SpaceWire を活用した検証環境の日欧共同開発成果
53
査することによりノミナルの試験条件の設定の不足や不備が検出される。このような地道な研究開発を進 めた結果、日本と英国(ひいては欧州)の担当者の理解と要望が一致した
RMAP
標準規格が完成された。この研究開発プロセスを図
7.5
に示す。RMAP Conformance Tester
はSTAR-Dundee
社から販売されて おり、デファクト・スタンダードとして各国で使用されている。これにはノミナル試験ケースとオフノミナ ル試験ケースの双方が同梱されており、この結果、SpaceWire
規格に準拠した装置を我が国において海外 から購入し、衛星システムに組み付けるにあたっても、ノミナル条件/オフノミナル条件の双方に於いて日 本側の理解とも整合することが担保されるようになった。宇宙機搭載用ネットワークプロトコルにおいてこ のように我が国のイニシアティブが発揮されたケースは初のケースと考えている。SpaceWire
の試験装置については、Univ. of Dundee/STAR-Dundee, Ltd.
のみならず、この他にESA
の委託により試験装置を開発しているEngland
の4Links
社、ギリシャのTeletel
社とも共同開発を進めて おり、国際間理解の整合性が維持されるよう、継続的な協力が進められている。University of Dundee
JAXA/ISAS
国際規格の策定への貢献
54
案は
2010
年の第15
回SpaceWire Working Group
で宇宙研から提案され、ESA/ESTEC
に集まった各国 のSpaceWire Working Group
メンバの満場一致の賛同を得た。これによりSpaceWire
の通信プロトコル 階層が簡素化され、100 kg
級の超小型衛星から2.7t
の大型衛星にまで適用可能なスケーラビリティが実現 可能となった。本提案が我が国から為されなければ、SpaceWire
の簡素で高性能な特性は得られなかった ものと我々は考えている。また、ASTRO-H
はこの通信プロトコルスタックを実用化するための技術開発を 担った。SpaceWire
(ECSS-E-ST-50-12C) Scheduling
(SpaceWire-D Draft B) Protocol ID / RMAP (ECSS-E-ST-50-51C/52C)
Retry/Redundancy Segmentation/Blocking
Packet Transfer Protocol Plug and Play
User Application
図
8.1: ASTRO-H
プロジェクトからSpaceWire
ワーキンググループに提案したDH
系プロトコルスタック8.2 Concurrent Schedule
SpaceWire
ネットワーク上で十分なリアルタイム性を確保するための枠組みは、前節で述べた我が国からの提案をもとに大幅に簡素化され、
SpaceWire-D - Deterministic Control and Data Delivery Over SpaceWire Networks, Revision: Draft B, Date: April 2010
として設計指針が公開された。このSpaceWire-D
の規格 案では当初、1
タイムスロット内で1
回の通信トランザクションしか認めていなかった。これは、1
タイム スロット内で複数のトランザクションを許すとリアルタイム性が検証できない、という欧州側の主張に基づ くもので、Simple Schedule
として規格化されていた。しかしながら、日本側では1
タイムスロット内で複 数の通信トランザクションを可能とするデータ処理系を長年に亘り開発・運用してきており、十分な軌道上 実績があった。この実績をもとに1
タイムスロット内で複数の通信トランザクションを実装すべく規格改 訂提案を行い、Concurrent Schedule
として上記仕様書に反映され、公開された。また、1
タイムスロット 内で複数の通信トランザクションは検証できないという当初の欧州からの主張は見直され、検証可能なリ アルタイム性能を実現する設計指針として仕様化された。8.3 Plug and Play
SpaceWire
上に実装されるPlug and Play
仕様は、RMAP
の機能を活用している。SpaceWire/RMAP
は通信プロトコルとしては科学衛星で従来から用いられているPIM (Peripheral Interface Module)
仕様と56
類似点が多い。この従来からの軌道上運用実績を元に、ASTRO-Hではネットワークワイドな共通アドレ ス空間として標準
RMAP
アドレス空間を策定し、この範囲内で各アドレスに特定の通信サービスを結び つけている。この実績はESA/ESTEC
のSpaceWire Working Group
でも尊重され、SpaceWire Plug andPlay
規格(現Network Discovery Protocol)では ASTRO-H
で策定した標準RMAP
アドレスを適用でき るよう、仕様が策定された。この結果、「コンセントに差し込むように衛星搭載機器を繋ぐ」という、われ われが提唱してきたコンセプトが具現化された。Undefined Area is available for Configuration Information (ex) QoS lookup table , etc.
