相対湿度
エンタルピー i (kJ/kg
、乾き空気
)
重量絶対湿度 x (kg/kg、乾き空気)
乾球温度 θ(℃)
水蒸気分圧 pw (kPa)
F=大気圧 101.325Pa
湿り空気線図(出典 空気調和衛生工学便覧 Ⅰ 基礎編 第11版 空気調和・衛生工学会編 ㈱オーム社空気調和・衛生工学会資料)
図 2
3-7-2
光・熱・省エネルギー
3
-7快適性、健康、窓の心理的効果
3 -8
1温熱環境の6要素
室内の温熱環境を形成している要素は、環境側 の要素として室内空気温度の他に、湿度、気流、
放射があり、人間側の要素として着衣量、活動 量があります。人体の熱的快適性に関する温熱 感覚はこれら6要素の総合効果で支配されます。
これらの要素のうち、普段は空気温度のみで暑 さ寒さを表現することが多いのですが、人体と 周囲環境との間で行われる熱の授受は、空気温 度ばかりではなく湿度、気流、周壁からの放射 熱に影響されますし、その影響度合いは着衣量 や活動量によって変わります。
●空気温度
私たちが「暑い」とか「寒い」と感じる時、真っ 先に気にかけるのがこの空気温度、いわゆる温 度計で計る室内の温度です。
●湿度
湿度は私たちの暑さの感じ方や健康面に大きな 影響を与えます。梅雨時の高湿な空気は皮膚を べたつかせ、単なる暑さ以上の不快感をおぼえ ます。またエアコンの温風などで乾燥し過ぎた 室内に長くいると、喉や鼻の粘膜が乾きやすく なり、悪影響を及ぼします。
●気流
どんな空気が、どんなふうに流れ、私たちの体 にふれるか。気流も温熱環境の大切な要素で す。夏に外出先から帰ってきた時、エアコンだけ では足りず扇風機の強い風に当たりたくなりま せんか。その一方、冬には、窓を閉めているのに 足元にぞくっとする冷気を感じたり、暖房中の ファンヒーターやエアコンの温風が体に直接当 たって不快に感じた経験はありませんか。こうし た望まれない不快な気流のことを「ドラフト」と いいます。
●放射熱(平均放射温度)
壁や床などの室内を構成する部材表面から直 接、赤外線によって伝わる熱を「放射熱」といい ます。室内にいる人は周囲からさまざまな放射 熱を受けているわけです。この放射熱授受によ り、最終的に人が受ける放射熱と等価な(同じ 放射熱を受けるような)周囲の均一部材表面温 度を「平均放射温度」といい、温熱環境に意外 なほど大きな影響を与えます。床暖房や温水パ ネル暖房が、低めの空気温度でも快適に感じる のは、床面からの熱により人が暖められている からです。それとは対照的に、夏の冷房時、日射 によって直接、窓および周囲の表面温度は高く
なり、そこからの放射熱によって人が暖められる ため、たとえ空気温度が適正に保たれていたと しても、不快な暑さを感じる場合があります。
●人体の着衣量
暑ければ衣服を脱ぎ、寒ければセーターを着込 む。このように身につける衣服の量は温熱環境 に大きく影響します。衣服をたくさん着込めば 着込むほど服の間の空気の層が増え、断熱性が 高まります。すなわち体の熱は逃げにくく室内 環境の影響も受けにくくなります。衣服の断熱 性はクロ(clo)という単位で表されます。クロ値 は衣服の種類や量によって異なります。具体的 には、シャツ+ズボン0.5clo、ジャケット+ズボ ン1.0clo程度となります。
●人体の活動量
安静にしている時と忙しく動いている時では、
暑さや寒さの感じ方はずいぶん違います。人の 体は活動量が増えれば増えるほど、消費する熱 エネルギーが大きくなります。つまりたくさんの 熱を体の中で発生させる必要があるわけです。
この発生熱量を代謝量といいます。代謝量が大 きいと夏はより暑く感じ、冬は寒さをあまり感じ なくなります。この代謝量はメット(met)という 単位で表されます。具体的には、安静時・睡眠 時0.7met、椅子に腰掛けた状態1.0met程度と なります。
2熱的快適性指標PMV (予測平均温冷感申告)
PMV(PredictedMeanVote)は、Fangerに よって提案された室内の温熱環境評価指標で す。このPMVは、温熱環境の4要素(気温・湿 度・気流・放射)の他に、人体の着衣量・活動量 を加えた6要素を用いて決定されます。
