Y X
地理的市場
A 町 X 、 Y
B 町 X 、 Y
Y C 町
Y
D 町 X
凡例
XとYは代替商品
：商品が大規模に取引される
：商品が小規模に取引される
70
（４）問題解消措置
法第四十七条(1)により委員会はこの法に違反した事業行為者を罰することができ、
法第四十七条(2)e.により、法第二十八条に違反した合併ないし統合または買収の取り 消しについて規定することができるとされている。
さらに、「競争法四十七条の施行指針に関する委員会決定2008年第二百五十二号59」 は、KPPUが合併、統合、買収の取り消しを命じることができる旨、強調し、「その取 り消しは法により行われ、その決定の対象である当該事業主体は当該合併、統合ない し買収の事前における原状に戻らなければならない」と規定しているが、その詳細に ついては、さらに別な指針により規定されるとしている。
（５）外資の扱い
インドネシア競争法の条文を見る限り、外資について特別に規制する規定は見当たら ない。
（６）国有企業の扱い
インドネシア競争法第五十一条において、社会の活動に大きく影響を及ぼす財サー ビスの提供に関する独占ないし集中については、別途、法律により規定し、政府機関 ないし国有企業が運営する旨、規定されている。
２）企業結合審査の手続き60
インドネシア競争法第二十九条(1)において、一定の規模を超える合併、統合ないし 買収については実行後30日以内に委員会への届出が必要であると規定されている。
（１）事後届出の手続き
事後届出の流れは、次のとおりである。
59 252/KPPU/Kep/VII/2008の英訳
（http://eng.kppu.go.id/wp-content/uploads/2010/04/pedoman_pasal_47_eng.pdf によ り入手；2010年12月30日確認）を参照。
60 本項の内容およびインドネシア法規名称和訳は、櫻井裕介「インドネシア競争法による 企業結合規制の始まり」（『公正取引』No. 722-2010.12）を主に参照している。
71
図表 11 事後届出に関するフローチャート
出所）櫻井裕介「インドネシア競争法による企業結合規制の始まり」（『公正取引』No.
722-2010.12）
事業者に届出義務が生じる資産額又は売上額の基準額は政令第5条により、図表 12 のとおりに定められている。
図表 12 届出基準（再掲）
総資産額 総売上額
一般 2兆5千億ルピアを超えるとき 5兆ルピアを超えるとき 銀行業 20兆ルピアを超えるとき ―
出所）櫻井裕介「インドネシア競争法による企業結合規制の始まり」（『公正取引』No.
722-2010.12）
（２）事前相談制度
政令第十条により、事後届出義務が生じる基準を超える合併等を行おうとするときに は、書面又は口頭により、KPPU に事前相談を行うことができる。事前相談は、制度 上は任意である。
合併等の発効
届出基準を 満たすか
KPPUへの届出
届出不要
様式・資料 は完全か
評価
追加資料の要求
評価 最大30営業日
最大90営業日
YES YES
NO NO
72 (i)事前相談できる場合の条件
委員会規則2010年第13号（ガイドライン）によれば、以下の3つの条件を満た した場合に、事業者がKPPUに事前相談できる。
① 当事者間で合併等の計画に関する書面による合意がある；
② 当該合併等が資産額又は売上額の基準額を超える；
③ 非関係会社間における合併等である。
(ii)事前相談の方法
政令第十条によれば、事前相談を書面で行う場合は、委員会が定める様式により 行い、必要な書類を提供して行わなければならない。様式は委員会規則 2010 年第 十号により定められている。口頭による相談の方法について規定の有無は確認でき ない。
(iii)事前相談の手続きの流れ
事前相談の手続きの流れは、次のとおりである。
73
図表 13 事前相談のフロー
出所）櫻井裕介「インドネシア競争法による企業結合規制の始まり」（『公正取引』No.
