第4章 座屈および最終強度に関する検討
4.1 CSR-BC における最終強度算定法について
九州大学 吉川 孝男
1.CSR の Bulk ルールにおける縦曲げ最終強度計算方法
CSR の Bulk ルールにおいては、縦曲げ最終強度の計算方法として、①Smith の方法を適用 する方法、②有限要素法を適用する方法の 2 つが示されている。このうち、有限要素法に関して は、基本的な概念が説明されているにすぎないが、Smith の方法に関しては、縦強度に寄与す る部材の平均応力~平均歪関係を含めて、具体的な計算方法が規定されている。すなわち、
①船体横断面を構成する部材を Table 1 に示す区分を用いて、防撓パネル要素およびパネ ル要素に分割し、各部材(要素)に軸荷重が作用したときの平均応力~平均歪関係を求め る。
②要素の最大軸歪増分が降伏応力の 1/10 となるように設定して防撓パネル要素の初期剛性 を計算し、船体横断面の中性軸位置を計算する。
③断面に生じる曲率を順次増加させて、増分計算を行う。
④増分計算の各段階において、断面を構成する各部材に生じる軸歪を(曲率)×(中性軸か らの距離)で計算し、①で与えた平均応力~平均歪関係を用いて各部材に生じる軸応力 を計算する。その際、船体横断面の中性軸位置は、断面全体の軸力がゼロとなる条件から 求める。
⑤各部材に生じる軸力に船体横断面の中性軸からの距離を乗じて、断面の曲げモーメントを 計算する。
⑥計算された曲げモーメントを、前ステップにおける曲げモーメントと比較し、もし、減少してい れば、前ステップの曲げモーメントを縦曲げ最終強度とする。そうでなければ、ステップ④に 戻り、増分計算を繰り返す。
なお、Bulk ルールにおいては、Table 1 に区分した部材の平均応力~平均歪関係を数式の 形で与えている。例として、座屈が生じないときの平均応力~平均歪関係を Fig.1(a)で、また、曲 げ座屈を伴う部材の平均応力~平均歪関係を Fig.1(b)のように与えている。(部材の平均応力
~平均歪関係の詳細については、ルールを参照のこと。)
Table 1 Modes of failure of plating panel and ordinary stiffeners
Element Mode of failure Lengthened transversely framed plating panel
or ordinary stiffeners
Elasto-plastic collapse Shortened ordinary stiffeners Bending column buckling
Torsional buckling Web local buckling Shortened transversely framed plating panel Panel buckling
(a) elastic-plastic element (b)element collapsing by buckling Fig.1 Average stress strain relationship
2.縦曲げ最終強度の計算例
CSR の Bulk ルールの記された方法に沿って、船体横断面に生じる曲げ曲率とモーメン ト の 関 係 を 求 め る プ ロ グ ラ ム を 作 成 し た 。 さ ら に 、 こ の プ ロ グ ラ ム を 用 い て 、 ISSC2000VI.2 のベンチマークで取り上げられた Bulk Carrier の船体中央断面(Fig.2 参 照)を例に、Hogging モーメントおよび Sagging モーメントに場合について、曲げ曲率と モーメントの関係、および断面中性軸位置の上下方向の変化を調べた。
計算結果を Fig.3 および Fig.4 に示す。なお、縦曲げ最終強度(モーメントの最大値)
は、阪大、矢尾先生の計算結果(第 2 回西部支部構造研究会資料 2-5a)と1%以内の誤差 で一致することを確認している。
Hogging モーメントが作用する場合には、
まず、デッキが引張り域で降伏応力に達する。
このため、デッキの剛性低下により、まず、中 性軸が下方に移動する。さらに、モーメントが 増加すると今度は bottom に座屈が生じ、これに より中性軸は再び上方に移動する。このとき、
断面としての最終強度を示すようになる。
これに対して、Sagging モーメントが作用した 場合には、まず deck が圧縮により座屈し、
このとき、断面としての最終強度を示している。
Deck が座屈した場合の剛性低下は、引張り 降伏した場合よりも大きく、このため、中性軸 の移動の割合は Hogging モーメントの場合より 大きくなる。また、モーメントは曲率の増加と ともに急激に減少している。
ReH
− ReH
σ
σCR
ε σ
FiFig.2 Misdship section of Bulk carrier
(Bench mark example of ISSC2000VI.2)
