけではなく、そうい う記述の仕方ができ、そういう変数で見るのが我々に理解しやすいということに 過ぎない。そういうことを考えるのが自然であると理論自身が言っている、一番
最初にNordstr¨omが考えていたシナリオが勝手に出てくる、という感じがするわ
けである。
ここではheterotic M theoryという特定のtoy modelを例に話したが、続いて、
さらに一般的にrealisticなeffective theoryという立場からbrane worldについて 考えておこう。
なっているとは、これまた限らない。R3やトーラスのような直積構造とは異なる nontrivialな多様体を想定してもよい。
これに対し、通常のϕiα(x, t)という表記は、このiやαという添字と空間xが直 積の構造になっていることを暗示してしまっている。つまり、あらゆる場所に対 して全く同じcontentの場が存在する、と思うわけである。
けれども、一般的に力学系を取り扱う立場からすると、空間の添字も、内部自由 度と同じく力学変数の添字の一つと考えられる(ϕiα, x(t))。それを踏まえれば、内 部自由度と外部自由度の間の関係についても、必ず直積の構造であるというのは、
大きな仮定に過ぎない。
もし、これが直積でないとなると、要するに、ある場所には何か特定のfield con-tentがあって、また、別の場所には、また別のfield contentがある。そういう状 況を考えるのは丁度brane worldを考えるということになる。このようにeffective
theory一般の立場から、場の理論空間を考えて色々な場の理論を探るというよう
な、そう言う観点からも、brane worldを考える事は一般論として必要なことであ り、望ましいことであろう。
ここで、高次元の話からは、後でまた戻ることにして、一旦離れる。次に、cos-mological constantの話に入ってゆく。(必要であればここで5.1節に戻ることがで きる。)
6 Cosmological Constant
前章までとりあげたトピックスが比較的一般の現象論的な枠組みであったのに比 べ、この章では一見かなり特化した問題を考察する。具体的に、数あるnaturalness 問題の中で、宇宙項問題と呼ばれるものに着目する。これは、適当に一つ問題をと りあげたというわけではなく、実は今までの話の流れから強く動機付けされるも のとなっている。(この点について説明不要であれば6.5節に進むことができる。)
6.1 宇宙項問題
Effective theoryというframeworkは非常にいろいろな点で納得しやすいし、す ぐれているように見える。しかしながら一つ、モデルの詳細によらない遍在的な 課題、巨大なnaturalness問題が知られていて、それがcosmological constant問題 というものである。
例えばsupersymmetryが破れていない場合というのは、真空のエネルギーがゼ
ロというのは割とありふれた性質である。ところが、現象論的にはsupersymmetry は少なくともweak scaleぐらいで破れていなければならない。電子のsuperpartner は、weak scale未満では見つかっていないわけである。だからその程度の破れは あって欲しい。従ってeffective theoryの立場から考えると、supersymmetryのコ ントロールは、そのエネルギーのオーダー以下には及ばないと考えられるのであ る。ところが真空のエネルギーは、その期待を裏切っている。
どのような状況かと言うと、Einstein方程式で次のようになっていると考える:
Gµν =Tµν =−Λgµν. (6.1)
ここでEinsteinテンソルは、曲率テンソルで次のように作ったものである:
Gµν =Rµν − 1
2gµνR (6.2)
これは、stress-energy tensor Tµνが保存カレントになることに対応して、Bianchi
identityから保存するように作られている。
それで、cosmological constantというのはΛのことであるが、これはbackground の時空のgeometryを規定するものである。今backgroundの状況として(6.1)を考 えているが、これをtraceless partとtrace partに分解して書いてみる。そうする と以下の2式になる:
Gµν− 14gµνG= 0,
G=−R =−4Λ. (6.3)
このうちtraceless partは、cosmological constantというパラメータを含んでいな い。逆にtrace partは含んでいる。要するにcosmological constantというのは、
background時空の曲率を規定していることがわかる。
現実には、天文的な観測からすると、backgroundの曲率というのは非常に0に 近い。しかし、naiveにeffective theoryに基づいた場合に、どのようなものが自然 に期待されるのかを考えてみる。そうすると、少なくともweak scale程度の真空 エネルギーのcontributionが出てくる:
|Λ|mW4. (6.4)
これは正に、現実的でない。
もちろん、これは例外であって、effective theoryというframeworkの適用限界 がそこにあるという考え方もあり得る。ただし、他の部分でeffective theoryとい
うframeworkが良いと理解したければ、どのような点がここではダメなのかとい
うことを考えなければならない。そうでなければ、他の部分に適用して良いと思 えなくなってしまう。
そのような可能性として考えてみると、cosmological constantに特徴的なのは、
重力に関係してbackground時空を変えるようなパラメータである点にあろう。
Effective theoryというのは、具体的な適用としては、cutoffとか低エネルギー、
高エネルギーなどの概念を使って、自然な状況を考察する。しかし、例えば曲がった
backgroundというものがあると、エネルギーとはどのようなものか?つまり、重力
理論の中でエネルギーというのをどのように捉えるのか?そういうことはnontrivial なのである。通常のエネルギーとか粒子などの描像は、Poincar´e invarianceに重く 拠りかかっている。さらに、動力学的なbackgroundの変化や足し上げなどといっ たことに踏み込むと、effective theoryのframeworkで基本的な自由度の分離につ いてどのように取り扱ったらよいか明らかではない。
要するに、flatなbackgroundでeffective theoryを使うのは重力を含めて可能だ としても、background自体を変更するようなパラメータについては扱えない、そ のような可能性もあるかも知れないのである。ただし、この方向の可能性につい て、それでは具体的にどうすればよいのかというと、今のところ何とも言えない。
だからと言って、もっと深い理論が完全に明らかになるまでは分からない問題 だ、としてしまうのは、早計ではなかろうか。そこでまず調べるべきは、どこま でeffective theoryというframeworkで行けるのかということである。宇宙項問題 は、本当にeffective theoryの範疇で、自然に納得できない課題なのであろうか?
と考えることになるわけである。
以下では今までと同様、effective theoryのpictureを堅持して、どこまで行ける か考察してみることにする。