5.1 バイオテクノロジーを応用した医薬品 組換えDNA技術を応用して製造される 医薬品の製造上の安全性を確保するため,
「組換えDNA技術応用医薬品の製造のため の指針について」(1986年12月11日付薬発 第1051号、一部改正:1987年5月21日付薬 発第434号、1995年8月18日付薬発第769 号))が公表された。組換え体(生細胞)
の安全性評価を行い,製造の作業レベルを
「GILSP( 優 良 工 業 製 造 規 範 、Good Industrial Large‐Scale Practice)、「カテ ゴリー1」、「カテゴリー2」及び「カテゴ リー3」の4段階に規定し、必要な施設及び 設備を示すと共に、製造安全委員会の設置、
製造安全主任者の任命、製造管理者による 管理・監督等の規定を示している。その後、
「遺伝子組換え生物等の使用等の規制によ る生物の多様性の確保に関する法律:カル タヘナ法(2003年6月18日付法第97号)」
に基づく「遺伝子組換え生物等の第二種使 用等のうち産業上の使用等に当たって執る べき拡散防止措置等を定める省令(2004年 1月29日付財務・厚生労働・農林水産・経済 産業・環境省令第1号、一部改正:2006年6 月6日付財務・厚生労働・農林水産・経済産 業・環境省令第2号)」の2004年2月19日施 行された(これに伴い、当該指針は廃止)。
バイオテクノロジーを応用した医薬品 の品質,有効性、安全性を評価するためガ イドラインとして、当初、「組換えDNA技 術を応用して製造される医薬品の承認申請 に必要な資料作成について」(1984年3月
30日付薬審発第243号)が公表され、また、
「細胞培養技術を応用して製造される医薬 品に関する承認申請に必要な資料の作成に ついて」(1988年6月6日付薬審1発第10号)
が示された。
その後、ICHの議論を踏まえ以下のガイ ドラインが示されている。
(1) ヒト又は動物細胞株を用いて製造 されるバイオテクノロジー応用医 薬品のウイルス安全性評価につい て(2000年2月22日付医薬審第329 号:ICH-Q5A)
(2) 組換えDNA 技術を応用したタンパ ク質生産に用いる細胞中の遺伝子 発現構成体の分析について(1998 年1月6日付医薬審第3号:ICH-Q5B) (3) 生物薬品(バイオテクノロジー応用
製品/生物起源由来製品)の安定性 試験について(1998年1月6日付医 薬審第6号:ICH-Q5C)
(4) 生物薬品(バイオテクノロジー応用 医薬品/生物起源由来医薬品)製造 用細胞基剤の由来,調製及び特性解 析について(2000年7月14日付医薬 審第873号:ICH-Q5D)
(5) 生物製品(バイオテクノロジー応用 医薬品/生物起源由来医薬品)の製 造工程の変更にともなう同等性/
同質性評価について(2005年4月26 日 付 薬 食 審 査 発 第0426001号 : ICH-Q5E)
(6) 生物薬品(バイオテクノロジー応用 医薬品/生物起源由来医薬品)の規 格 及 び 試 験 方 法 の 設 定 に つ い て
(2001年5月1日付医薬審発第571
号:ICH-Q6B)
(7) バイオテクノロジー応用医薬品の 非臨床における安全性評価につい て(2012年3月23日付薬食審査発 0323第1号:ICH-S6(R))
その他、細胞・組織を利用した医薬品及 び遺伝子治療用医薬品に係わる通知が示さ れている。
5.2 ヒト・動物由来成分を原材料とする医薬
品等(生物由来製品)
ヒト又は動物由来成分を原材料として 製造される医薬品等については、現時点の 科学水準に基づいた品質及び安全性確保対 策を講ずることが必要と考えられ、中央薬 事審議会バイオテクノロジー特別部会にお いて「細胞・組織利用医薬品等の取扱い及 び使用に関する基本的考え方」(2000年12 月1日)及び「ヒト由来細胞・組織加工医薬 品等の品質及び安全性の確保に関する指 針」(2000年12月1日)が中央薬事審議会 バイオテクノロジー特別部会において取り 纏められ、通知が発出された(2000年12月 26日医薬発第1314号)。また、その他にも 各種通知が発出され、製造販売業者等によ る自主点検及び承認書の整備等が求められ るとともに、安全性確保対策が講じられて いる。特に、ウシ等由来成分については、
世界的なリスク発生に応じ適時必要な通知 等が示され品質及び安全性確保が強化され ている(第2章、6.4 ウシ伝達性海綿状脳症
(BSE)等への安全対策を参照)。加えて、
2002年7月31日付薬事法改正により新たに 生物由来製品及び特定生物由製品の定義が
行われ、感染リスクに応じて安全性確保対 策措置が講じられることとなった。
5.3 バイオ後続品
バイオテクノロジー応用医薬品に関す る製法及び解析技術の進歩にともない、諸 外国において、バイオテクノロジー応用医 薬品と同等/同質の医薬品としてバイオ後 続品の開発が進められている。このような 技術の進歩等を踏まえ、厚生労働省科学研 究費補助金厚生労働科学研究事業「バイオ ジェネリックの品質・有効性・安全性評価 法に関する研究」において検討がなされ、
「バイオ後続品の品質・安全性・有効性確 保のための指針」が発出された(2009年3 月4日薬食審査発第0304007号)。バイオ後 続品は、国内で既に新有効成分含有医薬品 として承認されたバイオテクノロジー応用 医薬品(先行バイオ医薬品)と同等/同質 の品質、安全性、有効性を有する医薬品と して、異なる製造販売業者により開発され る医薬品として定義されている。「同等性