[Internal Register usage example]
- GPO/GPI register for functional check - LED control for GSE
- SpaceWire Logical Address - IP revision
- Buffer memory map information - etc.
Dependent area for specific satellites
CSR Reset Undefined
CS0 CS1 CS2 CS3
4000_0000 8000_0000 C000 _0000 F000_0000 F000_000C
Undefined
F000_0010 FFF0_0000 FFFF_FFFF
PIM Internal Memory Buffer User ’ s PIM
Window
TI (Time Indicator )
PIM Register and Free Area 3800
37FC
3004 3000
1D00
1900 1500 100C
1004 1000
0000
DPRAM (Data Send Buffer )
Send Request Telemetry Size User Request Code Command Distribution
Area
On - demand Telemetry (not Assured ) Periodic Telemetry System HK Telemetry Data Distribution Area 3FFC
DPRAM (Data receive Buffer )
FF00_0000 FF80_0000 FF80_8000
0FF0 User Request ACK Send Request ACK 0FF4
0FFC0FFE Send Request FlagUser Request Flag Send Request Telemetry
Format 1008
SI Polling 1E00
On - demand Telemetry (Assured )
Undefined (User ’ s Area ) 0FF8
Undefined (User ’ s Area )
1100 Undefined (User ’ s Area ) 1D02
Undefined (User ’ s Area ) Undefined (User ’ s Area )
2200
Undefined (User ’ s Area ) 3100
F001_0000
Internal Registers F001_0050
Undefined (User ’ s Area ) 8000
O
N _Command _Register Undefined
0004 0008 0014
0000
OFF _Command _Register O
N / OFF STS _Register 000C
0010 GPI Register 0018 GPO Register
0020 Undefined
UECC _ERR Address Register 0022 UECC _ERR Address
Register UECC _ERR Address
Register 0022
UECC _ERR Count Register 0024
UECC _ERR Clear Register
0028 Undefined
0FF0
PI M Registers
図
8.2:
標準RMAP
アドレス9 JAXA
標準の制定SpaceWire
の規格は非常に基本的な部分しか規定しておらず非常に自由度の高い規格である。実際に使うためにはその使い方の規定が必要となる。ASTRO-Hでは国内外で開発されたコンポーネント間をイン ターフェースするためには
SpaceWire
規格に加えて使い方を規定しなければならなかった。ASTRO-H
の経験を生かし、JAXA設計標準の枠組みの中で「JERG-2-432 SpaceWireオンボードサブ ネットワーク設計標準」を定める作業が行われた。これは、ユーザー会や国際ワーキンググループにおけ る議論をふまえ、CCSDSが提唱しているSpacecraft Onboard Interface Services Area (SOIS)
の枠組みに 沿って定めれたものである。設計標準では、搭載機器間のSpaceWire
による相互接続性や再利用性を高め ることを目的として、CCSDS SOIS のレイヤー構造11
のうち、Subnetwork LayerのSubnetwork Service
に相 当する部分をSpaceWire
および上位プロトコルにより実現する方法を規定した。設計標準の中で、SpaceWireの使い方を標準としていくつか示している。システム設計者は、その中か ら必要なものを選択することにより、同じ使い方をするコンポーネントとの間のインターフェースが容易 に行えるようにした。また、設計標準では
RMAP
を用いたデータ収集・コマンド配信方法の標準的,大量 データ転送のためのPTP (Packet Transfer Protocol)
を用いたデータ転送方法の標準的,それらとともに 用いるリアルタイム性を保証する時分割による転送やReliable
なデータ転送のためのSpaceWire-R
の使い 方の標準を示した。11