参考のため、さらに別の具体例でも解析を見ておくことにする。今度は別々の 場で真空のエネルギーを作り、inflationを終わらせる。この様なタイプを考えてみ よう:
W = Λ2Z(λ − λφ2) (4.23)
≡ v2Z(1 − gφ2). (4.24)
ここで、Zとφがchiral superfieldで、λ,λおよびgはcouplingである。Λ2は何 らかの起源(次節参照)で出てきた、重力スケールに比べて小さなスケールである。
引き続きreduced Planck scaleを1にする単位系を使っているので、Λ2は1より オーダーとして小さい。少し書き直し、v2という風にcouplingをとり込んで、真 空のエネルギーを前述の表記と一致させた。このようなsuperpotentialを考える。
次にK¨ahler potentialであるが、以下のようなものを自然と考える:
K = |Z|2 + |φ|2 + k1|Z|2|φ|2 − k2
4|Z|4 + · · ·. (4.25) 最初に自乗の項があるが、今度はZとφそれぞれについてのものである。それと そのmixing termや、それ自身の4乗の形での4次の項がある。ここで、k1 や k2 は適当にオーダー1と想定されるようなcouplingである。
このようにsuperpotentialとK¨ahler potentialを与えられると、これらで
super-gravityにおけるポテンシャルが求められる。それは、場が一般の多成分の場合に
拡張した次のような形である:
V = eK(KABFAFB∗ − 3|W|2). (4.26) ここで、F は本質的に一成分の場合と同じで、大体superpotentialの微分である:
FA ≡ ∂W
∂φA + ∂K
∂φAW. (4.27)
(4.26)でKABという添字が付いたものがあるが、これは、K¨ahler potentialを2階 偏微分した
∂2K
∂φA∂φ∗B, (4.28)
これの逆行列をとったものである。従って、field が1個しかない場合は、単に逆 数になっていた。
このように成分がたくさんあると、ポテンシャルの形などを見るのはだんだんやっ かいになってくるわけだが、今の場合は比較的に簡単である。なぜならsupergravity のポテンシャルから、Wの微分とW自体の値が共にゼロだと、そこはポテンシャ ルの停留値であるということが計算によりわかる:
∂W
∂φA = W = 0 =⇒ ∂V
∂φA = V = 0. (4.29)
あるいはもっと一般には、F がゼロであればそこが停留値になる。そして、gravity が入っていないrididなsupersymmetryのときに、F がゼロならV がゼロなので、
そこが真空になっているのと同じく、supergravityを考えているとき、F がゼロ かどうかということがやはりsupersymmetryが自発的に破れているかどうかとい
うorder parameterになるのである。形は多少かわったのだが、このようなrigid
supersymmetryと共通する性質を、実は保っているということが分かる。
ポテンシャルにそのような性質があるので、どのような所が真空であるのか、ま た、どのような形であるのかということを、割とややこしいポテンシャルである のに、すぐに見てとることができるのである。そこで、実際に式(4.24)の super-potentialを使ってこれを見てみると、superpotentialの偏微分は次の形になって いる:
∂W
∂Z = v2(1 − gφ2), (4.30)
∂W
∂φ = −2v2gZφ. (4.31)
これがゼロになるところを探す。すると、Zがゼロでφの方が適当にcondenseし たところで満たされる。Zがゼロだと、superpotentialの値もゼロになるので、前 に述べたようにそこが停留値になるという条件を満たしている。すなわち、次の ような真空期待値が得られる:
Z = 0, (4.32)
φ = ± 1
√g. (4.33)
一方、平らな原点付近での形はどうかというと、具体的に前に述べた superpo-tentialとK¨ahler potentialをsupergravityでのポテンシャルの形に入れて、原点付 近でベキ展開してみれば良いわけである:
V v4|1 − gφ2|2 + (1 − k1)v4|φ|2 + k2v4|Z|2 (4.34) v4 − κ
2v4ϕ2. (4.35)
ここで、
κ ≡ 2g + k1 − 1, (4.36)
ϕ ≡ √
2Reφ. (4.37)
また、Z はゼロ付近であるとして固定して考えた。Zが大きいところでも平らに なったりして、そちらでinflationを起こす(hybrid inflation)こともあり得るのだ が、ここでは簡略化して解析するためにZは効かないことにした。
以上のような考察から、φのみが転がってinflationを起こすような状況をとる と結局、真空のエネルギーとして主にv4という値が出てきて、そして、少し平ら ではないという効果がϕ2の形として出てきている。今度の場合、平らではないと いう効果を決めているのは、K¨ahler potentialのcouplingもあるが、それ以外の
couplingも効いている。それぞれが自然にオーダー1とすると、全体としてもオー
ダー1であると期待される。
場ϕをinflatonとするslow-roll inflationが起こるとすれば、原点付近から転がっ て、その間に宇宙が急速に膨張してゆく。やはり、supersymmetryがある状況で はそういうことが起こっても不思議ではないわけである。