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Catalytic Cycle of Allylation

ドキュメント内 九州大学学術情報リポジトリ (ページ 44-54)

第7章 アルカリ金属ホウ酸塩を触媒に用いた

Scheme 7-2. Catalytic Cycle of Allylation

はじめに、 ナトリウムイオンが求電子的に塩化トリチルを攻撃して食塩と トリチルカチオンが生成する。 この時、 食塩が系外に析出するため、 反応の平 衡はトリチルカチオンが生成する側に傾く。

このトリチルカチオン(糧化物が存在しない場合はナトリウムイオン)が、

アセタールからメト キシ基を引き抜き、 トリチルメチルエーテルまたは、 ナト リウムメトキシドとベンジルカチオン が生成する。 生じたベンジルカチオンに アリルシランが付加し、 アリルシラン 付加体が生成する。 この付加体のケイ素 原子にトリチルメチルエーテルまたは、 ナトリウムメトキシドの酸素が攻撃し て、 シリル基が脱離して生成物のアリ ル付加体とシリルエーテルが生成する。

この時、 はじめのカチオン種が再生するため、 触媒サイクルが成立する。 反応 系において、 トリチルカチオンの黄色い色が観察されるた め、 この反応の律速

-155-段階は アセタールからメトキシ基を引き抜く段階と考えられる。

一方、 クロロシラン類を用いた場合、 活性カチオン種として形式的に3価 のケイ素カチオンも考えられるが、 最近の研究14.1θによって溶液中ではエーテ ル類と配位錯体を形成していることが明らかとなってきたので、 この場合も 、

アセタールが配位したオキソニウムイオン型となっていると考えられる。

この場合、 アセタールからメトキシ基を引き抜いて生成するシリルエーテル が、 アリルシラン付加体のケイ素原子を攻撃することは考え難いので、 基質の アセタールのメトキシ基の酸素がアリルシラン付加体のケイ素を攻撃して、 ア リル付加体とベンジルカチオンが生成すると考えられる。

L + R3Si - OMe

Ph-< OMe 'OMe

Ph

一人J

+

Me3 Si - OMe

(R3Siυ+ // Boratesー コーー

i 円r

es-

l

lrμ232-l

R3Si -CI

+

Na Borates

+

Ligand (L)

�ーSiMe3

Scheme 7・3. Catalytic Cycle 01 Allylation in the Case 01 Chlorosilanes

-156-7-4 実験

1-me出oxy-1-phenylふbutene

(3

1

)の合成

アルゴンで置換した30 m1二口ナスフラスコに0.3 M benza1dehyde dimethyl

aぽ凶(29)ジクロロメタン溶液1凶、 0.3 Ma11yl凶me 血y凶ane(

0)ジクロ

ロメタン溶液 1m1、 0.3 M n-decane ジクロロメタン溶液 1m1を入れ、 0"(;に冷 却した。 2x 10・3M塩化トリチル(またはクロロシラン類)ジクロロメタン溶液 1.5凶、 2x 10・3M Na官PB(またはNaHFPB)ジクロロメタン溶液 1.5凶を加 え、 1 0分間反応させた。 飽和炭酸ナトリウム水溶液を加えて反応を停止させ

た。 ジクロロメタン相を分液後、 水相をジクロロメタンで三回抽出し、 ジクロ ロメタン相を無水硫酸ナトリウム上で乾燥させた。 この時サンプリングしてガ スクロマトグラフ(GLC)による収率を求めた。 シリカゲルショートカラム で、 硫酸ナトリウムとホウ酸イオンを取り除き、 溶媒を留去した。 得られた生 成物は分取用薄相クロマトグラフィ(展開溶媒ジクロロメタン〉により、 精製 した。

b.p.: 55 "(; / 2 Torr. Color1ess Liquid

lH-NMR行乱fS/ CDC13) : ð = 7.28 (broad s , 5H, arom. ),5.5-6.0 (m, 1H,

-CH=CH2), 4.8-5.2 ( m, 2H, -CH=C!b), 4.0-4.2 ( t-like, 1H, -CH-OCH3),

3.19 ( s , 3H, -OC!!_,), 2.2-2.7 ( q-like, 2H, -C�- ).

13C-N恥1R (T乱1s / CDC13) : ð = 141.5 (C-1), 134.6 (-CH=), 128.2, 127.4 (C-4),

126.6,116.7 (二主,H2 ), 83.5 (-CH-OCH3), 56.5 (-OCH3 ) , 42.4 (-CH2-)

Mass (m/z, re1. int.) : 131(1, M"), 122(8, PhCHz(OMe)), 121(100, PhCH(OMe)),

84(13), 77(10, Ph), 58(18),43(68, C戸J

IR ( neat / NaCl ) : 3100,3050,3000,2950,2900,2850,2800, 1640, 1490, 1450,

1435,1350,1100,1070,1000,975,910,755 αn

7-5 まとめ

疎水性溶媒中で発現するアルカリ金属イオ ンのLewis酸性が有機合成化学的 に応用 可能で、あるかとい う疑問に対 して、 三フッ化ホ ウ素の ような通常の Lewis酸触媒によって、 反応が進行するアリル化反応を用いて検討した。

はじめに、 過塩素酸トリチルが触媒として働くことから、 塩化トリチルを助 触媒に用い、 Na百、PBと作用させin silωでトリチルカチオンを発生させたと こ ろ、 低温、 中性という穏やかな反応条件下、 高収率でアリル付加体を与えた。

