第 6 章 Cauchy 応力
6.3 Cauchy の 4 面体と Cauchy 応力の物理的意味
そこで,一般にnとして基底ベクトルe1,e2,e3 をとったときの応力ベクトルを, それぞれt1,t2,t3 とする. そしてt1,t2,t3 を基底で分解したときの成分をTij であ らわす.
t1 =T11e1+T12e2+T13e3 (6.3) t2 =T21e1+T22e2+T23e3 (6.4) t3 =T31e1+T32e2+T33e3 (6.5) 総和規約を使って表現すると
ti =Tijej (6.6)
このTij の意味については後述するが,言葉の定義として, T11, T22, T33 を垂直応力, T12, T21, T23, T32, T31, T13 をせん断応力と呼ぶ.
注 6.1. 注 6.0材料力学で学んだ垂直応力は,軸に直交する断面,すなわち法線が軸に平行な断 面でで切断したときの単位面積当たりの力なので, 式(6.2)は感覚的にも理解できる. また、せん 断応力は,軸に平行な法線で切断したとき、法線方向の荷重が0で,面内にのみに力が作用してい るということで,式にすれば以下のようになると考えられるが,第2式は実は成立しない. この理 由については後述する。
断面法線:n=e1 t1= 0·e1+ 1·e2+ 0·e3
断面法線:n=e2 t2= 0·e1+ 0·e2+ 0·e3 · · · ?
断面法線:n=e3 t3= 0·e1+ 0·e2+ 0·e3 · · · ? (6.7)
Tij にテンソルとしての基底 ei⊗ej をつけた
T =Tijei⊗ej (6.8)
を Cauchy 応力テンソルと呼ぶ. Cauchy 応力テンソルもテンソルなので座標変換
ができる. また後述するCauchy の第2運動法則によって,対称テンソルであるこ とが証明でき, したがって, 固有値はすべて実数である. この固有値のことを主応 力, 対応した固有ベクトルのことを主応力方向と呼ぶ.
6.3. Cauchyの 4 面体と Cauchy 応力の物理的意味 51 と同値である. すなわち式(6.15) を応力の定義と考えたとき, ある基底で分解した T の成分は
ti =Tijej (6.10)
の関係式を満たすと考えたほうがすっきりする. 今回は式(6.10)を定義として,式 (6.15) を導いてみよう.
以下のような微小 4 面体 (Cauchy の4面体)が静止しているとして, 力の釣り 合いを考える. 面ABCの重心の法線ベクトルを nとして, 応力ベクトルを tn と する. 厳密に言うとtnは三角形ABCの内部で変化するが,微小なので一定値をと るとする. すなわち面積をΔsとして,
ABC
tndS =tnΔs (6.11)
である. また, 平面の法線ベクトルを −e1,−e2,−e3 として三角形ABCの重心 を通るように切断した際に得られる応力ベクトルを−t1,−t2,−t3とする. やはり 厳密に言うと異なるが微小なので,これらは三角形OCB, OAC, OBAの重心にお ける応力ベクトルとみなすことができ,さらに三角形OCB, OAC, OBAの面積を Δs1,Δs2,Δs3とすると
OCB
t1dS =t1Δs1,
OAC
t2dS =t2Δs2,
OBA
t3dS =t3Δs3 (6.12)
x1 x2
x3
−t1
−t2
−t3 tn
Δs Δs1
Δs2 Δs3
A C B
O
密度をρ,体積をΔv,物体の加速度a,作用している体積力をgとすると, Cauchy の4面体に作用する力のつりあいは以下のように表すことができる.
ρ(a−g)Δv =tnΔs−t1Δs1−t2Δs2−t3Δs3 (6.13)
ただし, この式は上述のように微小な場合のみ成立する. 厳密には, 4つの三角形 の内部でそれぞれ応力ベクトルも分布し, 4面体の内部では体積力や加速度が分布 する. 全体を Δs で割ると, Δv/Δs →0 である. 注6.3 に示す計算により下式を 示すことができる.
Δsi/Δs =ni (6.14)
以上より, n=niei から
tn =t1Δs1
Δs +t2Δs2
Δs +t3Δs3 Δs
=tini
=Tijejni
=Tij(ej ⊗ei)nkek
=TT ·n (6.15)
これを Cauchy の公式と呼ぶ. これは,TT が任意のnをその面に作用する応力ベ
クトル tn に変換することを示している. これをCauchy 応力の定義とする教科書 もある.
注 6.2. 式(6.15)を導くときには, (ei⊗ej)·ek =δjkei を利用して、
tn=tini
=Tijejni
=Tijejδiknk
=Tij(ej⊗ei)nkek
=TT ·n
注 6.3. A, B, Cのそれぞれの座標を{a,0,0},{0, b,0},{0,0, c}とする.また記述の簡略化のため に−→
CA=a,−−→
CB=bとする.nは,a,bの外積を正規化して得られる.即ち,
a×b=
⎧⎨
⎩ a 0
−c
⎫⎬
⎭×
⎧⎨
⎩ 0 b
−c
⎫⎬
⎭=
⎧⎨
⎩ bc ca ab
⎫⎬
⎭, n= 1
√b2c2+c2a2+a2b2
⎧⎨
⎩ bc ca ab
⎫⎬
⎭ (6.16)
側面の面積はΔs1= 12bc,Δs2= 12ca,Δs3= 12ab ,また斜面の面積はΔs=12|a×b|なので, Δs= 1
2
%
b2c2+c2a2+a2b2 (6.17) これより,
n1=Δs1
Δs, n2=Δs2
Δs, n3= Δs3
Δs (6.18)
が得られる.