[コラム 2] 将来自動車のロードマップ
9 California Air Resources Board(CARB)
訪問先 California Air Resources Board(CARB)
住所:1001 I street, Sacramento, California 95812, USA 訪問日時 2006年11月14日(火)8:30〜10:30
対応者 Analisa Bevan
Chief, Sustainable Transportation Technology Branch Gerhard H. Achtelik Jr.
Manager, Zero Emission Vehicle Infrastructure,
MSCD/Sustainable Transportation Technology Branch Benjamin M. Deal
Air Resource Engineer - ZEV Infrastructure Section, MSCD/Sustainable Transportation Technology Mark Williams
Air Polution Specialist, Mobile Source Control Division, ZEV Implimentation Michael J. Kashuba
Staff APS -ZEV Infrastructure Section,
MSCD/Sustainable Transportation Technology Adam Gromis
Program Manager, California Fuel Cell Partnership
組織の概要 カリフォルニア州で大気質関連の規制を実施。ZEV 規制を作成し、現在 ZEV規制における電動車両クレジットを検討中。CaFCPを実施中。
調査項目 • ZEV規制の現状、FCVへのクレジットの考え方
• CaFCPの現状
• カリフォルニア州のデモンストレーションの現状
(1) California Air Resources Board(CARB)の概要
• CARBはカリフォルニア州環境保護庁(Cal/EPA)傘下の組織で、カリフォルニ ア州の大気質改善を通じて公衆衛生・福祉・環境の改善を目的とする組織である。
- Cal/EPAは、カリフォルニア州の各分野における規制当局を統括するために、
1991年に設立された。Cal/EPAの組織図を図 9-1に示す。
図 9-1.カリフォルニア州環境保護庁(Cal/EPA)の組織
Air Resources
Board (ARB)
State Water Resources Control Board (SWRCB) Regional Water Quality
Control Boards (RWQCBs) Integrated
Waste Management
Board (IWMB) Department
of Toxic Substances
Control (DTSC)
Office of Environmental Health Hazard Assessment (OEHHA) Department
of Pesticide Regulation
(DPR)
州知事オフィス
California Environmental Protection Agency (Cal/EPA)
• CARBはカリフォルニア州環境保護庁傘下の組織で、1967年に設置された。設 置目的を表 9-1に示す。
表 9-1.CARBの目的
• 健康な大気質を達成し、維持する
• 大気汚染物質の原因とその解決策に関する研究を実施する
• カリフォルニア州の主たる大気汚染の原因である自動車によって引き起 こされる深刻な問題に対してシステマティックに対処する49
出所:CARBホームページ
< http://www.arb.ca.gov/html/aboutarb.htm >
• CARB の全体的な運営や方向性は、カリフォルニア州知事によって指名された 11人のボードメンバー(理事会)によって決定される(表 9-2)。チェア以外 は非常勤である。
表 9-2.CARBのボードメンバー チェア 1名
加州内の大気質管 理区・規制区50から の代表
5名
・南海岸大気保全管理区(1名)51
・サンフランシスコベイエリア大気保全管理区(1名)
・サンディエゴ大気汚染規制区(1名)
・サンホアキン・バレー全域大気汚染規制区(1名)
・その他の管理区・規制区(1名)
専門家 3名
・自動車エンジニアリング分野の専門家(1名)
・科学・農業・法律分野の専門家(1名)
・物理学・外科医・健康影響分野の専門家(1名)
一般市民 2名
出所:CARBホームページ
< http://www.arb.ca.gov/html/aboutarb.htm >