Vertical bending moment
0 5 10 15 20
0 0.0001 0.0002 0.0003 0.0004
Curvature (1/m) Moment (×10
9Nm)
① ②
Position of neutral axis
0 2 4 6 8 10 12 14
0 0.0001 0.0002 0.0003 0.0004
Curvature (1/m)
Hight of neutral axis (m)
①
②
(a) Vertical bending moment and curvature
(b) Position of neutral axis
(c) Stress distribution through thickness Fig.3 Calculation result at hogging moment
NA NA
①yielding
NA yielding
②buckling deck
bottom
+ +
- -
-
Vertical bending moment
0 5 10 15 20
0 0.0001 0.0002 0.0003 0.0004
Curvture (1/m) Moment (×10
9Nm)
①
Position of neutral axis
0 2 4 6 8 10 12 14
0 0.0001 0.0002 0.0003 0.0004
Curvature (1/m)
Height of neutral axis (m)
①
NA buckling
② yielding
+
NA NA NA
①buckling
NA deck
bottom
+
-
+
- -
(a) Vertical bending moment and curvature
(b) Position of neutral axis
(c) Stress distribution through thickness Fig.4 Calculation result at hogging moment
3.縦強度部材の座屈、座屈後挙動モデル化の妥当性検討
Bulk ルールにおいては、前述したように Table 1 に区分した部材に対して、平均応力~平均 歪関係を数式の形(以下、CSR 算式と呼ぶ)で与えている。
このモデル化(数式)の妥当性を調べるため、汎用 FEM 解析プログラム ANSYS を用いて弾塑 性大たわみ解析を行い、圧縮を受ける補強材付き平板の平均応力~平均歪関係(座屈、座屈 後挙動を含む)を求め、CSR 算式との比較を行った。
FEM 解析では、Fig.5 に示す Triple Span-double bay モデルを用いた。構造および座屈変形 の対称性を考慮して、荷重辺ではx方向に一様変位を与え、y 軸回転変位を拘束した。また、荷 重に平行な境界ではy方向に変位一様とし、x軸回転変位を拘束した。また、Trans.部材はモデ ル化していないが、パネルは trans.位置で撓みを拘束している。
初期たわみとしては、パネルには弾性座屈のモードを与え、補強材には横倒れ座屈モードと ウェブの局部座屈モードを与えて計算した。なお、パネルにやせ馬モードの初期たわみは今回 与えていない。なお、初期たわみの最大値は、stiffener space の 1/200 とした。 FEM 解析モデ ルを Fig.6 に示す。
・パネルに与えた初期撓み 弾性座屈モード
b y a
x
w
p0= δ
p0sin m π sin π
①・補強材に与えた初期撓み
横倒れ座屈モード
⎟ ⎟
⎠
⎞
⎜ ⎜
⎝
⎛ ⎟⎟
⎠
⎜⎜ ⎞
⎝
− ⎛
=
w
s
h
z a
B x
v
0 0sin π 1 cos 2 π
②
補強材付き平板の座屈および座屈後挙動は、平板の寸法および補強材の寸法によって変わ る。そこで、板が最初に座屈する寸法の場合の計算結果を Fig.7 に、補強材が捩り座屈する場 合を Fig.8 に、補強材のウェブが局部座屈する寸法の場合を Fig.9 に示す。また、横方向に補強 される船側外板を想定した圧縮を受ける幅広平板の場合の解析結果を Fig.10 に示す。
補強材付き平板については、いずれの座屈モードについてもピーク荷重については、CSR 算 式の結果は FEM 解析とよく一致しているが、座屈後の荷重についてはルールで示されている CSR 算式の方が最大10%程度低めの荷重を与える場合のあることが確認できた。
また、幅広平板の場合には、CSR 算式は最大荷重については初期たわみがきわめて小さい 場合の FEM 解析結果に近く、座屈後強度は FEM より若干高めの値を与えていることがわかっ た。
Fig.5 Calculation range of stiffened panel
Fig.6 Model for calculation of stiffened panel
a a
b
b
a
b/2 b/2
σ
xσ
xt
Trans. Trans. Trans. Trans.
