る。
1) A社の定着
角田地域に誘致された工場は48工場を確認できるが・操業後閉鎖された工 場は僅か5工場であった(第13表)。しかも,存続工場の半数が1960年代末 から1970年代に進出した工場である。したがって,それらの工場は進出後す
でに20‑30年が経ったことになる。そのなかにA社のように本社機能のかな りな部分を角田地域に移転させた企業がある。
第13表 角田盆地における時期別誘致工場数
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丸相済札宮城県『工業立地のあら
まu (1982)により作曲
A社の角田工場は,先述したようにオイルショック後川崎本社工場に代って 主力工場となった。さらに,本社が1986年に川崎工場から東京都新宿区に移
転するに際して,本社機能の一部が角田工場に移転した. 1995年現在の役員の
勤務先地をみると(第14表),監査役を含めた役員18名のうち, 9名が角田 工場勤務である。しかも,角田工場勤務の役員には,生産技術,資材など製造第14表
##
監査役
角田工賂 川崎工湯
海 外
1 1 1 1 2
2 3 4
2 1
(ダイヤモンド社(1996)鵬より作曲
に直接係わる部門に加えて,営業部長が含まれていた。さらに,当社は親企業 の海外生産に対応して, 1980年代にアメリカ合衆国およびタイに生産工場を建 設したが,丸森工場と角田工場がそれら工場の母工場としての役割を果たした。
また, A社は1992年に角田駅の隣接地に研究開発センターを開設した。こう
した管理および開発部門の設置により, A社の角田地域における全従業者に占
める間接部門(管理・営業・事務・研究・開発など)の比率が34%と高い16'
(第15表)0
第15表 誘致工場の部門別従業者(1996年)
管理・営 業・事務
研究・
開発
控
443 129 1, 129
139 188 508
248 264 176
12 0 73
8 7 68
22 62 506
32 0 59
23 0 1 04
24 11 55
58 28 1 56
128 126 518
注) Aの従業者は角田工藤・丸森工場・開発センター の従葉音を合せた数である。
(アンケート嗣査により作曲
管理機能および開発部門が配置される背後に当地域における生産組織の形成 がある。 A社の外注先企業は1996年現在53社である。その地域分布は角田地 域9社,宮城県17社,東北地方8社,京浜地域13社,その他の地域6社であ る(第16表)。このようにA社の関連工場はすでに宮城県に多く集まっている。
これは,京浜地域から関連メーカーが進出したことと,地元に関連メーカーが 育った結果である。主要外注先20社に限って言えば, 13社はA社が角田地域 に進出する以前から取引きがあった企業である。現在, 1社を除き,角田周辺 に工場(10社)または営業所(2社)を配置している。他方,残りの7社はA 社が進出後取引関係を結んだ東北地方の企業である。そのうち1社は山形県に 立地するが,他の6社は角田周辺に立地する。
第16表 主要工場の外注先
外注先地
9 17 8 13 6
6 14 12
4 9 1
3 3 3
5 6 2
0 4 6
7 8 11
22 41
2 0
1 0
2 0
0 0
1 0
注)アンケート術査の質問に対して, 10以上の外注先を回答した工執こついてのみ 表配した.