49 原文は「Systematically attack the serious problem caused by motor vehicles, which are the major causes of air pollution in the State」。
50 カリフォルニア州には、35の大気質管理区・規制区がある。
< http://www.arb.ca.gov/capcoa/dismap.htm >参照。
51 いわゆるSouth Coast Air Quality Management District(SCAQMD)。
(2) ZEV 規制の動向
① 規制の必要性
• カリフォルニアの90%以上の地区では、大気質の点で健康的ではない(図 9-2)。 カリフォルニアの大気質を向上させるためには、アグレッシブな政策が必要で ある。
図 9-2.カリフォルニア州における大気質の状況
• カリフォルニア州では、温室効果ガスの削減も目指している。
- 地球温暖化は、カリフォルニア市民の健康、産業、農業、経済、生物種に影響 を与えると考えられる(図 9-3)。
- また温暖化によって、大気における有害物質の発生・拡散パターンに影響を与 えると考えられる。
0-5日 6-50日 50-100日 100日以上
加州PM10規制値(24時間値)
を上回った日数
Source: ADAM September 2006 (tfn)
加州オゾン規制値(8時間値)
を上回った日数
Source: MRedgrave May 2006 (mln)
水位の 上昇 気候変動
温度上昇 降水量の 変化・豪雨
健康
農業 森林 水源 湾岸
生物種 自然
大気環境の変化、天候被害、
熱帯型疾病の発生 生産量の変化、
必要水量の増大 森林構成・面積の変化、
一次生産力の変化 水量・水質の変化、
水源確保に関わる係争
海岸の侵食、保護コストの増大、
湿地の浸水、海岸エリアの住民の保護 生息地域の縮小、
生物種の絶滅
② ZEV規制の概要
• ZEV規制は1990年に成立し、これまでに4回(1996年、1998年、2001年、
2003年)の改正(amendment)が行われている(表 9-3)。
- 改正が行われていても、カリフォルニア州における販売台数の一定量を ZEV
(Zero Emission Vehicles)にするというコンセプトは変わらない。
- ZEV規制は、2005 MY(Model Year)から実施されており、カリフォルニア 州における販売台数が一定量に達した自動車メーカー(2006年11月時点で6 社52)は、販売台数の10%にあたる台数をZEVとしなければならない。この ZEV割合は、2009 MY以降、段階的に増加する(表 9-4)。
表 9-3.ZEV規制の改正内容 1990年 ZEV規制の採択
(ZEV導入義務割合: 1998 MY 2%、2003 MY 10%)
1996年改正 ・1998 MY ZEV導入義務(2%)の廃止
・2003 MY ZEV導入義務(10%)の維持
1998年改正 ・PZEV(Partial ZEV)によるZEVクレジットの定義
2001年改正 ・2003 MYのZEV導入義務10%の維持と、導入義務の段階的 増加(2018年には16%)
・PZEV、AT PZEV(advanced technology PZEV)によるZEV クレジットの定義
・燃費クレジットや早期導入クレジットの定義 2003年改正 ・ZEV導入義務10%の2005 MY開始53
・ZEV種別の設定(Type I~Vの設定)
・燃費クレジットの廃止
・一定割合のFCV導入による「代替パス」の設定
出所:各種資料から作成
表 9-4.ZEV規制が規定するZEV導入割合(ベースライン)
2005 MY ~ 2008 MY
2009 MY ~ 2011 MY
2012 MY ~ 2014 MY
2015 MY ~ 2017 MY
2018 MY以降
10% 11% 12% 14% 16%
52 GM、Ford、DaimlerChrysler、トヨタ、日産、ホンダ。
53 2001年改正ではZEV導入規制を2003 MYから開始する予定であったが、2002年に2001年改正 の一部(特に燃費クレジット)を違法とする裁判をGMやDaimlerChryslerなどが起こし、連邦裁 判所がZEV規制の実施に対する差止命令を出した。2003年改正はこの裁判結果を反映し、ZEV規 制開始年を2005 MYに変更し、燃費クレジットの廃止を行った。
• 2001年度の改正におけるZEV規制の概要を図 9-4に示す。
- 10%のうち、6%までは PZEV(Partial ZEV)で、2%までは AT PZEV
(Advanced Technology PZEV)で充当可能である(表 9-5)。ただし少なく とも2%は、ZEVとしなければならない。なお、PZEVを「Bronze」、AT PZEV を「Silver」、ZEVを「Gold」と呼ぶ。