Long
Long
Long
x x
2a
b
a×b×t=2400×800×15 [mm]
Fig.7 Relation between axial strain and stress (When lateral buckling of plate occurs)
Fig.8 Relation between axial strain and stress
(When torsional buckling of stiffener occurs)
0
50 100 150 200 250 300 350
0 0.5 1 1.5 2 2.5 3
Strein = ε/εy
Stress σ (MPa) CR1(lateral buckling)
CR2(torsional buckling) CR3(Web local buckling ANSYS
0 50 100 150 200 250 300
0 0.5 1 1.5 2 2.5 3
Strain = ε/εy
Stress σ(MPa)
CR1(lateral buckling)
CR2(torsional buckling
CR3(Web local buckling)
By FEM(ANSYS)
Fig.9 Relation between axial strain and stress
(When local buckling of web plate occurs)
Fig.10 Relation between axial strain and stress (transversely framed plating panel)
0 50 100 150 200 250 300 350
0 0.5 1 1.5 2 2.5 3
Strain = ε/εy
Stress σ (MPa)
CR1(iateral buckling) CR2(torsional buckling) CR3(Web localbuckling) By FEM (ANSYS)
0 50 100 150 200
0 1 2 3 4 5
Strain = ε/εy
Stress σ (MPa)
CSR (Plate buckling)
ANSYS(δ=1mm)
ANSYS(δ=4mm)
4.縦曲げ最終強度計算結果の妥当性の検証
CSRのBulkルールに基づいた船体縦曲げ最終強度計算の妥当性の検証に関しては、付録(1) に示したCommittee Report: Comparative studies on the evaluations of buckling/ultimate strength and fatigue strength based on IACS JTP and JBP rulesにおいて、解析コード
HULLSTを用いた計算結果との比較によってなされている。HULLSTは広島大学および大阪
大学で作成された解析プログラムで、船体縦強度に寄与する部材の構造要素の平均応力と平均 ひずみの関係を準解析的な手法で求め、これを用いて縦曲げモーメントと曲げ曲率の関係を求 めている。付録(1)の計算結果の一部を以下に示す。Fig.11の(a)と(b)はSaggingおよびHogging モーメント負荷に対する縦曲げ最終強度の計算結果を、HULUSTを用いた値(横軸)とCSR のBulkルールに基づいた最終強度の計算結果(縦軸)を表しているが、両者はほぼ一致しており、
後者が最終強度について良い評価を与えていることが確認されている。
また、Fig.12 の(a)と(b)は、SaggingおよびHoggingモーメント負荷における縦曲げ最終強 度と船体横断面の初期降伏モーメントを比較したものであるが、図より、Sagging モーメント の場合には縦曲げ最終強度は初期降伏モーメントとほぼ一致することがわかる。
Fig.11 Comparison hull girder strength by JBP method and HULLST
Fig.12 Comparison of initial yielding strength with ultimate hull girder strength
5.縦曲げ最終強度に及ぼす水圧、貨物圧の影響についての検討
2.項で解析結果を示した CSR の Bulk ルールに基づく船体縦曲げ最終強度計算では、横圧によっ て生じる応力の影響を考慮していない。
ここでは、二重底部分に着目して、Fig.13 に示す水圧によって、Fig.14 に示す変形が生じることを 想定し、内底板および船底外板の船長方向にそれぞれ引張り応力と圧縮応力が生じる hold 中央、
あるいはその逆の応力が生じる hold 端部近傍の横断面における最終強度を調べた。
船体横断面の曲率と曲げモーメントの関係を求める計算では、船底外板および内底板に初期応 力を導入して、その影響を考慮して補強材付き平板の座屈および座屈後挙動、あるいは引張り降伏、
降伏後挙動を CSR 算定式に沿って計算した。なお、水圧によって生じる初期応力は±80MPaとし た。
Hogging モーメント作用時の曲率と曲げモーメントの関係を Fig.15 に示す。また、初期応力を考 慮した場合と考慮しない場合の最終強度の比較を Table 2 に示す。水圧によって船底外板および内 底板に生じる船長方向初期応力は、Hogging モーメント作用時に2%程度、縦曲げ最終強度を低下 させるが、Sagging 状態ではほとんど影響がないことが確認できた。
Double bottom under water pressure Bulkhead
Pressure Draft17m
1 Hold length ; 20m Fig.13 Pressure acted on bottom plate
Water pressure
+ ー
ー
End of hold Mid span of hold
Bulkhead Bulkhead
Inner bottom
+ ー
+
Bottom plate
Longitudinal direction
Fig.14 Longitudinal stress of bottom and inner bottom plate caused by pressure
Fig.13 The effect of initial stress on hull girder ultimate strength
6.結言
CSR の Bulk ルールの記された方法に沿って船体横断面に生じる曲げ曲率とモーメントの関係 を求めるプログラムを作成し、まず、1 隻の Bulk Carrier の船体中央断面に対して、Hogging およ び Sagging モーメントが負荷される場合について曲げ曲率とモーメントの関係を調べた。
その結果、Hogging の場合には、まず、デッキが引張り域で降伏応力に達するが、その後も 断面の負荷モーメントは増加し、次に bottom に座屈が生じて断面としての最終強度を示すよう になる。これに対して、Sagging モーメントが作用した場合には、まず deck が圧縮により座屈し、
この時点でほぼ断面としての最終強度を示していることを確認した。このため、Sagging の場合に は、断面の初期降モーメントがほぼ最終強度を与えるのに対して、Hogging の場合には最終強
Table 2 The effect of initial stress on hull girder ultimate strength(%)