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7 確率変数 2  積率母関数,確率変数の独立性

ドキュメント内 ( ) 2 1 (ページ 33-37)

項目 積率母関数,独立な確率変数 記号 積率母関数 mX(t) =E[

etX]

公式 独立な確率変数 mX+Y(t) =mX(t)mY(t)

7.1

独立な確率変数

・2つの確率変数X, Y について下記の条件が成立するとき,確率変数XY は独立であるという.

任意の実数x, yに対して,2つの事象{X≤x}{Y ≤y}が独立である.すなわち,

P{X≤x, Y ≤y}=P{X≤x}P{Y ≤y}, ∀x, y∈R

(同時確率P{X≤x, Y ≤y}がそれぞれの事象の確率の積P{X ≤x}P{Y ≤y}に等しい)

・2つの確率変数X, Y が独立であるとき,X, Y を含む期待値の計算はそれぞれ個別に行えばよい.

和の期待値は,期待値の線形性から,常に(独立であっても独立でなくても)期待値の和である.

E[f(X) +g(Y)] =E[f(X)] +E[g(Y)]

積の期待値は,独立でない場合には,相互に影響しあうので,期待値の積と等しくはないが,

E[f(X)g(Y)]̸=E[f(X)]E[g(Y)] (XとY が独立ではないとき)

独立であれば,X, Y を含む期待値の計算はそれぞれ個別に行えばよいので,期待値の積と等し くなる.つまり,2つの確率変数X, Y が独立であるとき,すべての関数f, gについて

E[f(X)g(Y)] =E[f(X)]E[g(Y)] (XとY が独立であるとき)

が成立する.(逆も正しい)

したがって,X, Y が独立であるとき,共分散は

Cov[X, Y] =E[XY]−E[X]E[Y] = 0である.

よって

V ar[X+Y] = V ar[X] + 2Cov[X, Y] +V ar[Y]

= V ar[X] +V ar[Y] (XY が独立のとき)

7.2

積率母関数

・ 積率:モーメントE[Xn]

・ 積率母関数

確率変数Xに対して,tを変数とする関数を期待値によって定義する.

mX(t) =E[

etX]

mX を確率変数Xの積率母関数(moment generating function)と呼ぶ.名前が示唆する,積率母 関数がモーメントを生み出す関数であることは,テーラー展開を用いて次のように確認できる.

tを定数とみなして,xの関数etxx= 0の周りでテーラー展開する.

etx=

k=0

(etx)(k)

|x=0

k! (x0)k=

k=0

tk k!xk =

k=0

xk k!tk 両辺のxに確率変数Xを代入して期待値を取る.

E[ etX]

= E

[

k=0

Xk k! tk

]

=

k=0

E[ Xk] k! tk すなわち

#

" ! mX(t) =

k=0

E[ Xk]

k! tk= 1 +E[X]t+E[ X2]

2! t2+E[ X3]

3! t3+· · ·+E[Xn]

n! tn+· · ·

が得られた.積率母関数の展開式である右辺のtnの係数にXn次モーメントE[Xn]が現れて いる.一方で,上式は積率母関数mXt= 0の周りでのテーラー展開でもある.したがって,

テーラー展開の係数と微分の関係から,E[Xn]m(n)X (0)と等しい.

m(n)X (0) =E[Xn]

このことは,積率母関数の定義式をtで微分しても得られる.

mX(t) =E[ etX]

mX(t) =E[ XetX]

mX(0) =E[X]

m(2)X (t) =E[

X2etX]

m(2)X (0) =E[ X2]

m(3)X (t) =E[

X3etX]

m(3)X (0) =E[ X3]

したがって,積率母関数を得ることができれば,そこから平均,分散も計算できる.

E[X] =mX(0), V ar[X] =E[X2](E[X])2=m(2)X (0)(mX(0))2

7.3

分布と積率母関数

・ 分布

確率変数Xの分布は,その分布関数FX で特徴づけられるが,実は,モーメントの集合 {E[X], E[X2], E[X3], . . . , E[Xn], . . .}

によっても分布は特徴づけられる.したがって,これらモーメントを生み出す積率母関数mX は 分布関数FX と同じ情報を持っている.

2つの確率変数X, Y が同じ分布関数を持つとき,X ∼Y と表記したが,それは,XY のそれ ぞれの積率母関数が等しい,ということでもある.

X∼Y FX(x) =FY(x), ∀x∈R mX(t) =mY(t), ∀t∈R

・ 独立な確率変数

2つの確率変数X, Y から,別の確率変数X+Y を考えよう.その積率母関数は定義より mX+Y(t) =E

[

et(X+Y) ]

=E[

etXetY]

である.最右辺の積の期待値が,期待値の積に変形できるかどうかは,X, Y が独立かどうかに 依存する.X, Y が独立であれば

mX+Y(t) =E[

etXetY]

=E[ etX]

E[ etY]

=mX(t)mY(t)

である.また,逆も真である.したがって,X, Y が独立かどうかは,mX+YmXmY が等しい かどうかで定まる.

'

&

$

% XY は独立 E[f(X)g(Y)] =E[f(X)]E[g(Y)], ∀f, g

mX+Y(t) =mX(t)mY(t), ∀t∈R

練習問題

Ex 7-1. 2つの確率変数X, Y は独立であれば Cov[X, Y] = 0 を示しなさい.

Ex 7-2. 2つの独立な確率変数X, Y を用いて,新たに2つの確率変数を

U =aX+bY, V =cX+dY (a, b, c, dは定数)

とするとき,E[U], V ar[U], Cov[U, V]E[X], E[Y], V ar[X], V ar[Y]を用いて表しな さい.

演習問題

Problem 7-1. a, bを定数としたとき,maX+b(t) =ebtmX(at)を示せ.

Problem 7-2. mX(t) = 1

1−t2 のとき,E(X)V ar(X)を求めよ.

Problem 7-3. cX(t) = ln (mX(t))で定義される関数をキュムラント母関数という. cX(0) =E(X), c(2)X (0) =V ar(X)となることを示せ.

復習問題

Quiz 7-1. XY が独立のとき,以下の等式が成立することを示せ.

V ar[X+Y] =V ar[X] +V ar[Y]

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