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Ar-CO 2 ガスでの測定値との比較

ドキュメント内 Thick-GEM 06S2026A 22 3 (ページ 44-49)

第 4 章 Thick-GEM のシミュレーション 28

4.5 ガス増幅シミュレーションの結果

4.5.3 Ar-CO 2 ガスでの測定値との比較

4.19 Ar-CO2ガス中のcube etchingの増幅率と測定値の∆VGEM 依存性

図4.19より、Ar-CO2 ガス中では0.07mmのcube etchingを施したThick-GEMの 増幅率の値が測定値に近い値となった。

4.20 Ar-CO2ガス中のslash etchingの増幅率と測定値の∆VGEM 依存性

図4.20より、slash etching 2のThick-GEMの増幅率が測定値に最も近い値となった。

5.1 3種類のガスにおける増幅率(測定値)∆VGEM 依存性

図5.1は第3章の測定結果をまとめたものである。横軸は∆VGEM で、縦軸は増幅率 である。P10ガスでは ∆VGEM=1630 V 以上で、P5 ガスでは∆VGEM=1460 V以上 で、Ar-CO2 ガスでは∆VGEM=1940 V以上で放電が起こってしまい、正しい測定を行 うことができなかった。測定による増幅率はP10ガス、P5ガスで目標の104倍以上の増 幅率を得ることができた。一方、Ar-CO2ガスでは目標の104倍以上の増幅率を得ること ができなかった。これらの結果から、従来のワイヤーチェンバーで用いられているP10

ガス、P5ガスをThick-GEMで使用することによって十分な増幅率を得ることが可能で

あり、50µm厚のGEMで用いられているAr-CO2 ガスは Thick-GEMで使用するには 不向きであることがわかった。

P10 ガスとP5 ガスでは、増幅率が約3×104 倍程度以上になると放電が起こり始め た。これは増幅後の電子数が今回用いたThick-GEMの許容量を超えてしまっているた めと考えられる。したがって、孔の直径を大きくすることによって放電の起こり始める増 幅率の境界線を引き上げることが可能と言える。

また、Ar-CO2ガスでは、増幅率が約6×103 倍程度以上になると放電が起こり始める。

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このとき∆VGEM=1940 V以上と非常に高い電圧を掛けることになり、Thick-GEMの 孔の内部の電場はP10ガスや P5ガスのときよりも非常に強くなっている。今回用いた

Thick-GEMの基板は高電場によりチャージアップを起こし、電流が流れることによって

放電が起こってしまう。したがって、P10ガスやP5ガスのときよりも低い増幅率で放電 が起こり始めたと考えられる。

図3.17より、Thick-GEMの増幅率は電圧を印加してから約300分程度で安定する。

Thick-GEMは絶縁体の厚さが400µmと分厚く増幅領域が広いので、孔の中の電場が均

一になるのに時間がかかる。そのため増幅率が時間変動すると考えられる。

電場シミュレーションでは図 4.10〜図4.14より、孔の中の電場の強さはエッチングの 形状に依存することがわかる。図4.13のslash etching 1以外のThick-GEMは、露出し ている基板の周辺に高電場が形成されている。エッチングが深く施してあるモデルほど露 出基板周辺の電場が強くなり、孔の中の電場は弱くなっている。これは極板から出た電気 力線が孔の中に入らずに、露出している基板上に落ちるものが増えたためと考えられる。

ガス増幅シミュレーションで計算した増幅率については、P10ガスとAr-CO2 ガスで slash etching 2型のモデルが測定値に最も近い値となった。また、cube etching 0.07mm 型のモデルも測定値に近い値となった。したがって今回用いた Thick-GEMは、slash etching 2型もしくはcube etching 0.07mm型に近いモデルとなっていることがわかる。

P5ガスではcube etching 0.05mm型のモデルが測定値に最も近いことがわかった。

製作の段階で0.1mmのエッチングを依頼したが、図3.7より孔の位置が一方に寄って いるものが確認できることからThick-GEMの製作精度はそれほど高くないと考えられ る。したがって、測定によるThick-GEMの増幅率は製作精度が良くない孔の影響を大き く受けてしまうと考えられる。

6.1 まとめ

本研究では400µm厚のThick-GEMの基礎特性の測定を行い、シミュレーションによ る測定値との比較を行った。

6.1.1 基礎特性の測定

Thick-GEMの極板間の電位差∆VGEM を変化させて増幅率の測定を行った。P10 ガ スとP5ガスで104 倍以上の増幅率を得ることができた。Ar-CO2 ガスでは104 倍以上の 増幅率を得ることができなかった。

増幅率の時間依存性を調べた。電圧を印加してから増幅率が安定するまではおよそ300 分程度の時間がかかることがわかった。

本研究で使用したThick-GEMは検出器として動作していることがわかった。

6.1.2 シミュレーション

Maxwell SV とGarfieldを用いて5種類のエッチングを施したThick-GEMの電場計 算シミュレーションと、ガス増幅シミュレーションを行った。電場計算シミュレーション では銅箔のエッチングが孔の中の電場の強さに大きく影響することがわかった。ガス増幅 シミュレーションでは、銅箔のエッチングによって増幅率が大きく変化した。また、測定 値との比較を行うことにより、Thick-GEMの増幅率が製作精度の良くない孔の影響を大 きく受けることがわかった。

6.2 今後の課題

様々なエッチングをシミュレーションして、どのようなエッチングが最も良いかを調 べる必要があり、Thick-GEMの孔の直径やピッチの最適化を行う必要もあると考えられ る。また、今回は小面積のThick-GEMの基礎特性を測定したが、Thick-GEMを検出器 として実用化するために、より大面積のThick-GEMを製作し増幅率の測定や時間依存 性、放電の安定性などを調べる必要があると考えられる。

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参考文献

[1] 黒石将弘 『大孔GEMの作成』 信州大学 卒業論文 (2008) [2] 若林潤 『TGEMの作成と基本測定』 信州大学 卒業論文 (2009) [3] 山本たくや 『GEMを使った検出器』 佐賀大学 修士学位論文 (2006)

[4] 青座篤史 『GEMを用いたゲート装置の開発』 佐賀大学 修士学位論文 (2008) [5] 杉山史憲 『GEMを用いたガス検出器の開発』 東京理科大学 修士学位論文 (2008) [6] 岡村淳一 『SLHCに向けた高頻度粒子線検出器MicroMEGASの試作』

神戸大学 卒業論文 (2008)

[7] F.Sauli”PRINCEPLES OF OPERATION OF MULTIWIRE PROPORTIONAL AND DRIFT CHAMBERS” (1977)

[8] Ansoft ”Maxwell SV Getting Started:A 2D Electrostatic Problem” (2002) [9] Garfield - simulation of gaseous detectors

http://garfield.web.cern.ch/garfield/

[10] Garfield 覚え書き

http://www.icepp.s.u-tokyo.ac.jp/isobe/tips/garfield/

[11] The Gas Detectors Development Group in CERN http://gdd.web.cern.ch/GDD/

[12] プリント基板Express http://www.pbfree.jp/index.html

[13] F.Sauli ”DEVELOPMENTS AND APPLICATIONS OF THE GAS ELEC-TRON MULTIPLIER 〜GEM〜”

[14] 『素粒子物理学入門』 渡邊靖志 著 培風館 (2002)

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