また畜牛の放牧密度と土壌肥沃度 の低下の深刻さとの間に関連性が 認められた。また、このプロジェ クトは、現在の人口移動とトウモ ロコシ栽培のパターンを前提に、
森林破壊が速く進む可能性がある 地域の特定にも貢献した。
タンザニアでは、人口増加が著 しく、経済開発があまり進んでい ないゴンベ国立公園周辺のいくつ かの村で、ジェーン・グドール研 究所が森林破壊と土壌浸食を食い 止め、地域の健康、教育、雇用に 関するニーズに対応する活動を進 めている。同研究所は、女性を教 育して家事と家庭資源の管理を向 上させ、また女性の起業家を生み 出し、学校や村での環境保護教育 を実施し、女性向けの果物と油ヤ シの栽培と管理の研修を実施し(現 在では 27 の村に養樹場がある)、女 性が薪を求めて歩く距離を短縮す るための小規模な植林地を造営し、
持続可能な農法実施のための技術 支援を提供している。地域の保健 当局との協力のもとで、ゴンベ周 辺の村ではプライマリ・ヘルスケ ア、家族計画サービス、ヒト免疫 不全ウィルスおよび後天性免疫不 全症候群(HIV/エイズ)に関する教 育を実施している。また、女性向 けのマイクロ・クレジット(小規模 融資)プログラムも実施し、女性が 環境的に持続可能な小規模事業を 開始するためのローンを提供して いる5。
アジア
ネパールのヒマラヤ山脈南部で は 25 の村で、タマコシ奉仕委員会
(Tamakoshi Sewa Samiti)のプロジェ クトが実施されており、リプロダ クティブ・ヘルスのカウンセリン グとケア、環境サービス、マイク ロ・クレジット・プログラムや野 菜の栽培とその販売を含む収入創 出活動が行われている。100 を超 える飲料水供給設備が設置され、
2 0 万 本 以 上 の 木 が 植 え ら れ た 。 1996 年と 1998 年の調査では、全国 の乳児死亡率が出生 1000 人に対し て 79 であったのに比べて、プロジ ェクト実施地域の乳児死亡率は 19 であった。5 歳未満児死亡率も同 地域では 1000 人に対して 38 で、全
国死亡率の 118 に比べて低くなっ ている。また、避妊実行率も高く、
ネ パ ー ル の 農 村 地 域 全 体 で は 26.5 %であるのに対し、同地域で は 36.2 %である6。
ラテンアメリカ
エクアドルでは、同国の NGO で ある CEMOPLAF が米国に拠点を もつワールド・ネイバーズの支援 を得て、貧しい先住民の農村 20 カ 所で農業管理や資源管理の活動と リプロダクティブ・ヘルス/家族計 画サービスを結合させている。こ れらの村落では住居が丘陵地帯の 急斜面に建てられており、サービ スの提供が一つの課題になってい た。この事業の結果、土壌保全を 実施する農民の数が倍加して 50 % になり、近代的な避妊方法の実行 率 が 1 2 % か ら 4 1 % に 増 加 し た 。 同プロジェクトにおける農業管理 サービスの利用者の 65 %は女性で ある7。
グアテマラ北部のマヤ生物圏保 存地域では、出生率が全国平均よ り 40 %近く高い 16 カ村で、コンサ ベーション・インターナショナル がリプロダクティブ・ヘルスの情 報とケアのニーズに対応するため の活動をしている。このレメディ アス・プロジェクトは 1998 年に始 まり、出産への立ち会い、家族計 画、HIV/エイズを含む性感染症
(STD)の予防をはじめとするリプ ロダクティブ・ヘルスに関して、
地域に拠点を置く 45 人の助産婦と 農村地域の 16 人の保健推進員を養 成してきた。各村落では、地域に 根ざした避妊薬(具)配布プログラ ムが創設されてきている。教材に は同地域の先住民とメスティソ(混 血)の伝統が盛り込まれている8。
メ キ シ コの グ ア ナ フ ァ ト 州 で は、思春期のリプロダクティブ・
