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6 . C T S D の 解 釈 性

解釈性については対象者群におけるCTSDの床効果。天井効果を検討した。

Terweeeta1.44)は,床効果.天井効果を検査の最低点.最高点を示した対象者数 が全体の15%以上であることと定義した。これに従えば,CTSDは,CDR1,2 群において,総点および各項目に天井効果を示していた。しかし,CDR3群では 挨拶の項目のみ天井効果を認めたものの,既存の認知機能検査の最大の問題点と

されてきた床効果は,総点および各項目とも示さなかった。CDR3群の対象者に おいて,各検査の最低得点を示した者の割合は,MMSEでは19.8%(23人),HDS-R では,24.1%(28人),日本語版SCIRSでは11.2%(13人)であったが,CTSDでは わずか2.5%(3人)であった。

MMSEとCTSDの項目通過率の比較では,MMSEでは通過率が15%を超えた のは21項目中,復唱,呼称,三連命令,読字命令,県の見当識の5項目のみで あった。一方,CTSDは15%に満たない項目はなかった。CTSDはMISEでは 把握できない低水準の能力を各下位項目においても評価できることが示された。

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Ⅳ.考察

1.各認知機能検査の成績分布

軽度から中等度の認知症を対象に開発された既存の認知機能検査では重度認 知症者の残存する能力を測定することが困難であったが,CTSDでは,最重度の 認知症患者においても,残存している認知機能を信頼性・妥当性を持って幅広く

測定することができた。

重度認知症と意識障害は明確に異なるものであるが,MMSEの成績のみでは 両者を区別することが困難であることが指摘されてきた38脚0)。しかし,CTSDで は重度認知症から認知機能が廃絶される意識障害までの認知機能の減退を追う ことが可能である。Choe,etal.13)も指摘するように,MMSEやHDS-Rでは重度 認知症者群において床効果を呈する項目が多く,残存する認知機能を幅広く評価 することができない。一方,図1,2に示したようにCTSDはMMSE,HDS-R と比較すると平均値が高く標準偏差も大きい。つまり,CTSDは,MMSE,HDS-R の低得点領域に焦点を当てて拡大し,より多段階に評価できる認知機能検査であ ることを示している。MMSEとHDS-Rがともに0点であった対象者23名にお いて,CTSDの得点は0-16点の範囲に分布し,日本語版SCIRSでも0-14点の幅 がみられた。

このことは,既存の検査では床効果や難易度の高さために差を判別することが できなかった対象者群の残存機能を,CTSDではSCIRSよりもさらに詳しく判 別しうることを示唆している。

2.CTSDによって把握できる残存認知機能

今回対象とした重度認知症者に残存する認知機能の特徴を,MMSEの下位項 目とCTSDの下位項目とを比較することによって考察する。

重度認知症者がMMSEなどの検査で低得点になる原因は,近時記憶や構成な ど各認知領域の実際の障害に加えて,質問の意図を理解出来ないことの影響があ ると考えられる。重度認知症者ではワーキングメモリや言語機能の低下によって 文脈や文章の理解が困難で,単語や短文レベルでしか理解できない45)ことが指 摘されているが,MMSEやHDS-Rの下位項目には,長文よりなる質問の意味を

-35-理解できないと解答できない項目も多い。一方,下位項目のうち復唱や呼称は保 たれやすく46),本研究においても通過率の検討によって,CDR3群の対象者で も復唱と呼称の項目は低難易度であり,平均点も高いことが示された。

一方,CTSDの下位項目は,挨拶,復唱や物品・色・身体の呼称などを課題と する短い質問であり,特に文脈理解を必要とせず,外界の情報を大よその対象

として捉える知覚レベルの能力があれば解答可能な内容である。結果で示した ように,CDR3群において特に点数が高かった項目は「挨拶」(社会交流),「自 分の名前」(自己の見当識),「復唱」(言語),「命令」(言語),「物品使用」(行 為),色名呼称(言語)であった。これらは,因子分析によって明らかになった 自動的反応因子を反映する項目群である。MMSEが0点の対象者23名において CTSDで得点できた項目としては「挨拶」「自分の名前」「復唱」の項目が多かっ た。

これらの項目の多くは極めて単純な言語的反応や,自己や身体,日常的に利 用している物品や行っている行為に関する概念を問うものであり,残存する認 知機能の特徴を示していると思われる。つまり,認知症が重度に至っても保存 されている認知機能は,復唱とともに,外界よりも自己および自己身体に関す る認識手続き化されている物品の利用であるといえる。

色の呼称については,乳幼児の発達過程において色名と自分の名前の理解は ほぼ同じ発達段階である22)ことから,同程度の認知機能レベルを反映するもの

と考えられる。

CTSDの他の項目,つまり,「誕生日」(意味記憶),「時計時刻の認知」(視空 間能力),「視覚記銘」(記憶),「語流暢性」(前頭葉機能),正方形の模写(視空 間能力),名前書字(言語)などの項目はCDR3群における平均点が高くなかっ た。特に,注意操作因子を反映する視覚記銘(記憶),語流暢性(前頭葉機能),