/同質性」については、先行バイオ医薬品 に対して、バイオ後続品の品質性がまった く同一であるということを意味するのでは なく、品質特性において類似性が高く、か つ、品質特性に何らかの差異があったとし ても、最終製品の安全性や有効性に有害な 影響を及ぼさないと科学的に判断できるこ とを意味している。そのために、「生物薬 品(バイオテクノロジー応用医薬品/生物 起源由来医薬品の製造工程の変更にともな う同等性/同質性評価の非臨床における安 全性評価」ICH Q5Eガイドラインに記載さ れているコンセプトに基づいた適切な試験
が必要となる。更に、臨床試験により同等 性/同質性を評価する必要がある。
また、「バイオ後続品の品質・安全性・
有効性確保のための指針に関する質疑応答 集(Q&A)について」(2009年7月21日付 事務連絡)が示され、バイオ後続品申請が 可能となるタイミング、同一製品の定義、
同等性・同質性評価、製剤・試験法開発、
安全性評価等に関する規制当局としての見 解が述べられている。
バイオ後続品の承認申請に当たっては、
「バイオ後続品の品質・安全性・有効性確 保のための指針」(2009年3月4日薬食審査 発第0304007号)の別添の9に基づき製造販 売後調査とリスク管理計画の具体的な方法 や計画を提出することとされているが、「医 薬品リスク管理計画の策定について」(2012 年4月26日薬食審査発0426 第2号)におい
て、2013年4月1日以降に申請するバイオ後
続品は、これに代えて、医薬品リスク管理 計画書の案を承認申請の添付資料として提 出する必要がある。
5.4 新薬開発に係る情報公開(ディスクロー ジャー)
「新医薬品の承認審査に係る情報の公 表について」(1999年11月11日付医薬審発 第1651号)が通知され、厚生労働省が作成 する審査報告書等とともに、申請者から提 出される非臨床・臨床試験成績等をとりま とめた資料が「新薬承認情報集」として公 表されていた。その後、新たに「新医薬品 の承認審査に係る情報の公表について」
(2002年5月29日 付 医 薬 審 発 第0529003 号)が通知され、資料の提出方法等が変更
された。更に、資料等の提出及び公表に関 する具体的な取扱いが通知された(2005年 4月22日付薬食審査発第0422001号、2005 年4月22日付薬機発第0422004号、2007年 11月26日付薬食審査発第1126005号)。
新薬の承認審査に関する情報は機構の ホームページに公開されている(邦文:
http://www.info.pmda.go.jp/info/syounin_in
dex.html、 英文(一部の品目のみ):
http://www.pmda.go.jp/english/service/revie w.html)。
更に、2005 年1月6日に国際製薬団体連 合会(IFPMA),米国研究製薬工業協会
(PhRMA),欧州製薬団体連合会(EFPIA),
日本製薬工業協会(JPMA)の4団体の共同 声明として、「臨床試験登録簿およびデー タベースを介した臨床試験情報の開示に関 する共同指針」が出され、探索的試験を除 く全ての臨床試験を登録公開すること、ま た、少なくとも1国で承認あるいは販売され ている薬剤に関し、実施されたすべての試 験(探索的試験を除く)の結果に関する情 報を公開することが宣言された。
これを受けて日本では、文部科学省が UMIN 臨床試験登録システム(UMIN-CTR;
http://www.umin.ac.jp/ctr/index-j.htm)を開 始するとともに、厚生労働省が財団法人日 本医薬情報センターおよび日本製薬工業協 会との協力により、臨床試験情報の登録と 公開のためのデータベース「臨床試験情報」
(http://www.japic.or.jp/index.html)によ り、臨床試験に関する情報を公開している。
これらのシステムにより、被験者個人の プライバシー、知的財産権および契約上権 利にも十分配慮した形で、製薬企業が治験
の情報を積極的に公表し、治験の透明性向 上を図っている。
また、日本に特有のシステムとして、治 験審査委員会に関する情報についても、自 主的な公表がなされる。(2008年10月1日 付薬食審査発第1001013号、2009年4月2日 付事務連絡)
5.5 ICH(日米EU医薬品規制調和国際会 議)
ICHは、日本、米国、EUの医薬品規制当 局と医薬品産業団体の6団体(厚生労働省、
日 本 製 薬 工 業 協 会 、FDA、PhRMA、 EC/EMA、EFPIA)を構成メンバーととして おり、その企画立案は運営委員会が行う。
ICHには、オブザーバーとしてWHO、カナ ダ、EFTA(欧州自由貿易連合)が参加して いる。それぞれの課題ごとに、6団体から専 門 家 や 行 政 官 か ら な る 専 門 家 委 員 会
(EWG)が設置されている。
ICHのハーモナイゼーションはICHプロ セスといわれる次の5つのステップにより、
行われている。
ステップ1:トピックの選定・問題 点の分析、EWGの設置、ICH調 和ガイドライン案の起草 ステップ2: ICH調和ガイドライン
案の決定・各極における意見聴 取の承認
ステップ3:各極におけるガイドラ イン案に対する意見聴取、寄せ られた意見に基づくガイドライ ン案の修正
ステップ4: ICH調和ガイドライン