ヘルスの向上を目指す NGO である サンミゲル・デ・アジェンデ思春 期 セ ン タ ー(
Centro Para Los Adolescentes de San Miguel de Allende)が、低所得の患者を対象
に産科とコミュニティー・ヘルス ケアのための病院を運営し、また 農村では、家族計画カウンセリン グと避妊薬(具)の提供も実施して いる。燃料効率のよいコンロ、ト イレの建造、再植林、薬草の調合なども含めた環境教育や管理が、
学校でのピア(仲間)・カウンセリ ングに取り入れられている9。メキ シコの 17 の州では、政府の保健機 関の一つであるメキシコ社会保険 庁(Instituto Mexicano del Seguro
Social)が、傘下のリプロダクティ
ブ・ヘルス総合診療所で、薬草園 と菜園づくり、燃料効率のよい薪 ストーブの使用法、堆肥作り、そ の他の環境に優しい技術の実地指 導を行っている10。北アメリカ
世 界 自 然 保 護 基 金( 米 国 で は WWF は世界野生生物基金 World Wildlife Fund として知られている)
は、テネシー州ナッシュビルとア ラバマ州バーミングハム周辺の急 速な成長が河川の生態系に及ぼす 影響を緩和する活動を実施してい る11。バーミングハムと急速に成 長するその郊外の飲料水の水源で あるカホーバ川の何カ所かが 2000 年夏の干ばつで干上がったことを きっかけにして、WWF は同河川 の栄養分の水準と、それが魚とイ シガイを含めて絶滅の危機に瀕し ている水生生物に与える影響に関 する調査を支援している。
この干ばつのために水の配給が 厳しくなり、カホーバ川の水が富 栄養化して、川の生物は壊滅的な 打撃を受けた。この富栄養化は、
州の水質基準の甘さと設計の悪い 下水処理場に起因していた。
このプロジェクトの結果は、ア ラバマ州が川の栄養水準に関する 政策と基準を策定し、それによっ てカホーバ川の生態系に対する人 口増加の影響を最小限にすること を推奨するために活用される。ま た、WWF はテネシー州に拠点を もつある環境保全グループと協力 して、自主的な基準と模範管理方 法を設定しており、請負業者がこ れらを活用して新しい住宅、事業、
道路の建設現場から川に流入する 堆積物を抑制することで、水中の 生物多様性を保護することを目指 している。
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必要とされる資金 と技術支援
1994 年の ICPD で強調されたよ うに、「人口の増加を緩和し、貧 困を削減し、経済の発展を達成し、
環境保護を向上させ、持続不可能 な消費と生産のパターンを減少さ せる努力は、相互に強化し合う」12。 このため、ICPD 行動計画を実施す るために必要な資金を結集するこ とは、女性の権利と持続可能な開 発の推進に加え、環境保護のため のカギを握る行動になる。
ICPD では、開発途上国での人 口・リプロダクティブ・ヘルス・
プログラムの基本パッケージの実 施に必要な年間経費を見積もって いる。
リプロダクティブ・ヘルスと家 族計画のプログラムは 2000 年に 152 億ドルを必要とし、2015 年に は必要額が 199 億ドルに増加する と見積もられた。HIV/エイズ予防 には、2000 年に 13 億ドル、2010 年と 2015 年には 15 億ドルずつ必 要であると推定された。また、基 礎研究、データや政策の分析のた め に 必 要 な 資 金 の 見 積 も り は 、 2000 年から 2015 年の間に毎年平均 で 4 億ドル以上であった(これは国 勢調査のタイミングに合わせて大 幅に変化する)。
必要資金の合計は、2000 年には 170 億ドル、2015 年には 217 億ド ルになると見込まれた。この費用 の 3 分の 2 を開発途上国が負担し、
