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Deligne の原理 A

ドキュメント内 アーベル多様体の周期への応用 (ページ 32-37)

本小節では,定理3.9の証明の第3段階で得られる結果,すなわち「CMアーベル 多様体の場合には定理 3.9 の主張が正しい」という定理を紹介する.ここで扱う内 容については,証明を省いて結果のみを述べるものも多い.興味のある読者は,原著 [DMOS82, Chapter I, §§3–5] を参照して頂きたい.

Deligneは「考えているコホモロジー類が絶対Hodgeサイクルかどうかを群作用

の言葉で与えられた条件で判定できる」ということを主張する,“Principle A"と呼ば れる定理を証明した.

事 実 3.15( 原 理 A, Deligne [DMOS82, Chapter I] Λ を 有 限 集 合 と す る . {Xα}αA を C上の滑らかな射影的代数多様体の族とする.各 α Λ に対して,

部分集合MαZ[0,2 dimXα]を固定する.I を空でない有限集合とし,各i∈I に対して,テンソルTiTと絶対Hodgeサイクルti∈Tiが与えられているとする.

Gを直積群

αΛ

mMα

GL(Hm(Xα(C),Q))×Gm

に於ける{ti}iI の固定化部分群とする*15tTに属するテンソルの元とし,更に tGの作用で不変であると仮定する.このとき,tは絶対Hodgeサイクルである.

事実 3.16Deligne [DMOS82, Chapter I, §5] Λを有限集合とする.{Xα}αΛ

をC上のCMアーベル多様体の族とし,T :=T({(Xα,{1})}αΛ) とおく.Tに属

*15ただし,(α, n)6= (β, m)のとき,群GL(Hm(Xα(C),Q))Q(r)及びHm(Xβ(C),Q)に自明 に作用するものとする.一方,各νGmHm(Xβ(C),Q)には自明に作用し,Q(r)にはνr 倍写像で作用しているとする.

するテンソル内の埋め込みidに関するHodgeサイクル全体の集合をCH(T)とおき,

絶対Hodgeサイクル全体の集合をCAH(T)とおく.GH 及びGAH をそれぞれ,直

積群 ∏

αΛ

GL(H1(Xα(C),Q))×Gm

に於けるCH(T)CAH(T)の固定化部分群とする.このとき,GH =GAH が成り 立つ.

事実3.16の証明の概要 定義より,GH ⊆GAHであることは明らかなので,GH GAH であることを示せばよい.GHGAH は共に「Aαたちの自己準同型」という

絶対Hodgeサイクルを固定するので,どちらもトーラスであることが分かる.従っ

て,余指標群*16の包含関係Y(GH) ⊇Y(GAH)が成立することを示せばよい.これ は以下で述べる定理3.18を用いて具体的な絶対Hodgeサイクルを構成して,それら への作用を見ることで示すことが出来る.

ここで,「分裂するE反線型Hermite形式」という概念を定義しておこう.

定義 3.17(分裂するHermite形式) dを正の整数,V d次元E ベクトル空間,

H V 上の非退化E 反線型Hermite形式とする.E の最大総実部分体をF と書 く.各埋め込みσ:F ,→Rに対して,Hermite形式HからC=E⊗F (R, σ)上の ベクトル空間Vσ := V F (R, σ)の上のC反線型Hermite形式Hσが定まる.Hσ

の符号を(aσ, bσ)とおく.また,Hermite形式Hから1次元Eベクトル空間d EV 上のE 反線型Hermite形式∧Hが定まる.基底を1つ固定して,d

EV E と同 一視すると,あるf ∈F×が存在して,任意のx, y∈Eに対して

∧H(x, y) =f x¯y

が成立する.このようなfF×/NE/F(E×)における像をdisc(H)と書き,H判別式と呼ぶ.尚,disc(H) d

EV の基底の取り方に依らない.以上の設定の下 で,(V, H)に関する次の2条件は同値であることが示せる([DMOS82, Chapter I, Corollary 4.2])

(1) 任意の埋め込みσ:F ,→Rに対してaσ =bσが成立し(従ってdは偶数である ことに注意),更にdisc(H) = (1)d/2が成り立つ.

*16Gを代数群とするとき,Y(G) := Hom(Gm,G)Gの余指標群と呼ぶ.

(2) Hに関するd/2次元の完全等方部分空間が存在する.すなわち,V d/2次元 E部分空間W で,任意のw∈W に対してH(w, w) = 0となるものが存在する.

(V, H)がこの同値な2条件を満たすとき,Hermite形式Hは分裂するという.

dを正の偶数とし,Ed上のE 反線型Hermite形式H0H0((xi)i,(y)i) :=

d/2

i=1

(xiy¯i+d

2 +xi+d

2y¯i)

で定めると,H0は分裂する非退化E反線型Hermite形式である.実は,分裂する 非退化E 反線型Hermite形式を持つE d次元の任意のHermite空間(V, H) (Ed, H0)と同型になる([DMOS82, Chapter I, Proposition 4.1, Corollary 4.2(の証 明)]を参照せよ)

定理 3.18[DMOS82, Chapter I, Theorem 4.8] A C上のアーベル多様 体 ,E CM 体 と し ,v: E −→ End(A) Z Q を 環 準 同 型 写 像 と す る .d :=

dimEH1(A(C),Q) とおく.次の2 条件を満たす A の偏極 θ が存在すると仮定 する.

(a) θRosati対合はEの複素共役と一致する.

