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5-2.賞与制度改革の視点と類型

ドキュメント内 バブル経済崩壊以降の人事制度改革 (ページ 31-35)

賞与制度については様々な角度からの検討が必要であろうが,手始めとして「配分」

と「原資」の

2

つの側面からの検討を行う。賞与制度改革においては個人の業績に対し て,それをどのように評価し配分していくのかという「配分問題」とともに,そもそも 賞与制度は月例賃金とは異なり,企業の成果を配分する制度であるという特質から,月 例賃金と区別した「原資」の問題がある。第

2

章で整理したように日経連の『新時代の

「日本的経営」』においても,バブル経済の崩壊までは,「多くの企業では賞与の支給額 は業績にリンクしていないことが多かった」(58)ことが示されており,改革の方向とし て,「賞与を企業経営との関係で的確に行うためには,業績との関連を明確にし,賞与 の各人への支給は,企業業績に対する貢献度を構成に評価して行うべきである」(59)と主 張され,「配分」と「原資」の問題が指摘されている。

部門業績管理が収益強化の方向へ動き,その方向を賞与制度に反映するとなると,原 資は会社全体よりも部門で算出しようと志向され,また配分も部門業績を反映すべきと 考えられる。何故なら,企業全体の業績は各部門の総和であり,成果に対する評価はプ ロフィットセンターである部門で評価されるべきと考えられるからである。従業員が所 属する部門の業績を評価し,それを賞与決定の重要要素とするという方向である。

5 『労政時報』掲載事例の賞与制度改革時期

出所:『労政時報』1991年〜2010年賞与制度改革掲載事例記事一覧より作成

10 全社業績連動賞与開始年 (%,件)

開始年 1970

〜1974

1975

〜1979

1980

〜1984

1985

〜1989

1990

〜1994

1995

〜1999

2000

不明 管理職(64件) 3.1(2) 1.6(1) 3.1(2) 1.6(1) 4.7(3) 32.8(21) 42.2(27) 10.9(7)

非管理職(60件) 3.3(2) 3.3(2) 1.7(1) 1.7(1) 5.0(3) 36.7(22) 43.3(26) 5.0(3)

出所:財団法人雇用情報センター(2003年)206, 207ページより抜粋 バブル経済崩壊以降の人事制度改革 132

以上のような「原資」「配分」という

2

つの視点から,賞与制度の改革について,

1991

年から

2010

年までの『労政時報』に掲載された賞与制度の改革事例について分類 し,事例の特徴を把握することとする。当然,同誌に掲載されている事例は先進事例の 一部であり,全体を網羅していなこと,そして賞与制度の改革は年俸制の導入やその他 賃金制度の改革の一環として実施されている事例があることは承知しているが,本稿で はまず手始めとして,限られた事例ではあるが,『労政時報』の検索で,業績賞与制度 または業績連動型賞与制度で抽出することのできた事例を対象とする。抽出した事例の 一覧は巻末の注に掲載した(60)

まず「原資」に関しては,従来型の労使交渉により決定する事例(「労使交渉」型),

企業全体の業績指標を原資の算定にする事例(「全社」型),また,カンパニーの当期利 益等の部門の業績指標により原資を算出している事例(「部門」型)が見られた。1990 年代半ばの改革事例などは,原資問題について言及していない事例がほとんどである。

これはこの時期は原資はまだ労使交渉により決められており,企業の業績配分を一定の 財務指標により原資として配分するというところまで行っていなかったのではないかと 推測できる。

「原資」算出の類型では「全社」型が多かったが,部門業績管理の観点からは原資を どのように算定するのかは重要である。なぜなら,先述したように,最終的には部門の パフォーマンスは収益によって測られ,評価されるからである。そう考えると,部門業 績管理が従来よりも強化されると,収益管理も可能な限り小さな単位の組織で算出し,

構成員に配分を行おうとするであろう。ただ理屈はそうであっても,実際には部門での 原資算出よりも企業全体で原資を算出するという方向が多くの企業で見られた。部門業 績をどのように評価し配分していくのかという配分問題に課題は引き継がれる。

次に「配分」について事例を検討する。各社の配分の取り組みは多様であることがわ かる。この点については,今後,詳細な分析が必要であるが,類型的には基本(固 定),個人業績,全社業績,部門業績,資格・その他による要素の組み合わせとなる。

「基本」について少し言及しておくと,「基本」という場合は月例給の「基本給」の例え

11 原資の類型

原資 事例件数 事例番号

「労使交渉」型 3 33, 40, 71

「全社」型 36 9, 12, 13, 17, 19, 21, 22, 23, 24, 25, 27, 31, 35, 38, 39, 42, 43, 44, 45, 46, 48, 49, 51, 52, 53, 55, 56, 57, 59, 60, 61, 63, 64, 68, 69, 70, 72