722-2010.12）
KPPUは完全な資料を受領してから最大30営業日以内に第一次審査を実施する。第 一次審査の後、必要な場合においてハーフィンダール・ハーシュマン指数（HHI）の 測定による評価が行われ、その結果に応じて、①問題なし、または②詳細審査に移行 する旨の評価が行われる。詳細審査の手続きにおいては、KPPU は事業者、消費者、
政府その他の関係者から必要なデータおよび情報を収集する。
詳細審査結果、委員会意見を作成して KPPU のウェブサイトに公表する。委員会意 見には、不公正な事業競争が①生じない、②生じる疑いがある、③条件付きで生じな い、の3種類があり、③の意見を出した事案では、当該条件の履行状況についてKPPU が監視を行う。
（３）不服申立
インドネシア独禁法第四十四条第二項において、事業者はKPPUの決定の通知を受 けてから14日以内に地方裁判所に提訴することができる。なお、この期間内に提訴を 起こさなかった場合は、KPPUの決定を受入れたものと見なされる。提訴があった場
合併等の計画
届出基準を 満たすか
書面による相談
相談の必要なし
様式・資料は 完全か
第一次審査
追加資料の要求 最大30営業日
最大60営業日 YES YES
NO NO
HHI
詳細審査 1800＞
150＞△
委員会意見
問題なし 問題なし
1800＞
△＜150 ＜1800
74
合、地方裁判所は受理から14日以内に反駁の内容を審議し、聞き取りの開始から30 日以内に判決を下さなければならない。
地方裁判所の判決に不服の場合は、判決を受理してから14日以内にインドネシア最 高裁判所に上告できる。最高裁判所は、訴えの受理後30日以内に判決を下さなければ ならない。
４．審査の実績
１）KPPU審査の実績
（１）KPPU宛届出の実績
KPPUの年次報告書2009年版によれば、2000年から2009年までの9年間にKPPU
は2,827の書類および正式報告書を受領している。
図表 14 KPPU受領書類件数
2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 書類 0 3 1 7 10 8 259 312 475 529 正式報告書 7 31 48 58 77 183 139 244 232 204 合計 7 34 49 65 87 191 398 556 707 733
出所）KPPU年次報告書2009年掲載データより作成
（２）対象分野
2009 年中に受領した正式報告書 204 件の内、対象分野別にみると、談合（tender
conspiracy）が173件と圧倒的に多い。
図表 15 2009年中KPPU受領正式報告書案件分野別件数 株 式 保
有 (27 条)
兹任（26 条）
優 越 的 地位（25 条）
そ の 他 の 謀 議
（23、
24条）
談合（22 条）
市 場 支 配（19、
20、21
条）
需 要 独 占 （18 条）
独占（17 条）
ク ロ ー ズ ド 契 約 （15 条）
カ ル テ ル （11 条）
地 域 の 分布（9 条）
価格（5、
6、7、,8 条）
件数 1 2 3 6 173 23 3 13 1 1 1 2 出所）KPPU年次報告書2009年掲載データより作成
75 ２）企業結合に関する近年の実績
（１）事前届出
2009年に事前届出を義務付けた規則（KPPU規則2009年第1号）が制定されたこ とから、2009年から 2010年の前半までの、当該規則が有効であった期間に下記のと おり5件の事前届出が行われた。
図表 16 事前届出案件
番号 日付 当事者（法人設立国、業種61） ＫＰＰＵ意見 状況 1 2009年6月22日 PT Komatsu Indonesia（インド
ネシア、産業機械）による PT Pandu Dayatama Patria（イン ドネシア、不明）の買収
事前届出の対象外 ―
2 2010年2月18日 Meadow Asia Company Limited（英国領ケイマン、投資 会 社 ） に よ る PT Matahari Department Store Tbk.（インド ネシア、流通）の買収
ノー・オブジェク シ ョ ン ・ レ タ ー
（2010年3月17 日）
当初審査（2010年
3月1日）
3 2010年3月31日 Prudential Plc（英国、保険）と
AIA Group Limited（英国、保険）
の合併
未決定 当初審査（2010年
4月2日）
事前届出の取り下 げ（2010年6月4 日）
4 2010年5月19日 Unilever Indonesia Holding B.V.（オランダ、消費財）による
Sara lee Body Care Tbk（インド
ネシア、消費財）の買収
ノー・オブジェク シ ョ ン ・ レ タ ー
