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第3章 DMS 設計の低損失、高性能化に関する検討

3.4 シミュレーションによる検証

3.4.1 シミュレーションによる特性比較

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図3- 6 ピッチモジュレーションの構成図

次にピッチモジュレーション動作原理を説明する。図3-6にピッチモジュレーションの原 理説明図を示す。簡単にするために2IDTの構造としている。本提案のピッチモジュレーシ ョン構造では、IDT内でIDTピッチを変化させ、IDTの反射係数を調整することで実行的 な共振子長を変化させることができる。図3-6に示すようにIDTを4ブロックに分割し、

そのピッチを調整することで反射係数を最適化し、基本モードの共振子長と高次モードの 共振子長を調整することが可能となる。さらに、IDT の反射係数を調整するために、電極 幅もモジュレーションすることでさらに設計の自由度が上がり特性改善が実現できる。

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図3- 7 DMSフィルタ一段の構成図

図3- 8 カスケード接続されたDMSの構成図

41 表3- 1 設計定数

図3- 9 従来のDMSの構成図

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図3- 10 ピッチモジュレーションの構成図

シミュレーションの比較には、2 つのシミュレーションツールを用いている。一つは、

COM (Coupling-of-modes)法[3-7][3-8]を用いたシミュレーション、もう一つはFEM/BEM 法[3-9][3-10][3-11]を用いたシミュレーションである。図3-11に従来設計の設計手法で最適 化した特性とピッチモジュレーションを用いて最適化した特性を COM 法で計算した結果 の比較を示す。この時、純粋にSAWの特性評価するために電気的なミスマッチを理論上0、

すなわち、全周波数において|S11|=|S22|=0として計算している。COM法を用いたシミ ュレーションでは Leaky-SAW が後方散乱バルク波と結合して生じる分散特性に関しては

Abbott が提案した、後方散乱バルク波との結合を考慮した近似分散関係式[3-12]を取り入

れているが、有限長IDT のグレーティング端の不連続部分での散乱バルク波の伝搬損失へ の影響は考慮できていない。したがって、ピッチモジュレーションを適用したとしてもバ ルク波による放射損の改善度合いを確認することはできない。しかしながら、計算時間は 短時間で済むため、設計時の最適化ルーチンとして適当な手法である。ピッチモジュレー ションの手法を用いてCOM 法をベースに最適化した結果、IDT 間距離を0のままでも従 来の設計手法と同等の帯域幅を得ることができている。なお、COM解析における両設計の 挿入損失の差は0.1dB以下で差は小さいといえる。

図3-12にFEM/BEM法を用いたシミュレーションの結果を示す。FEM/BEM法は有限

長IDTの散乱バルク波を考慮したシミュレーションである。IDT部に FEM法を適用し圧

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電基板部に BEM 法を適用してより精度の高い解析を実現している。しかしながら、

FEM/BEM法で計算を行う場合、計算時間が膨大にかかってしまう。

図 3-12 から判るように、ピッチモジュレーションを用いた設計は、従来の IDT 間 gap で調整する設計に対して低損失を実現できている。挿入損失の改善は、0.2dB以上で、バル ク波放射を大きく抑えることができていると言える。ここで、実線はピッチモジュレーシ ョンを適用した特性、破線は従来のIDT間gapを調整した特性である。

図3- 11 COM法を用いたDMSフィルタの特性シミュレーション比較図

(実線:ピッチモジュレーション適用、破線:ピッチモジュレーション非適用)

図3- 12 FEM/BEM法を用いたDMSフィルタの特性シミュレーション比較図

(実線:ピッチモジュレーション適用、破線:ピッチモジュレーション非適用)

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