• 検索結果がありません。

87 4. 「釧路資料」について

ドキュメント内 太平洋炭鉱主婦会の記録 (ページ 91-94)

4.1

釧路資料の内容に関する概説

大國充彦・西城戸誠

1

)釧路資料整理の経緯

1 章で述べたように、本研究プロジェクトでは、北海道地域の炭鉱における炭鉱主婦会、道炭婦協がど のように展開されたのか、そして、これらの活動が地域社会、特に女性の活動にどのような影響を与え、現 在の地域社会の中にどのように引き継がれているのかという関心から、閉山をした炭鉱の主婦会の関係者 や、炭婦協の関係者に聞き取り調査を実施し、さまざまな資料を収集し整理をしてきた。

その中で、元太平洋炭鉱主婦会会長、元炭婦協会長の佐藤邦子氏の自宅に保管されていた太平洋炭 鉱主婦会、日本炭鉱主婦協議会の資料を発見し、釧路市立博物館や釧路市教育委員会の協力を得て、

札幌学院大学 SORD プロジェクトの一環として整理することになった。以下、まず始めに、「資料の発見」と いう言葉の背景に、釧路の多くの方々のご協力とそれぞれの方々の長い活動の成果があることを確認し、

それ自体が一つの市民活動として捉えることができる多様な動きの軌跡を提示する。その次に、資料リスト の最新版を掲載するがにあたり、その前に簡単に釧路資料の内容について概説したい。

釧路市立博物館は、2010年度より「ヤマの話を聞く会」を開催し、2010 年度に

3

回、2011 年度に 4回の講演会を開催している。石川孝織学芸員はこの時期以前より、釧路市内の炭鉱関係者とのネット ワーク構築を始めていた。その中には炭鉱主婦会関係者も含まれている。このような交流は、さまざま なきっかけから可能になるとうかがっている。当時、釧路市立博物館友の会(以下、「博物館友の会」)

の会長であった中塚美恵子氏は、同じく市民生協理事であった片桐美代子氏とのつながりがあった。片 桐氏は太平洋炭鉱主婦会の事務局長をなさっていて、主婦会元会長の佐藤邦子氏とは懇意である。また、

中塚氏は灯油問題を通して、主婦会の佐藤氏と同じイシューで活動した経験もあった。中塚氏が仲介の 労をおとりになることで、博物館と炭鉱主婦会の佐藤氏・片桐氏との間に交流が生まれることになって とうかがっている。

この経緯とは別に、私どもは南空知の炭鉱主婦会元幹部の方々の調査を通して佐藤邦子氏の存在を知 り、また住友赤平炭鉱主婦会元会長の米森康子氏より佐藤邦子氏をご紹介いただくこととなった。こう いった時期に、産炭地研究会の嶋崎尚子は学芸員の石川氏と出会い、産炭地釧路の研究について意見交 換を始めることとなった。その中で、産炭地研究会の炭鉱主婦会グループが、太平洋炭鉱主婦会の関係 者との面談を希望していることが石川氏の了解することとなり、これ以降、石川氏は両者の間を積極的 につないでくださる労をおとりいただくことになる。

関わりの結び目がこのように作られていく中で、2011年

11

20

日、第

7

回ヤマの話を聞く会「ヤ マを支えた女たち〜太平洋炭鉱主婦会〜」が開催された。当日は、太平洋炭鉱主婦会元会長・日本炭鉱 主婦協議会元会長の佐藤邦子氏と、太平洋炭鉱主婦会元事務局長の片桐美代子氏の講演の他に、フロア からも市民生協元理事であり「博物館友の会」会長の中塚美恵子氏によるご発言(「暮らしを守る」と いう観点で連帯していった活動のお話)、また元太平洋炭鉱総務課長の佐藤冨喜雄氏からもご発言をい ただいた。第

7

回の講演会は、釧路市立博物館のご厚意で、私ども産炭地研究会も共催という形で地域 に貢献する機会を与えていただいた。

この講演の前日に、博物館の一室を拝借して、佐藤邦子氏と浅野康子氏(太平洋主婦会元幹部)のお 二人に私どもはお話をうかがっている。佐藤氏にお目にかかったのはその時が初めてである。その際、

88

佐藤氏はご自宅の倉庫に炭婦協関連の資料を保存してきたことをうかがった。私どもは、炭婦協の資料 がまとまった形では残っていると聞いたのは初めてのことだった。私どもは、佐藤氏が保管している炭 婦協関連の資料について、できれば閲覧したいし、預からせていただければ、資料の整理を行うことが できる旨をお伝えした。

学芸員の石川氏によれば、第

7

回の講演会に際して佐藤邦子氏は「これっきりでもう話さない(最初 で最後)」とおっしゃっていたそうだ。けれども、講演後、博物館が釧路の石炭産業についてさまざま な取り組みを行っていること、「ヤマの話を聞く会」記録集を刊行なさったこと、私ども産炭地研究会 の研究活動などを改めて評価してくださり、石川氏の言葉によれば「その後の関係性」を築き上げるこ とに前向きになってくださった。その関係性の中で、資料をどのようにするのが良いのかについて慎重 に判断する必要が出てきた。

釧路で炭鉱関係の活動とかかわっている方々が、それぞれの課題意識をお持ちになって活動をなさっ ている中で、私どもは「資料の発見」という言葉だけで理解しがちになる事態を、もう一度、簡略な形 ではあるがここに示すことで、多くの方々の長年にわたる活動の成果の一つとして、この資料の活用に 関する判断がなされたことを理解することになった。この点で、佐藤邦子氏・中塚美恵子氏・片桐美代 子氏をはじめとする釧路の市民活動の担い手の方々、佐藤冨喜雄氏をはじめとする太平洋炭鉱の関係者 の方々、石川孝織学芸員をはじめとする釧路市立博物館の方々、釧路市教育委員会の方々、釧路市立図 書館の方々、これらの方々の大きなお力のおかげで一つのまとまりのある「資料」を閲覧することがで き、整理することができるにいたった。簡略にしか示せないが、この経緯自体、前述の通り、釧路の市 民活動の成果の一つとして捉えることができる。

