第 4 章 実験
4.3 EPSR 各部の評価
4.3.3 Dummy Query および Dummy Connection の効果
表4.5: Dummy QueryおよびDummy Connectionの効果の評価で使用した各種パ ラメータ.
サービス数 8
クライアントの選択間隔 500ミリ秒 スライディングウィンドウのサイズ 300秒分
APC degreeの確認間隔 30秒
マーカとなる閾値upper 300 マーカから戻る閾値lower 150
ホスティングマシンの性能制約 同時接続数50以下
ことでマーカ決定の精度がより高まる.条件 all-onでは3つ全ての技術が有効と なり,クライアントとのホップ数やRTTが条件VPE & GNPと比較してさらに減 少した.
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1
0 1000 2000 3000 4000 5000 6000
Cumulative probability
RTTs [msec]
w/ dummy query w/o dummy query
図4.19: Dummy Queryを有効および無効にした際のRTTの累積頻度グラフ.
の低下の誤検出を回避できるようになるからである.図4.19はクライアントと複 製サーバの配置先となったホスティングマシン間の RTTの分布を示す累積頻度グ ラフである.図4.19はDummy Queryを有効にしたものと無効にしたものをそれ ぞれ記している4.Dummy Queryを有効にした際のRTTの90パーセンタイル値 は3220ミリ秒であった.一方でDummy Queryを無効にした際のRTTの90パー センタイル値は3950ミリ秒であった.この結果はDummy Queryがクライアント の遠方にあるホスティングマシンを複製サーバの配置先とすることを防ぐことを 示す.
Dummy Connection
Dummy Connectionは複製サーバのクライアント数をホスティングマシンの性能
制約以下に止めることに貢献する.これはDummy Connectionが,クライアント アクセス数の急増時にホスティングマシンがクライアントによる負荷を誤って過 小評価することを防ぐからである.図4.20はホスティングマシンにおけるクライ アントの同時接続数を示す累積頻度グラフである.図4.20はDummy Connection
4両者ともDummy Connectionは有効にしている.
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1
0 10 20 30 40 50 60 70 80
Cumulative probability
No. of network connections w/ dummy connection
w/o dummy connection Capacity Limit (50)
図 4.20: Dummy Connectionを有効および無効にした際の同時接続数の累積頻度
グラフ.(複製サーバを稼働していないホスティングマシンを除く.)
を有効にしたものと無効にしたものをそれぞれ記している5.Dummy Connection を有効にした際,EPSRはすべてのホスティングマシンについてクライアントの同 時接続数を性能制約である50以下に抑えている.一方Dummy Connectionを無効 にした際は,配置先となったホスティングマシンのうち2.5パーセントが性能制約 以上の同時接続を確立した.
さらに図4.20はDummy Connectionが,同時接続数の少ない配置先ホスティン
グマシンを減少させていることを示している.Dummy Connectionを無効にした際 は40パーセントの配置先ホスティングマシンが同時接続数7以下であり,また約 8パーセントの配置先ホスティングマシンが同時接続数0であった.一方,Dummy
Connectionを有効にした際はすべての配置先ホスティングマシンが同時接続数10
以上となった.
この同時接続数の少ない配置先ホスティングマシンの減少はDummy Connection の副次的効果である.大量のクライアントリクエストが短時間に送信される状況に
おいて,Dummy Connectionは複製サーバへの均一な負荷分散を支援する.Dummy
5両者ともDummy Queryは有効にしている.
Connectionが有効であると,EPSRは大量に発生したクライアントリクエストの処 理を開始する前に,リクエストの処理で発生する負荷を予測して複製サーバの配 置先を決定できる.また,クライアントリクエストは新たに複製サーバが配置さ れるホスティングマシンに転送される.これによりクライアントの接続が確立す
る際は,Dummy Connectionによる仮想負荷で追加に配置された複製サーバへクラ
イアントが分散されることになる.一方 Dummy Connectionが無効であると,多 くのクライアントリクエストは一部の配置先ホスティングマシンに集中し,その ホスティングマシンは過負荷となる.また大量のクライアントリクエストによっ て追加された配置先ホスティングマシンはリクエストの一部のみ処理することに なる.これは配置先が決定される前に,既に配置された一部の複製サーバがクラ イアントリクエストの処理を開始してしまうからである.
4.4 まとめ
本章ではEPSRの効果を確認するために行ったシミュレーションについて述べ た.効果測定の指標として,複製サーバの配置先数,オーバレイネットワーク上 のホップ数,RTT,同時接続数の4つについて計測した.またインターネットを 想定したシミュレーションを行うために,インターネットモデルのひとつである
Transit-Stubモデルによるデータセットと,RTTの実測によるデータセットを用い
た.シミュレーションの結果,EPSR が Flash Crowd による影響を軽減するよう に複製サーバの配置先を決定することを確認した.シミュレーションでは,Flash Crowd発生時においてEPSRが約3000台のホスティングマシン上でFlash Crowd の検出と発生地域の特定を行い,配置先の選択を開始するまでの時間は25秒で あった.これは文献 [10]で報告されている Flash Crowdがピークに達するまでに 要した時間40秒より高速である.その後EPSRは不要な複製サーバの配置先を除 去し,300秒で配置先数が安定することを確認した.その際,他方式と比較して EPSRがクライアントとの通信遅延が小さくなるように配置先を決定することと,
配置先ホスティングマシンの性能制約を超過しないことを確認した.また,EPSR が使用している要素技術の効果も合わせて確認した.