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5−4.済美地区の事例 5−4−1.済美地区の概要

地区には,市の所有ではあるが北天満会館,扇町老人憩の家がある。旧北天満小学校 は市から委託を受け維持管理している。また地区連合振興町会の運営経費は,平成

20

年度の年間の収入総額が

66

6

千円で,すべては市から連合振興町会への補助金で賄 われている。支出総額も

66

6

千円で,各種団体への助成金,バス代,謝礼,備品が 主な支出項目となる。そのほか必要な時は各町会で集金している。

5−3−5.北天満地区のマンション・事業所との関係

北天満地区では,約

50

年近く前に建設された扇町市営住宅(約

200

世帯)は振興町 会として地区の役員も輩出している。しかし,他のマンションでは

1

棟のうち

5

世帯分 のみ自治会費を納入するなど個別に加入する例はあるが,分譲や賃貸,ファミリーやワ ンルームタイプを問わず,ほとんどが振興町会へ未加入で役員も輩出していない。ま た,地区の行事への参加はあるが,地区の役員との顔の見える関係は少ない傾向にある という。

地区と事業所との関係を見ると,地区の事業所は

504(2006

年の事業所・企業統計調 査)のうち

155

が連合振興町会に加入しており,その加入率は

30.8% となる。事業所

・企業統計調査に反映されない小規模な商店やテナント等も含めると,実際の事業所の 振興町会への加入割合は

5% ぐらいであるという。ところが商店会への事業者の加入は 50% となり,振興町会よりも商店会との結びつきが強いことがわかる。ただし,この

地区の商店会は近隣型商店街なので地域密着型となり,振興町会と黒崎東商店街とは交 流をしている。

しかし最近では,閉店するところも増えている。その背景には,職住一致型の商店主 の高齢化がある。高齢になると,1階の店舗スペースの奥の階段から,2階や

3

階に上 り下りして生活するのが困難になる。そのため

1

階の店舗スペースを居住スペースにし て生活をするようになる。そのため,職住一致型の商店主の高齢者の増加に伴い,店舗 を閉店するところも増加して,地区内の商店街がシャッター通りになるという。また,

商店街では,町会費に加えて,アーケード積立金なども含めた商店街の会費もある。そ のため,細々とでも商売を継続する場合は,なんとか支払えている。しかし,職住一致 型の商店主は,受給額の低い国民年金受給者が多く,閉店した高齢者の中には,会費未 納者も出ている。このように地区と商店会との良好な関係がある一方で,個店の存続の 難しさがこの両者の関係の存続を脅かしている現状が伺える。

5−4.済美地区の事例

堂筋を越えて西南側に進むと,阪急梅田駅がある。そして中崎一丁目,中崎二丁目,中 崎三丁目,万歳町,中崎西一丁目,中崎西二丁目,中崎西三丁目,中崎西四丁目の

8

つ の行政上の区域(町丁目)から構成されている。この地区も都市計画の用途地域は商業 地域となる。地区内には天五中崎通商店街,黒崎商店街が立地する商業や商店街地区の 側面や,西部は梅田にも近いことから,JRの高架下の事業所や倉庫等に加え,梅田セ ンタービルなど比較的敷地の大きなオフィスビルや事業所が立地する業務地区の様相も 示す。また

ECC

専門学校や大阪能楽会館等の文教施設も立地するほか,地区の振興町 会には所属していないが在日本大韓民国民団大阪府地方本部も立地する。一方で地区内 部は,隣接する北天満地区と同様に戦災を免れた長屋が多く,木造密集市街地の住居地 区の特徴もある。この住居地区の中には,若者が改修した長屋再生店舗が点在し,セレ クトショップや古着屋や雑貨店,カフェやバーやバールなどの若者向けの店舗が増加し ている(7)。これは梅田に近い好立地条件でありながら,比較的安価に長屋等の店舗を賃 借できるためである。なお現在では,そこが大阪観光の人気スポットになっている。

5−4−2.済美地区の地域コミュニティの変化とそれに伴う地域課題

済美地区の人口動態をみると,1960年の

8,684

人をピークに人口が減少し,1995年

写真5−1 済美地区の中崎町の木造住宅と後方にそびえるマンション

「都心回帰」による大阪市の地域社会構造の変動 62

には

4,134

人にまで減少した。その後人口が増加し始める。2010年の国勢調査では,済 美地区内の世帯数は

3,914

世帯,人口は

5,959

人である。ただし,これは

1960

年の人 口ピークまでは回復していない。中長期的な変化をみると,30年前の

1980

年の

5,252

人を

100% とすると,2010

年は

114% の 707

人の人口増加がみられる。さらに,ここ

10

年の変化をみると,2000年の

4,136

人を

100% とすると,2010

年は

144% の 1,823

人の人口増加がみられる。ここから,とりわけ近年に,三地区の中でも最も人口が急増 したことがわかる。

国勢調査の一般世帯における各住居の種類の割合をみると,地区の持ち家率は

1995

年が

36.0%,2000

年が

40.9%,2005

年が

31.5% と一旦増加し減少に転じていることが

わかる。一方で,民営の借家率は

1995

年が

51.2%,2000

年が

46.1%,2005

年が

60.0

%と一旦減少し増加に転じている。このことから,最近の地区の人口増加は,分譲マン ション居住者の転入増から賃貸マンション居住者の転入増に変化していると考えられ る。

