研究目的
海洋鉛直混合の実測データは希少であり、特に中深層の鉛直混合のデータは現時点でも極めて少ない。
CTD
観測と同時に、シップタイム を取ることなく海洋微細構造観測データを得ることを目的として、2009
年からCTD
フレーム取り付け型微細構造取り付け装置マイクロライダ
mr-6000
による観測を開始し、フリーフォール乱流実測データとの比較を通じて、観測データの特性を把握し、利用の限界を明らかにし実用化を目的にデータを蓄積してきた。これまでの研究(長澤・安田:
2013
年3
月海洋学会春季大会ポスタ発表)は、マイクロライダの 観測データのうち、1)シアプローブによる観測データはCTD
降下速度の変動が小さい場合良好であること、2)高速水温計による観測デ ータのうち、水温消散率χは比較的良好であるが、Batchelor Spectrum
にフィットして求めたエネルギー散逸率は、フリーフォール乱流計 に比べて過小評価となる、ことを報告した。過小評価の原因として、CTD
降下速度(約1m/s
)がフリーフォール観測時降下速度(0.5-0.7m/s
) に比べて大きく、高速水温計FPO7
の時定数(約7ms
)では高周波領域が充分捉えられていなかった可能性が指摘された。このように、マ イクロライダから得られる水温消散率χの分布は、絶対値の精度は今後さらに評価する必要があるが、鉛直混合の大小を定性的に把握するこ とには少なくとも役立つ。これらのことから、白鳳丸
KH-13-3
航海において、CTD
フレーム取り付け型マイクロライダの観測を行い、鉛直混合強度の分布を把握す るとともに、通常のサンプリング周波数(512Hz
)の倍1024Hz
でデータを取得した場合との比較を通じて、マイクロライダ観測が改善でき るかどうかの検討を行った。観測と方法
本観測では、サンプリング周波数を、シアプローブ及び高速水温
T1
センサについて1024Hz
、高速水温T2
センサは512Hz
、CTD
(SBE9plus
)64Hz
と設定し、データを取得した。これらの観測データのうち、観測点C004
とC015
でのデータは、ファイル記憶の不良により取得でき なかった。また、C008
のデータは、処理がうまくできなかったため本報告に載せていない。レグ1の観測データは、荒天時のものが多く、0-200m
深でCTD
を通常よりゆっくり降下させているために、CTD
が上昇することが頻繁に起きたため、良好なデータが表層で取れていな105
い観測が多い。また、
512Hz
で取得した高速水温計T2
が、レグ2観測点C018
以降破損したため、図1の水温消散率データは、1024Hz
で 取得したT1
センサからのデータを使っている。観測点C001
からC017
では、512Hz
センサT2
のデータを用いて求めている。結果と考察
下図に水温消散率χの観測点毎の分布を示す。定量的には今後さらに検討を要するデータであり、示したデータは暫定的なものであること に注意して欲しい。図からは、観測点
C019
以降大きくなっている様子が見られるが、T1
センサを用いた評価(観測点C018
からC024
)で は時定数の補正を施しており、時定数の補正をしていないC001
からC017
に比べて大きい理由となっているかもしれない。今後さらに検討 する予定である。これまでの
MR
とVMP
の観測結果の比較では、MR
観測結果は乱流強度を過小評価している傾向がみられた。MR
の降下速度がVMP
よ り速いことが大きな原因であるが、MR
はCTD
フレームに取り付けて観測しているため、降下速度は変更できない。そこで、本航海では測 定プログラムを従来の512Hz
から1024Hz
へと書き換え、データ取得を試みた。106
下図に
MR
により測定されたシアースペクトル及び、温度シアースペクトルの一例を示す。シアースペクトルには、それぞれの区間で求 められたεに対応するNasmyth
スペクトルを重ねてある。温度シアースペクトルには、それぞれの区間で求めたχと、同区間でのシアーセ ンサーでの測定から求めたεで決まるBatchelor
スペクトルを重ねてある。従来の
512Hz
でシアーの測定を行った場合は(本航海ではチャンネル数の都合で測定を行わなかった)、10cpm
を越えたあたりからシアースペクトルのカットオフが始まり、εが
10
-7Wkg
-1以上に対応するスペクトルは測定不可能であった。本航海で、1024Hz
で測定したシア ーのスペクトルでは、カットオフが高波数側にシフトしており、ε=10
-5Wkg
-1に対応するスペクトルまで測定できているように見える。MSP
による観測結果との比較を行う迄はまだ何とも言えないが、乱流強度の過小評価は幾分改善されるものと思われる。一方、温度センサーによる測定結果では、