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 自治体議会に対する法制度上の規制緩和や権限付与の拡大が進んだ 2000 年 代は,市町村議会の内発的な改革が進んだ時期でもあった。2017 年 1 月時点 で,全国の 4 割を超える市町村議会で議会基本条例が制定され,半数を超える

(52) このような議会と首長側との協議を定める議会基本条例の内容については長野(2013・

2014・2015b・2016a)を参照のこと。

(53) この問題では,都道府県議会を対象とした馬渡(2010)が「住民への負担増議案や選挙区・

定数是正の議員関連法案は,議員にとって再選の妨げとなることから修正・否決される可能性が 相対的に高くなる」と指摘する。一方,大選挙区制をとる市町村議会を対象とした名取(2011)

は,A. ダウンズや G. コックスの「空間競争モデル」に基づく推論から,「首長選挙が定数 1 で 争われ,議員選挙が定数 2 以上で争われ,有権者の選好分布が単峰形である時,首長と議会の政 策選好の差異は,ほとんどなくなってしまう」のであり,「議会の過半数が賛成するような修正 案の位置は,首長原案とほとんど差のないものとなる」とする。この場合,議員間の「説得コス ト」を負担するよりも政策形成の「執行機関への委任」を行うことが合理的選択となり,修正案 提案から可決までを行う誘因は少ない。これは選挙区制度に基づく根源的な指摘である。しかし,

実際には首長提出議案への議会による「修正」が市町村議会で為されている。名取(前掲書)の 推論に基づけば,そうした「修正」案は原案からほとんど差異がない内容であるにも関わらず,

政治的対立構造の中で「功績顕示」(北村 2009)として修正議決されているという可能性が指摘 されよう。この可能性を検証するためにも“中身”の分析が求められる。

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議会で「議会と市民との対話の場」が実施されるようになった。また,首長議 案に対する議員間討議を行う議会も,およそ 4 分の 1 にまで拡充している。一 方,以前から議会の改革言説の中で繰り返し唱道されてきた議会による政策条 例制定では,本研究が直接の分析対象とした 906 議会の 2008 年から 2015 年の 実績は平均 0.4 件という状況にあった。

 このような外部環境からの追い風と内発的改革の進展に対する政策的出力の 無変化というギャップに対して,本研究では実質公債費比率の変化にみる自治 体の財政規律の改善を政策パフォーマンス指標に設定し,全市町村議会対象質 問紙調査の個票データから,これらの構造を分析した。

 パス解析から明らかになったことは,第 1 に,財政的制約を代替する形で

「議会と市民との対話の場」から立法リソースの調達がなされていること,第 2 に,首長提出議案への議員間討議の慣行成立は,財政規律の向上に一定の貢 献をしていること,である。前者はとりわけ市議会において,後者は町村議会 において顕著な特徴となっている。市議会・町村議会で改革の成果の現れ方に 違いが存在している。そして,第 3 は,財政規律向上には,「市民との対話か ら議員間討議へ」のセットの存在も市議会・町村議会を問わず一定程度貢献し ている,ということである。民主的プロセスの質を高める議会改革は自治体の 政策パフォーマンスの向上へ寄与しているとまとめられよう。これらが自治体 議会改革の成果と構造である。

 以上で確認された内容は,議会改革を動かした構造的要素の一つとして,従 来の「保革」の視角からは「保守」の側に位置づけられることが多い地方部の 自治体議会においても,市民参加と財政規律の同時追求,即ち,“保守の目覚 め”とも形容され得る変容が作用している可能性を示すものである。

 しかしながら,「市民との対話から討議へ」のセットが財政規律改善へ作用 する具体的なメカニズム─例えば,こうしたセットの存在が議員の「一般質問 の監査機能」(土山 2017)を向上させたのか(54)─については十分に分析できては

(54) 一般質問の質の向上については土山(2012・2017)が改善方策を検討している。同時に土山

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いない。これについては過程追跡法による事例分析によって相補される必要が あろう。考察章で提示した立法・修正の「中身」への分析も含め,こうした質 的データを事例研究から収集し,理論化することが今後の課題である。

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