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第4章 直接接合基板のスプリアス低減に関する検討

4.3 シミュレーションによるスプリアスの解析

4.3.3 ANSYS を用いたスプリアスモードの基板内変位解析

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図4- 17 ANSYSの計算結果(S21)

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はじめに、DBAWに関して見る。DBAWは、SV成分がバルク波として漏洩しているも のである。このバルク波の変位が小さいほどSAWの伝搬損が小さいと言える。SV成分の 変位は、図のX方向とZ方向の変位に着目すればよい。X方向、Z方向の変位を見てみる と、共振点より高い周波数で、バルク波の変位が大きく見られる。この時のバルクの放射 角度を式4-7より求めると、

V

L

= 4100m/s V

B

= 5553m/s

θ

L

=42.4 °

となる。図4-23からDBAWの放射角度を読み取ると約43°の放射角である。実際には

LiTaO3のDBAWの逆速度面は、同心円ではないのでバルク波の放射角度は逆速度面の接

点の垂線方向となりバルクの放射角度から幾らかずれが生じる。この漏洩バルクはIDTと 反射電極の間でバルク波の放射が大きくなっている。これは、IDTから反射電極の音響的 不連続部分でバルク波が漏洩バルク波として大きくなっていることを意味する。

SSBWの変位はSH成分であるためY方向の変位である。SSBWの放射角θSSBWは、同 じく式4-7を利用して計算してみると、θSSBW=13.3°となる。これも、図4-24から読み

取ると約13°でほぼ一致する。SSBWが発生している周波数においては、同時にDBAW

も放射されている。大きなバルク放射損失があると理解できる。

図4-25、図4-26にLiTaO3のカット角48°の時の変位を示す。周波数はカット角42°

の時と同じである。カット角48°ではバルク波の変位が共振周波数から見られている。さ らに、その変位はIDT全体から基板内部へ漏洩している。図4-21、図4-22のカット角42°

と比べるとバルク波の変位が大きくなっている。このことより、第2章でも述べた通りカ ット角を最適化することでバルク波を押さえることができ、伝搬損失を小さくすることが 可能である。LiTaO3のカット角42°でバルク波が小さくなっており伝搬損失を小さくする ことができている。この時、バルク波の放射角度は、カット角42°と48°で大きく変わっ てはいない。

次に、同じように接合基板の変位分布を計算する。図4-27、図4-28にカット角42°の 接合基板の変位を示す。この時のLiTaO3厚は20μm(5λ)としている。接合基板の構造 にした場合、図4-27の周波数(fr+fa)/2(スプリアスA)のDBAWの変位(X方向、Z方向)

を見るとIDTと反射電極の間から放射されるバルク波が接合界面で反射し、表面に現れて いる。これが、スプリアスの応答として見られる。

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図4-29、図4-30にカット角48°の接合基板の変位を示す。図4-30の周波数fr×1.05

(スプリアスB)のDBAW(X方向、Z方向)の変位がIDT全体に観測されており、その 変位が接合界面で反射し42°の時とは異なり相殺され基板内部にSVの変位として存在す るが表面には現れていないと考える。このことからカット角を最適にすることで漏洩バル ク波の接合界面からの反射によるスプリアスが抑圧できていると理解できる。

このようにモードの変位を観察することで、スプリアスの変位がカット角によって抑圧 されていることが理解できる。

図4- 18 変位計算に用いたモデル図

図4- 19 観測周波数ポイント

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図4- 20 42°Y-X LiTaO3の変位分布①

図4- 21 42°Y-X LiTaO3の変位分布②

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図4- 22 42°Y-X LiTaO3の変位分布③

図4- 23 42°Y-X LiTaO3の漏洩バルク波の放射角度

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図4- 24 42°Y-X LiTaO3のSSBWの放射角度

図4- 25 48°Y-X LiTaO3の変位分布①

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図4- 26 48°Y-X LiTaO3の変位分布②

図4- 27 42°Y-X LiTaO3/サファイア接合基板の変位分布①

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図4- 28 42°Y-X LiTaO3/サファイア接合基板の変位分布②

図4- 29 48°Y-X LiTaO3/サファイア接合基板の変位分布①

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図4- 30 48°Y-X LiTaO3/サファイア接合基板の変位分布②