正方形の模写(視空間能力),名前書字(言語)が高い難易度を示し,重度の段 階では早期に障害される認知機能かもしれない。誕生日(意味記憶)は従来指 摘されてきたように,認知症が重度に至れば徐々に障害される認知機能である。

同様に正方形の模写のような平面での視空間能力も重度に至れば障害される項 目であると思われる。

CDR1,2の群においては,CTSDの平均値は満点に近い値であった。ADが軽

-36-度の段階では,主に近時記憶などのエピソード記憶や複雑な構成が障害されʼ 中等度になれば,構成障害や記憶障害,注意障害が増悪して認知機能は全般的 に障害される47)。しかし,本研究でのCDR1,2群の段階ではCTSDの下位項目 で際立って得点が低い項目は見当たらなかった。このことは,下位項目の多く が,中等度と重度・最重度の認知症を判別するのに適した低次の認知機能や知 覚レベルの能力にもとづいて構成されていることを示している。

3.CTSDの信頼性,妥当性,鋭敏性解釈性

CTSDに関しては,総点と全ての下位項目得点のいずれにおいても高い評価者 間信頼性と検査一再検査信頼性が示された。筆者が博士前期課程時において検討 した日本語版SCIRSに関しては,総点については高い評価者間信頼性と検査̲再 検査信頼性が示されたが,下位項目の「場所の見当識」における検査一再検査信 頼性と,「遅延再生」における評価者間信頼性および検査一再検査信頼性には十分 な結果が得られなかった。これら2つの項目は,認知症の早期の段階で障害され る項目であり,日本語版SCIRSを用いた認知機能の評価に際しては,「遅延再生」

や「場所の見当識」の項目の信頼性に限界があることを前提とした評価が必要で あった。CTSDの記憶や見当識に関係する項目は,重度において障害されてくる 意味記憶,遠隔記憶,自己の見当識40脚8)の項目で構成されている。

CTSDは,SCIRSで不十分であった点が修正されており,総点および下位項目 では信頼性が高く,床効果を示さなかった。内的整合性などの信頼性を十分に担 保するためには,少なくとも対象者を100人以上で検討しなければならない44)49)。

今回の研究では対象者160名のうちCDR3群のみでも116名であって十分に対 象者数は満たしている。しかし,各原因疾患において100名は満たされておらず,

原因疾患別の特徴は検討できていない。

今回良い評価者間信頼性が得られた理由は,我々が次のことに配慮した結果で あると思われる。まず第一に,用いた物品がありふれたものであり,ほとんどの 対象者にとってなじみのある物品であったことが挙げられる。CTSDの使用物品 はただ5つの普段利用している物品であるために,検査者にとっても被験者にと っても利用しやすく,質問の意図も理解しやすかったと思われる。

次に,検査者のマニュアルを利用したことが挙げられる。Galasko,etal.50)は信

-37-頼性を高めるために,マニュアルを利用し,評点手順を共有することが重要であ ることを述べている。我々の研究でもマニュアルを用いたが,実際には,初めて CTSDを使用する検査者に対して10分程度の時間でマニュアルを読ませ,いく つかの注意点を伝えただけであった。にもかかわらず全ての項目で有意な一致度 を示したことはCTSDの使用法は誰にも容易に理解できるということを示唆し ている。第1章で課題のひとつとしてあげられた,誰でも簡便に利用できるとい

う条件をCTSDが満たしていることを証明できたと思われる。

CTSDの妥当性については,他の3つの検査との間に有意な相関が得られ,併 存妥当性は保たれていることが示された。しかしながら,重症度別にみると,

SCIRSはCDR2群および3群において他の検査との相関が得られたが,CTSDの 場合はCDR3群でのみ他の検査との相関が認められたため,CTSDは重度の認知 症専用の認知機能検査であると言うことができる。つまり,CTSDは重度の認知 症者を対象とする場合には,既成の検査を外的基準として十分な妥当性を示して いるといえる。

また表8で示したように,CTSDの各項目はそれぞれの総点との相関性が高く,

検査の組成についても各項目が検査全体の総点に影響を与える妥当な構造を有 していると言うことができる。

検査の実施時間については,CDR3群において,CTSDは,557.7 137.2秒 であった。この結果は,SCIRSの実施時間とほとんど変わらず,重度認知症者 への負担が少なく,認知機能検査の結果に影響を及ぼす集中力を維持することが 容易で,臨床的な有用性が高いことを示している。

一般に認知機能検査の成績は教育歴と関連することが指摘されているが,重度 認知症者用の認知機能検査については,各下位項目は低次な認知機能しか必要と しないため教育歴と関連しないことが指摘51)52)されている。本研究においても 教育歴との相関性は示されなかった。

因子構造を検討した構造妥当性に関しては,CTSDは主に難易度で二分するこ とができる項目で構成されており,重度認知症の認知機能低下を段階的に把握で きる検査であることが示された。この因子構造は,SCIRSともよくにており,

Choeetal.'3)は,SCIRSの因子をより注意資源(attentionalresources)が必要な項 目と注意資源をあまり必要としない項目に分け,中等度と重度の分類に適した項

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