この反応を用いてTFPBとHFPB のかさ高さの対カチオンに及ぼす反応 性を比較したところ、 有意の差は認められなかった。

一方、 この反応において形式的なシリルオキソニウムイオンが触媒している こと考えられるため、 トリチルカチオンの代わりにシリルオキソニウムイオン を用いても反応が進行することが考えられる。 趨化トリチルの代わりにクロロ シラン類を助触媒に用いて、 アリル化 反応を行ったところ、 塩化トリチルの場 合と同様、 高収率でアリJレ付加体が得られた。

助触媒を用いず、 ホウ 酸塩の中で最もLewis酸性の高いH30官、PBを用いて 行った場合、 系中に水が存在するため、 アリル付加体の収率はかなり低いも の であ った。 オキソニウム塩を非水系で調製することは困難であるが、 ナトリウ ム塩の場合は非水系で行うことが容易である。 そのためオキソニウム塩のよう に系中の水分によって反応が阻害されることはない。 Na TFPB単独を触媒に用 いてこの反応を行ったところ、 助触媒 がない系に比べて反応速度は遅いもの の 高収率でアリル付加体を与えた。

この 結果はナトリウムイオンが炭素一炭素結合形成反応を触媒したという新 たな知見であり、 疎水性溶媒中に可溶化され たアルカリ金属がLewis酸として 有機合成に応用された点、で興味深い。

-158-参考文献

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159

-結論

本論文においては脂 溶性、 化学的安定 性に優れた含フッ素テトラアリールホ ウ酸イオンの新規合成法について述べた。 また、 これらのホウ酸イオンを対ア ニオンに用いて疎水性溶媒中に可溶化 したアルカリ金属イオンの反応性ついて も述べた。 これらの結果、 通常観測することのできない疎水性溶媒中における

アルカリ金属イオンの求電子性が明らかとなった。

第1章では、 高脂溶性安定アニオン種の合成を行い、 様々な含フッ素置換基 を有するテトラフェニルホウ酸イオン誘導体を得た。 この 合成反応において、

中間体からホウ酸塩を合成する最終段階を詳細に検討し、 金属ーハロゲン交換 法を応用することによって、 再現性よく、 高収率でホウ酸塩が得られる反応条 件、 及び操作法を開発した。 また、 導入した含フッ素置換基の構造とホウ酸塩 の脂溶性、 及び耐酸性との関係を検討し、-CF(CF}2基のような、 分岐構造を有 し、 電子求引効果の大きいペルフルオロアルキル置換基が、 高い脂溶性と化学 的安定性を与えることを明らかにした。

第3章から第6章までの各章において は、 疎水性溶媒中における各種の色素 とアルカリ金属イオンの相互作用に伴う変色効果を利用して、 含フッ素テトラ アリールホウ酸塩の形で非配位性溶媒 中に可溶化されたアルカリ金属イオン の 求電子的挙動を例証した。 これらの知見は、 通常の溶媒系では観測されない ア ルカリ金属イオンの新しい反応性を示すものである。

アゾ色素との反応においては、 従来、 知られていなかったイオン対一双極子 相互作用による吸収スペクトル変化を観測し、 厳密な意味でのハロクロミズム を例言正した。

ベタイン色素との反 応においては、 各種有機溶媒中におけるアルカリ金属イ

-160-オンの求電子能の評価を吸収極大波長のシフトから、 定量化できることを明ら かにしたが、 同時に、 この場合溶媒中の微量水分の影響を大きく受けるため、

再現性ある評価法を確立するためには 溶媒中の水含量の制御が重要であること を明らかにした。

スピロピラン型色素との反応では、 ジクロロメタン溶液中において、 アルカ リ金属イオンが炭素一酸素結合を切断するLewis酸性を有することを明らかに し、 さらに、 開環生成物である双極性メロシアニン体をイオン対形成により安 定化し、 疎水性溶媒中におけるスピロピラン型化合物の互変異性平衡の制御の 可能性を例示した。

上述のLewis酸的挙動は、 トリフェニルメタン型色素との反応、においても観 測され、 アルカリ金属イオンは炭素一塩素結合を切断して、 安定炭素カチオン 種を発生できること、 およびカチオン型中間体と脂溶性ホウ酸イオンとのイオ ン対の形で安定に保持できることを示した。

第7章では、 合成化学的手法を用いて、 前章までに明らかにしたアルカリ金 属イオンの Lewis酸性を評価した。 すなわち、 TFPBによってジクロロメタ ン中に可溶化されたナトリウムイオンが、 室温、 中性の穏やかな条件下に、 炭 素一酸素結合を関裂して炭素陽イオン種を発生させ、 この中間体がアリル化 反 応を触媒する炭素ー炭素結合形成反応 である。 この反応においてはナトリウム イオンのみでも触媒サイクルが構成された。 ナトリウムイオンの求電子性に及 ぽす対アニオンの効果を評価することは困難で、あったが、 適当な基質を選べば、

有機合成反応、を用いたアルカリ金属イ オンの求電子性の相対評価が可能なこと を示した。

以上のように、 含フッ素テトラアリールホウ酸イオンによって疎水性溶媒中 に可溶化されたアルカリ金属イオンが、 溶媒和の小さない わゆる" 裸の" 状態

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