「部門」型 9 11, 12, 18, 26, 34, 41, 46, 53, 67 その他,不明,

記載なし

27 1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 10, 14, 15, 16, 20, 28, 29, 30, 32, 36, 37, 47, 50, 54, 58, 62, 65, 66, 73

出所:『労政時報』賞与制度改革事例一覧より筆者作成

*階層により原資が異なる部分は区分して記載

バブル経済崩壊以降の人事制度改革 133

ば年間

4

カ月分などを企業業績とは切り離し保証するものが多い(もっとも企業の状況 がかなり厳しくなった場合は固定の支給月数は見直されるが,基本月数は過去の実績を 勘案し設定されている)。この場合,基本給が算定基礎となっており,基本給の改革を 役割給などに行っている企業であれば,第

3・4

章で議論したように基本給の昇給に関 しても業績が加味されているので,「基本」部分でも個人業績が反映されていることに なる。

「配分」の類型については,「基本」+部門と個人の業績を反映した事例,「基本」+個 人業績を反映した事例,「基本」+会社全体と個人の業績を反映した事例,等が多い。類 型の一覧からは,個人の業績は従来より反映されていたが,部門業績が多くの企業で反 映するようになっていることが特徴として浮かび上がる。この点が今回の人事制度改革 のポイントではないかと考える。大雑把な見方であるが,部門業績に応じて配分してい るケースは(表

12)の件数をカウントすると 71

ケース中(不明除く)36ケースと約半 数を占めていることからも理解できる。

「原資」と「配分」の個々の傾向は以上の通りであるが,いずれかの方法で原資が決 定され,それが配分されることとになる。この

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つの分野を重ね合わせ見ると,先の

(表

11, 12)からもわかるように,部門への配分は,その部門の原資を確定させて配分

しているということではないということである。つまり全体の原資を確定させたのち,

12 分配の類型

配分 事例

件数

事例番号

管理職,一般職 管理職 一般職

基本,全社,部門,個人 3 39, 41 46

基本,全社,部門 2 67 25

基本,全社,個人 5 16, 45, 58 52 69

基本,全社 3 55 21, 57

基本,部門,個人 20 13, 17, 35, 56, 61, 68 4, 10, 15, 22, 31, 34, 36, 37, 40, 43, 47, 49, 60

70

基本,部門 2 23 48

基本,個人 17 1, 9, 19, 29, 59, 62, 63 3, 6, 7 18, 20, 24, 27, 31, 39, 64

全社,部門,個人 3 50 27 72

全社,部門 1 53

全社,個人 3 32, 54, 70

全社 1 51

部門,個人 5 18 26, 28, 30 14

個人 3 8 2, 5

その他 3 38, 42 65

不明 8 11, 12, 44, 73 33, 46, 66 71

出所:『労政時報』賞与制度改革事例一覧より筆者作成

*階層により配分の仕方が異なる事例はそれぞれの配分区分に分類 バブル経済崩壊以降の人事制度改革 134

部門の貢献を評価し,部門へ配分をしている企業が多いのである(図

6)。もちろん部

門のみの原資を算出してそれを配分するという方法を採用している企業もあるが,カン パニー制の導入時点では原資は会社全体で算出している場合が多い。

「原資」と「配分」の関係(事例で多かったケース)を整理したものが(表

13)であ

る。全社の業績指標で原資を決定するが,配分は個人の業績だけではなく,部門の業績 も反映して配分していることが明確になった。この傾向は特に管理職において顕著であ り,一般職は部門の配分を行う場合でも管理職より反映比率を下げるなどの運用を行っ ている。

6 「原資」「配分」関係図

出所:類型一覧を基に作成

13 「原資」「配分」整理表

配分 原資 全社 部門 労使交渉

基本,部門,個人 全体:13, 17, 35, 56, 61, 68 管理:22, 31, 43, 49, 60 一般:70

全体: 管理:34 一般:

全体: 管理:40 一般: 基本,個人 全体:9, 19, 59, 63

管理:

一般:24, 27, 31, 39, 64

全体: 管理 :─

一般:18

全体: 管理: 一般: 基本,全社,個人 全体:45

管理:52 一般:69

全体: 管理: 一般:

全体: 管理: 一般:

出所:表11, 12より筆者作成。「全体」は管理職,一般職、「管理」は管理職,「一般」は一般職を指す

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ドキュメント内 バブル経済崩壊以降の人事制度改革 (ページ 31-35)

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