人体の快適方程式に、これら6要素を代入するこ とで、その条件において大多数の人が感ずる温 冷感を、表 1に示す7段階の数値で表現します。
またFangerは、PPD(PredictedPercentage
PercentageofDissatisfied)を不 満 足 者 率を 意味するものとして提案し、PMVとPPDの関 係を図 1のように表しています。ISO-7730で は、快適範囲として、-0.5<PMV<+0.5PPD
<10%が推奨されています。
表 1 PMVの温冷感尺度
+3 hot 暑い
+2 warm 暖かい
+1 slightlywarm やや暖かい
0 neutral どちらでもない
−1 slightlycool やや涼しい
−2 cool 涼しい
−3 cold 寒い
3室内温熱環境計算例
図 2に示す空調条件のある室内モデルを用い、
夏期(日中)と冬期(夜間)における表 2の各種 ガラス品種を使用した場合の室内の温度分布の シミュレーションをおこないました。計算結果を 図 3−図 6に示します。図中の数値はガラス表 面平均温度と、室内平均空気温度を示します。
表 2 計算に用いたガラス品種
商品名 熱貫流率U
[W/(m2・K)]
日射熱 取得率 ペアガラス(FL3+A12+FL3) 2.9 0.80
サンバランス高遮熱断熱Eタイプ
(Low-E3+Ar16+FL3) 1.1 0.40
0
-2.0 -1.5 -1.0 -0.5 0.5 1.0 1.5 2.0
80 60 40 30 20
45 6 8 10
%
PMV(Predicted Mean Vote)
PPD(Predicted Percentage of Dissatisfied)
PMVとPPDの関係 図 1
空間温度分布 出力位置
窓(西側)
4.5m 3.5m
2.5m
●夏期条件
西面日射量 563W/㎡ 外気温 33.7℃
空調条件(風量:660m3/h 風速:3.5m/s)
吹出し温度:21.0℃
●冬期条件 外気温 2.0℃
空調条件(風量:660m3/h 風速:3.5m/s)
吹出し温度:25.0℃
●各部位の熱性能 外壁:熱貫流率 次世代省エネIV地域基準相当
●窓面積 5.5㎡
室内温熱環境計算モデル概要 図 2
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-8●夏期-ガラス表面温度と室内平均温度 夏期の結果を見比べると、ペアガラスとサンバ ランスでは室内側ガラス表面温度差が7℃以上 あり、室内平均空気温度差も4℃程度あること がわかります。
この結果は、サンバランスが室外側のガラスで 主に日射エネルギーを吸収し、ペアガラスより も日射透過率が低く、日射エネルギーを室内に 取り入れにくいことから生じています。
夏期 Low-E3+Ar16+FL3を用いた場合 図 4
32.2℃ 27.3℃
夏期 FL3+A12+FL3を用いた場合 図 3
31.4℃
39.2℃
ガラス表面室内側
平均温度 室内平均
空気温度
●夏期−室内温熱環境計算結果 ●夏期-窓近傍平均放射温度
窓から距離1m、高さ1mの位置での平均放射温 度は次のようになりました。
表 3 夏期の平均放射温度[℃ ]
(窓から、 距離1m、 高さ1m)
FL3+A12+FL3 40.1
Low−E3+Ar16+FL3 32.5
ペアガラスとサンバランスでは平均放射温度の 差が7℃以上あります。これは、室内側ガラス表 面温度と窓近傍の床表面温度の違いの影響が大 きいからです。
●夏期-PMVとPPD
夏期の平均室温と、平均放射温度結果以外に、
以下のパラメーターを仮定して、PMVとPPDを 算出しました。表 4に結果を示します。
代謝量 1.0met(椅座安静)
着衣量 0.4clo(夏期標準レベル相当)
相対湿度 50%RH 気流速度 0.5m/s
(ここでは扇風機も仮定)
表 4 夏期のPMVとPPD