- 内燃水素機関自動車はAT PZEVに、一定の要件を満たしたプラグイン・ハイ ブリッド車はAT PZEVに認められる。
- FCVでは、最大でZEV換算で40台のクレジットを得ることができる。
図 9-4.2001年度改正におけるZEV規制の概要
表 9-5.ZEV(Gold)/ AT PZEV(Silver)/ PZEV(Bronze)カテゴリ カテゴリ ZEV種別 主たる該当車両
Gold ZEV ・ Pure-ZEV(EV)
・ FCV
・ EVモードで20 mile以上走行可能なハイブリッド Silver AT PZEV ・ プラグイン・ハイブリッド車
・ パワーアシスト型ハイブリッド車
・ 従来型ハイブリッド車
・ CNG車
・ 水素ICE自動車 Bronze PZEV ・ SULEV適合ガソリン車
• 2003年の改正におけるZEV規制の概要を図 9-5に示す。
- ZEV導入義務(10%)を2005 MYから開始する。
- 新たにZEV(Gold)を、EVとFCVの車両特性に合わせて5つに分類した(表 9-6)。
• ZEV規制対象となる自動車メーカーが、通常のバッテリEVの早期導入によっ て得たクレジットによって ZEV リクワイヤメントを達成してしまったため、
2009 MYまでは実質的に新規のZEV を導入しなくてもよくなった(ブラック
アウト)。
- CARB はこの状態を、ZEV 規制のモメンタムを失わせるものとして非常に危 惧している。Blackout状態を打開するため、CARBでは一定割合のFCV(Type
III ZEV)をオプション導入した自動車メーカーは、ZEV 導入義務 10%を
PZEV 6%とAT PZEV 4%で賄うことができるという、「代替パス」を設定し
た(次ページ参照)。
- カリフォルニア州における販売台数の 1%にあたる台数の FCV(Type III ZEV)を導入した自動車メーカーは、2005 MYからのZEV導入義務10%を、
PZEV 6%とAT PZEV 4%で賄うことができる。
図 9-5.2003年の改正におけるZEV規制の概要 表 9-6.ZEV(Gold)の新区分
区分 車種 ZEV走行レンジ(UDDS) NEV ネイバーフッドEV(NEV) 設定せず
Type 0 ユーティリティEV(Utility EV) 50マイル未満
Type I シティEV(City EV) 50マイル以上、100マイル未満 Type II フル機能EV(Full Function EV) 100マイル以上
Type III 燃料電池車(Fuel Cell Vehicle) 100マイル以上
• この「代替パス」におけるFCV導入オプション台数は、2009 MY以降増大す る。
- すべてのZEV規制対象自動車メーカーが「代替パス」を採用した場合のFCV 導入オプション台数を表 9-7に示す。2005〜2008 MYにおけるFCV導入オ プション台数は250台であるが、2009 MY以降は 2500台に増加する。なお この代替パスは、2017MYで終了する。
- このFCV導入オプション台数のうち50%までは、バッテリEVで充当するこ とも可能である。
- 米国Clean Air Act第177項に準じて、カリフォルニア州と同様の厳しい自動 車排気ガス基準を採用している州(ニューヨーク州、マサチューセッツ州、バ ーモント州、メーン州)に導入されたFCV は、カリフォルニア州に導入され たものとしてカウントする。ただし2012MY以降は、他州に導入されたFCV が得るZEVクレジットを減少させていく予定である。
- このFCV導入オプション台数のあり方については、現在専門家パネル(Expert Review Panel54)にてレビュー中である。
表 9-7.「代替パス」におけるFCV導入オプション台数
期間(MY) 2005〜2008 2009〜2011 2012〜2014 2015〜2017 FCVリクワイヤメント 250台55 2500台 25000台 50000台
• 現状では、カリフォルニア州における年間販売台数が 6 万台に達する自動車メ ーカーが、ZEV規制の対象である。
- VW、現代自動車は、カリフォルニア州での年間販売台数が6万台に近く、ZEV 規制対象に入ってくる可能性がある。
- ZEV規制対象後でも、販売台数が6万台を下回ったときには、ZEV規制から 外れる。
• 現状では、カリフォルニア州におけるFCV台数は100台程度である。
54 Expert Review Panelは、Michael P. Walsh(チェア)、Dr. Fritz Kalhammer、Mr. Bruce Kopt、
Dr. Vernon Roan、Dr. David Swanから構成される。