その後、佐藤邦子氏、片桐美代子氏、中塚美恵子氏とは

2013

年にもお話をうかがう機会を設けてい ただいた。さらに、

2013

11

30

日に岩見沢市コミュニティプラザで開催した「空知の炭鉱(ヤマ)

の女性たちが語る集い」にご登壇いただいた

5

名の炭婦協元幹部のお一人として佐藤邦子氏にご講演を お願いした。このシンポジウムには、遠路またご多忙にもかかわらず、石川孝織氏、片桐氏、中塚氏も ご参加下さった。

2

)資料の内容の概要

資料は、(1)釧路関連、(2)全国炭婦協、(3)北海道炭婦協、(4)炭労、(5)道主婦協、(6)総評主婦の 会、(7)家計簿、(8)選挙関連、(9)社会党関係、(10)その他の 10 カテゴリーに整理されている。

(1)釧路関連の資料には、釧路市の女性団体に関するものがある。その中には、佐藤邦子氏が現在 会長を務める「健康を守る会」に関する資料も含まれている。太平洋炭鉱主婦会だけでなくそれぞれの 炭鉱主婦会は、当該地域の女性団体を包括する協議会に参加していることが多い。釧路の場合は釧路市 女性団体連絡協議会が該当する。また、さまざまな女性団体に参加を呼びかけるプロジェクト、イベン トもあるが、太平洋炭鉱主婦会も女性団体の一つとして、それらに加わっていることがわかる。

日本炭鉱主婦協議会の組織構造は、本部が日本炭鉱主婦協議会、地方支部として北海道と九州があり、

各炭鉱(ヤマ)に炭鉱主婦会が存在する。(2)全国炭婦協の資料には、1955-57 年、1960 年代後半の 全国炭婦協の幹事会、評議委員会の資料、炭婦協たより(機関誌)の原稿などがある。だが、残念なが ら時系列データにはなっていない。また、

1950

年代後半から

1960

年代の九州地方の炭鉱主婦会資料な ど、北海道以外の炭鉱主婦会の資料も数多く存在している。日本炭鉱主婦協議会の本部には、2つの地 方支部(北海道と九州)の資料が送付されたからであろう。

89

なお、日本炭鉱主婦協議会の資料で興味深いものは、「炭婦協五年史編纂のための基礎調査票」であ る。現時点では筆者らは「炭婦協五年史」を入手していないが、全国の炭鉱主婦会の基礎調査として

72

の炭鉱主婦会の情報(主婦会結成の経緯、炭婦協への加入、主婦会が結成されてからの闘争、主婦会の 組織状況、現在の活動の具体例など)が調査票として残っている。このデータの分析については、別稿 で行いたいと考えている。

(3)北海道炭婦協の資料は、釧路資料全体の中でも数が多い。道炭婦協の定期大会の資料は第

25

回 から

43

回(昭和

50

年から平成

5

年)までが揃っている。また出納帳も昭和

53

年以降揃っており、道 炭婦協たよりの原稿や規約集、写真なども存在している。

(4)炭労の資料については、定期大会資料、報告書(機関誌号外)、記念誌などがあるが、それほど 多くはない。炭労から炭婦協宛てに送られた資料が残されていたと思われる。

(5)道主婦協の資料は、北海道主婦会連絡協議会の資料を指す。北海道主婦連絡協議会の結成は

1958

年であり、道炭婦協、日鋼主婦協、全鉱婦協、国鉄家族会、動力車家族会、全日通家族会など、

10

単産、

10

万人の婦人団体から構成された。初代会長は、道炭婦協の多嶋光子氏であった。1977年から

93

年 の定期大会の資料が断片的に残されている他、記念誌、報告書が存在している。

(6)総評主婦の会は、主婦会連絡協議会の全国組織であるが、総評主婦の会の定期大会資料が部分 的に残されている。また、1976 年以降、いくつかの欠番があるが、総評主婦の会の機関誌が存在して いる。

(7)の家計簿は、北海道主婦協議会が発行した家計簿白書のことを指す。断続的ではあるが、1970 年代、80年代、90年代の家計簿白書と、調査のための家計簿等があり、これらのデータは専業主婦の 意識に関する研究に寄与する可能性がある。

(8)選挙関連と、(9)社会党関係の資料が存在する理由は、炭鉱主婦会が「平和闘争」(選挙活動)に関 与していたためである。北海道知事選挙、衆議院選挙、参議院選挙の候補者に関連する資料や選挙対策 に関する書類の一部が残されている。

謝辞

本文に記したように、本資料を私どもが研究対象として閲覧し整理するまでに、釧路の関係者の方々 の多大なご尽力があった。ここにお名前を記し感謝の意を表する。佐藤邦子氏、中塚美恵子氏、片桐美 代子氏、佐藤冨喜雄氏、石川孝織氏、浅野康子氏、以上の方々への謝意を表します。

付記

釧路資料リストは、「SORD 釧路資料リスト」(大國充彦・久保ともえ、『社会情報』札幌学院大学総 合研究所紀要、Vol.23.No.1、2013)から許可を得て転載している。

ドキュメント内 太平洋炭鉱主婦会の記録 (ページ 91-94)