(アンケート桐査により作成)
さらに, A社の外注先がさらに生産工程の一部を外注(2次下請け)に出し ている。したがって,宮城県に立地するA社の生産活動に関係した企業は,二 次下請け企業まで含めると,一次下請け企業の数を大きく上回る.それだけ, A社の生産活動は角田周辺に立地する数多くの企業との間に直接・間接の関連
を持っている。
A社と同様の傾向はAG l社およびAG 2社の生産組織についても指摘でき る。 AGl社の場合は,角田工場が本社工場であることから,間接部門の人員 が全体の39%を占める(第15表)。外注先は85社を数える。その地域的分布 は,角田地域6社,宮城県14社,東北地方12社,京浜地域22社,その他の
地域41社である。 A社の場合に比べると,京浜地域‑の外注の割合が高いが17),
東北地方全体の外注先は32社を数え,京浜地域を大きく上回る。一方, AG2社の場合は,本社は仙台市に置かれているが,角田工場が実質 的に本社工場として機能している関係で,間接部門の人員が多い。電子部品の 製造のため研究・開発関係の人員が全体の38%を占める。外注先は16社であ る。その地域的分布は角田地域4社,宮城県7社,東北地方3社,京浜2社で
ある。
なお,上記3社は1997年4月に合併した。本社はA社の東京本社に置いた が,役員29名のうち17名が角田盆地に配置された18)。すなわち,新A社にお
いても角田盆地が活動拠点であることに変わりがない。
2)他社の定着の動き
本社機能の角田盆地‑の配置は,上記した3社のほかにM社およびN社にお いても認められる。 M社は仙台に本社ビルを構えているが,本社ビルでは本社 機能に必要なオフィススペースが確保できないことから,本社に財務部・マー
ヶテイング部の一部および社長室を置くだけで,他の人事部・総務部・財務部・
システム部・マーケテイング部・研究開発本部などは角田事業所に配置されてい る。全国の工場長・営業所長を集めて開かれる月例の営業会議も角田事業所で 開催されている。そのため, M社の場合も間接部門の人員が全従業員の33%を 占める(第15表)。外注先は27社を数えるが,主に仙台から福島県にかけて 分布し,京浜地域の外注先は1社だけである(第16表)0
N社は先述した通り当初A社との合弁で角田に立地した外資系の気化器メー カーである。角田事業所が本社工場である。そのため,間接部門の比率が36%
と相対的に高い(第15表)。外注先は9社あるが,いずれも角田周辺に分布す
る(第16表)0
火災報知器メーカーE社の角田工場は技術開発部門を持たない量産工場であ る。その点では, E工場は従来紹介されてきた進出工場のイメージに合致する 工場である。しかし,当工場は1991年に生産規模の拡大を目的としてかつて の中学校跡地から角田市街地北端の国道349号沿いに45,600m2の用地を得て 移転した。さらに,同工場用地には, 1995年に大規模な総合防災実験場が建設 された。また,下請け企業が1989年に東京都から進出するなど,生産機能を
高めている。
上記した企業に対して,先述したD社角田工場の1993年の動きは,資本の 部分的な撤退と工場の機能の低下を内容とするoしかも,それは生産機能の海 外展開と一体になった動きであっただけに,東北地方からの工場の撤退の印象 を与えろ。しかし, D社角田工場は宮城県古川市に立地するD社の別会社に設 けられた新事業部が管轄する工場に編入されたわけであって,角田事業部の機 能が東京本社に吸収されたわけではない。また,上記古川工場はD社の主力工 場であり, 2事業部が配置されている。そのほかに・ D社は中央研究所を仙台 に配置している。したがって, D社は依然として東北地方に生産・開発の拠点 を置く企業として位置づけられる。なお,先に紹介したD社の協力企業である 地元企業2社は, D社からの受注が大幅に減少して,人員を削減するなど苦し い経営を続けているが,角田地域にはD社系列とは別の電気機械器具の部品工
場が存在し,そこから孫請けの形で仕事を得るなどして経営の存続を図ってい る。また, 1社は下請け工場からの脱皮を目指して自社製晶の開発にも取り組
んでいる。
3)賃金水準の多元性