（2010年10月7 日）
当初審査（2010年
5月27日）
総合審査（2010年
7月9日）
5 2010年5月1日 PT Tuah Turangga Agung（イン
ド ネ シ ア 、 鉱 山 ） に よ る PT Agung Bara Prima（インドネシ ア、鉱山）の買収
ノー・オブジェク シ ョ ン ・ レ タ ー
（2010年8月23 日）
当初審査（2010年
7月8日）
出所）現地法律事務所Wecolaw作成資料
61 ここで記載している「業種」は、本報告書の著者が各社ウェブサイトなどで入手した情 報から類推したものであり、KPPUが認識している業種とは限らない（KPPUが認識して いる業種は不明）。
76
（２）相談
2010年規則第十一号制定によりは事前の相談は任意となったが、同規則制定後、2011 年1月前半までの間に2件の事前相談が行われたことが確認できている。
図表 17 事前相談 番号 日付 規則番号 当事者（法人設立国、業種
62）
ＫＰＰＵ意見 状況 1 2010年10月13
日
A20110 PT Bank Rakyat Indonesia (Persero) Tbk
（インドネシア、銀行）
に よ る PT Bank Agroniaga Tbk（インド ネシア、銀行）の買収
There is no allegation.
（2010 年 12 月3日）
事 前 審 査
（2010 年 10 月22日）
2 2011年1月7日 A20111 GDF Suez, SA（英国、
発電） と International Power Plc（英国、発電）
の合併
- -
出所）現地法律事務所Wecolaw作成資料
62 ここで記載している「業種」は、本報告書の著者が各社ウェブサイトなどで入手した情 報から類推したものであり、KPPUが認識している業種とは限らない（KPPUが認識して いる業種は不明）。
77
（３）事後届出
事後届出が義務付けられた現行規則制定後、2011年1月前半までの間に計5件の届 出が確認されている。
図表 18 事後届出
番号 日付 規則番号 当事者（法人設立国、業種63） ＫＰＰＵ意見 状況 1 2010年8月
25日
A10110 PT Tuah Turangga
Agung（インドネシア、鉱
山）によるPT Agung Bara Prima（インドネシア、鉱 山）の買収
再調査は行わ ない（2010年 9月7日）
-
2 2010 年 12 月7日
A10210 PT Astra International Tbk（インドネシア、コン グロマリット）による PT General Electric Services
（インドネシア、投資会 社）の買収
― 審査（2011年 1月5日）
3 2010 年 12 月29日
A10310 PT Bank Permata, Tbk
（インドネシア、銀行）に よるPT General Electric Finance Indonesia（イン ドネシア、ノンバンク・フ ァイナンス会社）の買収
― 審査（2011年
1月7日）
4 2011年1月 6日
A10111 Unilever Indonesia Holding B.V.（オランダ、消費財）に
よるSara lee Body Care Tbk
（インドネシア、消費財）の 買収
再調査は行わ ない（2011年 1月14日）
-
5 2011年1月 11日
A10211 PT Bhakti Capital Indonesia Tbk（インドネシ ア、証券会社）によるPT UOB Life Sun Assurance（インド ネシア、保険）の買収
― 審査中
出所）現地法律事務所Wecolaw作成資料
３）企業結合審査の現状の評価と課題
インドネシアの企業結合審査に対して国際機関など第三者が評価した文献資料は、本 調 査 の 情 報 収 集 過 程 に お い て は み あ た ら な い 。ICN (International Competition
Network) はKPPU自らによる経緯と現状を述べた資料を公表している64。同資料によ
63 ここで記載している「業種」は、本報告書の著者が各社ウェブサイトなどで入手した情 報から類推したものであり、KPPUが認識している業種とは限らない（KPPUが認識して いる業種は不明）。
64 この項は主として”POLITICS, REGULATION AND ANTI-TRUST ENFORCEMENT IN INDONESIA” By DidikRachbini, Commissioner, KPPU, Indonesia
（http://www.internationalcompetitionnetwork.org/uploads/library/doc443.pdf より入 手可能）。