ポケガの⽣産にあたっては、当初から東⽇本⼤震災の被災メーカーと協⼒したいと考え ていた。そこで商社等を通じてヒアリングをしたところ、津波被災地である宮城県⽯巻市 に⽴地する精密電⼦機器⼯場(図 3-5)と⽣産委託の交渉ができることとなった。この会社 は⼤⼿電機メーカーの OEM 製品の設計・製造・検査を⾏なってきた実績があり、ポケガの
⽣産には適していた。しかし、ポケガプロジェクトのように新規の案件で、しかも放射線 測定器という精密性の要求される案件であるにも関わらず、安価な販売価格を想定してい ること、また、これまで全く取引実績の無い個⼈からの唐突な依頼であること、あるいは、
オリジナル商品をリリースした経験が無いこと等から、当初はコラボレーションに難⾊を
⽰していた。そこで経営幹部と直接対談して、プロジェクトの⽬標や、会社にとっても将 来的に有望なソーシャルビジネスになる可能性があること、Kickstarter による資⾦調達の
⽬処や、専⾨家とのコラボレーションが進みつつあること等について話をしたところ、信 頼を得て、協⼒をとりつけることができた。
ポケガの⽣産においては、⼯場側としては「地震や原発事故による売り上げ減を補うこ とができる」という思いがあり、またプロジェクトの運営側としては、「受注が減っていた 被災地の⽣産技術を活⽤しつつ、雇⽤確保に貢献できる」という狙いがあった。同時に、
メイド・イン・⽯巻であることがメディアなどに取り上げられることで、結果として製品 の知名度向上に貢献するという副次的な効果も得られた。
こうした、製品そのものの機能・価格だけではなく、プロジェクトの運営姿勢や社会的 な波及効果に対してユーザが共感を得るような価値を持つ製品は、ソーシャルプロダクト と呼ばれる[21]。本プロジェクトにおいては被災企業との連携によって雇⽤確保に貢献し つつ、結果として製品にソーシャルプロダクトとしての付加価値を与えることができた。
このような付加価値は、当初から狙っていたというよりは、プロジェクトを進めていく うちに周囲の反響によって逆に気づかされたという⾯が⼤きい。こうした波及効果に気づ いてからは、Web サイト中に積極的に⼯場の写真を掲載したり、パッケージ(外箱)の背
⾯に「MADE IN ISHINOMAKI」であることを表記するなどして、⽯巻発であることを積極 的にアピールすることとした。
図 3-5 ポケットガイガーの製造⼯程(宮城県⽯巻市)
Figure 3-5 Fabrication process of POKEGA (Ishinomaki city, Miyagi).
3.2.6 サポート
当初サポートに関しては、専⽤のコールセンターを開設する⼈⼿が無かったため、
SNS(Facebook)で質問を受け付ける体制をとった。SNS であれば開設費⽤が無料である上、
ユーザ全員が質問と回答のやり取りをシェアできるので、サポートの効率化が図れると期 待されたからである。ところが実際に運⽤を開始してみると、想定されたユーザ対技術者 の構図ではなく、ユーザ同⼠で互いにフォローし、問題解決のために助け合うというイン タラクションが多く⽣まれた。また、ユーザが様々な場所でポケガの性能を独⾃にレポー トし、その結果について議論するような場⾯も多くみられた。結果として PM は、サポート にかける労⼒の多くを外部調達することができた。SNS でのインタラクションの詳細につ いては 4.5 節で述べる。