次に角田盆地の賃金水準について検討する.角田盆地の工業従業者1人当た り年間給与額は1995年現在391万円である(『平成七年工業統計表』に基づく)0 それは全国の同給与額の約90%に当たる。なお,東北地方全体の給与水準は全 国の約76%である19)。しかし,従業者の賃金水準は,企業間および企業内で の雇用形態,職種,性別,年齢,勤続年数などにより大きく異なる。したがっ て,地域の賃金水準の評価に当たっては,従業者全体の平均賃金による比較と 同時に,貸金水準に影響する要因群に基づいて従業者をタイプ分けした上で, 賃金水準の高低を識別する必要がある。
第17表はアンケート調査により得られた正社員の平均年齢の標準月給額と 臨時従業員およびパートタイマーの日給・時給額を表したものである。ただし, 職種は特定されていない。同表から,企業間および企業内の男女間に大きなバ
ラツキがあるが,そこに一定の傾向を読み取ることができる。
当地域における最高の賃金水準にあると考えられる上場企業D社, A社, E 社, L社の正社員の給与額をみると, E社を除く3社の女子社員の平均年齢に おける標準月給額は20万円前後でほぼ横並びの状態にある。これは, 3社の 女子社員の平均年齢が近似し,しかも職種が現業部門で共通していためと考え られる。ちなみに,各社の有価証券報告書に掲載された平均月給額はD社204
千円(34才、 1996年), A社184千(36才、 1996年), L社215千円(34才、
1995年)である。したがって,上記の標準月給額は大手メーカーの現業部門に おける女子従業者の賃金水準を示すと同時に,正社員の給与には実質的な地域 差はほとんどないとみてよい。
一方,男子従業者の標準月給額は上場企業間に大きな差がみられる。 A杜の 平均年齢38才の標準月給額が約30万円であるのに対して, E社, L社の40 才前後の同月給額が約40万円となっている。両者の給与額に10万円の開きが あり,その差は年齢差だけから説明できない。したがって,前者が現業部門従 事者の給与を,後者が管理職の給与をそれぞれ表していると理解するのが適当 である。事実, A社の有価証券報告書によれば,現業部門と非現業部門の男子
第17表 調査工場の給与水準
I% 妃号 ィ 8 蹴 女子正社員 X 9 粨6 ク6x5 2
平均輔1標準月給 兌リシ D驃 引 ネ雕イ
Al AGl 迭經3 冷 33#c 經SH冷 36198,153円 31212,5仰円 凩X鳬NI│sケ&ゥ?ィクウrテ3C bテSS(励ィ7 ク6x鳧クウイ ss X冷 }X鳧 輯ク s Cゅ 励「 cs 冷 6 ク6x鳧クウウc 冷 6 ク6x鳧クウウcs 冷
D S ネxィ冷 37210.000R E L 鼎 C "テ 冷 3 テS X冷 55222,790円
AK2 S#S テ " 43180,0∝I円 ASl 鼎S#crテ S 41166,007円
a rテsベ冷 35164,099R
C ## テ#C 冷 34182,680円
DS3 s#s テ 冷 33160,000円
ES s3# テ dUメ 120,000円
(アンケート調査
の平均月給額が315千円(35才)と380千円(38才)とあるoしたがって・
A社の場合も,非現業部門の賃金水準はE社, L社の水準に近いとみてよいo D社の場合は,平均年齢38才の男子標準月給額が35万円であるo上記の金 額は有価証券報告書に記載された全従業者,すなわち現業部門と非現業部門を 合せた平均給与額に相当する。管理・事務部門の給与額でみれば・ D社の水準
は恐らくE社, L社のレベルにあるとみてよい。
上記4社に加えて, A社と同グループ会社であるAGl社およびAG2社の 正社員の賃金水準も同レベルにあるとみてよいoしたがって・ 6社の正社員は 男女合せて2,986人になるが,その層は少なくとも全国の工業従業者のなかで は賃金水準が相対的に高い部類に属するとみてよいo因みに・上記の社員数は 角田盆地の1995年全工場従業者(従業者4人以上の工場)の40%に当たる。
以上が上場企業の正社員の給与であるが, A社の角田工場と丸森工場には1 年契約で雇用される有期社員が男子72人,女子212人存在するo有期社員の 給与は日給・月給制(欠勤減額制)で支払われる。日給額が男子7,348円・女