• NIP を円滑に進めるために、新組織として「ドイツ水素・燃料電池機構
(Nationale Organisation Wasserstoff- und Brennstoffzellentechnologie:
NOW)が2007年に設置された(図 4-1)。NOWの予算は、主に交通建設住 宅省から拠出されている。
図 4-1.ドイツ水素・燃料電池機構(NOW)
• NIP では、表 4-1 に示す 6 つのプロジェクトを進めている。CEP(Clean Energy Partnership)プロジェクトは2002年から実施されているプロジェク トであるが、NOWの設立とともに、NIPの一部となっている。
表 4-1.NIPにおける実施中のプロジェクト CEP(クリーンエネルギーパー
トナーシップ)
・ ベルリンにおける水素利用車両(FCV、水 素内燃自動車、水素内燃バス)のデモンスト レーション。
CALLUX ・ 住宅用小型燃料電池コージェネレーション
(1〜5 kW)の実用化プログラム。
NEEDS ・ 産業用の大型燃料電池コージェネレーショ
ン(100〜500 kW)の実用化プログラム。
e4ships ・ 大型船舶用の補助電源用燃料電池(100
kW級MCFC)開発プログラム。
Leisure Applications Lake Constance(コンスタンス湖レ ジャー用FC)
・ レジャー用(外用電源やレジャー用車両)へ の燃料電池利用プロジェクト(企画中)。
Critical Electricity Supply
(電力安定供給プログラム)
・ 無停電電源による電力安定供給システムに 関するプログラム(企画中)。
デモンスト レーション
予算
(交通建設 住宅省より)
国際
(JTI、IPHE) 政府・市民
水素・燃料電池技術 NIP 国家革新プログラム R&D
予算
(経済技術 省より)
基礎研究:教育省
機能・役割
・ プロジェクトの評価と選定
(デモンストレーション)
・ ステークホルダとのアクテ ィブなネットワーク
・ 国際的なイニシアティブと のコーディネーション
・ コミュニケーション
・ マネジメント
(2) CEP プロジェクト
① CEPプロジェクトの概要
• CEP プロジェクトは、多様な企業・行政機関が参画している、FCV・水素ス テーション技術のデモンストレーションである(表 4-2)。
表 4-2.CEPプロジェクトの概要 目的 ・ エミッションの低減
・ エネルギー効率の向上
・ 実現可能な交通オプションとしての実証(先導措置)
・ エネルギー多様化によるエネルギー供給の確保 パートナー
政府組織 ドイツ連邦政府 エ ネ ル ギ ー
企業
Linde
Shell Hydrogen StatoilHydro TOTAL
Vattenfall Europe 自 動 車 メ ー
カー
BMW Daimler Ford GM/Opel Volkswagen
交通局 Berliner Verkehrsbetriebe BVG(ベルリン交通局)
Hamburger Hochbahn HVV(ハンブルグ交通局)
② 水素ステーションと車両
• 現在、CEPプロジェクトとしては1台のステーション(TOTAL)がある。
• CEP プロジェクトに投入されている車両とバスを表 4-3〜表 4-5 に示す。燃 料電池バスは、HyFleet:CUTEプロジェクトにも参画している。
表 4-3.CEPプロジェクトに導入されている車両(フェイズI)
出所:CEP Report 2002-2007
< http://www.cleanenergypartnership.de/cep_erste.php >
表 4-4.CEPプロジェクトに導入されている車両(今後の予定)
BMW Hydrogen7を導入。
Daimler B-Class F-Cellを導入。
現在は35MPa対応のみだが、70 MPa対応車を導入する。
Ford Focusを導入。
GM/Opel 70 MPa対応車(HydroGen4)30台を導入予定。
Volkswagen Touran HyMotion3を導入
現在は35MPa対応のみだが、70 MPa対応車を開発する。
表 4-5.CEPプロジェクトで運用されている水素バス ベルリン MAN製水素ICEバス14台(液体水素タンクを搭載)
ハンブルグ Daimler製燃料電池バス9台(高圧水素タンクを搭載)
図 4-2.CEPプロジェクトで運用されている車両
③ CEPプロジェクトの展開
• CEPプロジェクトの展開を表 4-6に示す。すでにフェイズI(2002〜2007年)
を終え、現在はフェイズIIにある。
• フェイズII(2008〜2010年)では、市内に3ヶ所のステーションを、またベ ルリンとハンブルグの間に1ヶ所のステーションを新設する予定である。
- TOTALは2009年半ばまでに2ヶ所のステーションを、Shellは2009年末 に1ヶ所のステーションを、それぞれベルリン市内に新設する。
- ベルリンとハンブルグの間は300 km程度だが、中間に水素ステーションを 設置する予定である。
• フェイズIII(2011〜2016年)では、5~10ステーションを展開し、地域ネッ トワークの構築の核を目指す(地域合計で10〜20ステーション)。
表 4-6.CEPプロジェクトの展開 フェイズI
2002〜2007年
・ 液体水素充填の実証(BMW、水素ICEバス用)
・ オンサイトでのLPG改質(水蒸気改質)の実施 フェイズII
2008〜2010年
・ ライトハウスプロジェクトに参加。
・ パートナー拡大(Shell Hydrogen、ハンブルグ交通局)
・ 70MPa充填の実施
(SAEのドラフトに基づく。水素4kgを3分以内で充填可能)
・ 車両の拡大(30〜40台)
・ 水素ステーションの新設(総数3〜5ヶ所)