残りは国際開発援助を財源とする ことが期待された。
これらの見積もりには HIV/エイ ズ予防が含まれていたが、HIV 感 染者に対する治療とケアのために 追加資金が必要になることが確認 された。しかし、HIV/エイズは ICPD の予想以上に急速に広範囲に わたって進行したため、この世界 的に流行している疾病の影響を改 善するためには、さらに相当な資 金が必要となる。
その他のリプロダクティブ・ヘ ルス・サービスのニーズも依然と して大きい。妊産婦死亡は ICPD で提言された低下率ほど下がって いない。すべての出産の半分弱は、
いまだに訓練を受けた出産介助者 の立ち会いがない。困難な出産の
際の搬送や周産期救急ケアのため の資金も必要である。また、思春 期のセクシュアル/リプロダクティ ブ・ヘルスのプログラムやリプロ ダクティブ・ヘルスケアの利用者 として、また女性の支えとなるパ ートナーとしての男性を巻き込ん でいくことを一層重視する必要性 も認識されつつある。
リプロダクティブ・ヘルス・サ ービスの拡大に必要な資金の見積 もりは、予測される避妊の需要増 加を反映している。これは、出産 可能年齢人口が増加し、またアン メット・ニーズ(満たされないニ ーズ)の今後の減少、つまり、出 産の延期または避妊を望みながら 避妊薬(具)を使っていない女性と カップルの数が減っていくことに 基づいて算出された13。ICPD の実 施状況の 5 年目の見直しにおいて、
2015 年までにアンメット・ニーズ を完全になくすという新たな目標 が設定された。このためには、さ らなる資金と国家的・国際的な努 力が必要とされる。
ア ン メ ッ ト ・ ニ ー ズ の 解 消 に は、サービスを実際に手に入れら れるようにすること以外に多くの ことが必要となる。利用可能な避 妊法の副作用に対する懸念、特定 の避妊方法に関連する文化的な問 題(例えば、経血の変化など)、あ るいは夫や周囲の人たちの反対な どがあって避妊を実行していない 女性も数多くいる。これらの問題 に取り組むためには、誰もが避妊 法の幅広い選択肢をもてるように すること、現行の避妊法の副作用
を軽減するための研究への支援、
カウンセラーの養成事業の向上へ の投資が必要とされる。
行動しないことの代価
リプロダクティブ・ヘルスと人 口に関するプログラムのために活 用できる資金は、ICPD が 2000 年 に必要になると見積もった 170 億 ドルを大きく下回っている。開発 途上国が必要資金の負担分のほと んどを提供しているにもかかわら ず 、 国 際 援 助 団 体 か ら の 支 援 は 2000 年の必要額である 57 億ドルの 半分にも達していない。
人口プログラムに使える資金の 不足は、各国が開発政策の影響を 査定し、進展状況を監視し、計画 段階での優先事項を決定するのに 必要なデータ収集と研究活動にす でに影響を及ぼし始めている。
資金不足はすでにその影響を見 せ始めている。例えば、出生率の 低下は、望む数だけの子どもを産 むことができるカップルや個人が もっと多くなることを想定してい たため、予測よりも緩慢になって いる。行動を先送りにした場合の 代価は、時がたつとともに急速に 増大するだろう。
囲み 14
リプロダクティブ・ヘルス関連の用品の 確実な入手を目指す努力
国連人口基金(UNFPA)は 2000 年 9 月に、避妊薬(具)や HIV/
エイズ予防のためのコンドームをはじめとするリプロダクテ ィブ・ヘルスの必需品の世界的な不足に立ち向かう新しい世 界戦略を開始した。この戦略は、公共セクター、民間セクタ ー、NGO の連携によって、避妊薬(具)の供給と配布に関する 国の能力を強化し、持続可能な手段を確立することを意図し ている。オランダと英国はこの努力を支援するために、それ ぞれ約 4000 万ドルを提供した。