(b) 分裂する H1(A(C),Q) 上のE 反線型Hermite形式φf¯= −f を満たす元 f ∈E×が存在して,ψ(x, y) := TrE/Q(f φ(x, y))が偏極θに対応するRiemann 形式になる.

このとき,Hd(A(C),Q)の部分Qベクトル空間Ä∧d

EH1(A(C),Q)ä

(d/2)の全ての

元は絶対Hodgeサイクルである.

証明 定理3.18の証明は,前節の定理2.4の証明と全く同様な,連結志村多様体を 用いた議論で示される.

n:= [E :Q]とおき,OEのZ加群としての基底e1, . . . , enを固定する.各e∈ OE

に対して,OEにおける「e倍写像」の基底e1, . . . , enに関する表現行列をM(e)と 書く.

V :=H1(A(C),Q)とおき,

h0:C−→EndR(V QR) = EndR(Lie(A/C))

Aの複素構造から定まるR代数の準同型とする.条件(a), (b)を満たす偏極θ をとる.G0E 上のHermite形式φを保つResE/QSL(V;E)の部分群とし,X0+h0 のG0(R)共役類とする.このとき,組(G0, X0+) は連結志村データになる.

‹G0:= Sp(V;ψ)とおき,h0G0共役類をX0+とおく.N Z3とし,V ZL:= H1(A(C),Z)に関するG0(Q)‹G0(Q) の法N 合同部分群をそれぞれ,Γ, Γeとおく.このとき,連結志村データの埋め込み(G0, X0+),→(‹G0,X0+)により,連 結志村多様体の埋め込み

S := ShΓ(G, X)−→ShΓe(‹G,X)⊆ AdimA,K(N)

が定まる.この射で普遍アーベル多様体を引き戻すことで,S上のアーベルスキーム π:X −→S が定まる.このアーベルスキームについて次が成立する.

(i) h0∈X0+の像となるSの点をs0とおくと,Xs0 'Aが成立する.

(ii) 任意の点s∈ S(C)に対して,Xs は埋め込みE −→ End(Xs)ZQと条件 (a), (b)を満たす偏極を持つ.

(iii) ある点s1∈Sが存在して,Xs1 'A0⊗ OE が成立する.ただし,A0d/2 次元のアーベル多様体であり,A0⊗ OEA0n個の直積にe∈ OE の作 用をidA0⊗M(e) で定義したアーベル多様体である*17

φは分裂するHermite形式なので,V E+ R上の符号は(d/2, d/2)である.これに 注意すると,W := HomE(V, E)とおくとき,自然な同型

(2πi)d/2

d E

W '(2πi)d/2

d E

H1(A(C),Q)⊆Hd(A(C),Q)(d/2)∩Hd/2,d/2(A) が成立する.定義より,(2πi)d/2d

EW には群ΓSL(V, E)が自明に作用するので,

定理2.13の証明と同様な議論により,任意の元t∈(2πi)d/2d

EW d

C(W EC) はGauss–Manin接続について水平な大域切断et∈Γ(S,∧d

EH1(X/S))(d/2) にのび る.更に次の主張が示せる.

主張 3.19 ts1A0⊗ OE/Cの絶対Hodgeサイクルである.

*17このような点s1の存在は,Eベクトル空間V Hermite形式φに関する直交基底を取れば,命 2.15の証明における「CM楕円曲線の直積と同種なアーベル多様体に対応する点の存在の証明」

と同様な議論で示せる.

主張3.19の証明 B :=A0⊗ OE とおく.σ:C,→Cを任意の埋め込みとする.こ のとき,自然な写像による可換図式

Hd(σA0(C),Q)(d/2)QE //

'

HAd(σA0/C)(d/2)QE

'

Ñ ∧d E(C×Af)

H1(σB(C),Q) é

(d/2) //

Ñ ∧d E(C×Af)

HA1(σB/C) é

(d/2)

 _

HAd(σB/C)(d/2)

が成立する.これらの可換図式から埋め込みι:CAHd (A0)QE ,→ CAHd (B)が定 まる.A0d/2次元の射影的代数多様体なので,CAHd (A0) ' Hd(A0,Q)(d/2) 成り立つ.実際,これは次の議論から確かめられる.x A0 の任意の閉点とす るとき,CAHd (A0) はサイクルの像 [x] 6= 0 を含むので,CAHd (A0) 6= 0 である.

CAHd (A0) は定義より,自然にHd(A0,Q)(d/2) Q部分ベクトル空間と見做せ,

dimQHd(A0,Q)(d/2) = 1なので,CAHd (A0) 'Hd(A0,Q)(d/2)が従う.このこと から,

ts1

Ñ ∧d E(C×Af)

HA1(B/C) é

(d/2) =ι(CAHd (A0)QE)⊆CAHd (B) が成り立つことが分かる.これで,主張3.19が示された.

以上の議論により,定理3.13が適用でき,t=ets1 も絶対Hodgeサイクルである ことが分かる.これで,定理3.18の証明が完了した.

事実3.15と事実3.16から次の系が従う.

3.20 事実3.16 の仮定と記号設定のもとで,CH(T) =CAH(T)が成り立つ.

3.21 XL上のCMアーベル多様体とする.このとき,任意のp≥0と任意 の埋め込みσ:L ,→C に対して,CH2p(X/L;σ) =CAH2p (X/L) が成り立つ.

ドキュメント内 アーベル多様体の周期への応用 (ページ 32-37)

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