(窓から、 距離1m、 高さ1m)
PMV PPD[%]
FL3+A12+FL3 3.1 99.4 Low−E3+Ar16+FL3 0.1 5.2
本計算結果において、夏期の日中、窓から距離 1mの位置での不満足者率PPDの値はペアガラ スが100%近いのに対し、サンバランスでは5%
程度です。このようにサンバランス高遮熱断熱E タイプを用いることで、夏期の不快な暑さを大 幅に解消することができます。
・本計算では夏期において、カーテンがなく日射が窓から 直接室内に侵入する場合の検討をしています。窓から1m の位置では、人体は窓越しの日射とガラス表面や床から の放射熱の影響を多く受けるので、夏期の西面ピーク時 においては、どのガラスを用いても暑めの結果となりま す。ここでは、サンバランス遮熱断熱タイプEが優れた遮 熱性能を有する結果となりました。
・室温は空調設定温度以外にも、壁の断熱仕様や部屋の大 きさの影響を受け、ガラス表面温度は日射や外気温、室 温の影響を受けます。そのためサンバランス高遮熱断熱タ イプを用いても、一枚ガラスや透明ペアガラスを使用した 場合と比較して顕著な効果がみられない場合もあります。
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-819.7℃ 22.8℃
22.2℃
室内平均空気温度
●冬期-ガラス表面温度と室内平均温度 冬期の結果を見比べると、ペアガラスとサンバ ランスでは室内側ガラス表面温度差は4℃程度 あり、室内平均空気温度差は0.6℃程度である ことがわかります。
これはサンバランスがペアガラスよりも断熱性 能が高いことと、冬期の夜間の平均室温はガラ スの違いよりも空調の設定温度に依存しやすい からです。
なお、窓近傍下部のコールドドラフトには明ら かな違いがあることが判ります。
●冬期-窓近傍平均放射温度
冬期の結果は平均室温で0.6℃程度の差ですが、
窓から距離1m、高さ1mの位置での平均放射温 度は表 5のようになりました。
表 5 冬期の平均放射温度[℃]
(窓から、 距離1m、 高さ1m)
FL3+A12+FL3 19.7
Low−E3+Ar16+FL3 21.1
ペアガラスとサンバランスでは平均放射温度の 差が1.4℃程度あります。これは、室内側ガラス 表面温度差(ここでは4℃程度の差)の影響によ るものです。
●冬期−PMVとPPD
冬期の平均室温と、平均放射温度結果以外に、
以下のパラメーターを仮定して、PMVとPPDを 算出しました。表 6に結果を示します。
代謝量 1.0met(椅座安静)
着衣量 1.1clo(冬期標準レベル相当)
相対湿度 40% RH 気流速度 0.1m/s
表 6 冬期のPMVとPPD
(窓から、 距離1m、 高さ1m)
PMV PPD[%]
FL3+A12+FL3 −0.5 10.7 Low−E3+Ar16+FL3 −0.3 6.9
本計算結果では、冬期の夜間において、窓から 距離1mの位置での熱的快適性指標PMVの値 はISO-7730の定める快適範囲(-0.5<PMV<
+0.5)におさまることがわかります。
このようにペアガラスとサンバランスを用いた 場合では冬期夜間の室内平均空気温度差はわ ずかでも、ガラス表面温度に違いがあるので窓 近傍の熱的快適性に違いが有ることがわかりま す。
サンバランス高遮熱断熱Eタイプを用いること で、冬期の不快な寒さを解消することができま す。
・室温は空調設定温度以外にも、壁の断熱仕様や部屋の大 きさの影響を受け、ガラス表面温度は日射や外気温、室 温の影響を受けます。そのためサンバランス高遮熱断熱タ イプを用いても、一枚ガラスや透明ペアガラスを使用した 場合と比較して顕著な効果がみられない場合もあります。
冬期 FL3+A12+FL3を用いた場合 図 5
冬期 Low-E3+Ar16+FL3を用いた場合 図 6
●冬期−室内温熱環境計算結果
ガラス表面室内側
平均温度 15.8℃
窓近傍下部の コールドドラフト
窓近傍下部の コールドドラフト
光・熱・省エネルギー