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-30-第2章 農耕地域地下水水質の変動特性

3. 7 陽イオン(Na+, K+, Mg2+, Ca2+)濃度の変動

図-2.14にはWI----W6の陽イオンCNa+, K+, Mg2+、 Ca2+)濃度の変化を示す。

WlはCa2+濃度が他の井戸水に比べ低く、 変動幅も小さくなっている。 また、 Na+、 K+,

Mg2+濃度も安定しており、 この地点の地下水は人為的な影響を受けていないことがわかる。

W2は1992年1 0月9日まではNa+とCa2+濃度がほぼ同じで安定しており、 Na+濃度 は他の井戸の濃度より高くなっている。それ以降ではK+, Mg2+、Ca2+濃度は上昇し、 逆にNa+

濃度は減少して安定する傾向を示した。 W2は1993年の7、 8月頃に井戸管の一部が破 損したためその修理を行なったということであるが、 この時期を境にして水質状況が変化し たことがわかる。

W3は Ca2+濃度の変動が大きく他に比べて濃度も高い。Na+濃度は横ばいで推移している が、 K+、 Mg2+濃度はCa2+濃度の増減に対し連動した傾向を示している。

W4はCa2+濃度の変動がW3に次いで大きく濃度も高いが、 W3では1991年1 0月3 日に高いCa2+濃度が出現している。 一方、 W4では逆に低くなっている。 これは両者の井戸 地点での農地利用状況が異なり、 従って施肥パターンが相違したためと考えられる。

W5、 W6ではW4に比べ陽イオン濃度変動幅は小さいが、 概ねW4の濃度変動に似たパ ターンを示している。

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第2章 農耕地域地下水水質の変動特性 第4節 背景地下水水質

この地域における帯水層の地質は主として風化花筒岩およびマサであり、 それを構成する 鉱物の中で風化を最も受けやすい鉱物の一つに斜長石がある。 この地における本来の地下水 水質を示す地点を決定するにあたっては次のように考えた。 すなわち 、 この付近の土地利用 状況および図- 2.8 (硝酸態窒素濃度変化)、 図-2.13(EC変化)などから、 低濃度でしかも 安定しているWlが地形的にも人為的な影響を受けにくい地点であると判断した。

地下水の本来の水質を地質状況から解明する際、 化学的風化を受けやすい長石( ナトリウ ム長石(NaAlSi308)と カル シ ウム長石(CaAl2Si208))の分 解を、 その風化に関与した液相 と固相との安定関係、 すなわち化学平衡論から論じることは確立された手段となっている。

斜長石が風化されるときに各成分が独立に挙動すると仮定すれば以下の4. 1、 4. 2の結 果を適切に組み合わせることで斜長石の風化を 論じることができる29)。

4. 1 ナトリウム長石の分解

ナトリウム長石(albite)の風化によりシリカが溶脱されギプス石(gibbsite)Al(OHhが 生成する反応は、

N aAl S i 308 +H+ + 7H20→Na++3Si (OH) 4+A1 (OH) 3 内ノι,,l、 、、,,,1

で表される。 各成分の標準生成 ギブズ、エネルギーから計算した式(2. 1)の平衡定数Kは2.25 X 10.5 (250C、1atm)となり、 希薄な溶液ではH20の活動度、 すなわちaH20=1 とおけるの で、

K=(a Na+X aSi(OH )4)/aH+

となる。 両辺の対数をとると 、

log(aNa+/aH+) =-4. 65-31ogaSi (0H)4 (2. 2)

となる。 式(2.2)は、 ナトリウム長石とギブス石の共存条件が2つのパラメータ aNa+ /aH+と aSi(OH )4により表せることを示す。

ナトリウム長石からカオリナイト(kaolinite)Al2Si205(OH )4が生成する反応は次の通りで ある。

円ぺU円ぺU

2NaAl S i308+2H++9H20→2Na++4Si (OIO 4+A12Si205 (OH) 4 nJι ,,E‘、 、、,,,内《d

上記の例と同様に計算すれば、 ナトリウム長石とカオリナイトが共存するためには式(2.4)が 満足される必要がある。

log(aNa+/ aH+)=O. 39-21ogaSi (0ω4 (2. 4)

ナト リ ウ ム 長 石 か らナ ト リウム ー モ ン モ リ ロ ナイト( Na-montmorillonite ) NaO.33Al2(Si3.67AlO.330 1Q(OH)zが生成する反応は、)

7NaAl S i 308+6H++20H20→6Na++l0Si (OIO 4+3Nao.33A12 (Si3・67A1o.33010)(OH) 2 (2.5)

