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変形した物体内部に作用する力 –Cauchy 応力テン ソル

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第 6 章 Cauchy 応力

6.2 変形した物体内部に作用する力 –Cauchy 応力テン ソル

これを前提にして議論を進めよう. 質点や剛体の力学で取り扱う力は表面から 与えられる力と,重力や遠心力など物体の内部に作用する力である. これらはすべ

て観測できる量である. しかし, 連続体解析学では物体が変形することを考慮し, そのため物体が変形することにより生じる内部に作用する力を考慮するのだが,こ れは観測できない.

変形によって内部に作用する力といわれても,イメージがわかないので,力F で 引張っているゴムひもを考えてみよう. これを真ん中で切断すれば元の長さに戻っ てしまうが, もし切断面に切断前に作用していた力Q を断面内での分布状態など も含めて正確に再現して作用させることができたなら,たとえ切断したとしても変 形は生じないだろう.

ここで重要なのは,与えるのはあくまで力であって, 変位を与えるわけではない ということである. つまり, この力が変形している物体の内部に作用している力, すなわち変形により生じる力である. そして, Newton の作用反作用の法則から, 切断面のある点においてはお互いにまったく逆向きの力が作用していることもわ かる.

変形前

変形後

切断

F F

F

F

Q

Q

図 6.3: ゴムひもの切断

そこで, 物体内部に法線n の仮想表面を考える. 法線n の平面で物体を切断し たと考えてもよいであろう. 一般には断面内で力の方向と大きさは分布するであ ろうから, 仮想表面上にとった微小な面素 ds に作用する力が dfn であるとする (図6.2). dfnn の関数なので厳密には df(n)と書くべきだが, 記述が煩雑にな りすぎるので以後dfnの形式で表す. このとき, 応力ベクトル tn は次のように定 義される.

tn = dfn

ds (6.1)

6.2. 変形した物体内部に作用する力–Cauchy応力テンソル 49 現時刻t

l m

n ds

dfn

図 6.4: 法線と応力ベクトル

金属の丸棒の引張り実験の場合,応力は,単位面積あたりに作用する力と定義し, 断面内では力は分布しないと仮定して,変形後の細くなった断面積で与えている荷 重を割ったものを真応力として求めている. 上記の定義はこれを断面内で力の大き さと方向が分布すると拡張したものと考えるとわかりやすいだろう.

ここでtnnのとり方によって値が変わることに注意しよう. 表面に荷重が作 用しているときは, 当然ながら表面には任意性は無いので問題にならないが,内部 に仮想的に断面を考えるときは任意性があり,実際に断面が変われば応力ベクトル の値は変化する.

図のようなx1 軸方向への単純引張りを考える. 引張りと直交するx2−x3 平面で 切断した場合法線ベクトルはx1 軸の基底ベクトルe1, 応力ベクトルは t1 =F/A である. これに対して引張りの方向を含む平面,例えばx1−x2 平面で切断すれば, 法線は x3 軸の基底ベクトル e3 で,t3 = 0である. まとめると

断面法線:n=e1 t1 = 1·e1+ 0·e2+ 0·e3 断面法線:n=e2 t2 = 0·e1+ 0·e2+ 0·e3

断面法線:n=e3 t3 = 0·e1+ 0·e2+ 0·e3 (6.2)

x1 x2

x3

t1 =F/A

t3 = 0 断面積 A

F

n n

図 6.5: 断面と応力ベクトル

そこで,一般にnとして基底ベクトルe1,e2,e3 をとったときの応力ベクトルを, それぞれt1,t2,t3 とする. そしてt1,t2,t3 を基底で分解したときの成分をTij であ らわす.

t1 =T11e1+T12e2+T13e3 (6.3) t2 =T21e1+T22e2+T23e3 (6.4) t3 =T31e1+T32e2+T33e3 (6.5) 総和規約を使って表現すると

ti =Tijej (6.6)

このTij の意味については後述するが,言葉の定義として, T11, T22, T33 を垂直応力, T12, T21, T23, T32, T31, T13 をせん断応力と呼ぶ.

6.1. 6.0材料力学で学んだ垂直応力は,軸に直交する断面,すなわち法線が軸に平行な断 面でで切断したときの単位面積当たりの力なので, (6.2)は感覚的にも理解できる. また、せん 断応力は,軸に平行な法線で切断したとき、法線方向の荷重が0で,面内にのみに力が作用してい るということで,式にすれば以下のようになると考えられるが,2式は実は成立しない. この理 由については後述する。

断面法線:n=e1 t1= 0·e1+ 1·e2+ 0·e3

断面法線:n=e2 t2= 0·e1+ 0·e2+ 0·e3 · · · ?

断面法線:n=e3 t3= 0·e1+ 0·e2+ 0·e3 · · · ? (6.7)

Tij にテンソルとしての基底 eiej をつけた

T =Tijeiej (6.8)

を Cauchy 応力テンソルと呼ぶ. Cauchy 応力テンソルもテンソルなので座標変換

ができる. また後述するCauchy の第2運動法則によって,対称テンソルであるこ とが証明でき, したがって, 固有値はすべて実数である. この固有値のことを主応 力, 対応した固有ベクトルのことを主応力方向と呼ぶ.

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