フェイズIII 2011〜2016年
・ スカンジナビア水素ハイウエイとの連携14
図 4-3.ベルリン市内のCEPステーション(既存、新設)
TOTAL(移動式)
TOTAL(新設)
Shell(新設)
TOTAL(既存)
表 4-7.CEPプロジェクト フェイズIの成果15
出所:CEP Report 2002-2007
< http://www.cleanenergypartnership.de/cep_erste.php >
15 フェイズIでは、水素ステーションがARALステーションとTOTALステーション(今回訪問)の 2ヶ所であったがARALステーションはCEPプロジェクトから抜けている。本成果は、水素ステ ーション2ヶ所での成果である。
(3) CEP 水素ステーション(TOTAL)
① ステーションの概要
• CEPステーションは、ベルリン郊外に設置されている(図 4-4)。
- ベルリン交通局(水素バス14台を所有)の路線バス整備場の横に建設された。
- 一般のガソリンスタンドと交通局側の両方に、水素ディスペンサ(液体水素、
圧縮水素)が設置されている。
図 4-4.CEPステーション(TOTAL)
水素ステーション
(一般用)
通常のガソリン スタンド(セルフ ガソリンスタンド
ショップ(兼コンビニ)
ベルリン交通 局バス整備場
水素関連 設備
出所:Google Maps 水素ステーション
(交通局用)
カード リーダー 圧縮水素
ディスペンサ 水素 ステーション
(一般用)
ガソリンスタンド ショップ(兼コンビニ)
CEPのパートナ ーの表示
水素ステーション
(交通局用)
液体水素 ディスペンサ
圧縮水素 ディスペンサ
液体水素 ディスペンサ 通常のガソリンス
タンド(セルフ式)
② 水素ディスペンサ
• 圧縮水素ディスペンサは35 MPa充填と70 MPa充填の両方に対応している。
- 70 MPa充填はプレクールも実施(後述)。
- 充填は基本的にセルフ充填。そのために利用者には、簡単な充填ノズルの扱 い方や安全指導を実施している(せいぜい10分程度)。
図 4-5.圧縮水素ディスペンサ
70MPa充填ノズル
充填量・料金表示部
緊急離脱カプラ
35MPa充填ノズル 緊急離脱カプラ
充填ノズルの使い方の説明
• 液体水素ディスペンサはLinde製である(図 4-6)。
図 4-6.液体水素ディスペンサ
• カードリーダーは、圧縮水素ディスペンサ、液体ディスペンサの間に設置され ている(図 4-7)。
- 利用者はIDカード(hydrogenCard)を挿入し、水素を充填する。充填量な
どはTOTALが集計し、別途利用者に請求書を送付する。
図 4-7.カードリーダー
液体水素充填ノズル 充填量・料金表示部
IDカード
(HydrogenCard)
カードリーダー
③ 水素関連設備
• CEP水素ステーションの水素関係設備の概要を図 4-8に示す。
- システムを設計・建設したのはLindeである。
- 水素源は液体水素(工場からの輸送)と、オンサイト改質(LPG)の2種類。
- 液体水素はLindeから供給され、液体水素タンク(貯蔵量1トン)に貯蔵さ れる。液体水素充填の場合は、液体水素タンクから直接供給される。圧縮水 素の場合は、気化器でガス化し、順次圧縮される。
- オンサイト改質の場合は、LPGを改質装置で改質し、圧縮機で圧縮する。
- 訪問当日はシステム全体を改良中で、稼働はしていなかった。
図 4-8.水素関係設備
液体水素
タンク 圧縮水素カードル
イオニック ピストン コンプレッサ コンプレッサ 改質システム
気化器
制 御 室 水素
ディスペンサ (一般用)
水素ディスペン サ(交通局用)
液体水素 タンク
気化器
改質装置
• 改質システムの概要を図 4-9に示す。
- 改質システムはCarbontech製(ただしLindeがメインコントラクタ)。
- 水素製造能力は約250 kg/日(約10 kg/時)。
図 4-9.改質システムの概要
1
2 3 4 5 6 7 8 2
3
4 5 6 7
8 1
改質リアクタ クリーンアップ、シフト反応部
• 圧縮機はイオニックコンプレッサとレシプロコンプレッサの 2 システムであ る。
- イオニックコンプレッサ(図 4-10)
2台導入されており、一台は改質システムからの水素を35 MPaまで昇圧し、
水素カードルに貯蔵する。このカードルに貯蔵された水素は、35 MPa 充填 に使用される。
もう一台は、カードルからの水素をさらに 55 MPa 程度に昇圧し、35 MPa ディスペンサに直接供給される(35 MPa 充填の最終段階で、充填を完了さ せるためにブースター的に使用)。
図 4-10.イオニックコンプレッサ
液面の上昇
(水素の圧縮)
液面の下降
(水素の吸気)
ピストンの移動による イオン液体の押し出し・吸引
高圧水素
(100 MPa)
イオン液体ミスト の回収
イオニックコンプレッサ
(2系統)
- レシプロコンプレッサ(図 4-11)
水素カードル(35 MPa)から水素を100 MPa程度に昇圧し、70 MPa充填 用ディスペンサに直接供給する。
図 4-11.ピストンコンプレッサ
④ プレクール(圧縮水素)
• プレクールは、SAEのドラフトに準じて、冷却温度−40℃で実施している。
- 開所当初はプレクールを実施していなかったが、自動車メーカーの要望で導 入した。
- 冷却装置は圧縮機の隣に設置している。
- 圧縮機からディスペンサまでの水素導管(100 MPa)は二重になっており、
冷却された液体を循環させて、充填直前まで水素を冷却できるように設計し ている。そのため、充填ノズルで−40℃を実現することも可能。
• ディスペンサ側の能力としては、3分以内の充填は十分可能である(水素流量
は 3.6 kg/分)。むしろ車両側の水素タンクのシステムの状態により、充填が
制限されてしまう。