である。 ここで用いたナトリウムーモンモリロナイトの式は理想式であり、 実際に天然に見 出される鉱物はこれよりもはるかに複雑な組成を持っている。 式(2.5) から導かれるこれら の鉱物の共存条件は式(2.6) で与えられる。 ただし、 ナトリウムーモンモリロナイトに対す る標準生成ギブズエネルギーにはHelgeson2 9 )の値1277.76 kcal'mol"lを採用した 。

1 og (aNa+/ aH+) =1. 84-(5/3) 1 ogaS i (OIO 4 (2. 6)

カオリナイトとギブス石の関係を与える反応 式は、

A12Si205ωH) 4+5H20→2S i (OH) 4+2A1 (oro 3 (2.7)

であり、 これらの鉱物が共存する条件は、

logaSi(OH)4=-5.04 (2.8)

である。

ナトリウム-モンモリロナイトがカオリナイトに変化する反応は、

6Nao.33A12 (Si3.67Alo.3301o) (OH) 2+2H++23H20→2Na++8Si (OI04+7A12Si205(OH)4 (2.9)

-3 4

-第2章 農耕地域地下水水質の変動特性 であり、 この反応から導かれるこれらの鉱物の共存条件は式(2.10)で示される。

log (aNa+/aH+) =-8. 27-41ogaSi (0H)4 (2.10)

以上の 式 ( 2.2 )、 ( 2.4 )、 ( 2.6 )、 ( 2.8 )、 ( 2.10)によって表さ れ る条 件 を log(aNa +/ aH+) -logaSi(OH)4図にまとめたものが図-2.15(a)である。 図-2.15(a)中の

①は式(2.2)に、 ②は式(2.4)に、 ③は式(2.6)に、 ④は式(2.8)に、 ⑤は式(2.10) にそれぞれ対応している。 次に、 図-2.16 (a)にはWlの水質データ を平均したものをプロ ットした。 図-2.16(a)では、 Wl はカオリナイトとナトリウムモンモリロナイトの境界領 域にあり、 主にカオリナイトとナトリウムモンモリロナイトに媛触した水であることがわか る。

4. 2 カルシウム長石の分解

カルシウム長石(anorthite)についても aCa2+/a2H+と aSi(OH)4をパラメータにとれば、

図-2.15(a)と同様な風化生成物の安定関係図 を得ることができる。

カルシウム長石の風化に関連した反応式と平衡条件を以下に示す。 この結果を用いて作成 した安定関係図 が図-2.15(b)である。

カルシウム長石-ギブス石の反応式は、

CaA12S i 208+2H++6H20→Ca2++2Si (OH) 4+2A1 (OH) 3

、、,,,-EE----nノιf'k

であり、 平衡条件式は、

log(aCa2+/a2H+)=4. 41-21ogaSi (0H)4 (2.12)

である。

カルシウム長石-カオリナイトの反応式は、

CaA12S i 208+2H+ +H20→Ca 2+ +A12S i 205 (OH) 4 n,ι fE1 - --- 、、』,,内‘AV

であり、 平衡条件式は、

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log (aCa2+/a2H+) =14. 5 (2. 14)

カルシウム長石ーカルシウムーモンモリロナイト(Ca-montmorillonite) の反応式は 、

7CaA 12Si208+12H++8Si (0104→6Ca2++ 16H20+3Cao・33A 1 4(S i 3・67A 1 o・33010) 2 (OH) 4 (2. 15)

であり、 平衡条件式は、

1 og (aCa 2+/ a2H+) =19. 87+ (4/3) 1 ogaS i (OH) 4 nノι/‘‘、 phu --- -EJ

である。

カルシウムーモンモリロナイトーカオリナイトの反応式は 、

3Cao・33A14(S i3. 67A 1 o・33010) 2 (OH) 4+2H++23H20 →Ca2++8Si (0H)4+7A 1 2SizOs(0ß)4 (2.17)

であり、 平衡条件式は、

1 og (aCa 2+/ a2H+) =-17. 79-8 1 ogaS i (010 4 (2. 18)

である。

こ こで上記の計算にあたって使用した標準生成ギブズエネルギーはカルシウムーモンモリ ロナイトCaO.3:Al4(Si3.67AlO.33ÜlOh(üH)4ニ2558.48kcal'moI-l、 カルシウム長石ニ958.8kcal' moI-lである2 9)。

以上の式 ( 2.8 )、 (2.12)、 ( 2.14)、 (2.16)、 (2.18)によっ て表される条件 を log(aCa2+/æH+) - loaSig (üH)4 図にまとめたものが図2.- 1 5(b)である。 図-2.15 (b)中

の①は式(2.12)に、 ②は式(2.14)に、 ③は式(2.16)に、 ④は式(2.8)に、 ⑤は式(2.18) にそれぞれ対応している。 次に、 図- 2.16 (b) にはWlの水質データを平均したものをプロ ットした。 図-2.16(b)では、 Wlはカルシウムーモンモリロナイトの領域にあり、 これら と接触した水であることがわかる。

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