2005

年の国勢調査の職業大分類別の就業者の割合をみると,事務従事者が

21.1%

(大阪市

20.5%,北区 21.7%),次いで販売従事者が 19.5%(大阪市 18.4%,北区 20.2

%),サービス職業従事者が

18.7%(大阪市 12.5%,北区 15.4%)となる。この地区も

菅北地区や北天満地区と同様に商店や商店街地区として特徴づけられる。一方で

2005

年の地区の完全失業率も

10.4%(大阪市 11.7%,北区 8.2%)と,大阪市全体の割合よ

りは低いが北区全体よりも高く,本庄地区(11.2%,北区内

1

位),北天満地区(11.4

%,北区内

2

位),豊崎東地区(10.7%,北区内

3

位)に続いて

4

番目に割合が高い。

また

2000

年の国勢調査の職業大分類別の就業者の割合と比較すると,事務従事者は

18.5%(2000

年)から

21.1%(2005

年)と割合が増加している。一方で販売従事者は

21.6%(2000

年)から

19.4%(2005

年),サービス職業 従 事 者 が

20.4%(2000

年)か

18.6%(2005

年)へと割合が減少している。

この地域コミュニティの変化を地元住民はどのように受け止めているのだろうか。イ ンタビューによると,大阪市民の間では,もともと「高級品は梅田に,安いものは天六 へ」と言われていた。済美地区は,その隙間を埋めるような小売商が点在し,駄菓子屋 やお好み屋,仕立屋など地域の人を相手に商売をする人が居住していた。また,路地に はサラリーマンや水商売の人が居住する静かな場所だった。しかし近年では,地域の跡 継ぎ層は就職や結婚などにより他都市や周辺のマンションへ引っ越し,親は地区に残る 居住形態が増加した。そのため昔ながらの商売を継承する店舗が減少し,貸し店舗が増 え外来の若者が出店するようになった。地元の住民の中には,以前であれば道行く人す べて顔見知りであったが,外部からの通勤者や観光客が増え,「ガチャガチャした街」

になったという印象を持つ人もいる。

「都心回帰」による大阪市の地域社会構造の変動 63

マンション居住者や中崎町界隈をめざして来る若い新規参入の事業者などの外部から の転入者は,振興町会に挨拶に来ることも少なく,地区の役員との顔の見える関係も乏 しい町もある。そのため地元の住民の中には「郷に入れば郷に従えが通じない世の中に なってしまった」と感じる人もいる。このような状況から北天満地区と同様に,新旧住 民の交流の難しさが地域運営上の課題として浮上している。

一方で,地区では地元の

50

から

60

歳代も振興町会運営に携わり,次世代の担い手の 目星もついている。そのため役員のなり手や次世代の担い手などの,地区の組織運営自 体は心配をしていない。ただし,例えば,演歌の催しといった地区の

70

から

80

歳代の 年長世代が好む企画をしないなど,世代間のニーズや意識のずれはあるという。

なお,菅北地区や北天満地区と同様に,異なる行政部署から別々に配布物が届くた め,窓口を一本化して欲しいなど,行政対応に関する課題も出ている。

5−4−3.済美地区の住民組織の特徴

済美地区の住民組織は,9の振興町会と菅北地区と同様に

21

の各種団体から構成さ れている。ただし,済美小学校の廃校に伴い,PTA は扇町小学校

PTA

になり,済美小 学校同窓会は廃止して扇町小学校同窓会へ統合されている。

済美連合振興町会も,大阪市内の他地区と同様に大阪市主導のもとで

1975

年に発足 している。地区内の各町では,振興町会別の旧「町会」が戦後すぐに設立されている。

現在は振興町会に一本化され町内運営を行っているところや,以前からある町会と振興 町会が

2

本立てで町内運営を行っているところが混在している。そのため

9

ある振興町 会の構成も混在しており,万歳町,中崎西一,中崎西二,中崎西三,中崎西四の

5

振興 町会は,概ね現行の行政上の区域(町丁目)と一致している。一方で,行政上の区域

(町丁目)の中崎一丁目は,中崎三と山崎西の

2

つの振興町会に分かれるほか,行政上 の区域(町丁目)の中崎二丁目の大部分が,振興町会の中崎一になり,同じく行政上の 区域(町丁目)の中崎三丁目と中崎二丁目の一部が,振興町会の中崎二になっているな ど,旧「町会」の範域を守っているところもある。なお,マンションや事業所独自の振 興町会はない。所属班数は

116

班である。連合振興町会加入世帯数は

1,075

世帯(住民

世帯

935,事業所 140),住民世帯の加入率は 23.9% となる。なお連合振興町会役員構

成は会長,副会長(2名),総務部長,会計,社会福祉部長,環境衛生部長,災害救助 部長,女性部長,会計監査(2名)となり概ね「大阪市地域振興会組織要綱」に沿って いる。また連合振興町会役員は振興町内会長が就任し,会長の選任は,市が作成した規 約に基づき,推薦用紙により各班で候補者を決定する。2年任期で再任もできる。連合 振興町会の運営は,総会に

1

回,5月に開催する。出席者は役員と主要な人々の

50

名 ほどで行う。他にも緊急時には会議を行う。なお規約は市の規約はあるが地区運営は慣

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